鏡花作品の語彙検索(KWIC)

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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

          「へいへい、山雀の宿にござります。」               :37/143
               「あれに沢山ございます、あの、茂りました処に。」    :95/143
          「烏瓜《からすうり》でございます。下闇で暗がりでありますから、日 :97/143
。――あすこは、いくらでも、ごんごんごまがございますでな。貴方は何とかおっしゃいまし :97/143


『縁結び』 青空文庫

                「お客様でございますよう。」             :12/405
    「そんなに吃驚なさいませんでもようございます。」               :15/405
ません。誰《だれ》も知らないもののない方でございます。ほほほ、」           :19/405
       「そんな顔をなすったってようございます。ちっとも恐《こわ》くはありませ :22/405
ちっと待たして置きます方がかえっていいんでございますよ。昼間ッからあなた、何ですわ。 :27/405
い、何て香水《こうすい》を召《め》したんでございます。フン、」            :31/405
   「花といえば、あなたおあい遊ばすのでございましょうね、お通し申しましてもいいん :36/405
ばすかと存じまして、私は極《きまり》が悪うございましたけれども、そっと気をつけました :98/405
、とおっしゃって、それ切りになりましたのでございます。」               :98/405
いたしますの、なんのって、そういうわけではございません。あの……伺《うかが》いました :102/405
飛《とん》だお邪魔《じゃま》をいたしましてございますの。」              :107/405
          「生意気《なまいき》でございますわ。」              :115/405
   「その百人一首も焼けてなくなったんでございますか。私《わ》、私《わたし》は、お :187/405
ます、せめて、その、その百人一首でも見とうござんすのにね。……」           :197/405
      「墓《おはか》の所をご存じではござんすまいか。」             :199/405
            「まあ、ほんとうでございますか。」              :217/405
                「どこにでございます。」               :239/405
こうやって、こうやって居れば恐くはないのでございます。」               :251/405
   「よく、参らっしゃる、ちとまた休んでござれ。」                 :264/405
たい事いの。位牌になって嫁入《よめい》りにござらっしゃる、南無妙。戸は閉めてきたがの :268/405
《あいにく》の雨、これを進ぜましょ。持ってござらっしゃい。」             :270/405
 「はい、あなた飛んだご迷惑《めいわく》でございます。」               :305/405
         「まあ、直《じき》そこでございますね。」              :318/405


『古狢』 青空文庫

            「あら聞こえると悪ござんすわ。」               :53/310
           「飛んだ、おそまつでございます。」               :165/310
目に掛けませんのに、どうして交っていたのでございましょうね。」――          :167/310


『外科室』 青空文庫

              「お聞き済みでございましょうか」             :28/165
           「それではよろしゅうございますね」               :31/165
「はい、手術の済みますまで、ちょっとの間でございますが、御寝《げし》なりませんと、い :33/165
            「それでは御得心でございますか」               :44/165
おきらいあそばすの、ちっともいやなもんじゃございませんよ。うとうとあそばすと、すぐ済 :46/165
、お動きあそばしちゃあ、危険《けんのん》でございます」                :69/165


『義血侠血』 青空文庫

むちゃに廉くって、腕車《くるま》よりお疾うござい。さあお乗んなさい。すぐに出ますよ」 :8/706
これは、これはどうもはばかり様。さぞお痛うございましたろう。御免なすってくださいまし :50/706
ってもらおうじゃないか。なんと皆さんどうでございます」                :54/706
   「なんと皆さん、業肚《ごうはら》じゃございませんか。おとなげのないわけだけれど :73/706
はず》みまして、もう一骨折ってもらおうじゃございませんか。どうぞ御賛成を願います」  :79/706
「とんだお附き合いで、どうもおきのどく様でございます」                :85/706
          「思し召しはありがとうございますが、規定《きめ》の賃銭のほかに骨 :108/706
の賃銭のほかに骨折り賃を戴く理由《わけ》がございません」               :108/706
              「へえ、なんでございます」                :131/706
小僧に頼んで、一匹の馬で遣ってもらおうじゃございませんか。ばかばかしい、銭を出して、 :137/706
控えさせましたるは、当座の太夫元滝の白糸にござりまする。お目見え相済みますれば、さっ :163/706
毛布を着せてくだすったのは! あなた? でございますか」               :209/706
            「はい、ちと遠方でございますと言いなよ。これ、長松、ここがの :489/706
 へい、金沢へ、なるほど、御同様に共進会でございますか」               :592/706
              「ああ、なんでございますか。この夏公園で人殺しをした強盗 :600/706
、あ、あ、ひとしきりそんな風説《うわさ》がございましたっけ。有福《かねもち》の夫婦を :605/706
を斬り殺したとかいう……その裁判があるのでございますか」               :605/706
  「南京出刃打ち? いかさま、見たことがございました。あいつらが? ふうむ。ずいぶ :613/706
    「へえ、それじゃそいつじゃないんでございますかい」              :627/706
。賊は働いたが、けっして人殺しをした覚えはございません。奪《と》りましたのは水芸の滝 :629/706
            「へえ、そのなんでございますか、旦那、その弁護士というやつは :650/706
に誣《なす》ろうという姦計《たくみ》なんでございますか」               :650/706
         「おかげさまでおもしろうございました」               :658/706
       「こりゃ芝居よりおもしろいでございましょう」              :662/706
                「あぶのうございますよ。はい、これからは腕車《くるま :664/706
いますよ。はい、これからは腕車《くるま》でございます」                :664/706
                  「相違ござりません」               :702/706


『五大力』 従吾所好

      「こりや、お寒いに、御苦労様でございます。」               :15/1139
        「決してお貸し申さない事はございません、はゝゝ、」          :31/1139
        「古〈ひさし〉い引手茶屋でございますよ、新内の上手い婆〈かみ〉さんで :57/1139
者でも廓の金には詰るがならひ、と浄瑠璃にもございます、……もし、其処が苦界さね。」  :62/1139
      「おいらんは、へ、へ、御同苗でございますかね。」             :68/1139
               「旦那、何でございます。」               :100/1139
「余程〈よつぽど〉お大切〈だいじ〉なものでございますか。去年にしろ、まあ、何しろ…… :107/1139
既に託けものまで持出した後で、お熱いのでもござんすまい、大きに御馳走様、――断つて帰 :123/1139
             「此からの娑婆でございます、……あの、通り、一時〈ひときり :142/1139
で、いづれ其処等〈そこいら〉の小屋掛芝居でございませうが、何とか云ふ俳優〈やくしや〉 :175/1139
           「もし、それは何処でございます、矢張りこの土地で?」と親仁も気 :198/1139
   「歯入れはいたしますが、番傘の古着はございませんので。」            :222/1139
          「御尤ですわ、ぢや可うござんす。」                :275/1139
明るく成ります……人に見られては工合が悪うござんすからね、随分、貴方。)       :397/1139
間押しごとは申されぬ、如何様、然やうな事もございましよ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。 :420/1139
               「川施餓鬼でございませうで、晩方などは滅入つたもので、 :469/1139
さんづがは〉の渡場を見たいな事があるものでございます。」               :469/1139
              (時雨は恁うでござりますよ。)              :507/1139
            (さあ/\、丁ど可ござんす、すぐお座敷へ。)         :618/1139
      (否、おいらんには内証のものがござんした。しかしね、顔がそんなに成つたの :636/1139
心持が変に成ります。早や、何事も迷ひの種でございます。……先づ/\、お落着きなさつて :671/1139
お太陽様〈てんとうさま〉と又、御相談が可うございますよ。」              :671/1139
     「真個、貴方様、何うかなされてでございます、お鎮りなさりまし。」      :674/1139
矢張りお太陽様に照らしてから御覧じるが可うございます…                :680/1139
       「もし、高い声では、勿体なうございますが、冬木の弁天様でございます。真 :702/1139
では、勿体なうございますが、冬木の弁天様でございます。真夜中には、其の、時たま、此の :702/1139
此の辺まで御歩行〈おひろひ〉なされます事がございますので。」             :702/1139
か、耳朶を赤くして、釣船矢右衛門……控へてござる。                  :787/1139
、此の人は、それで、お下りを頂戴と申すんでございます。」               :829/1139
てお逢ひなさらないのかね、気の毒で困るんでございますがね。」             :862/1139
       「御上覧以来のお催し、一段でござる。」                 :1076/1139
らず若旦那、これならば五百八十年、七廻りでござる。」                 :1117/1139
        「はつ/\はつ、一段と可うござる……」                :1123/1139


『半島一奇抄』 青空文庫

…何、あなた、それまでの贅沢《ぜいたく》でございますよ。」と番頭の膝《ひざ》を敲《た :9/129
                「大丈夫でございますよ。後方《あと》が長浜、あれが弁 :16/129
、まるで人跡絶えたといった交通の不便な処でございましてな、地図をちょっと御覧なすって :16/129
になりましょうか。――可笑《おかし》な話がございますよ。」              :21/129
》いて来た。)――とんとお話さ、話のようでございましてな。」             :25/129
ものの村へ入ったのを見たことがなかったのでございますよ。」              :33/129
りましてな、一頃《ひところ》はえらい騒ぎでございましたよ。浜方で拾った。それが――困 :85/129
ものを、確《しか》と取留めたことはないのでございますが、手前が申すまでもありません。 :91/129
か》むようだ。……唯今でも皆がそう言うのでございますがな、これが変です。足を狙うのが :92/129
探るより、船で見る方が手取《てっと》り早うございますよ。樹の根、巌《いわ》の角、この :92/129
時様)。――巳の時様、とそう云っているのでございます。朝に晩に、聞いて存じながら、手 :92/129


『雛がたり』 青空文庫

裏門のありますお邸は、……旦那、大財産家でございましてな。つい近い頃、東京から、それ :54/58


『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

よりは、今お話し申して此処で死ぬ方が勝手でございます。と思ひ詰めてはなか/\に、動く :12/219
はまた、「而《さう》して他の人に聞かしたうございませんから、恐入りますが先生は何卒《 :12/219
》より戸を叩きて、「もう開けましても差支へございませんか。と医師の尋ぬるに泰助は振返 :27/219
や》で帰国《かへる》としようよ。「其が宜うございませう。而《さう》して御約束の御褒美 :32/219
といふのは彼奴《あいつ》か。「へい、左様でござい。恐怖《おつかね》え眼をして我《おれ :38/219
で、第一あゝいふ大きな家に、棲んで居る者がございません。「空家かね、「否《いえ》、其 :46/219
で見た事の無い婆様《ばあさん》に逢ふものがございますが、何でも安達が原の一ツ家の婆々 :46/219
士が、大勢で此前《さき》の寺へ避暑に来てでございますが、其風説《うはさ》を聞いて、一 :46/219
になり、「否《いゝえ》、人から聞いたのではございません。私が慥《たしか》に見ました。 :46/219
り、「部屋の外が直ぐ森なので、風通しは宜うございますが、こんな時には、些《ちと》何《 :46/219
だ。「は――我ながら何ともいへぬ異変な声でございます。と泰助と顔を見合せ、亭主は膝下 :48/219
あわたゞ》しく来る旅店の内儀、「まあ何事でござんすの、と洋燈《ランプ》を点けて据ゑ置 :53/219
》の部屋は、窓の外がすぐ墓原なので、お客がございませんから、幽霊でさへ無けりや、其へ :55/219
に臥りました。何だか不便な婦人《をんな》でございます。「其は深切に好くしてお遣んなす :57/219
かと思はれます。何を言つても聞えぬやうすでございます。「何《なん》しろ談話《はなし》 :57/219
と責められるのか。こりや、もし好くある奴でございますぜ。「うむ其辺だらう。何でも曰附 :57/219
気《をとこぎ》を出しなさい。「はあて、ようござえさあ、ほい、と直ぐと其気になる。はゝ :57/219
つばり》に釣上げて置いちやあ死んで了ふぢやございませんか。「えゝ!そんなことは何うで :77/219
。得三は出迎へて、「これは高田様《さん》でございますか。まあ、此方へ。と二階なる密室 :79/219
、何は、令嬢は息災かね。「えゝ、お藤の事でございますか、「左様さ、私の情婦《いゝひと :79/219
ゝゝゝ。得三は苦笑ひして、「藤は変つた事はございません。御約束通り、今夜貴下に差進《 :79/219
知るものなれば、銀平は頷きて、「へい宜しうございます。下枝様《さん》が如彼《あゝ》い :79/219
御主筋の落人ではあるまいし、世話を焼く事はござりませぬ。「お前こそ世話を焼きなさんな :98/219
門も油断せず、顔打守りて、「貴方は御泊ではございませんか。と問へばちよつとは答せず、 :103/219
声を繕ひて、「お嬢様、何《どう》したものでございますね。御婚礼のお目出度に、泣いて在 :112/219
見上げ遊ばせ。如何《どんな》に優しいお顔でございませう。其は/\可愛がつて下さいます :112/219
う》、お録、其が可いぢや無いか。「其が好うございます。其後は活《いか》すとも殺すとも :119/219
》悪げに、「飛んだことになりました、申訳がございません。「なあに貴下の落度ぢや無い、 :121/219
しげに、「もう大抵に酷《ひど》うしたが好うござんせう。坐つて居る事も出来ぬやうに弱り :160/219
かりで、其より他に判断の附様《つけやう》がございません。早速探し出しますで、今夜の処 :161/219
いふ大金、今といつては致方《いたしかた》がございません。何卒《どうぞ》暫時《しばらく :165/219
、一寸爰《こゝ》へ来い。「へい、何、何事でございます。と人形の袖を潜つて密室の戸口に :167/219
迄と、我《おれ》が突殺したのだ。「其は好うございました。「すると奴さん苦しいものだか :168/219
《どす》の柄を握つたのよ。「体の可い自殺でございますね。「左様《さう》よ。其処で己《 :168/219
《はがみ》をなし、「えゝ汚らはしい、聞度うござんせぬ。と頭を掉れば嘲笑ひ、「聞きたう :174/219
を〓《みは》り、「得三様、余《あんま》りでございます。「下枝様《さん》、貴嬢《あなた :175/219
下枝様《さん》、貴嬢《あなた》も余り強情でございます。其が嫌否《いや》なら悉皆財産を :175/219
、お録はごほんと咳き入りて、「はい、有難うございます。「えゝ何うしたのだ。「はい、は :205/219
すから、鼠か知らん、と覗きますとね、何うでございませう。あの探偵泰助奴《たいすけめ》 :205/219
助奴《たいすけめ》がむく/\と起き上る処でございました。「え!」           :205/219


『海神別荘』 華・成田屋

            侍女一  御挨拶でございます。美しいかどうかは存じませんけれ :7/369
じませんけれど、異った支度には違いないのでございます。若様、かねてのお望みが叶いまし :7/369
、かねてのお望みが叶いまして、今夜お輿入のございます。若奥様が、島田のお髪、お振袖と :7/369
遊ばすように、皆して、かように申合せたのでございます。                :7/369
す。ああ、風情な。美しいと視めましたものでございますから、私ども皆が、今夜はこの服装 :11/369
る)これはこれは、御休息の処を恐入りましてござります。                :26/369
(たぐい)と、数々を、念のために申上げとうござりまして。               :28/369
、いや、御聡明なる若様。若様にはお覚違いでございます。彼等夥間(なかま)に結納と申す :30/369
)の手をもち、婚約の祝儀、目録を贈りますでござります。しかるにこの度は、先方の父親が :30/369
(せいごん)の通り、娘を波に沈めましたのでござります。されば、お送り遊ばされた数の宝 :30/369
結納と申そうより、俗に女の身代と云うものにござりますので。              :30/369
て仕方す)周囲三抱(まわりみかかえ)の分にござりまして。ええ、月の真珠、花の真珠、雪 :36/369
そのお娘御の身の代とかにお遣わしの分なのでございますか。               :37/369
僧都  しばらく。までじゃまでじゃ、までにござる。・・・桃色の枝珊瑚樹、丈八尺、周囲 :47/369
桃色の枝珊瑚樹、丈八尺、周囲三抱の分までにござった。(公子に)鶴の卵ほどの紅宝玉、孔 :47/369
(仰いで礼拝す)月宮殿に貢(みつぎ)ものにござりました。               :47/369
りましたのを、御姉君、乙姫様へ御進物の分でござりました。               :49/369
お手許(てもと)をお離しなさいませぬそうにございます。                :50/369
      侍女二  海では何ほどの事でもございませんが、受取ります陸の人には、鯛も :53/369
の人には、鯛も比目魚も千と万、少ない数ではございますまいに、僅(わずか)な日の間に、 :53/369
の間に、ようお手廻し、お遣わしになりましてございます。                :53/369
いうは、貝に溜った雫ほどにいささかなものでござっての、お腰元衆など思うてもみられまい :54/369
)に、屋根の上の丘の腹まで運込みました儀でござったよ。                :54/369
と爪弾きしましたばかり。人命を断つほどではございませなんだ。もっとも迷惑をせば、いた :57/369
、お心に掛けさせますには毛頭当りませぬ儀でございます。                :57/369
当御殿、お求めに従い、美女を沈めました儀にござります。もっとも、真鯛、鰹、真那鰹、そ :61/369
御恩のほどを有難(ありがた)がりましたのでござります。                :61/369
     僧都  まだまだ、あれは深い方にござります。一人娘の身に代えて、海の宝を望 :66/369
を望みましたは、慾念の逞(たくまし)い故でございまして。・・・たかだかは人間同士、夥 :66/369
      侍女一  早くお着き遊せば可うございます。私どももお待遠に存じ上げます。 :70/369
房  貴女(あなた)、お草臥(くたびれ)でございましょう。一息、お休息(やすみ)なさ :76/369
何でお身体(からだ)が倒などと、そんな事がございましょう。              :78/369
存じまして、これが、(手に翳す)その燈籠でございます。                :80/369
の尽きる、風の吹く、陸(おか)ばかりの事でございます。一度この国へ受取りますと、ここ :82/369
せん。ただ花の香の、ほんのりと通うばかりでございます。紙の細工も珠に替って、葉の青い :82/369
玉。燃ゆる灯も、またたきながら消えない星でございます。御覧遊ばせ、貴女。お召ものが濡 :82/369
。何で、お身体(からだ)が倒(さかさま)でございましょう。              :82/369
  ああ、(望む)あの光は。いえ。月影ではございません。               :84/369
のは、これから貴女がお出遊ばす、海の御殿でございます。あれへ、お迎え申すのです。   :86/369
参って、私の身体(からだ)は、どうなるのでございましょうねえ。            :87/369
   女房  (再び笑う)お国ではいかがでございましょうか。私たちが故郷(ふるさと) :90/369
は、もうこの上ない嬉しい、めでたい事なのでございますもの。              :90/369
かえり)を繰返して、三千度いたしますほどでございましょう。              :92/369
    女房  人間の魂が、貴女を慕うのでございます。海月が寄るのでございます。   :96/369
、貴女を慕うのでございます。海月が寄るのでございます。                :96/369
、ふわふわさまようて歩行(ある)きますのでございます。                :98/369
彩ある活字は、ペエジの上には写り兼ねるのでございます。                :125/369
  僧都  もろともに、お勧め申上げますでござります。                :128/369
             僧都  さようでございます。                :138/369
氷を結びけり。涙などと、歎き悲しんだようにござります。                :140/369
みち)は弁えず、僧都にも分らぬことのみではござりますが、ただ、黒潮の抜身で囲みました :151/369
の抜身で囲みました段は、別に忌わしい事ではござりませんように、老人にも、その合点参り :151/369
ませんように、老人にも、その合点参りましてござります。                :151/369
、いかさま、いや、若様。あれは水晶の数珠にございます。海に沈みまする覚悟につき、冥土 :153/369
檀那寺(だんなでら)の和尚が授けましたのでござります。                :153/369
)の売りますものも、擬(にせ)が多いそうにございます。                :161/369
          侍女五  五十三次のでございましょう、私が少し存じております。  :170/369
しておりましたので、賽は持っておりますのでございます。                :180/369
  侍女三  入道も、一類も、色を漁るのでございます。生命はしばらく助りましょう。  :201/369
 御安心遊ばしまし、疵を受けましたほどでもございません。ただ、酷く驚きまして。    :227/369
は来ましたけれど、余りと言えば、可恐しゅうございますもの。              :237/369
き遊ばせ。お驚きなさいますのもごもっともでございます。                :238/369
やっぱり、そんな可恐(おそろし)い処なんでございますか。               :240/369
貴方(あなた)の御威徳はよく分りましたのでございます。                :242/369
こうした御殿のある事は、夢にも知らないのでございますもの、情のう存じます。      :250/369
      女房  貴女、おっしゃる通りでございます。途中でも私が、お喜ばしい、おめ :256/369
 美女  けれども、父娘(おやこ)の情愛でございます。                :267/369
、前の喜びにくらべまして、幾十層倍だったでございましょう。              :269/369
、枝珊瑚も金銀に代り、家蔵に代っていたのでございます。                :271/369
更、家蔵に替えましたッて、とそう思ったのでございます。                :273/369
 困った御婦人です。しかしお可哀相なものでございます。(立つ。舞台暗くなる。――やが :325/369
   博士  存じております。竜胆と撫子でございます。新夫人(にいおくさま)のお心が :356/369
えました。若様と奥様の血の俤(おもかげ)でございます。                :356/369
れますまい。詩人、画家が、しかし認めますでございましょう。              :358/369
でに、楽しい音楽の聞こえます。ここは極楽でございますか。               :364/369


『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

。――国境《くにざかい》の、水溜りのものでございまっしゅ。」             :66/257
              「河童衆、ようござった。さて、あれで見れば、石段を上《の :69/257
ちい、貝も小蟹《こがに》も欲しゅう思わんでございましゅから、白い浪の打ちかえす磯端《 :90/257
、円座して……翁様《おきなさま》、御存じでございましょ。あれは――近郷での、かくれ里 :90/257
しゅ。が、その年増を――おばさん、と呼ぶでございましゅ、二十四五の、ふっくりした別嬪 :92/257
さ、その麗《うららか》さは、月宮殿の池ほどござり、睫《まつげ》が柳の小波《さざなみ》 :110/257
撫《なで》つけております、頸《えり》の白うございますこと。次の室《ま》の姿見へ、年増 :155/257
                「拍子ではござりませぬ、ぶつぶつと唄のようで。」   :171/257
おーもーしーろーお神楽《かぐら》らしいんでございますの。お、も、しーろし、かしらも、 :175/257
          「石段に及ばぬ、飛んでござれ。」                 :235/257


『化鳥』 青空文庫

、だつて、先生、先生より花の方がうつくしうございますツてさう謂つたの。僕、ほんとうに :77/
、私《わたくし》は獣《けだもの》になりたうございます。あいら、皆畜生で、この猿めが夥 :124/
いら、皆畜生で、この猿めが夥間《なかま》でござりましやう。それで、手前達《てまへたち :124/
》の私《わたくし》には目を懸《か》けぬのでござります)トさういつてあたりを睨《にら》 :124/
  (はい、いえ、大丈夫《だいじやうぶ》でござります。人間をかうやつといたら、餓ゑも :126/
《こゞ》ゑもしやうけれど、獣《けだもの》でござりますから今に長い目で御覧《ごらう》じ :126/
こいつ》はもう決してひもじい目に逢ふことはござりませぬから)             :126/


『木の子説法』 青空文庫

すね。時間もよし、この横へ入った処らしゅうございますから。」             :11/231
                「望む所でございます。」               :18/231
      「――これはこのあたりのものでござる――」                :72/231
もとのごとく生ゆる、かような不思議なことはござらぬ――」               :75/231
                    (ござんせん。)               :145/231


『高野聖』 泉鏡花を読む

         (この水はこりや井戸のでござりますか。)と、極りも悪し、もぢ/\聞 :46/622
             (いんね、川のでございます。)といふ、はて面妖なと思つた。 :47/622
       (山したの方には大分流行病がございますが、此水は何から、辻の方から流れ :48/622
         此処に居て先刻から休んでござつたのが、右の売薬ぢや。此の又万金丹の :50/622
               (これは何でござりまする、)と山国の人などは殊に出家と :84/622
       (いえ、お伺ひ申しますまでもございませんが、道は矢張これを素直に参るの :85/622
ざいませんが、道は矢張これを素直に参るのでございませうな。)             :85/622
       (未だずつと何処までも此水でございませうか。)             :87/622
    (何のお前様、見たばかりぢや、訳はござりませぬ、水になつたのは向うの那の藪ま :88/622
州へ出まする、先は一つで七里ばかり総体近うござりますが、いや今時往来の出来るのぢやあ :90/622
ござりますが、いや今時往来の出来るのぢやあござりませぬ。去年も御坊様、親子連の順礼が :90/622
宿をしてからが此処を行かつしやるよりは増でござるに。はい、気を付けて行かつしやれ。) :90/622
つて坂道を取つて懸つた、侠気があつたのではござらぬ、血気に逸つたでは固よりない、今申 :94/622
                (何か用でござんすかい。)              :188/622
(私は、山越で信州へ参ります者ですが旅篭のございます処までは未だ何の位でございませう :192/622
ですが旅篭のございます処までは未だ何の位でございませう。)              :192/622
            (貴方まだ八里余でございますよ。)              :196/622
                  (其はございません。)といひながら目たゝきもしな :198/622
              (いえもう何でございます、実は此先一町行け、然うすれば上 :199/622
りましても、全くの処一足も歩行けますのではございません、何処の物置でも馬小屋の隅でも :199/622
せん、何処の物置でも馬小屋の隅でも宜いのでございますから後生でございます。)と先刻馬 :199/622
馬小屋の隅でも宜いのでございますから後生でございます。)と先刻馬の嘶いたのは此家より :199/622
め申しませう、丁度炊いてあげますほどお米もございますから、其に夏のことで、山家は冷え :201/622
で、山家は冷えましても夜のものに御不自由もござんすまい。さあ、左も右もあなた、お上り :201/622
             (御坊様、それでござんすが一寸御断り申して置かねばなりませ :203/622
            (否、別のことぢやござんせぬが、私は癖として都の話を聞くのが :206/622
んせぬが、私は癖として都の話を聞くのが病でございます、口に蓋をしておいでなさいまして :206/622
なた忘れても其時聞かして下さいますな、可うござんすかい、私は無理にお尋ね申します、あ :206/622
               (唯、宜しうございます、何事も仰有りつけは背きますまい :209/622
              (さあ/\汚うございますが早く此方へ、お寛ぎなさいまし、 :211/622
逢ひましたので体を打棄りたいほど気味が悪うございますので、一ツ背中を拭かうと存じます :212/622
、汗におなりなさいました、嘸ぞまあ、お暑うござんしたでせう、お待ちなさいまし、旅篭へ :213/622
、那の、此の裏の崖を下りますと、綺麗な流がございますから一層其へ行らつしやツてお流し :213/622
すから一層其へ行らつしやツてお流しが宜しうございませう。)              :213/622
         (えゝ、其は何より結構でございますな。)              :215/622
申すとなりましたら、あの、他生の縁とやらでござんす、あなた御遠慮を遊ばしますなよ。) :220/622
              (をぢ様何うでござんした。)               :236/622
       (はゝゝゝ、さあ、早くいつてござらつせえ。)              :245/622
 (をぢ様、今日はお前、珍しいお客がお二方ござんした、恁う云ふ時はあとから又見えよう :246/622
           (はい、ならば手柄でござんす、さあ、貴僧参りませうか。)    :251/622
        (貴僧、こゝから下りるのでございます、辷りはいたしませぬが、道が酷う :254/622
ございます、辷りはいたしませぬが、道が酷うございますからお静に、)といふ。」     :254/622
ら気をつけて。こりや貴僧には足駄では無理でございましたか不知、宜しくば草履とお取交へ :261/622
、然やう申しましたやうに存じますが、夫人でございますか。)              :265/622
すよ。まあ、お早くいらつしやい、草履も可うござんすけれど、刺がさゝりますと不可ません :266/622
せん、それにじく/\湿れて居てお気味が悪うございませうから。)と向う向でいひながら衣 :266/622
ん。恁云ふ処ですからあんなものまで人懐しうございます、厭ぢやないかね、お前達と友達を :270/622
りますから、中へはいりませんでも此上で可うございます。)と甲を浸して爪先を屈めながら :282/622
              (結構な流れでございますな。)              :284/622
         (はい、此の水は源が瀧でございます、此山を旅するお方は皆な大風のや :285/622
         (彼は林へ風の当るのではございませんので?)            :287/622
里ばかり傍道へ入りました処に大瀧があるのでございます、其は/\日本一ださうですが、道 :288/622
す、其は/\日本一ださうですが、道が嶮しうござんすので、十人に一人参つたものはござい :288/622
嶮しうござんすので、十人に一人参つたものはございません。其の瀧が荒れましたと申しまし :288/622
まして、丁度今から十三年前、可恐しい洪水がございました、恁麼高い処まで川の底になりま :288/622
の上の洞も、はじめは二十軒ばかりあつたのでござんす、此の流れも其時から出来ました、御 :288/622
御覧なさいましな、此通り皆な石が流れたのでございますよ。)              :288/622
   (今でも恁うやつて見ますと恐いやうでございます。)と屈んで二の腕の処を洗つて居 :290/622
して被在しつてはお召が濡れます、気味が悪うございますよ、すつぱり裸体になつてお洗ひな :291/622
                (否ぢやあござんせぬ、それ、それ、お法衣の袖が浸るで :293/622
さいましたお礼に、叔母さんが世話を焼くのでござんす、お人の悪い、)といつて片袖を前歯 :295/622
              (えゝ、それでございます、酷い目に逢ひました。)     :299/622
        (それでは森の中で、大変でございますこと。旅をする人が、飛騨の山では :305/622
人が、飛騨の山では蛭が降るといふのは彼処でござんす。貴僧は抜道を御存じないから正面に :305/622
いから正面に蛭の巣をお通りなさいましたのでございますよ。お生命も冥加な位、馬でも牛で :305/622
お生命も冥加な位、馬でも牛でも吸ひ殺すのでございますもの。然し疼くやうにお痒いのでご :305/622
でございますもの。然し疼くやうにお痒いのでござんせうね。)              :305/622
        (貴僧、お傍に居て汗臭うはござんせぬかい、飛んだ暑がりなんでございま :317/622
汗臭うはござんせぬかい、飛んだ暑がりなんでございますから、恁うやつて居りましても恁麼 :317/622
ざいますから、恁うやつて居りましても恁麼でございますよ。)といふ胸にある手を取つたの :317/622
て居りますから、最うお可愧しいほど暑いのでございます、今時は毎日二度も三度も来ては恁 :321/622
度も来ては恁うやつて汗を流します、此の水がございませんかつたら何ういたしませう、貴僧 :321/622
/\した馬の鼻息が体中へかゝつて気味が悪うござんす。丁度可うございますから私も体を拭 :328/622
体中へかゝつて気味が悪うござんす。丁度可うございますから私も体を拭きませう、)    :328/622
         (貴僧、嘸をかしかつたでござんせうね、)と自分でも思ひ出したやうに :356/622
            (為やうがないのでございますよ。)              :357/622
                 (お危うござんすから。)              :360/622
はなりません、丁度ちうとで余程谷が深いのでございますから、目が廻ふと悪うござんす。) :367/622
谷が深いのでございますから、目が廻ふと悪うござんす。)                :367/622
             (あゝ、意気地はございませんねえ。足駄では無理でございませ :371/622
、意気地はございませんねえ。足駄では無理でございませう、是とお穿き換へなさいまし、あ :371/622
              (其はお待遠でござんした。)               :379/622
                (御苦労でござんす。)                :389/622
  (何でも人間を乗つけられさうな馬ぢやあござらぬ。御坊様は命拾ひをなされたのぢやで :397/622
      (もしや此家へ参りませなんだでございませうか。)             :420/622
の味噌汁、いやなか/\人参と干瓢どころではござらぬ。                 :440/622
                  (何でございますね、あとでお食んなさい、お客様ぢ :444/622
と一所にお食べなされば可いのに。困つた人でございますよ。)とそらさぬ愛想、手早く同一 :449/622
せんが、おつしやる通りになすつたが可いではござりませんか。私にお気遣は却つて心苦しう :457/622
ござりませんか。私にお気遣は却つて心苦しうござります。)と慇懃にいうた。       :457/622
                  (何でございますか、私は胸に支へましたやうで、些 :466/622
か、私は胸に支へましたやうで、些少も欲しくございませんから、又後程に頂きませう、)  :466/622
    (難有う存じます、未だ些とも眠くはござりません、先刻体を洗ひましたので草臥も :473/622
彼処につかつて居りますと、水々しくなるのでございますよ。尤も那のこれから冬になりまし :474/622
                 鉄砲疵のございます猿だの、貴僧、足を折つた五位鷺、 :475/622
跡で崕の路が出来ます位、屹と其が利いたのでございませう。               :475/622
                  那様にございませんければ恁うやつてお話をなすつて :476/622
し、寂しくつてなりません、本当にお可愧しうございますが、恁麼山の中に引篭つてをります :476/622
のをいふことも忘れましたやうで、心細いのでございますよ。               :476/622
御遠慮なさいますなえ。別にお寝室と申してもございませんが其代り蚊は一ツも居ませんよ、 :477/622
ので、梯子を貸せいと喚いたと申して嬲るのでございます。                :477/622
鳴きません、犬だつて居りませんからお心安うござんせう。                :478/622
ん代り、気の可い人で些ともお心置はないのでござんす。                 :479/622
、大事にしてお辞儀をすることだけは知つてでございますが、未だ御挨拶をいたしませんね。 :480/622
さんになんなすつたよ。否、宛で愚かなのではございません、何でもちやんと心得て居ります :480/622
水でも復りませなんだ、両足が立ちませんのでございますから、何を覚えさしましても役には :486/622
を教えますと覚えますのに嘸骨が折れて切なうござんせう、体を苦しませるだけだと存じて何 :487/622
         (唯、何、変つたことでもござりませぬ、私も嬢様のことは別にお尋ね申 :501/622
ます、おゆつくりなさいましな。戸外へは近うござんすが、夏は広い方が結句宜うございませ :513/622
外へは近うござんすが、夏は広い方が結句宜うございませう、私どもは納戸へ臥せりますから :513/622
りますから、貴僧は此処へお広くお寛ぎが可うござんす、一寸待つて。)といひかけて衝と立 :513/622
                (何をしてござる、御修行の身が、この位の暑で、岸に休 :569/622
分には、薬師様が人助けに先生様の内へ生れてござつたといつて、信心渇仰の善男善女? 病 :586/622
の一つも、あなたお手が痛みますかい、甚麼でございます、といつて手先へ柔かな掌が障ると :587/622
様面白いことをしてお目に懸けませう、不躾でござりますが、私の此の手を握つて下さります :590/622
ばつて体中に集られては夫は凌げませぬ即死でございますがと、微笑んで控える手で無理に握 :590/622
山畠にかけがへのない、稲が腐つては、飢死でござりまする、総領の私は、一番の働手、かう :600/622
              軈て父親が迎にござつた、因果と断念めて、別に不足はいはな :608/622


『国貞えがく』 青空文庫

、勝手に道楽で忙しいんでしてな、つい暇でもございまするしね、怠《なま》け仕事に板前で :109/317
              「粗末なお茶でございます、直ぐに、あの、入かえますけれど :121/317
り、事も大層になります処から、何とも申訳がございやせん。               :131/317
      「唯《はい》、もう燗《つ》けてござりえす。」と女房が腰を浮かす、その裾端 :150/317
ばこで、皿小鉢を、がちがちと冷い音で洗ってござる。                  :169/317
 「それでは、母親《おっかさん》、御苦労でございます。」               :179/317
                 「待ってござい、織《おり》や。」          :189/317
       と祖母《としより》がせかせかござって、                 :254/317
いる処へ、三度笠を横っちょで、てしま茣蓙《ござ》、脚絆穿、草鞋でさっさっと遣って来た :262/317
              「唯《はい》、ござりえす、出しますかえ。」と女房は判然《 :286/317


『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

          「はいはい、この団子でござりますか。これは貴方、田舎出来で、沢山 :39/1510
れは貴方、田舎出来で、沢山《たんと》甘くはござりませぬが、そのかわり、皮も餡子《あん :39/1510
、皮も餡子《あんこ》も小米と小豆の生一本でござります。」               :39/1510
                  「何でござりますえ。」              :45/1510
ない。私《わし》もはい法然様拝みますものでござります。吝嗇坊《しわんぼう》の柿の種が :49/1510
、御出家に土の団子を差上げまして済むものでござりますかよ。」             :49/1510
て、烏もおらぬに何じゃやら、頻に空を仰いでござる。                  :52/1510
         「これは、もし気ちがいでござりますよ。はい、」           :56/1510
         「お前様ね、一ツは心柄でござりますよ。」              :63/1510
  「食気《くいけ》の狂人《きちがい》ではござりませんに、御無用になさりまし。    :75/1510
のを知っておりまして、今のようにいうたのでござりましょ。               :76/1510
     「どの道貴下《あなた》には御用はござりますまいなれど、大崩壊《おおくずれ》 :82/1510
              「あれ、あれでござります。」               :84/1510
す石が、何処からとなくころころと産れますでございます。                :86/1510
         随分お望みなさる方が多うござりますが、当節では、人がせせこましくな :88/1510
二人がかりで、沢庵石に荷って帰りますのさえござりますに因って、今が今と申して、早急に :88/1510
       随分と御遠方、わざわざ拾いにござらして、力を落す方がござりますので、こ :89/1510
方、わざわざ拾いにござらして、力を落す方がござりますので、こうやって近間に店を出して :89/1510
産かたがた、毎度婆々が御愛嬌に進ぜるものでござりますから、つい人様が御存じで、葉山あ :89/1510
、つい人様が御存じで、葉山あたりから遊びにござります、書生さんなぞは、        :89/1510
が》ろうとするのを見て、石じゃ、というのでござりますよ。」              :92/1510
              長い月日の事でござりますから、里の人たちは私らが事を、人 :100/1510
今ではそれさえ本望で、せめてもの心ゆかしでござりますよ。」              :100/1510
、御坊様の前で申しましては、お追従のようでござりますが、仏様は御方便、難有いことでご :105/1510
でござりますが、仏様は御方便、難有いことでござります。こうやって愛想気《あいそっけ》 :105/1510
、世間話で、ついうかうかと日を暮らしますでござります。」               :105/1510
御覧《ごろう》じまし、あの通り困ったものでござります。」               :122/1510
      丁ど、あれを出ました、下の浜でござります。唯今の狂人《きちがい》が、酒に :128/1510
と申しまして、私ら秋谷在の、いけずな野郎でござりましての。              :128/1510
から見ますれば、真《ほん》に正気の沙汰ではござりませなんだが、それでもどうやら人並に :129/1510
忙しがりまして、別に気が触《ふ》れた奴ではござりません。何時でも村の御祭礼《おまつり :129/1510
おまつり》のように、遊ぶが病気《やまい》でござりましたが、この春頃に、何と発心をしま :129/1510
みで、三浦三崎のさる酒問屋へ、奉公をしたでござります。                :129/1510
すみざけ》をの、お前様、沢山《たんと》でもござりませぬ。三樽ばかり船に積んで、船頭殿 :130/1510
が上乗りで、この葉山の小売店へ卸しに来たでござります。                :130/1510
る船じゃ、と渡場《わたしば》でも船つきでもござりませぬ。海岸の岩の上や、磯の松の樹の :131/1510
んぞりかえ》って、ぐうぐう高鼾になったげにござります。                :132/1510
                 路に灘はござりませぬが、樽の香が芬々して、鮹も浮き :133/1510
の好い。なるほど船頭を字に書けば、船の頭でござりましょ。そりゃもう船の頭だけに、極り :138/1510
ます、真中へ割込んで、先ず帆を下ろしたのでござります。」               :140/1510
の取遣り。板子の下が地獄なら、上も修羅道でござります。」               :145/1510
の穴でない処は、皆意銭《あないち》のあとでござります。珍しい事も、不思議な事もないけ :148/1510
りひらり》と乗りましたのは、魔がさしたのでござりましたよ。」             :148/1510
す船底へ、仁王立に踏ごたえて、喚いたそうにござります。                :153/1510
ほど言われればその通り、言訳の出来ぬことはござりませぬわ、のう。           :156/1510
ぶ》に取られたような顔つきで、漕出したげでござりますが、酒の匂に我慢が出来ず……   :158/1510
くか、と念を推したげで、のう、此処らは確でござりました。               :159/1510
打抜《ぶちぬ》いたで、些《ちっ》とも惜気はござりませぬ。海からでも湧出すように、大気 :162/1510
ずれ》の鼻を廻って、出島の中へ漕ぎ入れたでござります。                :164/1510
の悪さ。こうなっては、お前様、もう浮ぶ瀬はござりませぬ。               :166/1510
、本性違わず気落がして、右の、倒れたものでござりますよ。はい。」           :168/1510
は、打《ぶ》っても、叩いても、起ることではござりませぬがの。             :173/1510
、船頭まじりに、この徒《てあい》とて確ではござりませなんだ。ひょろひょろしながら、あ :174/1510
               嘉吉の始末でござります。それなり船の荷物にして、積んで :175/1510
いでは、主人方へ帰られる身体《からだ》ではござりませぬで、一先ず、秋谷の親許へ届ける :176/1510
         「……私《わし》が爺殿でござります。」               :178/1510
 「否《いえ》、もう気ままものの碌でなしでござりますが、お庇さまで、至って元気がよう :182/1510
ござりますが、お庇さまで、至って元気がようござりますので、御懇意な近所へは、進退《か :182/1510
御用で、東海道の藤沢まで、買物に行ったのでござりました。               :184/1510
界隈は間に合わせの俄仕入れ、しけものが多うござりますので、どうしても目量《めかた》の :186/1510
お前様、嘉吉めが、今申したその体《てい》でござりましょ。               :193/1510
嘉吉めが天窓《あたま》と足を、引立てるではござりませぬか。              :195/1510
負けたものも、飲んだ酒と差引いて、誰も損はござりませぬ。可い機嫌のそそり節、尻まで捲 :198/1510
まで捲った脛の向く方へ、ぞろぞろ散ったげにござります。                :198/1510
入れ直いて、てんぼうの片手押しは、胸が力でござります。人通りが少いで、露にひろがりま :199/1510
            「夢処《どころ》でござりますか、お前様、直ぐに縊殺《しめころ :204/1510
                この中ではござりませぬ、」              :207/1510
           「廂の蔭じゃったげにござります。浪が届きませぬばかり。低い三日 :209/1510
。罪人を上積みにしてどうしべい、これこれでござる。というと、可哀そうに苦しかろう、と :213/1510
  何の、心外がらずともの、いけずな親仁でござりますがの、ほほ、ほほ。」       :232/1510
ましたようで、貴女《あなた》へも聞えが悪うござりますので。              :234/1510
が、提灯で火傷をするのを、何で、黙って見てござった。私《わし》が手《てん》ぼうでせえ :236/1510
なか》へ、荷車が、乗被《のっかぶ》さるではござりませぬか。」             :240/1510
たがたと石ころの上を空廻りして、躍ったげにござります。                :244/1510
届けよう、という、爺《じじい》どのの了簡でござります。                :251/1510
じの三崎街道、横へ切れる畔道が在所の入口でござりますで、其処へ引込んだものでござりま :252/1510
の入口でござりますで、其処へ引込んだものでござります。人気も穏なり、積んだものを見た :252/1510
なじ》じゃで、誰も手の障《さ》え人《て》はござりませぬで。              :252/1510
、気味の悪い、と目をぱちくり、泡を吹いたでござりますよ。               :253/1510
が、去ね、とおっしゃったを止せば可いことでござります。」               :254/1510
              「お目こぼしでござります、」               :257/1510
     「爺《じじい》どのはお庇と何事もござりませんで、今日も鶴谷様の野良へ手伝い :259/1510
             「それも心がらでござります。はじめはお前様、貴女《あなた》 :261/1510
どり》の、光のある、美しい、珠じゃったげにござります。                :264/1510
てな、と思うと、変った事は、そればかりではござりませぬよ。              :270/1510
、その御容子だけでなりと、分りそうなものでござります。                :279/1510
した処で、嘉吉づれが口を利かれます御方ではござりませぬ。そうでなくとも、そんな御恩を :280/1510
せぬ。そうでなくとも、そんな御恩を被ったでござりますもの。拝むにも、後姿でのうては罰 :280/1510
               根が悪徒ではござりませぬ、取締りのない、唯ぼうと、一夜 :281/1510
うな奴殿じゃ。薄も、蘆も、女郎花も、見境はござりませぬ。               :281/1510
も下さりょうぐらいに思うて、こびりついたでござります。                :282/1510
手を分け上りますのが、山一ツ秋谷在へ近道でござりまして、馬車《うまくるま》こそ通いま :286/1510
の街道の真中へ、何と、お前様、見られた図でござりますか。               :291/1510
かな》紛れに、がならっしゃると、早や、変でござりましたげな、きょろん、とした眼《がん :293/1510
駆戻って、うつむけに突《つ》んのめったげにござりまして、のう。            :296/1510
           「あの、こう唄うではござりませんか。              :320/1510
《こども》同士、顔さえ見れば唄い連れるではござりますが、近頃は久しい間、打絶えて聞い :324/1510
すが、近頃は久しい間、打絶えて聞いたこともござりませぬ――この唄を爺《じじい》どのが :324/1510
               確か、こうでござりましょう。それを、          :329/1510
ひとりでに唄います、の。まだそればかりではござりません。小児《こども》たちが日の暮方 :333/1510
らを遊びますのに、厭な真似を、まあ、どうでござりましょう。              :333/1510
けたのを、ぬっぺりと、こう顔へ被ったものでござります。大《おおき》いのから小さいのか :334/1510
《うぶめ》、とも異体の知れぬ、中にも虫喰のござります葉の汚点《しみ》は、癩《かったい :334/1510
ますのが、三人と、五人ずつ、一組や二組ではござりませんで。              :334/1510
囃して、消えるように、残らずいなくなるのでござりますが。               :345/1510
ますことというては、穴倉へ引入れられそうでござります。                :346/1510
                 「……でござりましょう。先ず、この秋谷で、邸と申し :358/1510
そりゃ土蔵、白壁造、瓦屋根は、御方一軒ではござりませぬが、太閤様は秀吉公、黄門様は水 :358/1510
  ところで一軒は御本宅、こりゃ村の草分でござりますが、もう一軒――喜十郎様が隠居所 :359/1510
喜十郎様が隠居所にお建てなされた、御別荘がござりましての。              :359/1510
西洋窓に鸚鵡を飼おうと、見本は直き近い処にござりまして、思召《おぼしめし》通りじゃけ :360/1510
々《きらきら》して間数《まかず》十ばかりもござりますのを、牛車に積んで来て、背後《う :360/1510
                去年の夏でござりますがの、喜太郎様が東京で御贔屓にな :361/1510
                「御推量でござります、そこじゃ、お前様。見えて半月と :366/1510
か、いずれ一人、相孕《あいばらみ》の怪我がござるで、分別のうては成りませぬ、)との。 :367/1510
ちがその易者殿、御幣を、ト襟へさしたものでござります。筮竹の長袋を前半《まえはん》じ :382/1510
   途中、何とも希有《けう》な通りものでござりまして、あの蛍がまたむらむらと、蠅が :384/1510
                 厭な事でござります。黒門へ着かしって、産所へ据えよ :391/1510
あ、青い顱巻《はちまき》をした方が、寝てでござんす、些と傍へ)と……まあ、難産の嫁御 :391/1510
                    でござりましょう。人足が絶えるとなれば、草が :400/1510
白で。おふくろ様も好いお方、おいとしい事でござります。                :400/1510
              「よう御存じでござりますの。」              :412/1510
実が入りまして、まあ、飛だ御足を留めましてござります。」               :417/1510
      はい、浪打際に子産石というのがござんす。これこれで此処の名所、と土地《と :424/1510
           「お上人様、御殊勝にござります、御殊勝にござります。難有や、」 :436/1510
 「お上人様、御殊勝にござります、御殊勝にござります。難有や、」           :436/1510
 「何か、お前が出会した――黒門に逗留してござらしゃる少《わけ》え人が、手鞠を拾った :450/1510
         (なら、まだ話します事がござります、)とついでに黒門の空邸《あきや :534/1510
《せんこく》は。……本宅でも宜しく申してでござりました。お手廻りのものや、何や彼や、 :603/1510
蝋燭火の傍に、首い傾げて、腕組みして坐ってござるで、気に成るだ。           :603/1510
だけで、別に変った事件《こと》もなかったでございますか。」              :642/1510
      「ああ、手《てん》ぼうの……でございますな。」              :649/1510
「この、時々ぱらぱらと来ますのは、木の葉でございますかな。」             :658/1510
 「しかし、如何にもその時はお寂しかったでございましょう。」             :664/1510
した、私は信州松本の在、至って山家のものでございます。」               :672/1510
するだけで、それがしかし何より私には結構でございます。」               :678/1510
          「決して、さような事はございません。茶店の婆さんはこの邸に憑物の :682/1510
ありなさるそうで、熟《じっ》と辛抱をしてはござるが、怪しい事が重なるかして、お顔の色 :682/1510
てくれ、という、暮々もその託《ことづけ》でございました。が何か、最初の内、貴方が御逗 :684/1510
               「と申す事でございますな。ええ、時にその入り交り立ち交 :688/1510
りますそうでありますが、真個《まったく》でございますかな。」             :691/1510
い加減な百物語。その実、虚説《うそ》なのでございますので?」             :696/1510
             「これが、動くでございますか。」              :700/1510
   「さよう、余り取留めなくもないようでございます。すると、坐っているものは如何な :703/1510
         「否《いえ》、宗旨違いでございます、」               :738/1510
       「それッきり、危《あぶの》うございますから、刃物は一切《いっせつ》厳禁 :764/1510
   「やはり、おのずから、その、抜出すでございますか。」              :767/1510
                「で、何でございますか、その夜伽連は、もうそれ以来懲 :786/1510
伽連は、もうそれ以来懲りて来なくなったんでございますかな。」             :786/1510
               旨《うも》うございましたよ、私もお相伴しましたっけ、」 :791/1510
        「茄子《なすび》ならば、でございますが、ものは茄子でも、対手《あいて :845/1510
すが、ものは茄子でも、対手《あいて》は別にございましょう。」             :845/1510
         「で、そりゃ昼間のことでございますな。」              :847/1510
           「ええ、酷《ひど》うございました、どうせ、夜が寝られはしないん :853/1510
     茶店の婆さんが申したも、その事でございます。                :855/1510
はくれまいか、というについて、推参したのでございますが、いや、何とも驚きました。   :856/1510
な坊主。念仏さえ碌に真心からは唱えられんでございまして、御祈祷僧などと思われましては :858/1510
、第一、貴下《あなた》の前へもお恥かしゅうございますが、如何でございましょう。お宿を :858/1510
》の前へもお恥かしゅうございますが、如何でございましょう。お宿を願いましても差支えは :858/1510
ましょう。お宿を願いましても差支えはないでございましょうか。いくらか覚悟はして参りま :858/1510
目のあたりお話を伺いましては、些と二の足でございますが。」              :858/1510
なた》の思召《おぼしめ》しはさように難有うございましても、別にその……ええ、先ず、持 :860/1510
持主が鶴谷としますと、この空屋敷の御支配でございますな、――その何とも異様な、あの、 :860/1510
  「なかなか、逆らいます処《どころ》ではございません、座敷好みなんぞして可いもので :870/1510
ございません、座敷好みなんぞして可いものでございますか。               :870/1510
た時は、草に支えて、しばらく足が出ませんでございました。               :872/1510
きで通られたような、ものの気勢《けはい》もございます。                :875/1510
                     ござったかな、と思いながら、擽ったいような :878/1510
っ》と踏んで入りますと、春さきはさぞ綺麗でございましょう。一面に紫雲英《げんげ》が生 :878/1510
            変に跨ぎ心地が悪うございますから、避《よ》けて通ろうといたし :879/1510
ころころと何か転げる、忽ち顔が露れたようでございましたっけ、熟《よ》く見ると、兎なん :879/1510
》だと、旧《もと》の潜門へ押出されます処でございました。強いて入りますほどの度胸はな :881/1510
    式台前で、私は先ず挨拶をいたしたでございます。                :882/1510
いや、それにもまた慄然《ぞっ》としたほどでございますから。              :887/1510
                  何事がございましょうとも、自力を頼んで、どうのこ :888/1510
              「さあ、そこでございます。それを伺いたいのが何より目的《 :891/1510
       「手毬唄を。……如何な次第でございます。」               :903/1510
の唄は、貴下《あなた》お聞きに成ったことがございましょうか。」            :906/1510
も唄なんか御存じないそうで、ええ、世間体がございますから以来は、と苦り切って帰りまし :935/1510
       「いんね、私《わし》一人じゃござりましねえ。喜十郎様が許の仁右衛門の苦 :1042/1510
御坊様御免なせえまし。御本家からも宜しくでござりやす。いずれ喜十郎様お目に懸りますだ :1048/1510
がれ、野郎、活仏《いきぼとけ》さまが附いてござるだ。」                :1149/1510
。へい、人間様だぞ。おのれ、荒神様がついてござる、猿智慧だね、打棄《うっちゃ》って置 :1162/1510
          これは、と驚くと、仔細ござります。水を一口、という舌も硬ばり、唇 :1178/1510
で見た児来也だぞ、盗賊の張本《ちょうほん》ござんなれ。晩方来《う》せた旅僧めも、その :1184/1510
人間か。いずれこの邸を踏倒そう屋根住居してござる。おのれ、見ろ、と一足退《すさ》って :1196/1510
  「客僧しばらく――唯今それへ参るものがござる。往来を塞ぐまい。押して通るは自在じ :1311/1510
             「悪は善悪の悪でござる。」                 :1322/1510
                客は女性でござるに因って、一応拙者《それがし》から申 :1374/1510
                    「ござらっしゃい!」             :1382/1510
    「貴女《あなた》は何誰《どなた》でございます。」               :1400/1510
それにつきまして、貴僧《あなた》にお願いがございますが、どうぞお聞き下さいまし。」  :1408/1510
の、一寸一目お目にかかって、お聞かせ申とうござんすけれど、今顔をお見せ申しますと、お :1413/1510
、最愛《いとお》しさに覚悟も弱る。私は夫のござんす身体《からだ》。他《ひと》の妻であ :1421/1510
すと――これが世にも恐ろしい、嫉妬深い男でござんす。――               :1434/1510


『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

篭屋より、女ども立出で、もし/\お泊りぢやござんしないか、お風呂も湧いて居づに、お泊 :6/330
でいくらだ。女、はい、お蕎麦なら百十六銭でござんさあ。二人は旅銀の乏しさに、そんなら :6/330
う一杯くんねえ。女、もうお蕎麦はそれ切りでござんさあ。弥次郎、なに、もうねえのか、た :6/330
酒だけなと、頼むと、お生憎。酒はないのか、ござりません。――ぢや、麦酒でも。それもお :11/330
か近所から取寄せて貰へまいか。へいもう遅うござりますで、飲食店は寝ましたでな……飲食 :11/330
詰るやうに言ふと、へい、二ぜん分、装込んでございますで。いや、相わかりました。何うぞ :12/330
    「旦那さん、お気に入りまして嬉しうございますわ。さあ、もうお一つ。」     :28/330
            [えゝ、笊に三杯もございます。まだ台所の柱にも束にしてかゝつ :30/330
          「いえ、当家の料理人にございますが、至つて不束でございまして。… :39/330
、当家の料理人にございますが、至つて不束でございまして。……それに、斯やうな山家辺鄙 :39/330
やうな山家辺鄙で、一向お口に合ひますものでございませんで。」             :39/330
して、……唯今、女どもまでおつしやりつけでございましたが、鶫を貴方様、何か鍋でめしあ :41/330
せうやら、右、女どもも矢張り田舎ものゝ事でございますで、よくお言がのみ込めかねます。 :41/330
よくお言がのみ込めかねます。ゆゑに失礼ではございますが、一寸お伺ひに出ましてございま :41/330
失礼ではございますが、一寸お伺ひに出ましてございますが。」              :41/330
、お客様も、貴方様のほか、お二組ぐらゐよりございません。」              :48/330
。鶫は焼いてめしあがるのが一番おいしいんでございますつて。」             :54/330
ひと噛りにめしあがりますのが、おいしいんでございまして、えゝ飛んだ田舎流儀ではござい :55/330
いんでございまして、えゝ飛んだ田舎流儀ではございますがな。」             :55/330
 「……(伊那や高遠の余り米)……と言ふでございます、米、此の女中の名でございます、 :59/330
……と言ふでございます、米、此の女中の名でございます、お米。」            :59/330
「旦那さん、――此の人は、家が伊那だもんでございますから。」             :62/330
、へい、何うも、いや、全く、――実際、危うございますな。――然う言ふ場合には、屹と怪 :77/330
、よけいに取れますが、その方の場所は何処でございますか存じません――芸妓衆は東京のど :77/330
          「お処が分つて差支へがございませんければ、参考のために、其の場所 :83/330
のために、其の場所を伺つて置きたいくらゐでございまして、……此の、深山幽谷の事は、人 :83/330
         「……別にその、と云つてございません。しかし、流に瀬がございますや :87/330
の、と云つてございません。しかし、流に瀬がございますやうに、山にも淵がございますで、 :87/330
かし、流に瀬がございますやうに、山にも淵がございますで、気をつけなければ成りません。 :87/330
続きまして、珍しく上の峠口で猟があつたのでございます。」               :87/330
         「鷺が来て、魚を狙ふんでございます。」               :100/330
                 「直きでございます。……今日は此の新館のが湧きます :132/330
の池のは、いつもお料理にはつかひませんのでございます。うちの旦那も、おかみさんも、御 :135/330
鮒だの、鯉だの、……此の池へ放しなさるんでございます。料理番さんも矢張。……そして料 :135/330
はなかつたのですが、あの、然う言つては悪うございますけど、しばらくぶりで、お掃除かた :148/330
りで、お掃除かた/\旦那様に立てましたのでございますから、……あとで頂きますまでも、 :148/330
      「それがね、旦那、大笑ひなんでございますよ。……誰方も在らつしやらないと :162/330
           「えゝ――どつちもでございますな。両方だらうと思ふんでございま :207/330
つちもでございますな。両方だらうと思ふんでございますが。」              :207/330
  「むかうの山口の大林から下りて来るんでございます。」               :209/330
……此の、旦那、池の水の涸れる処を狙ふんでございます。鯉も鮒も半分鰭を出して、あがき :211/330
も鮒も半分鰭を出して、あがきがつかないのでございますから。」             :211/330
「馬鹿な人間は困つ了ひます――魚が可哀相でございますので……然うかと言つて、夜一夜、 :213/330
夜、立番をしても居られません。旦那、お寒うございます。おしめなさいまし。……そちこち :213/330
しめなさいまし。……そちこち御註文の時刻でございますから、何か、不手際なものでも見繕 :213/330
               「――結構でございます。……もう台所は片附きました、追 :215/330
            「昨年の丁ど今頃でございました。」              :240/330
が降りました。積り方は、もつと多かつたのでございます。――二時頃に、目の覚めますやう :242/330
御婦人客が、唯お一方で、おいでに成つたのでございます。――目の覚めるやうだと申しまし :242/330
はありません。婀娜な中に、何となく寂しさのございます、二十六七のお年ごろで高等な円髷 :242/330
、二十六七のお年ごろで高等な円髷でおいでゞございました。――御様子のいゝ、背のすらり :242/330
すから、直きにくろうと衆だと存じましたのでございまして、此が柳橋の蓑吉さんと言ふ姐さ :242/330
た事が、後に分りました。宿帳の方はお艶様でございます。                :242/330
那――帳場で、此のお座敷へ御案内申したのでございます。                :243/330
  風呂がお好きで……勿論、お嫌な方も沢山ございますまいが、あの湯へ二度、お着きに成 :244/330
ぐと、それに夜分に一度、お入りなすつたのでございます――都合で、新館の建出しは見合せ :244/330
、温泉ごのみに石で畳みました風呂は、自慢でございまして、旧の二階三階のお客様にも、些 :244/330
まして、旧の二階三階のお客様にも、些と遠うございますけれども、お入りを願つて居りまし :244/330
せうと、相談をいたしまして、申すもいかゞでございますが、今日久しぶりで湧かしも使ひも :244/330
湧かしも使ひもいたしましたやうな次第なのでございます。                :244/330
        処で、お艶様、その御婦人でございますが、日の中一風呂お浴びになります :245/330
お参詣なさいました。贄川街道よりの丘の上にございます。――山王様のお社で、むかし人身 :245/330
で、むかし人身御供があがつたなどと申伝へてございます。森々と、もの寂しいお社で。…… :245/330
々と、もの寂しいお社で。……村社はほかにもございますが、鎮守と言ふ、お尋ねにつけて、 :245/330
きら/\して疼むからと言つて、こんな土地でございます。ほんの出来あひの黒い目金を買は :245/330
井宿一統への礼儀挨拶と言ふお心だつたやうでございます。                :245/330
時、お膳で一口あがりました。――旦那の前でございますが、板前へと、ご丁寧にお心づけを :246/330
板前へと、ご丁寧にお心づけを下すつたものでございますから私……一寸御挨拶に出ました時 :246/330
一寸御挨拶に出ました時、恁う言ふおたづねでございます――お社へお供物にきざ柿と楊枝と :246/330
                ――真個でございます、と皆まで承らないで、私が申した :247/330
います、と皆まで承らないで、私が申したのでございます。                :247/330
いか存じませんが、現に私が一度見ましたのでございます。」               :248/330
咲きます、けれども、桔梗ばかりと言ふのではございません。唯其の大池の水が真桔梗の青い :250/330
いません。唯其の大池の水が真桔梗の青い色でございます。桔梗は却つて、白い花のが見事に :250/330
桔梗は却つて、白い花のが見事に咲きますのでございまして……              :250/330
きく成ると、何国でも申しますが、全く大焼でございました。               :251/330
は見物の方で、お社前は、おなじ夥間で充満でございました。               :252/330
   二百十日の荒れ前で、残暑の激しい時でございましたから、つい/\少しづゝお社の森 :253/330
不断は、しつかり行くまじきとしてある処ではございますが、此の火の陽気で、人の気の湧い :253/330
。処で、私、陰気もので、余り若衆づきあひがございませんから、誰を誘ふでもあるまいと、 :253/330
しました中を、それも、思つたほど奥が深くもございませんで、一面の草花。……白い桔梗で :253/330
目見ました、其の時の凄さ、可恐さと言つてはございません。唯今思出しましても御酒が氷に :254/330
のお美しさが忘れられません。勿体ないやうでございますけれども、家のないものゝお仏壇に :254/330
して、その面影を思はずには居られませんのでございます。――さあ、その時は、前後も存ぜ :254/330
の顔の色と、怯えた様子とてはなかつたさうでございましてな。……お社前の火事見物が、一 :254/330
、野兎の飛んで落ちるやうに見えたと言ふ事でございまして。               :254/330
も言はないで、奥様と言ふんでせう。さ、其でございます。私は唯目が暗んで了ひましたが、 :255/330
の奥方とも存ぜずに、いつとなく然う申すのでございまして……旦那。――お艶様に申します :257/330
りなど、随分村方でも、ちらりと拝んだものはございます。――お艶様は此をきいて、猪口を :257/330
/\木曽の此の山家へ一人旅をなされた用事がございまする。」              :258/330
、不思議千万な、色出入、――変な姦通事件がございました。               :262/330
には、たつみ上りに成りますので、其の料簡でございますから、中年から後家に成りながら、 :263/330
薀の類を、空地中に植込んで、塩で弁ずるのでございまして……もう遠くから芬と、其の家が :263/330
ば過ぎに、不意に東京から大蒜屋敷へお客人がございました。学士先生のお友だちで、此の方 :265/330
へも勤めては居なさらない、尤も画師ださうでございますから、極つた勤とてはございますま :265/330
画師ださうでございますから、極つた勤とてはございますまい。学士先生の方は、東京の一中 :265/330
方は、東京の一中学校で歴乎とした校長さんでございますが……              :265/330
しのぎに、此の木曽谷まで遁込んだのださうでございます。遁げましたなあ、……それに、そ :266/330
わけださうで、……遁込み場所には屈竟なのでございました。               :266/330
どもへ一人でお泊りに成つた其の御婦人なんでございます。……一寸申上げて置きますが、こ :267/330
をたづねて、雪を分けておいでに成つたのではございません。その間が雑と半月ばかりござい :267/330
のではございません。その間が雑と半月ばかりございました。その間に、唯今申しました、姦 :267/330
間に、唯今申しました、姦通騒ぎが起つたのでございます。」               :267/330
     「其処で……また代官婆に変な癖がございましてな、癖より病で――或るもの知の :269/330
それ貴客、代官婆だけに思込んで居りますのでございます。                :269/330
のださうで。……婆が強う家来扱ひにするのでございますが、石松猟師も、堅い親仁で、甚し :270/330
振で喘いで言ふので。……こんな時鐡砲は強うございますよ、ガチリ、実弾をこめました。… :271/330
をこめました。……旧主人の後室様がお跣足でございますから、石松も素跣足、街道を突切つ :271/330
並べて、と申すのが、寝ては居なかつたさうでございます。若夫人が緋の長襦袢で、掻巻の襟 :271/330
で居る嫁御が、其の姿で、然も其のありさまでございます。石松は化もの以上に驚いたの相違 :271/330
ございます。石松は化もの以上に驚いたの相違ございません。(おのれ、不義もの……人畜生 :271/330
言ひ、場合と申し、ズドンと遣りかねない勢でございますから、画師さんは面喰らつたに相違 :272/330
ございますから、画師さんは面喰らつたに相違ございますまい、(天罰は立処ぢや、足四本、 :272/330
、檀那寺の和尚まで立会はせると言ふ狂ひ方でございまして。学士先生の若夫人と色男の画師 :272/330
やうに、雪にしらけて、ぐつたりと成つたのでございます。                :272/330
村の女小児まであとへついて、寺へ参つたのでございますが。」              :273/330
            「――遁がしたのでございませうな。画師さんはその夜のうちに、 :275/330
寺から影をかくしました。此は然うあるべきでございます。――さて、聞きますれば、――伜 :275/330
したらうし、芸妓でしくじるほどの画師さんでございます、背中を擦るぐらゐはしかねますま :275/330
、背中を擦るぐらゐはしかねますまい、……でございますな。               :275/330
る傍の目には、些と弱過ぎると思ふほどなのでございますから、困じ果てて、何とも申しわけ :278/330
と言ふ――学士先生から画師さんへのお頼みでございます。                :278/330
人間の道のためとか申して騒ぐ方が多い真中でございますから。……どの面さげて画師さんが :279/330
もわな/\と震へて居ましたので、弱つた方でございます。……必ず、連れて参ります――と :281/330
       その上京中。その間の事なのでございます――柳橋の蓑吉姉さん……お艶様が :282/330
出し申されません。たゞ道だけ聞けばとの事でございましたけれども、おともが直接について :286/330
に当りましたのが、此の、不つゝかな私なんでございました。……             :286/330
、湯殿に……湯殿に提灯を点けますやうな事はございませんが、――それとも、へーい。」  :293/330
もあたれ、然う申さずには居られなかつたのでございます。                :302/330
―本妻が、その体では、情婦だつて工面は悪うございます。目を煩らつて、しばらく親許へ、 :306/330
て居なさる処へ、思余つて、細君が訪ねたのでございます。」               :306/330
が、上に尚ほ奥さんと言ふ、奥行があつて可うございます。――奥さんのほかに、私ほどのい :307/330
見える事に、何とも何うも、つい立至つたのでございまして。……此でございますから、何の :309/330
も、つい立至つたのでございまして。……此でございますから、何の木曽の山猿なんか、しか :309/330
、人だすけに切つ了ふ――それも、かきおきにございました。               :309/330
……あゝ、丁ど、あの音、洗面所の、あの音でございます。」               :310/330
                「御同然でございまして……えゝ、しかし、何うも。」  :312/330
もうかげが乏しく成つて、かへの蝋燭が入れてございません――おつき申しては居ります、月 :316/330
申しては居ります、月夜だし、足許に差支へはございませんやうなものゝ、当館の紋の提灯は :316/330
ず、つい一走りで、駈戻りました。此が間違でございました。」              :316/330
がしました。ドーンと谺を返しました。鐡砲でございます。」               :318/330
て土手へ出ますと、川べりに、薄い銀のやうでございましたお姿が見えません。提灯も何も押 :320/330
に凍りついて、霜の秋草に触るやうだつたのでございます。――人も立会ひ、抱起し申す縮緬 :321/330


『日本橋』 青空文庫

る痒しで、皺だらけの手の甲を顋の下で摺ってござった。                 :63/2195
。……俺も弱ったよ。……近い処が、西河岸にござらっしゃる、ね、あの、目の前であったろ :64/2195
てもありませぬ。愚僧は泉岳寺の味噌摺坊主でござる。」                 :129/2195
  「お土産の先廻り。……莞爾々々お帰りでございました。ですからもう今日は、お持ちに :242/2195
     お宅様の直き御近所に、立派な店がございますのに、難有い事に手前どもが御贔屓 :243/2195
舎ものも、実にねえ、町内で幅が利きますんでございますよ。はい。」           :243/2195
が、そんなに心安だてを申しますか、御迷惑でございますこと。」             :244/2195
「勿体ない、お蔭さまで人気が立って大景気でございますよ。」              :245/2195
       「いいえ、滅相な、お世辞ではございませんが、貴女方に誉められます処を、 :248/2195
ます処を、亡くなった亭主に聞かしてやりとうございます。そういたしましたら、生きてるう :248/2195
るうち邪慳にしましたのをさぞ後悔することでございましょう。しかしまた未練が出て、化け :248/2195
かしまた未練が出て、化けてでも出ると大変でございますね。」              :248/2195
、笑って云うにゃ云いましたが、死ぬほど辛うござんしたわ。」              :290/2195
 「はあ、お次に控えておりました、賤の女でござんすわいな。」とふらふらする。     :725/2195
            「はいはい、御意にござりまする。」              :728/2195
 「お検べが済みませんと、後が支えますのでござんすわいな。」             :732/2195
い事ね……お価が高いもんですから、賤の女でござんすわいな。ほほほほほ。」       :742/2195
                「さようでございます[#「さようでございます」は底本 :981/2195
    「さようでございます[#「さようでございます」は底本では「さようでごさいます :981/2195
        「ええ、ええ、さような事もござりましたよ。」             :995/2195
へい、いいえ、お顔は存じておりますほどでもござりませんが、その上被の召ものでござりま :998/2195
ほどでもござりませんが、その上被の召ものでござります、お見事な、」          :998/2195
         「稲葉家様の縁起棚の壁でござりますの、縁側などに掛っていて拝見した :1000/2195
ますの、縁側などに掛っていて拝見したことがござりますよ。はい。何でござりますか、それ :1000/2195
いて拝見したことがござりますよ。はい。何でござりますか、それでは旦那様は、」     :1000/2195
        「ええ、ええ、別に秘すではござりません、(これからお茶屋へ行って一口 :1006/2195
からきっとおいで。)と、はい、そのきっとでござりますが、何の、貴下様、こんな爺に御一 :1006/2195
ので。姉さんがただ御串戯におっしゃったのでござりますよ。」              :1006/2195
それは分りませんが、てんで私の方で伺う気はござりませなんで、頭字も覚えませぬよ、はい :1019/2195
け申しはしませんので、はい、いずれお客人でござりましょう。」             :1023/2195
       「それは、もし、お尋ねまでもござりません、孫めがお附き申しておりました :1025/2195
い、飲ましてやろう、と姉さんが申されたのでござりましたよ。」             :1025/2195
              「恐入りましてござります、はい。」            :1052/2195
って、そして、よく見て上げて下さいな。遅うござんすから、私は失礼ですが。」      :1063/2195
、あなた方の御志、孫も幸福。それが嬉しゅうござります。」               :1067/2195
たえ?……後学の為に承り置きたい……ものでござるな。……よ。ほんとうに、」      :1196/2195
          「私を口説く気で、可うござんすか。まったくは、あの御守殿より、私 :1218/2195
や、もう、人様の事をお案じ申すという効性もござりません。……お助けを被りました御礼を :1342/2195
被りました御礼を先へ申さねばなりませんのでござりました。はい、先刻は何とも早や、お庇 :1342/2195
早や、お庇で助かりました。とんと生命拾いでござります。それにまた、お情深い貴女様、種 :1342/2195
いお心附を下さいまして、お礼の申上げようもござりません。」              :1342/2195
したばかり。さして意趣遺恨の有る覚えとてもござりませず、……何また、この上に重ねて乱 :1346/2195
て乱暴をしますようなれば、一旦はちと遠慮がござりましてわざと控えましたようなものの、 :1346/2195
          「はい、それに実は何でござります、……大分年数も経ちました事ゆえ :1349/2195
事ゆえ、一時半時では、誰方もお心付の憂慮はござりませんが。……貴女には、何をお秘し申 :1349/2195
て分散、と申すほど初手からさしたる身上でもござりませぬが、幽には、御覚えがあろうも知 :1351/2195
へへへ、煎餅屋の、はい、その時分からの爺でござりますよ。」              :1351/2195
「滅相な、何の貴女。お忘れ下さるのが功徳でござりますよ、はい、でも私はざっとお見覚え :1354/2195
         「いいえ、全盛どころではござんせん。姉が達者でいてくれますと、養母 :1362/2195
も柳に雪折なし、かえって御心配の無いものでござります。でござりますが。」       :1365/2195
、かえって御心配の無いものでござります。でござりますが。」              :1365/2195
、橋は冷えます。私なんぞ出過ぎましたようでござりますが、お案じ申すのでござりますよ。 :1367/2195
ぎましたようでござりますが、お案じ申すのでござりますよ。」              :1367/2195
貴女が、……やっぱり苦界、いずれ苦の娑婆でござります。それにつけましても孫が可愛うご :1407/2195
でござります。それにつけましても孫が可愛うございますので、はい。」          :1407/2195
             「ええ、女の子でござりまして。」              :1410/2195
                 「御尤でござりますとも。……まだ胎内に居ります内に :1412/2195
             「大苦みなわけでござりまして、貴女方と同一と申すと口幅った :1416/2195
貴女方と同一と申すと口幅ったい、その数でもござりませんが、……稲葉家さんに、お世話に :1416/2195
らば、貴女のお手許に、とその時も思った事でござります。いいえ、不足を言うではござりま :1418/2195
った事でござります。いいえ、不足を言うではござりません。芸者と一概に口では云い条、貴 :1418/2195
一本筋の正しい道をお通りなさる、女の手本でござります。彼娘にもな、あやからせとう存じ :1418/2195
               「何も浮世でござりますよ。」              :1423/2195
る。……中にも笛は御名誉で、お十二三の頃でございましたろうか、お二階でなさいますのが :1425/2195
道|寂となって、高い山から谷底に響くようでござりましたよ。」             :1425/2195
 「あの、時分の事を思いますと、夢のようでござります。この頃でも、御近所だと時々聞か :1427/2195
。この頃でも、御近所だと時々聞かれますのでござりましょうがな。」           :1427/2195
。……不忍の池あたりでお聞き遊ばすばかりでございます。」               :1438/2195
               「別にそのでございます。相変りました事はございませんで :1531/2195
 「別にそのでございます。相変りました事はございませんです。」と、戸籍係に立ごかしの :1531/2195
               「誰方……でございますか。」              :1565/2195
             「あの、潰島田でございます、お人形さんの方は結構でしょうけ :1611/2195
年配の、堂々たる同僚らしいのが一斉に入ってござったで、機を考えて、それなりに帰ったで :1641/2195
て、高い鼻に、度の強いぎらぎらと輝く眼で、ござんなれ、好下品、羆の皮をじろりと視て、 :1654/2195
あの、大学校の大教室に、椅子で煙草を喫んでござった、人間離れのした神々しい豪い処を見 :1809/2195
蛇が蟠を巻いておる上で、お孝といちゃついてござる勘定だ。               :1822/2195
俄発心。心よりか形だけを代えました青道心でございます。面目の無い男ですから笠は御免を :1992/2195
こへ参っても、このあたりぐらい、名所古蹟はございませんな。」             :1992/2195
         「お湯を頂きましても可うござんすか、旦那。」            :2181/2195


『人魚の祠』 青空文庫

て、私がひよろ/\として立去る時、沼は暗うございました。そして生ぬるい雨が降出した… :115/122


『婦系図』 青空文庫

どうせ無代価《ただ》で頂戴いたしますものでございます。めのさんのお魚は、現金にも月末 :70/3954
》にも、ついぞ、お代をお取り遊ばしたことはございません。」              :70/3954
                「いかがでございますか、婦人《おんな》の方ですから、 :75/3954
さいますなぞもまた、へへへへへ、お宜しゅうございましょう。御婦人のお客で、お二階じゃ :88/3954
お客で、お二階じゃ大層お話が持てますそうでございますから。」             :88/3954
お客は旦那様のお友達の母様《おっかさん》でございます。」               :89/3954
たんですとさ。私がお取次に出たら河野の母でございます、とおっしゃったわ。」      :109/3954
                 「お早うござい。」                 :198/3954
         「御立腹の処を重々恐縮でございますが、おついでに、手前にも一杯、同 :301/3954
             「いえ、お嬢様でございます。」               :408/3954
                 「大変でございます。お台所口へいらっしゃいます。」 :426/3954
     「どういたしまして、もう台なしでございまして、」と雑巾を引掴《ひッつか》ん :445/3954
  「ええ、酒屋の小僧が、ぞんざいだものでございますから。」             :451/3954
           「も、仕様がないのでございますよ、ほんとうに、あら、どうしまし :467/3954
           「ほんとうにお綺麗でございますこと。」と、これは妙子に見惚《み :477/3954
して済みません。奥様《おくさん》もお変りがございませんで、結構でございます。先生は相 :494/3954
おくさん》もお変りがございませんで、結構でございます。先生は相変らず……飲酒《めしあ :494/3954
か》って、階子段の下でそっと聞くと、縁談でございますよ、とお源の答えに、ええ、旦那の :751/3954
、ささんざの二十七度で、婚姻の事には馴れてござる。                  :868/3954
、あの、御新造様《ごしんぞさん》、大丈夫でございます。                :895/3954
へ白銅一つ発奮《はず》みました。可い気味でございますと、独りで喜んでアハアハ笑う。  :898/3954
ほ》めて賞めて賞め抜いてお聞かせ申しましてございますよ。お嬢様も近々御縁が極《きま》 :911/3954
              「旦那いかがでございます。えへへ、」と、かんてらの灯の蔭 :977/3954
、何、別に入用《いりよう》なのじゃないのでございますから、はい、」          :1025/3954
                 「散歩でございます。」               :1043/3954
「先刻、御宅へ伺いましたのですが、御留守でございましたから、後程にまた参りましょうと :1047/3954
       「ずッと御帰宅《おかえり》でございますか。」              :1051/3954
らっしゃいますそうで、不可《いけ》ませんでございます。」               :1060/3954
井がそのまま聞流してしまったので(さようでございます。)と云う意味になる。      :1070/3954
         「酷《ひ》、酷《ひど》うござんすね……旦那、ア痛々《たた》、」   :1102/3954
                  「何でございますか、騒ぎです。」         :1123/3954
      あれは掏摸《すり》の術《て》でございます。はじめに恐入っていた様子じゃ、 :1147/3954
て、証拠が無いから逆捻《さかね》じを遣るでございます、と小商人《こあきんど》風の一分 :1147/3954
さる洋服《ふく》を着た方も、おかしな御仁でござりますよ。此娘《これ》の貴下《あなた》 :1148/3954
、立っていてちょいちょい手をお触りなさるでございます。御仁体が、御仁体なり、この娘《 :1148/3954
と口まで出ましたのを堪《こら》えていたのでござりますよ。お止しよ、お祖母さんと、その :1148/3954
                  「で、ございますかな。」とようよう膝去《いざ》り :1229/3954
おりましたのは、何も、そんな、そんな訳じゃございません……」とだけで後が続かぬ。   :1349/3954
          「いいえ、実はその何でございまして。その、この間中から、お嬢さん :1352/3954
私《わ》、私が、邪魔なんぞいたしますものでございますか。」              :1364/3954
って、)お為悪かれ、と思ってなすったんじゃござんすまいから、」            :1401/3954
先《せ》、先生、姉さんは、何にも御存じじゃございません、それは、お目違いでございまし :1409/3954
御存じじゃございません、それは、お目違いでございまして、」              :1409/3954
     「お言葉を反《かえ》しますようでございますが、」              :1415/3954
せんが、芸者が内に居りますなんてとんだ事でございます。やっぱり、あの坂田の奴が、怪し :1417/3954
坂田の奴が、怪しかりません事を。私は覚悟がございます、彼奴《あいつ》に対しましては、 :1417/3954
                 「申訳がございません。とんだ連累《まきぞえ》でお在 :1455/3954
心得違いをいたしまして……何とも申しようがございません。」              :1461/3954
うから、早瀬さんの御身分に障るようなこともござんすまい。もうこの節じゃ、洗濯ものも出 :1465/3954
           「行処《ゆきどこ》もございません、仕様が無いんでございますから :1472/3954
《ゆきどこ》もございません、仕様が無いんでございますから、先生さえ、お見免《みのが》 :1472/3954
さいますのも、世間を思って下さいますからでございます。もう、私は、自分だけでは、決心 :1474/3954
。それも決して女房になんぞ、しますわけではございません。一生日蔭ものの下女同様に、た :1476/3954
《ないしょう》で置いてやりますだけのことでございますから。」             :1476/3954
              「私がお願いでござんすから、」と小芳は胸の躍るのを、片手 :1526/3954
           「教頭様が少し御用がござります。」               :1576/3954
 「何か、お父様へ御託《おこと》づけものがござりますで。」              :1582/3954
             「応接室《ま》でござりますわ。」              :1587/3954
、)ですが、何ですね、近頃は、大層御勉強でございますね。」              :1839/3954
             「車屋へ大急ぎでございます。」               :1895/3954
、学校の名誉に障るって云うのよ。可《よ》うござんす、帰途《かえり》に直ぐに、早瀬さん :2048/3954
山に積むし、近所の肴屋から、鰹《かつお》はござってら、鮪《まぐろ》の活《いき》の可い :2077/3954
荷の番をしながら、人だかりの中へ立って見てござった差配様《おおやさん》が、お前《め》 :2092/3954
        「今のは独逸《ドイツ》人でございますか。」              :2170/3954
せんでしたが、様子が、何だか理学者らしゅうございます。」               :2175/3954
             「理学者、そうでございますか。」              :2176/3954
》も、ちとばかりその端くれを、致しますのでございますよ。」              :2178/3954
        「さぞおもしろい、お話しがございましたでしょうね。」         :2181/3954
ませんか。彼地《あちら》の文学のお話ででもございましたんですか。」          :2191/3954
           「来年の、どんな事でございます。」               :2195/3954
だ日本には、その風説《うわさ》がないようでございますね。               :2196/3954
     有っても一向心懸《こころがけ》のございません僕なんざ、年の暮に、太神宮から :2197/3954
 「じゃ、あとは、私をおなぶんなすったんでございましょうねえ。」           :2198/3954
         「それでは、どんなお話でございましたの。」             :2200/3954
違いましても、私の乗っております内は殺生でございますわ。」              :2210/3954
                「御心配はございません。僕も静岡で下りるんです。」  :2211/3954
貴女《あなた》、静岡は御住居《おすまい》でございますか、それともちょっと御旅行でござ :2221/3954
》でございますか、それともちょっと御旅行でございますか。」              :2221/3954
「東京から稼ぎに出ますんですと、まだ取柄はございますが、まるで田舎俳優《やくしゃ》で :2222/3954
もし静岡で、河野さん、と云うのを御存じではございませんか。」             :2227/3954
             「ええ、人が悪うございますって? その女俳優《おんなやくし :2238/3954
            「私は英さんの妹でございます。」               :2243/3954
       「結構な御住居《おすまい》でございますな。」              :2327/3954
            「アニ、はい、で、ござりますけんど、お客様で、ござんしねえで :2390/3954
ニ、はい、で、ござりますけんど、お客様で、ござんしねえで、あれさ、もの、呉服町の手代 :2390/3954
で、あれさ、もの、呉服町の手代衆《しゅ》でござりますだ。」              :2390/3954
       「お掛けなさいまし。お日和でございます。よう御参詣なさりました。」   :2440/3954
     「はい、盆に一杯五厘宛《ずつ》でございます。」               :2456/3954
れてはようない、ようないぞの。まあ、休んでござらんか、よ。主あどんなにか大儀じゃろう :2492/3954
             「へい、無い事もござりませぬが、旦那様方の住まっしゃります :2510/3954
まっしゃりますような邸は、この居まわりにはござりませぬ。鷹匠町《たかじょうまち》辺を :2510/3954
ょうまち》辺をお聞きなさりましたか、どうでござります。」               :2510/3954
           「どんなのがお望みでござりまするやら、」            :2512/3954
る上からは、御道中いささかたりとも御懸念はござりませぬ。」              :2535/3954
                  「何でございますと、」              :2576/3954
                「空家ではござりませぬが。」             :2581/3954
が悲鳴のように聞えた。乳母が、(まあ、何でござります、嬢ちゃまも、坊っちゃまも、お客 :2608/3954
         「もんですか。勿体至極もござらん。」                :2648/3954
しけえ、お涼みなさりますなら雨戸を開けるでござります。」               :2661/3954
             「はい、こちらでございますが。」と座を立った気勢《けはい》 :2749/3954
                 「お遠うございますか。」              :2764/3954
な処へ、たった御一人なんですか。途中で何かございませんでしたか、お暑かったでしょうの :2777/3954
   私は……じゃありません。その……何でございますよ、お蔦さんが煩らって寝ておりま :2783/3954
が煩らって寝ておりますので、見舞に来たんでございます。」               :2783/3954
                 「失礼でございますから、」             :2821/3954
この辺へは、滅多においでなさいましたことはござんせんでしょうにねえ。」        :2827/3954
                 「なぜでございますえ。」              :2831/3954
も、私に逢おうとおっしゃって下すったのではござんせんが、」              :2835/3954
   「いいえ、私もその意見をしていた処でござんすよ。お医者様にもろくに診《み》て貰 :2886/3954
         「小母さんでも可《よ》うござんす。構わないで家へいらっしゃいよ。玄 :2917/3954
               「可いわではござんせん。あれ、そして寒気なんぞしません :2936/3954
った一度、早瀬さんのことを書いてあったのがござんしてね、切抜いて紙入の中へ入れてあり :2970/3954
え》は話せそうだな。うんや、やっぱりお座敷ござなく面《づら》だ。変な面だな。はははは :3012/3954
    「ああ、もっと早く来れば可《よ》うござんした。一所に行って欲しかったし、それ :3098/3954
               「まあ、辛うござんすよ、これじゃ、」          :3110/3954
             「はい、お禁厭でございます。」               :3121/3954
     「はい、ですが私はただお手伝いでございます。」               :3159/3954
                「お願いがございます。」               :3160/3954
   「貴下、まあ、更《あらた》まって何でございますの。」              :3163/3954
ろうという如露の水を一雫、一滴で可《よ》うございます、私の方へお配分《すそわけ》なす :3175/3954
      「お金子《かね》が御入用なんでございますか。」              :3178/3954
  「どうしましょう私は。では貴下の事ではございませんので。」            :3184/3954
れど、河野(医学士)が、喧《やかま》しゅうございますから。」             :3186/3954
どうも計らい兼ねますの。それには不調法でもございますし……何も、妹の方が馴れておりま :3188/3954
           「どこの、どんな人でございますの。」              :3195/3954
れなくってはなりませんほど、老人危篤なのでございます。                :3218/3954
          「お邪魔をいたしましてございます。」とちょいと早瀬の目を見たが― :3265/3954
の混雑紛れに出ましたけれど、宅の車では悪うございますから、途中で辻待のを雇いますと、 :3441/3954
の中を覗きましてね、私はどんなに気味が悪うござんしてしょう。やっとこの横町の角で下り :3441/3954
    「それでは道寄りをいたしましたのでございましょう。灯《あかり》の点《つ》きま :3447/3954
》きます少し前に見えましたっけ、大勢の中でございますから、遠くに姿を見ましたばかりで :3447/3954
ぞそうなすって下さいまし、貴下、御苦労様でございますねえ。」             :3449/3954
                  「厭でございますね。」              :3468/3954
              「ここは野原でございますか。」              :3489/3954
      「真中《まんなか》に恐しい穴がございますよ。」              :3491/3954
お分りになるようにおなんなさいましたそうでございますね。」              :3552/3954
       「酷《ひど》いお熱だったんでございますのねえ。」            :3555/3954
東京へお帰りなさらなければならなかったんでございましょうに。あいにく御病気で、ほんと :3562/3954
うに。あいにく御病気で、ほんとうに間が悪うございましたわね。酒井様からの電報は御覧に :3562/3954
ました。ですが、まあ、何という折が悪いのでございましょう。ほんとうにお察し申しており :3567/3954
安東村へおともをしたのは……夢ではないのでございますね。」              :3575/3954
ます時は、いつも私どもはお附き申しませんでございます。」と爽《さわやか》な声で答えた :3600/3954
      「あれ、主人《あるじ》の跫音でございます。」               :3608/3954
《あるじ》は酷《ひど》い目に逢わせますのでございますよ。」としめ木にかけられた様に袖 :3614/3954
申して済みませんが、少々お目に懸りたい事がございます。ちょっとこの室までお運びを願い :3710/3954
に因って、こちらから参りましても可《よ》うございますと。」              :3714/3954
    お前さんにゃ気の毒だ。さぞ御迷惑でございましょう。」             :3931/3954


『親子そば三人客』 従吾所好

             「飛んだお寒さでございますねえ。」             :8/121
              「妙なお天気でございます。」               :10/121
不可ませんが、何うぞ召上りまし、お待遠様でございました。」と娘が誂を土間から其へ。  :42/121
「いゝえさ、腹をお立てなさらねえで、何うでございませう。御都合はまゝあることなり潔白 :82/121
あつたにして、さて、さらりと事済み、何うでございませう。え、もし、」         :84/121
           「真個にお次手で可うござんす。」                :94/121


『龍潭譚』 青空文庫

      「根ツからゐさつしやらぬことはござりますまいが、日は暮れまする。何せい、 :68/186
が、日は暮れまする。何せい、御心配なこんでござります。お前様遊びに出します時、帯の結 :68/186
         「はい、これはお児さまがござらつせえたの、可愛いお児じや、お前様も :104/186


『春昼』 泉鏡花を読む

        「どうしまして、邪魔も何もござりましねえ。はい、お前様、何か尋ねごと :22/628
前様、どうせ日は永えでがす。はあ、お静かにござらつせえまし。」            :43/628
         「やあ、マッチは此処にもござつた、はゝは、」            :113/628
             「や、最う大破でござつて。おもりをいたす仏様に、恁う申し上 :118/628
もおいそれとは参りませんので、行届かん勝でございますよ。」              :118/628
                「然やうでございます。御繁昌と申したいでありますが、 :125/628
。御繁昌と申したいでありますが、当節は余りござりません。以前は、荘厳美麗結構なもので :125/628
        貴下、今お通りになりましてございませう。此処からも見えます。此の山の :126/628
     坂東第二番の巡拝所、名高い霊場でございますが、唯今ではとんと其の旧跡とでも :127/628
 妙なもので、却つて遠国の衆の、参拝が多うございます。近くは上総下総、遠い処は九州西 :128/628
礼なさるのがあります処、此方たちが、当地へござつて、此の近辺で聞かれますると、つい知 :128/628
多くて、大きに迷ふなぞと言ふ、お話を聞くでございますよ。」              :128/628
           「とんと暑さ知らずでござる。御堂は申すまでもありません、下の仮 :135/628
や、茶釜から尻尾でも出ませうなら、又一興でござる。はゝゝゝ、」            :136/628
て、貴下、然やうに悟りの開けました智識ではございません。一軒屋の一人住居心寂しうござ :139/628
ではございません。一軒屋の一人住居心寂しうござつてな、唯今も御参詣のお姿を、あれから :139/628
やうで。いや、不躾でありまするが、思召しがござつたら、仮庵室御用にお立て申しまする。 :146/628
がな……先づ当節のお若い方が……と云ふのでござる。はゝゝゝ、近い話がな。最も然う申す :163/628
、いづれに致せ、高尚な御議論、御研究の方でござつて、此方人等づれ出家がお守りをする、 :174/628
偶像の方となりますると……其の如何なものでござらうかと……同一信仰にいたしてからが、 :177/628
前どうあらうかと存じまする。はゝゝ、其処でございますから、自然、貴下がたには、仏教、 :177/628
と存じて、つい御遊歩などと申すやうな次第でございますよ。」              :177/628
分らんでありますが、うたゝ寐の、此の和歌でござる、」                 :198/628
人ほど、早く結縁いたして仏果を得た験も沢山ございますから。              :214/628
はいたさんけれども。彼がために一人殺したでござります。」               :215/628
お思ひなさるでありませう、お話が大分唐突でござつたで、」               :220/628
だ人の方が、これは迷ひであつたかも知れんでございます。」               :222/628
                「然ればでござつて。……               :227/628
煩ひ、いや、こがれ死をなすつたと申すものでございます。早い話が、」          :229/628
て、竜宮や天上界へ参らねば見られないのではござらんで、」               :241/628
            「然も此の久能谷でございます。」               :245/628
              「貴下、何んでございませう、今日此処へお出でなさるには、 :247/628
         「否々、大財産家の細君でございます。」               :251/628
                「然やうでございます。それがために、貴下、」     :255/628
方もありまするが、なか/\此ほどのはないでございます。」               :257/628
                 「何故でございますか。」              :260/628
       「彼が此の歌のかき人の住居でござつてな。」               :268/628
               「それが可うございます。」               :272/628
           「と……まあ見えるでございます、亡骸が岩に打揚げられてござつた :275/628
見えるでございます、亡骸が岩に打揚げられてござつたので、怪我か、それとも覚悟の上か、 :275/628
来ましたので。恋ぢや、迷ぢや、といふ一騒ぎござつた時分は、此の浜方の本宅に一家族、… :279/628
ありました。其住職の隠居所の跡だつたさうにございますよ。               :283/628
つて来て、自分の借地を、先づならしかけたでございます。                :285/628
            「註文通り、金子でござる、」                 :292/628
で、山の腹へ附着いて、恁う覗いて見たさうにござる。」                 :295/628
          蓋が打缺けて居たさうでございますが、其処からもどろ/\と、其の丹 :300/628
んで居たと申します――さあ、此の方が真物でござつた。                 :301/628
、きよろ/\と其処等〓《みまは》したさうでございますよ。               :302/628
なく暗夜にも明るかつた、と近所のものが話でござつて。                 :304/628
                極性な朱でござつたらう、ぶちまけた甕充満のが、時なら :305/628
て見ると、いや抓んだ爪の方が黄色いくらゐでござつたに、正のものとて争はれぬ、七両なら :306/628
                 其の筈でござるて。                 :310/628
又伐りかゝる、資本に支へる、又借りる、利でござらう。借りた方は精々と樹を伐り出して、 :311/628
や血になるだ、なぞと、ひそ/\話を遣るのでござつて、」                :312/628
             「よくしたものでございます。いくら隠して居ることでも何処を :315/628
              「恁う云ふ話がございます。其の、誰にも言ふな、と堅く口留 :318/628
                ……如何でござる、はゝゝはゝ。」           :319/628
      「其の穴のない天保銭が、当主でございます。多額納税議員、玉脇斉之助。令夫 :321/628
を殿、其の歌をかいた美人であります、如何でございます、貴下、」            :321/628
    「先づお茶を一ツ。御約束通り渋茶でござつて、碌にお茶台もありませんかはりには :325/628
ぎ下さい。秋になりますると、これで町へ遠うございますかはりには、栗柿に事を缺きませぬ :325/628
石段だけも、婀娜な御本尊へは路が近うなつてございますから、はゝはゝ。         :330/628
うで心苦しい。此処でありますと大きに寛ぐでございます。                :331/628
               其処で客人でございます。――              :333/628
暑のみぎりでありました。浜の散歩から返つてござつて、(和尚さん、些と海へ行つて御覧な :338/628
              これは御存じでございませう。」              :341/628
玄関へ石を敷詰めた、素ばらしい門のある邸がございませう。あれが、それ、玉脇の住居で。 :343/628
は、御新姐、申すまでもない、そちらに居たでございます。 で其の――小松橋を渡ると、急 :345/628
  と言はれたは、即ち、それ、玉脇の……でございます。                :346/628
した、と串戯にな、団扇で煽ぎながら聞いたでございます。                :347/628
            (雪舟の筆は如何でござつた。)                :363/628
くらゐ、御歩行には宜しいが、矢張雲がくれでござつたか。)               :366/628
笑をしなさつたつけ……それが真実になつたでございます。                :374/628
し旁々、今日は例のは如何で、などと申したでございます。                :376/628
詰の岸に踞んで、ト釣つて居たものがあつたでござる。橋詰の小店、荒物を商ふ家の亭主で、 :386/628
          渾名を一厘土器と申すでござる。天窓の真中の兀工合が、宛然ですて― :387/628
つたさうで。小児だから、辞儀も挨拶もないでございます。                :392/628
             四五日、引篭つてござつたほどで。              :399/628
うな。迷ひと申すはおそろしい、情ないものでござる。世間大概の馬鹿も、これほどなことは :400/628
。世間大概の馬鹿も、これほどなことはないでございます。                :400/628
                 「其処でございます、御新姐はな、年紀は、さて、誰が :424/628
        「否、どれも実子ではないでございます。」               :426/628
妻についても、まづ、一くさりのお話はあるでございますが、それは余事ゆゑに申さずとも宜 :428/628
ちなのか、誰の娘だか、妹だか、皆目分らんでございます。貸して、かたに取つたか、出して :430/628
売の上りだらうなどと、甚しい沙汰をするのがござつて、丁と底知れずの池に棲む、ぬしと言 :430/628
りに見掛けましても、何んとも当りがつかぬでございます。勿論又、坊主に鑑定の出来よう筈 :434/628
やうに婀娜なと言うて、水道の水で洗ひ髪ではござらぬ。人跡絶えた山中の温泉に、唯一人雪 :436/628
婦人、従うて、罪も報も浅からぬげに見えるでございます。                :437/628
やありますが、此の松原は、野開きにいたしてござる。中には汐入の、一寸大きな池もありま :442/628
か、あのくらゐ世の中に嫌はれるものも少なうござる。                  :449/628
御新姐のためには牢獄ででもあるやうな考へでござるから。                :457/628
  蝶の目からも、余りふは/\して見えたでござらう。小松の中をふらつく自分も、何んだ :460/628
つて木戸に迎へよ、と睨むばかりに瞻めたのでござるさうな。些と尋常事でありませんな。  :472/628
て、ふらりと出ると、田舎には荒物屋が多いでございます、紙、煙草、蚊遣香、勝手道具、何 :479/628
す、負けた方は笑ひ出す、涎と何んかと一緒でござらう。鼻をつまんだ禅門、苦々しき顔色で :487/628
             是を待つて居たでございますな。               :493/628
お言ひなさい、どうせ寝られないんだから可うございます。怨みますよ。夢にでもお目にかゝ :497/628
 其方と、此方で、高声でな。尤も隣り近所はござらぬ。かけかまひなしで、電話の仮声まじ :504/628
にいらつしやると承りましたに、つい御近所でございます。                :522/628
            「ねんばり一湿りでございませう。地雨にはなりますまい。何、又 :527/628
せう。地雨にはなりますまい。何、又、雨具もござる。芝居を御見物の思召がなくば、まあ御 :527/628
もさ、面白可笑しく、此方も見物に参る気でもござると、ぢつと落着いては居られない程、浮 :528/628
うだ。夜中に聞いて、狸囃子と言ふのも至極でございます。                :531/628
は情に激して、発奮んだ仕事ではなかつたのでございます。                :535/628
つたら、海に溺れるやうなことも起らなんだでございませう。               :536/628
青田を抱へた処もあり、炭焼小屋を包んだ処もございます。                :545/628
、彼是大仏ぐらゐな、石地蔵が無手と胡坐してござります。それがさ、石地蔵と申し伝へるば :547/628
宜しい。妙にお顔の尖がつた処が、拝むと凄うござつてな。                :547/628
、これから山越をなさる方が、うつかり其処へござつて、唐突の山仏に胆を潰すと申します。 :548/628
         是について、何かいはれのございましたことか、一々女の名と、亥年、午 :550/628
亥年、午年、幾歳、幾歳、年齢とが彫りつけてございましてな、何時の世にか、諸国の婦人た :550/628
国の婦人たちが、挙つて、心願を篭めたものでございませう。処で、雨露に黒髪は霜と消え、 :550/628
せんが、扨て然う聞くと、なほ気味が悪いではございませんか。              :550/628
すが、客人の話について、些と考へました事がござる。客人は、それ、其の山路を行かれたの :551/628
の山路へ、堂の左の、巌間を抜けて出たものでございます。                :554/628
たので。客人は、高い処から見物をなさる気でござつた。                 :556/628
         入り口はまだ月のたよりがございます。樹の下を、草を分けて参りますと :557/628
の村へ続いた路のある処が、彼方此方に幾干もございます。                :557/628
夜更らしい景色に視めて、しばらく茫然としてござつたさうな。              :564/628
      矢張同一やうな平な土で、客人のござる丘と、向うの丘との中に箕の形になつた :568/628
が、箕の形の、一方はそれ祭礼に続く谷の路でございませう。其の谷の方に寄つた畳なら八畳 :570/628
交つて、投銭が飛んで居たらしく見えたさうでございます。                :585/628
けで。何んの飾つけも、道具だてもあるのではござらぬ。何か、身体もぞく/\して、余り見 :586/628
へ斜めにかゝつた、一幅の白い靄が同じく幕でございました。むら/\と両方から舞台際へ引 :588/628
なく歩行いて来て、やがて其の舞台へ上つたでございますが、其処へ来ると、並の大きさの、 :592/628
合はせにぴつたり坐つた処で、此方を向いたでございませう、顔を見ると自分です。」    :601/628
、恁う山形に引いて、下へ一ツ、△を書いたでございますな、三角を。           :608/628
              翌日は一日寝てござつた。午すぎに女中が二人ついて、此の御 :621/628
やう、暑いのに、貴下、此の障子を閉切つたでございますよ。               :621/628
我と我を、手足も縛るばかり、謹んで引篭つてござつたし、私も亦油断なく見張つて居たでご :623/628
てござつたし、私も亦油断なく見張つて居たでございますが、貴下、聊か目を離しました僅の :623/628
客人は又其晩のやうな芝居が見たくなつたのでございませう。               :625/628
て居ると申伝へるでありますが、如何なものでございますかな。」             :627/628


『春昼後刻』 泉鏡花を読む

、お庇様で、私、えれえ手柄して礼を聞いたでござりやすよ。」              :30/444
               「迷惑処ではござりましねえ、かさね/\礼を言はれて、私 :33/444
御新姐は、気分が勝れねえとつて、二階に寝てござらしけえ。               :41/444
背戸口から御新姐が、紫色の蝙蝠傘さして出てござつて、(爺やさん、今ほどは難有う。其の :42/444
 「それ見えるでがさ。の、彼処さ土手の上にござらつしやる。」             :50/444
      「彼処さ、それ、傘の陰に憩んでござる。はゝはゝ、礼を聞かつせえ、待つてる :54/444
    「貴下のやうなお姿だ、と聞きましてございます。先刻は、真に御心配下さいまして :79/444
したら、どうしませう。お庇様で助かりましてございますよ。難有う存じます。」      :87/444
                 「何んでございますか、聞かして頂戴。」       :108/444
「お足袋が泥だらけになりました、直き其処でござんすから、一寸おいすがせ申しませう。お :134/444
      「然う云ふつもりで申上げたんでござんせんことは、よく分つてますぢやありま :148/444
                 言の綾もございますわ。朝顔の葉を御覧なさいまし、表 :160/444
に、恋しい懐しい方があるとしませうね。可うござんすか……」              :170/444
のに、爾時は、どんな心持でと言つて可いのでございませうね。              :176/444
かはないではありませんか。それを申したんでございますよ。」              :177/444
た日の光にほかほかと、土も人膚のやうに暖うござんす。竹があつても暗くなく、花に陰もあ :189/444
/\と夢を見ますやうな、此の春の日中なんでございますがね、貴下、これをどうお考へなさ :191/444
                「お嬉しうございますか。」              :198/444
                「お賑かでございますか。」              :200/444
           「私は心持が悪いんでございます、丁ど貴下のお姿を拝みました時の :202/444
いことは。矢張、夢に賑かな処を見るやうではござんすまいか。二歳か三歳ぐらゐの時に、乳 :207/444
柔かな木の葉の尖で、骨を抜かれますやうではございませんか。こんな時には、肌が蕩けるの :208/444
の貴下、叱られて出る涙と慰められて出る涙とござんすのね。此の春の日に出ますのは、其の :209/444
。ぢや、もう私も其のお話をいたしても差支へございませんのね。」            :240/444
                  「可うございます。はゝゝはゝ。」         :241/444
降り出して来たやうに、寝て居て思はれたのでございます。                :245/444
世渡草、商人の仮声物真似。先づ神田辺の事でござりまして、えゝ、大家の店前にござります :248/444
田辺の事でござりまして、えゝ、大家の店前にござります。夜のしら/\明けに、小僧さんが :248/444
な声が、流れ星のやうに、尾を曳いて響くんでございますの。               :251/444
同一ところまで言つて、お銭をねだりますんでございますがね、暖い、ねんばりした雨も、其 :253/444
強く雨が来て当ります時、内の門へ参つたのでございます。                :254/444
              と言ひ出すぢやございませんか。              :256/444
世渡草、商人の仮声物真似。先づ神田辺の事でござりまして、えゝ、大家の店さきでござりま :257/444
辺の事でござりまして、えゝ、大家の店さきでござります。夜のしら/\あけに、小僧さんが :257/444
ましたまでに、遠くから丁ど十三度聞いたのでございます。」               :260/444
                 (門附でございます。)               :275/444
                 お恥しうございますわ。               :282/444
します内も考へられます。女中に聞いたのでもございませんのに――            :289/444
ひさうですから、ぶら/\日向へ出て来たんでございます。                :290/444
貴下、真個に未来と云ふものはありますものでございませうか知ら。」           :293/444
に、唯居ては、谷戸口の番人のやうでをかしうござんすから、いつかツからはじめたんですわ :318/444
             大層評判が宜しうございますから……何ですよ、此頃に絵具を持 :319/444
、此の四角いのが田圃だと思へばそれでもようござんす。それから○い顔にして、□い胴にし :320/444
て居る、今戸焼の姉様だと思へばそれでも可うございます、袴を穿いた殿様だと思へばそれで :320/444
                「否、可うござんすよ、さあ、兄や、行つて来な。」   :352/444


『天守物語』 泉鏡花を読む

》す)これは、まあ、まことに、いゝ見晴しでございますね。               :27/480
 葛 あの猪苗代のお姫様がお遊びにおいででございますから。              :28/480
鬱陶しからうと思ひまして。それには、申分のございませんお日和でございますし、遠山はも :29/480
して。それには、申分のございませんお日和でございますし、遠山はもう、もみぢいたしまし :29/480
たちにしては、感心にお気のつきましたことでございます。                :31/480
     撫子 否《いえ》、魚を釣るのではございません。               :34/480
 旦那様の御前に、丁《ちやう》ど活けるのがございませんから、皆で取つて差上げようと存 :35/480
じまして、花を……あの、秋草を釣りますのでございますよ。               :35/480
 桔梗 えゝ、釣れますとも、尤も、新発明でございます。                :38/480
が、お用ゐに成ります。……餌《ゑさ》の儀でござんすがね。               :39/480
         撫子 はい、それは白露でございますわ。               :40/480
\、今頃は、露を沢山《たんと》欲しがるのでございますよ。刻限も七つ時、まだ夕露も夜露 :41/480
よ。刻限も七つ時、まだ夕露も夜露もないのでございますもの。(隣を視る)ご覧なさいまし :41/480
人《おくさま》は、何処へおいで遊ばしたのでございますえ。早くお帰り遊ばせば可《よ》う :58/480
ございますえ。早くお帰り遊ばせば可《よ》うございますね。               :58/480
御含みでいらつしやるから、ほどなくお帰りでござんせう。――皆さんが、お心入れの御馳走 :61/480
も胡蝶《てふ》もお気に入つて、お嬉しいんでございませう。               :65/480
 女郎花 あれ、夫人《おくさま》がお帰りでございますよ。               :67/480
《かるかや》を、お被《か》け遊ばしたやうにござります。                :76/480
    薄 はい、お姫様は、やがてお入りでござりませう。それにつけましても、お前様お :83/480
まし、おめしものが濡れまして、お気味が悪うござりませう。               :97/480
允殿館《いんでんくわん》のあるじ朱の盤坊でござる。即ち猪苗代の城、亀姫君の御供をいた :117/480
          簿 夫人も、お待兼ねでございます。                :120/480
              舌長姥 御意にござります。……海も山もさしわたしに、風で :141/480
ら、五百里……されば五百三十里、もそつともござりませうぞ。              :141/480
                 亀姫 でございますから、お姉様《あねえさま》は、私 :143/480
から、お姉様《あねえさま》は、私がお可愛うございませう。               :143/480
お心入れの土産が此に。申すは、差出がましうござるなれど、これは格別、奥方様の思召《お :147/480
葉の花が蝶のやうに飛びまして、お美しい事でござる。……さて、此方《こなた》より申す儀 :153/480
、奥方様、此の品ばかりはお可厭《いや》ではござるまい。                :153/480
た羹《あつもの》は、埃溜《はきだめ》の汁でござるわの、お塩梅《あんばい》には寄りませ :159/480
此の姫路の城の殿様の顔に、よく似ているではござんせぬか。               :165/480
       桔梗 真《ほん》に、瓜二つでございますねえ。              :166/480
苗代亀ヶ城《しろ》の主、武田衛門之介の首でございますよ。               :168/480
咽喉《のど》へさゝつて、それで亡くなるのでございますから、今頃丁どそのお膳が出たぐら :170/480
いますから、今頃丁どそのお膳が出たぐらゐでございますよ。(ふと驚く。扇子を落す)まあ :170/480
    夫人 私が気をつけます、可《よ》うござんす。(扇子を添へて首を受取る)お前た :173/480
   夫の盤 吉祥天女、御功徳《くどく》でござる。(肱を張つて叩頭す。)       :202/480
酒、山峰の蜜、蟻の甘露、諸白《もろはく》もござります。が、お二人様のお手鞠は、唄を聞 :205/480
えませぬ。唯もう、長生《ながいき》がしたうござりましてなう。             :205/480
                葛 利験はござんせうけれどな、そんな話は面白うござん :218/480
利験はござんせうけれどな、そんな話は面白うござんせぬ。                :218/480
        ――私が姉《あね》さん三人ござる、一人姉さん鼓が上手、        :221/480
      いつちよいのが下谷《したや》にござる。                  :223/480
         下谷一番達《だて》しやでござる。二両で帯買うて、          :224/480
 さあ、お先達、よしの葉の、よい女郎衆ではござんせぬが、参つてお酌。(扇を開く)   :227/480
            桔梗 その利験ならござんせう。女郎花《をみなへし》さん、撫子 :229/480
城の太守に仕ふる、武士の一人《いちにん》でございます。                :284/480
あたりへ隠れました。行方を求めよとの御意でございます。                :288/480
       図書 お天守は、殿様のものでございます。如何《いか》なる事がありませう :294/480
いたせ、私のものでないことは確《たしか》でございます。自分のものでないものを、殿様の :296/480
は、五十万石のご家中、誰一人参りますものはございますまい。皆生命《いのち》が大切でご :300/480
はございますまい。皆生命《いのち》が大切でございますから。              :300/480
へ上りますものがないために、急にお呼出しでございました。その御上使は、実は私に切腹仰 :302/480
仰せつけの処を、急に御模様がへになつたのでございます。                :302/480
            図書 そのお約束でございました。               :304/480
  図書 は、恐《おそれ》入つたる次第ではございますが、お姿を見ました事を、主人に申 :308/480
お姿を見ました事を、主人に申まして差支へはございませんか。              :308/480
いましめ》をも憚《はばか》らず推参いたしてございます。                :326/480
腹を申しつけたと言ひました。それは何の罪でございます。                :334/480
その越度《おちど》、その罪過《ざいくわ》でございます。                :335/480
         図書 主《しう》と家来でございます。仰せのまゝ生命《いのち》をさし :337/480
生命《いのち》をさし出しますのが臣たる道でございます。                :337/480
鷹とあの人間の生命とを取《とり》かへるのでございますか。よしそれも、貴方が、貴方の過 :340/480
ない、所詮活《い》けてはお帰しない掟なのでございますか。               :359/480
        夫人 おはなむけがあるのでござんす。――人間は疑《うたがひ》深い。卑 :362/480
              薄 立派な方でございます。                :375/480
遊ばすまで、何の、生命をお取り遊ばすのではございませんのに。             :379/480
う》と、其のお力で、無理にもお引留めが可うございますのに。何の、抵抗《てむかひ》をし :381/480
          薄 屹《きつ》と後縁がござりますよ。               :385/480
           薄 これは又御挨拶でござります――あれ、何やら、御天守下が騒が :389/480
の帰るのを待兼ねて、推出《おしだ》したのでござります。もしえ/\、図書様のお姿が小さ :391/480
の、兄弟の、あの首を見せたら、何《ど》うでございませう。あゝ、御家老が居ます。あの親 :393/480
       薄 えゝ、もう可《い》いではございません。図書様を賊だ、と言ひます。御 :395/480
逆人、殿様のお首に手を掛けたも同然な逆賊でございますとさ。お庇《かげ》で兜が戻つたの :395/480
くら》になりました。誰も目が見えませんのでございます。――(口々に一同はつと泣く声、 :444/480
にながらへておわすを土産に、冥土へ行くのでございます。                :451/480
世も要らないが、せめて恁《か》うして居たうござんす。                 :456/480


『歌行燈』 従吾所好

  「へい、(戻馬乗らんせんか、)と言ふでございますかね、戻馬乗らんせんか。」    :31/744
              「えゝ、二台でござりますね。」              :44/744
  「しかし、此のお天気続きで、先づ結構でござりやすよ。」と何もない、煤けた天井を仰 :80/744
                「お銚子でございますかい。」と莞爾〈につこり〉する。 :83/744
                 「湊屋でございまさ、なあ、」と女房が、釜の前から亭 :101/744
、湊屋、湊屋。此の土地ぢや、まあ彼処一軒でござりますよ。古い家ぢやが名代で。前〈ぜん :102/744
              「あい。合点でございますが、あんた、豪い大酒〈たいしゆ〉 :165/744
いたします。矢張り松毬で焼きませぬと美味うござりませんで、当家〈うち〉では蒸したのを :218/744
      「あれ、あなたは弥次郎兵衛様でございますな。」              :228/744
し、此の辺に棚からぶら下がつたやうな宿屋はござりませんかと、賑かな町の中を独りとぼ/ :260/744
            「もし、お騒がしうござりませう、お気の毒でござります。丁ど霜 :268/744
「もし、お騒がしうござりませう、お気の毒でござります。丁ど霜月でな、今年度の新兵さん :268/744
送別会ぢや言うて、彼方此方、皆、此の景気でござります。でもな、お寝〈よ〉ります時分に :268/744
    「かいな、旦那さん、お気の毒さまでござります。狭い土地に、数のない芸妓やに依 :283/744
やう〉が好いとか、芸がたぎつたとか言ふのでござりませぬとなあ……」          :283/744
なんだが、漸と分つたわな、何んともお待遠でござんしたの。」              :355/744
れでも、長年年期を入れました杉山流のものでござります。鳩尾に鍼をお打たせになりまして :370/744
ましても、決して間違ひのあるやうなものではござりませぬ。」と呆れたやうに、按摩の剥く :370/744
か其の、何事か存じませぬが、按摩は大丈夫でござります。」と、これもおどつく。     :389/744
       (あの娘で可いのかな、他にもござりますよつて。)            :455/744
             (先生様の……でござりますか、早速然う申しませう。)    :462/744
、と思ひますと……お役に立たず、極りが悪うございまして、お銚子を持ちますにも手が震へ :497/744
調子が一つ出来ません。性来〈うまれつき〉でござんせう。」               :511/744
から、言ひます事は出来ません、お恥しいのでございますが、舞の真似が少しばかり立てます :519/744
用も通越した、調子はづれ、其の上覚えが悪うござんして、長唄の宵や待ちの三味線のテンも :575/744
、胸を割つて刻込むやうに教へて下すつたんでございますけれど、自分でも悲しい。……暁の :575/744
か……千鳥も鳴く、私も泣く。……お恥かしうござんす。」                :581/744
ひ/\〉に、(こいし、こいし。)と泣くのでござんす。                 :588/744
、わつと笑ふやら、中には恐い怖いと云ふ人もござんす。何故言ふと、五日ばかり、あの私が :624/744
がな、天狗様に誘ひ出された、と風説したのでござんすから。」              :624/744
、行かひはせぬ遠い中でも、姉さんの縁続きでござんすから、預けるつもりで寄越されました :628/744
には私の声が聞かしたくない、叔父が一人寝てござるんだ。勇士は霜の気勢を知るとさ――唯 :655/744
……同じ喜多八氏の外にはあるまい。然やうでござらう、恩地、)             :657/744
             「相変らず未熟でござる。」                 :713/744


『夜行巡査』 青空文庫

うなりますることやらと、人心地《ごこち》もござりませなんだ。いやもうから意気地《いく :10/164
ませなんだ。いやもうから意気地《いくじ》がござりません代わりにゃ、けっして後ろ暗いこ :10/164
いまとても別にぶちょうほうのあったわけではござりませんが、股引きが破れまして、膝から :10/164
が破れまして、膝から下が露出《むきだ》しでござりますので、見苦しいと、こんなにおっし :10/164
おっしゃります、へい、御規則も心得ないではござりませんが、つい届きませんもんで、へい :10/164
か》を抱いて寝ていられるもったいない身分でござりましたが、せがれはな、おまえさん、こ :15/164
いくら稼いでもその日を越すことができにくうござりますから、自然装《なり》なんぞも構う :15/164
とも申しましたなれど、いっこうお肯き入れがござりませんので」             :18/164
          「はい、恐れ入りましてございます」                :45/164
              「夜分のことでございますから、どうぞ旦那様お慈悲でござい :47/164
ことでございますから、どうぞ旦那様お慈悲でございます。大眼《おおめ》に御覧あそばして :47/164
 「たまりません、もし旦那、どうぞ、後生でございます。しぱらくここにお置きあそばして :51/164
曝しへ出ましては、こ、この子がかわいそうでございます。いろいろ災難に逢いまして、にわ :51/164
           「伯父さんおあぶのうございますよ」               :57/164
             「ひどく寂しゅうございますから、もう一時前でもございましょ :66/164
どく寂しゅうございますから、もう一時前でもございましょうか」             :66/164
                  「ようございますわね、もう近いんですもの」    :68/164
           「たいそうおみごとでございました」               :72/164
さん、あなたまあ往来で、何をおっしゃるのでございます。早く帰ろうじゃございませんか」 :94/164
をおっしゃるのでございます。早く帰ろうじゃございませんか」              :94/164
はあなた、あのおかたになんぞお悪いことでもございますの」               :106/164
「そんなら伯父さん、まあどうすりゃいいのでございます」と思い詰めたる体にて問いぬ。  :116/164


『薬草取』 青空文庫

しました。お姿は些《ちっ》ともそうらしくはございませんが、結構な御経《おきょう》をお :15/283
すから、私《わたくし》は、あの、御出家ではございませんでも、御修行者《ごしゅぎょうじ :15/283
     「はい、二俣村《ふたまたむら》でございます。」               :22/283
                「さようでございます。もう路《みち》が悪うございまし :24/283
「さようでございます。もう路《みち》が悪うございまして、車が通りませんものですから、 :24/283
たきぎ》でも、残らず馬に附けて出しますのでございます。                :24/283
ら、一人で五疋《ひき》も曳《ひ》きますのでございますよ。」              :25/283
              「はい、一人でございます、そしてこちらへ参りますまで、お :28/283
お姿を見ましたのは、貴方《あなた》ばかりでございますよ。」              :28/283
》の衆《しゅう》にお尋ねなすって可《よ》うございました。そんなに嶮《けわ》しい坂では :35/283
ございました。そんなに嶮《けわ》しい坂ではございませんが、些《ちっ》とも人が通《かよ :35/283
通《かよ》いませんから、誠に知れにくいのでございます。」               :35/283
                    「ございませんとも、この路筋《みちすじ》さえ :38/283
いほど、毒虫もむらむらして、どんなに難儀でございましょう。              :38/283
ま》になって、餓死《うえじに》をするそうでございます。                :39/283
人をお入れなさらなかった所為《せい》なんでございますって。御領主ばかりでもござんせん :43/283
い》なんでございますって。御領主ばかりでもござんせん。結構な御薬《おくすり》の採れま :43/283
、出入《ではいり》をお止《と》め遊ばすのでございましょうと存じます。」        :43/283
た》がおいでなさいましても、大事ないそうでございます。薬の草もあります上は、毒な草も :52/283
。薬の草もあります上は、毒な草もないことはございません。無暗《むやみ》な者が採ります :52/283
ら、昔から禁札《きんさつ》が打ってあるのでございましょう。              :52/283
ても些《ちっ》ともお気遣《きづかい》な事はございますまいと存じます。」        :53/283
た》はお薬になる草を採りにおいでなさるのでござんすかい。」              :55/283
 「御覧の通《とおり》、花を売りますものでござんす。二日置き、三日置《おき》に参って :57/283
《いただき》に海のような大《おおき》な池がございます。そしてこの山路《やまみち》は何 :58/283
》、杜若《かきつばた》、河骨《こうほね》はござんせんが、躑躅《つつじ》も山吹《やまぶ :58/283
が頂けます。まあ、どんなに綺麗《きれい》でございましょう。              :58/283
採り遊ばすお心当《こころあたり》はどの辺でござんすえ。」               :59/283
                 「どうでございましょう、この二、三ヶ月の間は、何処 :71/283
まご》うようなそれらしい花の梢《こずえ》もござんせぬが、大方《おおかた》この花片《は :71/283
《まちかた》から逃げて来て、遊んでいるのでございましょう。それともあっちこっち山の中 :71/283
、こう桜が散って参りますから、直《じき》でございます。私も其処《そこ》まで、お供いた :74/283
日こそ貴方《あなた》のようなお連《つれ》がございますけれど、平時《いつも》は一人で参 :74/283
から、日一杯《ひいっぱい》に里まで帰るのでございます。」               :74/283
のように、樵夫《きこり》がお教え申したのでござんすえ。」               :76/283
           「ええ、訳《わけ》はございません、貴方《あなた》、そんなに可恐 :81/283
存じで、その上、お薬を採りに入らしったのでございますか。」              :81/283
っちゃ》ったりする処《ところ》ではないのでございます。まあ、難有《ありがた》いお寺の :85/283
《つつし》みませんとなりませんばかりなのでございます。そして貴方《あなた》は、美女ヶ :85/283
時《いつ》か一度お上《のぼ》り遊ばした事がございますか。」              :85/283
うぞ、その方がお話も承《うけたまわ》りようございますから。」             :93/283
ぐ》って出ます処《ところ》が、もう花の原でございます。」               :103/283
い》で遊ばすように遠い処とお思いなさるのでございましょう。」             :105/283
         「御道理《ごもっとも》でございますねえ。そして母様《おっかさん》は :132/283
もしゅう》小児衆、私《わし》が許《とこ》へござれ、と言う。疾《はや》く白媼《しろうば :194/283
   「貴方《あなた》、もう些《ちっ》とでございますよ。」              :228/283
きか》せなさいまし、そしてその時、その花はござんしたか。」              :231/283
えり》します時は、馴れて何とも思いませんでございましたけれども、〓《なま》じお連《つ :235/283
    「そしてまあ、どんな処《ところ》にございましたえ。」             :237/283


『夜叉ヶ池』 青空文庫

髪の鬢《びん》に手を当てて)でも、白いのでございますもの。              :35/564
             百合 可《よ》うございますよ。               :37/564
         百合 おなぶり遊ばすんでございますものを。――そして旦那様《だんな :41/564
これは翌朝《あした》の分を仕掛けておくのでございますよ。               :45/564
                百合 何でございますねえ。……お菜《かず》も、あの、 :47/564
        百合 はい、どういたすのでございますか。               :55/564
            百合 貴方、お暑うございましょう。開けておおきなさいましても :59/564
              百合 さようでございます。                :68/564
百合 (笊《ざる》を抱えて立つ)ええ、大事ござんせん。けれども貴客《あなた》、御串戯 :70/564
失礼とは存じましたが、ちょっと申上げたのでございます。さあ、どうぞ御遠慮なく、上って :72/564
             百合 お易い事でございます。さあ、貴客《あなた》、これへお :74/564
      百合 真《まこと》に見苦しゅうございます。                :76/564
焼けたと申しまして、以前から、寺はないのでございます。                :78/564
ひ》の下に、梨《ありのみ》が冷《ひや》してござんす、上げましょう。(と夕顔の蔭に立廻 :84/564
 百合 もう、年をとりますと、花どころではございません。早く干瓢《かんぴょう》にでも :88/564
ありますッて……酷《ひど》い旱《ひでり》でございますもの。              :96/564
ひ》にうけて落します……細い流《ながれ》でございますが、石に当って、りんりんと佳《い :98/564
百合 あの、湧きますのは、裏の崕《がけ》でござんすけれど。              :102/564
に、夜叉ヶ池と申します。凄《すご》い大池がございます。その水底《みなそこ》には竜が棲 :104/564
紅ほどな小粒も交《まじ》って、それは綺麗でございますのを、お池の主の眷属《けんぞく》 :104/564
がこぼれたなんのッて、気味が悪いと申すんでございますから。……            :104/564
飲んで何ともない、それをあの、人は疑うのでございます。                :106/564
めっそう》な。お茶代なぞ頂くのではないのでござんす。                 :114/564
りません。そのかわり、短いのでも可《よ》うござんす、お談話《はなし》を一つ、お聞かせ :118/564
方々旅を遊ばした、面白い、珍しい、お話しでございます。                :120/564
礼、この村里の人たちにも、お間に合うものがござんして、そのお代をと云う方には、誰方《 :122/564
お聞かせ下さいますと、お泊め申しもするのでござんす。                 :122/564
百合 いいえ、外《ほか》にはお月様ばかりでござんす。                 :128/564
             百合 もう沢山でございます。                :134/564
のは、前の牡丹餅の化けた方、あとのは沢山でございます。                :136/564
         百合 どうぞ、……結構でございますから、……そして貴客、もう暗くな :138/564
なります、お宿をお取り遊ばすにも御不自由でございましょうから。……          :138/564
、お化《ばけ》より、都の人が可恐《こお》うござんす、……さ、貴客どうぞ。       :142/564
話なら、桃太郎の宝を取って帰った方が結構でござる、と言う。癪《しゃく》に障った――勝 :202/564
髪美しく立出づる)私、どうしたら可《よ》うございましょう。              :214/564
 ほんとうに、たよりのない身体《からだ》でございます。何にも存じません、不束《ふつつ :230/564
。何にも存じません、不束《ふつつか》ものでございますけれど、貴客《あなた》、どうぞ御 :230/564
んもお早くお帰りなさいまし、坊やが寂しゅうございます。(と云いながら、学円の顔をみま :259/564
ぬし》様の嬢様さあ、お宮の住居《すまい》にござった時分は、背中に八枚鱗が生えた蛇体だ :271/564
ねえと見えるだ。まんだ、丈夫に活《い》きてござって、執殺《とりころ》されもさっしゃら :272/564
けて、ふと思い出いた私《わし》が身の罪科がござる。さて、言い兼ねましたが打開けて恥を :329/564
て、黒髪を洗いに来た山女の年増《としま》がござった。裸身《はだかみ》の色の白さに、つ :329/564
け、とほどには、おふみに遊ばされたに相違はござるまい。……これは一期《いちご》じゃ、 :331/564
身体《からだ》の光りで御覧ずるが可《よ》うござります。                :354/564
             姥 夜叉ヶ池へでござりましょう。              :364/564
せられます。お前様、ここに鐘《つりがね》がござります。                :368/564
す。……おいとしい事なれども、是非ない事にござります。                :370/564
は、両、親御様まで、第一お前様に御遺言ではございませぬか。              :374/564
五百年、七百年、盟約《ちかい》を忘れぬではござりませぬか。盟約を忘れませねばこそ、朝 :376/564
ますうちは、村里を水の底には沈められぬのでござります。                :376/564
しゃる。……身うちの衆をお召出し、お言葉がござりましては、わやくが、わやくになりませ :396/564
も絆《きずな》も切れますのは、まのあたりでござります。それまでお堪《こら》えなさりま :398/564
も、指で挟んで棄てましょうが、重いは義理でござりまするもの。             :401/564
               一同 大事にござります。                :411/564
         姥 社《やしろ》の百合でござります。                :420/564
            姥 おおせの通りでござります。                :424/564
          百合 叔父さん、後生でございます……晃さんの帰りますまで。    :454/564
    宅膳 引立《ひった》てて可《よ》うござる。                  :459/564
ち》あかんのう。私《わし》にまかせたが可うござんす。                 :462/564
、雨乞《あまごい》の模様を御見物にお揃いでござりますてな。              :467/564
)皆さん、私が死にます、言分《いいぶん》はござんすまい。(と云うより早く胸さきを、か :534/564


『湯島の境内』 青空文庫

着《くッつ》いていたがって、困った田舎嫁でございます。江戸は本郷も珍しくって見物がし :40/205
いよ。私の事はそんなに案じないが可《よ》うござんす。小児《こども》の時から髪を結うの :181/205


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 佐藤和雄(蟻) 2000.9.29