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 『総角(大島本)

 など聞こゆるついでに、故宮の御ことなど申し出でて、鼻しばしばうちかみて、
 「いかなる所におはしますらむ。さりとも、涼しき方にぞ、と思ひやりたてまつるを、先つころのになむ見えおはしましし。
 俗の御かたちにて、『世の中を深う厭ひ離れしかば、心とまることなかりしを、いささかうち思ひしことに乱れてなむ、ただしばし願ひの所を隔たれるを思ふなむ、いと悔しき。すすむるわざせよ』と、いとさだかに仰せられしを、たちまちに仕うまつるべきことのおぼえはべらねば、堪へたるにしたがひて、行ひしはべる法師ばら五、六人して、なにがしの念仏なむ仕うまつらせはべる。

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  第六章 大君の物語 大君の病気と薫の看護  [第七段 阿闍梨、八の宮の夢を語る]

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