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 『夢浮橋(大島本)

 と責められて、すこし外ざまに向きて見たまへば、この子は、今はと世を思ひなりし夕暮に、いと恋しと思ひし人なりけり。同じ所にて見しほどは、いと性なく、あやにくにおごりて憎かりしかど、母のいとかなしくして、宇治にも時々率ておはせしかば、すこしおよすけしままに、かたみに思へり。
 童心を思ひ出づるにも、のやうなり。まづ、母のありさま、いと問はまほしく、「異人びとの上は、おのづからやうやうと聞けど、親のおはすらむやうは、ほのかにもえ聞かずかし」と、なかなかこれを見るに、いと悲しくて、ほろほろと泣かれぬ。

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  第二章 浮舟の物語 浮舟、小君との面会を拒み、返事も書かない  [第三段 浮舟、小君との面会を拒む]

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