検索結果詳細
『若菜上(明融臨模本)』
など、この大徳も、童にて京より下りし人の、老法師になりてとまれる、いとあはれに心細しと思へり。仏の御弟子のさかしき聖だに、鷲の峰をばたどたどしからず頼みきこえながら、なほ薪尽きける夜の惑ひは深かりけるを、まして尼君の悲しと思ひたまへること限りなし。
[第五段 明石御方、手紙を見る]
御方は、南の御殿におはするを、「かかる御消息なむある」とありければ、忍びて渡りたまへり。重々しく身をもてなして、おぼろけならでは、通ひあひたまふこともかたきを、「あはれなることなむ」と聞きて、おぼつかなければ、うち忍びてものしたまへるに、いといみじく悲しげなるけしきにてゐたまへり。
648/887
649/887
650/887
第十一章 明石の物語 入道の手紙
[第五段 明石御方、手紙を見る]
[Index]