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『若菜下(明融臨模本)』
ただいささかまどろむともなき夢に、この手馴らしし猫の、いとらうたげにうち鳴きて来たるを、この宮に奉らむとて、わが率て来たるとおぼしきを、何しに奉りつらむと思ふほどに、おどろきて、いかに見えつるならむ、と思ふ。
宮は、いとあさましく、うつつともおぼえたまはぬに、胸ふたがりて、思しおぼほるるを、
「なほ、かく逃れぬ御宿世の、浅からざりけると思ほしなせ。みづからの心ながらも、うつし心にはあらずなむ、おぼえはべる」
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第七章 柏木の物語 女三の宮密通の物語
[第六段 柏木、猫の夢を見る]
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