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『若紫(大島本)』
「なほ、いと夢の心地しはべるを、いかにしはべるべきことにか」と、やすらへば、
「そは、心ななり。御自ら渡したてまつりつれば、帰りなむとあらば、送りせむかし」
とのたまふに、笑ひて下りぬ。にはかに、あさましう、胸も静かならず。「宮の思しのたまはむこと、いかになり果てたまふべき御ありさまにか、とてもかくも、頼もしき人びとに後れたまへるがいみじさ」と思ふに、涙の止まらぬを、さすがにゆゆしければ、念じゐたり。
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第三章 紫上の物語(2) 若紫の君、源氏の二条院邸に盗み出される物語
[第三段 源氏、紫の君を盗み取る]
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