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 『蜻蛉(大島本)

 [第四段 乳母、悲嘆に暮れる]
 内にも泣く声々のみして、乳母なるべし、
 「あが君や、いづ方にかおはしましぬる。帰りたまへ。むなしき骸をだに見たてまつらぬが、かひなく悲しくもあるかな。明け暮れ見たてまつりても飽かずおぼえたまひ、いつしかかひある御さまを見たてまつらむと、朝夕に頼みきこえつるにこそ、命も延びはべりつれ。うち捨てたまひて、かく行方も知らせたまはぬこと。

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  第一章 浮舟の物語 浮舟失踪後の人びとの動転  [第四段 乳母、悲嘆に暮れる]

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