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 『明石(大島本)

 「世の人の聞き伝へむ後のそしりもやすからざるべきを憚りて、まことの神の助けにもあらむを、背くものならば、またこれよりまさりて、人笑はれなる目をや見む。うつつざまの人の心だになほ苦し。はかなきことをもつつみて、我より齢まさり、もしは位高く、時世の寄せ今一際まさる人には、なびき従ひて、その心むけをたどるべきものなりけり。退きて咎なしとこそ、昔、さかしき人も言ひ置きけれ。げに、かく命を極め、世にまたなき目の限りを見尽くしつ。さらに後のあとの名をはぶくとても、たけきこともあらじ。夢の中にも父帝の御教へありつれば、また何ごとか疑はむ」

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  第一章 光る源氏の物語 須磨の嵐と神の導きの物語  [第四段 明石入道の迎えの舟]

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