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 『竹河(大島本)

 人の心、時にのみよるわざなりければ、さばかり勢ひいかめしくおはせし大臣の御名残、うちうちの御宝物、領じたまふ所々のなど、その方の衰へはなけれど、おほかたのありさま引き変へたるやうに、殿のうちしめやかになりゆく。
 尚侍の君の御近きゆかり、そこらこそは世に広ごりたまへど、なかなかやむごとなき御仲らひの、もとよりも親しからざりしに、故殿、情けすこしおくれ、むらむらしさ過ぎたまへりける御本性にて、心おかれたまふこともありけるゆかりにや、誰れにもえなつかしく聞こえ通ひたまはず。

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  第一章 鬚黒一族の物語 玉鬘と姫君たち  [第一段 鬚黒没後の玉鬘と子女たち]

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