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『若菜上(明融臨模本)』
年ごろ、母君はかう添ひさぶらひたまへど、昔のことなど、まほにしも聞こえ知らせたまはざりけるを、この尼君、喜びにえ堪へで、参りては、いと涙がちに、古めかしきことどもを、わななき出でつつ語りきこゆ。
初めつ方は、あやしくむつかしき人かなと、うちまもりたまひしかど、かかる人ありとばかりは、ほの聞きおきたまへれば、なつかしくもてなしたまへり。
生まれたまひしほどのこと、大殿の君のかの浦におはしましたりしありさま、
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第十章 明石の物語 男御子誕生
[第二段 大尼君、孫の女御に昔を語る]
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