検索結果詳細
『総角(大島本)』
引きとどむべき方なく、足摺りもしつべく、人のかたくなしと見むこともおぼえず。限りと見たてまつりたまひて、中の宮の、後れじと思ひ惑ひたまふさまもことわりなり。あるにもあらず見えたまふを、例の、さかしき女ばら、「今は、いとゆゆしきこと」と、引き避けたてまつる。
[第二段 大君の火葬と薫の忌籠もり]
中納言の君は、さりとも、いとかかることあらじ、夢か、と思して、大殿油を近うかかげて見たてまつりたまふに、隠したまふ顔も、ただ寝たまへるやうにて、変はりたまへるところもなく、うつくしげにてうち臥したまへるを、「かくながら、虫の骸のやうにても見るわざならましかば」と、思ひ惑はる。
600/678
601/678
602/678
第七章 大君の物語 大君の死と薫の悲嘆
[第二段 大君の火葬と薫の忌籠もり]
[Index]