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『空蝉(大島本)』
「いかにぞ、をこがましきこともこそ」と思すに、いとつつましけれど、導くままに、母屋の几帳の帷子引き上げて、いとやをら入りたまふとすれど、皆静まれる夜の、御衣のけはひやはらかなるしも、いとしるかりけり。
[第四段 空蝉逃れ、源氏、軒端荻と契る]
女は、さこそ忘れたまふをうれしきに思ひなせど、あやしく夢のやうなることを、心に離るる折なきころにて、心とけたる寝だに寝られずなむ、昼はながめ、夜は寝覚めがちなれば、春ならぬ木の芽も、いとなく嘆かしきに、碁打ちつる君、「今宵は、こなたに」と、今めかしくうち語らひて、寝にけり。
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[第四段 空蝉逃れ、源氏、軒端荻と契る]
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