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 『蜻蛉(大島本)

 「まだ、鶏の鳴くになむ、出だし立てさせたまへる」
 と使の言ふに、いかに聞こえむと、乳母よりはじめて、あわて惑ふこと限りなし。思ひやる方なくて、ただ騷ぎ合へるを、かの心知れるどちなむ、いみじくものを思ひたまへりしさまを思ひ出づるに、「身を投げたまへるか」とは思ひ寄りける。

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  第一章 浮舟の物語 浮舟失踪後の人びとの動転  [第一段 宇治の浮舟失踪]

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