検索結果詳細


 『若菜上(明融臨模本)

 弥生の十余日のほどに、平らかに生まれたまひぬ。かねてはおどろおどろしく思し騷ぎしかど、いたく悩みたまふことなくて、男御子にさへおはすれば、限りなく思すさまにて、大殿も御心落ちゐたまひぬ。
 こなたは隠れの方にて、ただ気近きほどなるに、いかめしき御産養などのうちしきり、響きよそほしきありさま、げに「かひある浦」と、尼君のためには見えたれど、儀式なきやうなれば、渡りたまひなむとす。

 599/887 600/887 601/887

  第十章 明石の物語 男御子誕生  [第五段 三月十日過ぎに男御子誕生]

  [Index]