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 『御法(大島本)

 やがて、その日、とかく収めたてまつる。限りありけることなれば、骸を見つつもえ過ぐしたまふまじかりけるぞ、心憂き世の中なりける。はるばると広き野の、所もなく立ち込みて、限りなくいかめしき作法なれど、いとはかなき煙にて、はかなく昇りたまひぬるも、例のことなれど、あへなくいみじ。
 空を歩む心地して、人にかかりてぞおはしましけるを、見たてまつる人も、「さばかりいつかしき御身を」と、ものの心知らぬ下衆さへ、泣かぬなかりけり。御送りの女房は、まして路に惑ふ心地して、車よりもまろび落ちぬべきをぞ、もてあつかひける。

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  第二章 紫の上の物語 紫の上の死と葬儀  [第五段 紫の上の葬儀]

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