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 『紫式部日記(黒川本)

 その日の髪上げ麗しき姿、唐絵ををかしげに描きたるやうなり。左衛門の内侍、御佩刀執る。青色の無紋の唐衣、裾濃の裳、領巾、裙帯は浮線綾を櫨[糸炎](はじだん)に染めたり。上着は菊の五重、掻練は紅、姿つきもてなし、いささかはづれて見ゆるかたはらめ、はなやかにきよげなり。
 弁の内侍は璽の御筥。紅に葡萄染めの織物の袿、裳、唐衣は、先の同じこと。いとささやかにをかしげなる人の、つつましげにすこしつつみたるぞ、心苦しう見えける。扇よりはじめて、好みましたりと見ゆ。領巾は楝[糸炎](あふちだん)。のやうにもごよひのだつほど、よそほひ、むかし天降りけむ少女子の姿もかくやありけむとまでおぼゆ。

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  第一部 敦成親王誕生記  第二章 寛弘五年(一〇〇八)冬の記  【四 十月十六日 土御門殿邸行幸の日】

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