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 『蜻蛉(大島本)

 泣く泣くこの文を開けたれば、
 「いとおぼつかなさに、まどろまれはべらぬけにや、今宵はにだにうちとけても見えず。物に襲はれつつ、心地も例ならずうたてはべるを。なほいと恐ろしく、ものへ渡らせたまはむことは近くなれど、そのほど、ここに迎へたてまつりてむ。今日は雨降りはべりぬべければ」

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  第一章 浮舟の物語 浮舟失踪後の人びとの動転  [第一段 宇治の浮舟失踪]

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