検索結果詳細


 『澪標(大島本)

 大后、御悩み重くおはしますうちにも、「つひにこの人をえ消たずなりなむこと」と、心病み思しけれど、帝は院の御遺言を思ひきこえたまふ。ものの報いありぬべく思しけるを、直し立てたまひて、御心地涼しくなむ思しける。時々おこり悩ませたまひし御目も、さはやぎたまひぬれど、「おほかた世にえ長くあるまじう、心細きこと」とのみ、久しからぬことを思しつつ、常に召しありて、源氏の君は参りたまふ。世の中のことなども、隔てなくのたまはせつつ、御本意のやうなれば、おほかたの世の人も、あいなく、うれしきことに喜びきこえける。

 5/281 6/281 7/281

  第一章 光る源氏の物語 光る源氏の政界領導と御世替わり  [第一段 故桐壺院の追善法華御八講]

  [Index]