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 『澪標(大島本)

 [第二段 朱雀帝と源氏の朧月夜尚侍をめぐる確執]
 下りゐなむの御心づかひ近くなりぬるにも、尚侍、心細げに世を思ひ嘆きたまへる、いとあはれに思されけり。
 「大臣亡せたまひ、大宮も頼もしげなくのみ篤いたまへるに、我が世残り少なき心地するになむ、いといとほしう、名残なきさまにてとまりたまはむとすらむ。昔より、人には思ひ落としたまへれど、みづからの心ざしのまたなきならひに、ただ御ことのみなむ、あはれにおぼえける。立ちまさる人、また御本意ありて見たまふとも、おろかならぬ心ざしはしも、なずらはざらむと思ふさへこそ、心苦しけれ」

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  第一章 光る源氏の物語 光る源氏の政界領導と御世替わり  [第二段 朱雀帝と源氏の朧月夜尚侍をめぐる確執]

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