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 『総角(大島本)

 と仏を念じたまへど、いとど思ひのどめむ方なくのみあれば、言ふかひなくて、「ひたぶるに煙にだになし果ててむ」と思ほして、とかく例の作法どもするぞ、あさましかりける。
 空を歩むやうにただよひつつ、限りのありさまさへはかなげにて、煙も多くむすぼほれたまはずなりぬるもあへなしと、あきれて帰りたまひぬ。
 御忌に籠もれる人数多くて、心細さはすこし紛れぬべけれど、中の宮は、人の見思はむことも恥づかしき身の心憂さを思ひ沈みたまひて、また亡き人に見えたまふ。

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  第七章 大君の物語 大君の死と薫の悲嘆  [第二段 大君の火葬と薫の忌籠もり]

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