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『浮舟(明融臨模本)』
と、言ひ続くるを、君、「なほ、我を、宮に心寄せたてまつりたると思ひて、この人びとの言ふ。いと恥づかしく、心地にはいづれとも思はず。ただ夢のやうにあきれて、いみじく焦られたまふをば、などかくしも、とばかり思へど、頼みきこえて年ごろになりぬる人を、今はともて離れむと思はぬによりこそ、かくいみじとものも思ひ乱るれ。げに、よからぬことも出で来たらむ時」と、つくどくと思ひゐたり。
「まろは、いかで死なばや。世づかず心憂かりける身かな。かく、憂きことあるためしは、下衆などの中にだに多くやはあなる」
とて、うつぶし臥したまへば、
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第六章 浮舟と薫の物語 浮舟、右近の姉の悲話から死を願う
[第七段 浮舟、右近の姉の悲話から死を願う]
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