検索結果詳細
『柏木(尊経閣文庫本)』
「今さらに、この御ことよ、かけても聞こえじ。この世はかうはかなくて過ぎぬるを、長き世のほだしにもこそと思ふなむ、いとほしき。心苦しき御ことを、平らかにとだにいかで聞き置いたてまつらむ。見し夢を心一つに思ひ合はせて、また語る人もなきが、いみじういぶせくもあるかな」
など、取り集め思ひしみたまへるさまの深きを、かつはいとうたて恐ろしう思へど、あはれはた、え忍ばず、この人もいみじう泣く。
紙燭召して、御返り見たまへば、御手もなほいとはかなげに、をかしきほどに書いたまひて、
44/355
45/355
46/355
第一章 柏木の物語 女三の宮、薫を出産
[第四段 女三の宮の返歌を見る]
[Index]