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 『明石(大島本)

 年ごろ、夢にうちにも見たてまつらで、恋しうおぼつかなき御さまを、ほのかなれど、さだかに見たてまつりつるのみ、面影におぼえたまひて、「我がかく悲しびを極め、命尽きなむとしつるを、助けに翔りたまへる」と、あはれに思すに、「よくぞかかる騷ぎもありける」と、名残頼もしう、うれしうおぼえたまふこと、限りなし。
 胸つとふたがりて、なかなかなる御心惑ひに、うつつの悲しきこともうち忘れ、「にも御応へを今すこし聞こえずなりぬること」といぶせさに、「またや見えたまふ」と、ことさらに寝入りたまへど、さらに御目も合はで、暁方になりにけり。

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  第一章 光る源氏の物語 須磨の嵐と神の導きの物語  [第三段 嵐収まる]

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