鏡花作品の語彙検索(KWIC)

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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

「御免なさいよ。」と、雀の方より、こっちが顔を見合わせて、悄気げつつ座敷へ引込んだ。 :11/143
々極《きまり》が悪くって、しばらく、背戸へ顔を出さなかった。             :12/143
なよ。」家内を呼出して、両方から、そっと、顔を差寄せると、じっとしたのが、微《かすか :14/143
仰向いて強請《ねだ》ると、あいよ、と言った顔色《かおつき》で、チチッ、チチッと幾度も :23/143
もかかわらず、親雀がスーッと来て叱るような顔をすると、喧嘩の嘴も、生意気な羽も、忽ち :24/143
》で暴れるから、このくらい、しみじみと雀の顔を見た事はない。ふっくりとも、ほっかりと :26/143
退治た。吃驚仰天《びっくりぎょうてん》した顔をしたが、ぽんと樋の口を突出されたように :32/143
六羽、また、七、八羽、横にずらりと並んで、顔を出しているのが常である。        :33/143
 いたいけしたるものあり。張子《はりこ》の顔や、練稚児《ねりちご》。しゅくしゃ結びに :40/143
もこぼさず、嘴で銜えたり、尾で跳ねたり、横顔で覗いたり、かくして、裏おもて、虫を漁り :50/143
  ……妙な事は、いま言った、萩また椿、朝顔の花、露草などは、枝にも蔓にも馴れ馴染《 :55/143
いくじ》なし、臆病。烏瓜《からすうり》、夕顔などは分けても知己《ちかづき》だろうのに :57/143
花なればこそ、些《ちっ》とでも変った人間の顔には、渠《かれ》らは大《おおい》なる用心 :62/143
休息かたがた。で、ものの言いぶりと人のいい顔色《かおつき》が、気を隔《お》かせなけれ :90/143
労《つかれ》には、みめよき女房の面が赤馬の顔に見えたと言う、むかし武士《さむらい》の :135/143
ばち》のふちに、一羽、ちょんと伝っていて、顔を見て、チイと鳴いた。          :138/143
気がする。……あの大漢《おおおとこ》のまる顔に、口許《くちもと》のちょぼんとしたのを :140/143
                  知らぬ顔して、何にも言わないで、南天燭《なんてん :143/143


『逢ふ夜』 従吾所好

のを、日が短かさうな、もの足りない、派手な顔して覗いて居たのが、ト其と見ると、見迎へ :7/97
痩せぎすな肩を出して、ほのかに白う差覗いた顔は、婀娜に細つて、且つあはれに窶れて居る :12/97
              と肩越に向けた顔は、ふツくりと、姉が二十の面影あり。   :51/97
                と嬉しい笑顔で、                   :60/97
        口で覘くか、と、ひつたりと顔を当てて、                :92/97


『絵本の春』 青空文庫

           ベソを掻《か》いて、顔を見て、                 :27/84
》って、蔽《おい》のかかった火桶を引寄せ、顔を見て、ふとった頬でニタニタと笑いながら :38/84
            と、小母さんは白い顔して、ぺろりとその真紅《まっか》な舌。  :51/84
と独言《ひとりごと》して、その時はじめて真顔になった。                :61/84
格子に、その半身、やがて、〓《ろう》たけた顔が覗《のぞ》いて、見送って消えた。    :67/84


『縁結び』 青空文庫

      吃驚《びっくり》して、ひょいと顔を上げると、横合から硝子窓《がらすまど》 :14/405
                 「そんな顔をなすったってようございます。ちっとも恐 :22/405
            と尋ねた時、謙造の顔がさっと暗くなった。新聞を窓《まど》へ翳 :47/405
           とひょいと横を向いて顔を廊下《ろうか》へ出したと思うと、ぎょッ :59/405
             女中はぼッとした顔色《かおつき》で、            :63/405
入口をぐっと仰《あお》いで、優《やさし》い顔で、                   :72/405
風采《ふうさい》、池田の宿《しゅく》より朝顔《あさがお》が参って候《そうろう》。   :77/405
しのあった熊野《ゆや》の踊《おどり》に、朝顔に扮《ふん》した美人である。       :79/405
も容色《きりょう》も立優《たちまさ》った朝顔だけれど、――名はお君という――その妓《 :80/405
紅《くちべに》濃《こ》く、目のぱっちりした顔を上げて、                :97/405
と》、肩に浴《あ》びた日を避《よ》けて、朝顔はらりと咲きかわりぬ。          :105/405
       「トそこに高髷に結った、瓜核顔《うりざねがお》で品のいい、何とも云えな :131/405
ども》の手を持添えて、その小児《こども》の顔を、上から俯目《ふしめ》に覗込《のぞきこ :131/405
             そこで、軽々しく顔が見られないだけに、二度なり、三度なり見 :141/405
           しかしどっちにしろ、顔容《かおかたち》は判然《はっきり》今も覚 :142/405
          とはかなそうに、お君の顔色が寂《さび》しかった。         :146/405
騒ぐんだ、恐《こわ》いぞ、と云うから、乳へ顔を押着《おッつ》けて息を殺して寝たっけが :161/405
こだき》にして飛んで帰ったがね。私は何だか顔はあかし、天狗《てんぐ》にさらわれて行っ :171/405
いた時、くるりと向うむきになって、格子戸へ顔をつけて、両袖でその白い顔を包んで、消え :180/405
なって、格子戸へ顔をつけて、両袖でその白い顔を包んで、消えそうな後姿で、ふるえながら :180/405
   と二声《ふたこえ》に、引起された涙の顔。                    :204/405
     窓を切った松の樹の横枝へ、お君の顔と正面に、山を背負《しょ》って、むずと掴 :220/405
何《なん》にか押向《おしむ》けられたように顔を向ける。                :240/405
                    と顔を合わせて、フトその腕《かいな》を解いた :254/405
のない声をかけて、番傘を横に開いて、出した顔は見知越《みしりごし》。一昨日《おととい :260/405
みしりごし》。一昨日《おととい》もちょっと顔を合わせた、峰《みね》の回向堂の堂守で、 :260/405
                    と顔を赤らめながら、             :275/405
耳を澄まして、あわれに物寂《ものさびし》い顔である。                 :302/405
の美い、そして恍惚《うっとり》となっている顔を見て、                 :346/405
あ、肖《に》たようなとぞっとした時、そっと顔を上げて、莞爾《にっこり》したのが、お向 :359/405
      と云う時、お君はその机にひたと顔をつけて、うつぶしになった。あらぬ俤《お :363/405
ふ》いた次第だった。翌晩《あくるばん》、朝顔を踊った、お前さんを見たんだよ。目前《め :364/405
み》なんだ。お君さん、母様《おっかさん》の顔が見えたでしょう、見えたでしょう。一心に :393/405
          「母様《おっかさん》の顔は、姉さんの姿は、私の、謙造の胸にある! :398/405
ると、恍惚《うっとり》した雪のようなお君の顔の、美しく優しい眉《まゆ》のあたりを、ち :399/405


『古狢』 青空文庫

             と同伴《つれ》の顔を見た時は、もうその市場の裡《なか》を半 :48/310
タと顕《あら》われた。廓《くるわ》の美人で顔がきく。この権ちゃんが顕われると、外土間 :88/310
流に――続いて説明に及ぶと、澄んで沈んだ真顔になって、鹿落の旅館の、その三つ並んだ真 :135/310
名古屋の客は――註しておくが、その晩以来、顔馴染にもなり、音信《おとずれ》もするけれ :162/310
、長襦袢だか。――六畳だし……お藻代さんの顔の前、枕まではゆきにくい。お信が、ぼうと :186/310
、お藻代さんの、恍惚《うっとり》したその寝顔へ、蓋《ふた》も飛んで、仰向《あおむ》け :188/310
っとどうぞ、旦那。)と引留めて置いて、まだ顔も洗わなかったそうですけれど、トントンと :194/310
いうのでは、玉子色の絹の手巾《ハンケチ》て顔を隠した、その手巾が、もう附着《くッつ》 :201/310
             外套氏は、お町の顔に当てた手巾を慌《あわただ》しく手で払っ :203/310
すし、突伏《つっぷ》してでもいれば、誰にも顔は見られませんの。            :208/310
目なさも通越して、ひけめのあるのは大火傷の顔のお化でしょう。             :216/310
            「それにね、首……顔がないんです。あの、冷いほど、真白《まっ :224/310
、白魚が湧《わ》いたように、お藻代さんの、顔だの、頬だのが。             :224/310
に――二人は、歩行《ある》き出した。お町の顔の利くことは、いつの間にか、蓮根の中へ寄 :227/310
    「その向《むき》の方なら、大概私が顔見知りよ。……いいえ、盗賊《どろぼう》や :237/310
らむらと立つ中へ、いきなり、くしゃくしゃの顔を突込《つっこ》んだ。          :269/310
に、低く踞《しゃが》んで、その湯葉の、長い顔を、目鼻もなしに、ぬっと擡《もた》げた。 :270/310
と、耳までのマスクで、口が開いた、その白い顔は、湯葉一枚を二倍にして、土間の真中《ま :271/310
が畝《うね》って舐め廻すと、ぐしゃぐしゃと顔一面、山女《あけび》を潰《つぶ》して真赤 :272/310
と思う時、ひいても離れなかった名古屋の客の顔が、湯気を飛ばして、辛うじて上るとともに :277/310
ひっかえ》すと、また向うから、容子といい、顔立もおなじような――これは島田髷《しまだ :306/310


『外科室』 青空文庫

げに、はたある者はあわただしげに、いずれも顔色穏やかならで、忙《せわ》しげなる小刻み :7/165
を絡《まと》いて、死骸のごとく横たわれる、顔の色あくまで白く、鼻高く、頤《おとがい》 :10/165
しく震いを帯びてぞ予が耳には達したる。その顔色はいかにしけん、にわかに少しく変わりた :20/165
謂《い》える声は判然として聞こえたり。一同顔を見合わせぬ。              :35/165
                  ために顔の色の動かざる者は、ただあの医学士一人あ :59/165
と白衣《びゃくえ》を染むるとともに、夫人の顔はもとのごとく、いと蒼白くなりけるが、は :109/165


『義血侠血』 青空文庫

あつれき》ようやくはなはだしきも、わずかに顔役の調和によりて、営業上相干《あいおか》 :6/706
はたして何者なるか。髪は櫛巻きに束ねて、素顔を自慢に〓脂《べに》のみを点《さ》したり :20/706
               「こっとらの顔が立たねえんだ」と他の一箇《ひとり》は叫 :63/706
                乗り合いは顔を見合わせて、この謎を解くに苦しめり。美 :126/706
ざれば、それかと白糸は間近に寄りて、男の寝顔を〓《のぞ》きたり。           :193/706
            「ほんとに罪のない顔をして寝ているよ」            :201/706
疑えり。月を浴びてものすごきまで美しき女の顔を、無遠慮に打ち眺めたる渠の眼色《めざし :214/706
うわけではないけれど、毎日何十人という客の顔を、いちいち覚えていられるものではない」 :235/706
             わびしげなる男の顔をつくづく視《なが》めて、白糸は渠の物語 :300/706
ち破れて、血は耳に迸出《ほとばし》らん。花顔柳腰の人、そもそもなんじは狐狸か、変化か :318/706
           「あれ、そんなこわい顔をしなくったっていいじゃありませんか。何 :364/706
〓《のぞ》きぬ。白糸はさっと赧《あから》む顔を背《そむ》けつつ、           :391/706
チの火のぱっと燃えたる影に、頬被りせる男の顔は赤く顕われぬ。黒き影法師も両三箇《ふた :491/706
かり陳《なら》べやがって、もうもうほんとに顔を見るのもいやなんだ。そのくせまた持って :539/706
そんな真似をした日には、二度と再び世の中に顔向けができない。ああ、恐ろしいことだ、… :549/706
世に生きていないつもりなら、羞汚《はじ》も顔向けもありはしない。大それたことだけれど :549/706
いたる旅商人《たびあきゅうど》は、卒然我は顔に喙を容れたり。             :599/706
           髭ある人は眼を「我は顔」に転じて、               :601/706
わず同音に嗟《うめ》きぬ。乗り合いは弁者の顔を〓《うかが》いて、その後段を渇望せり。 :615/706
》に並びたる、威儀ある紳士とその老母とは、顔を見合わせて迭《たが》いに色を動かせり。 :632/706
の老いたる役員は佇めり。渠は何気なく紳士の顔を見たりしが、にわかにわれを忘れてその瞳 :665/706
                  恩人の顔は蒼白《あおざ》めたり。その頬は削《こ》 :684/706


『五大力』 従吾所好

此の始末だ。……堪忍しねえ。私〈あつし〉の顔で、と云つたつて、売れもしねえ顔〈つら〉 :41/1139
あつし〉の顔で、と云つたつて、売れもしねえ顔〈つら〉をぎツくりと遣るやうで小恥かしい :41/1139
ゝ、幾干〈いくら〉がものだね。若い衆さん、顔もよく知つて居ますよ。心配をしなすつちや :44/1139
すかい。」と暖簾を払ふ、湯気に白けた優しい顔。袖に霜は置きながら、白無垢ではないらし :53/1139
      「名は違ふよ、何と云ふか。尤も顔を見れば、似て居るかもしれないが、」   :72/1139
               「其だつて、顔は見せます。三日月が二日月だつて、月の裏 :85/1139
おとしもの〉でもなさりましたか。」と実体な顔して訊く。                :90/1139
             と松も気の着いた顔色〈かほつき〉で、            :93/1139
                  また、顔の色が悪かつたのである。         :101/1139
のを託けるのに、出格子へ雨宿りして、ふつと顔を見合はせるのが、例の……と、そんな了簡 :204/1139
             と希有〈けぶ〉な顔して、まじ/\と云つた。         :223/1139
路を横に拡がつた、……其処を的〈あて〉に、顔を、姿を、と思つた。が、いざうれ、それと :287/1139
足駄を掬つて、ざぶりと流れた。驚く途端に、顔容〈かほかたち〉さへ、婦の片袖も何も見え :287/1139
                   が、顔はあはれ、白い頸を、肩で捩ぢるばかり邪慳 :327/1139
                 と背けた顔を俯向けて、眉も蔽ふ、と隠しながら、肩を :336/1139
                    「顔を見せないんだもの。」          :363/1139
                 「大変な顔だつたら何うなさいます。」        :366/1139
小弥太の袖から袂を離した。弥〈いや〉が上に顔を包むと気取つたが、婦が翳した其の傘に、 :367/1139
語つた時、梅川の行燈に褪せて、渠〈かれ〉の顔は白けて居た。              :368/1139
               が、(大変な顔だつたら何うします)――とそれ、婦が云つ :382/1139
          さあ、其のかはりに成る顔も形もの、同時〈いつしよ〉に茫として…… :389/1139
       円髷の従姉〈いとこ〉が困つた顔で酌をして居る前で、上目で睨んで、口を曲 :423/1139
から先電車のお世話に成るのに、……澄ました顔ぢや持てますまい。袂も変だし、其処で、気 :436/1139
身が、舷の上に一人。何処ともない水光に、横顔の靄ながら、ほんのりと白く見えた、結上げ :458/1139
ぢやないか。手も足もお乳も、胸も……一寸、顔をお見よ、私ではなくつて?……それ、あら :495/1139
のまんま、しり込みをして、でも、熟と叔父の顔を見返つて、潜門をちよろりと遁げた切、鼬 :535/1139
に扱ひやがる、長年もののお三どのが、部厚な顔を柱がくしで、頬を揺つてニヤ/\と、此方 :548/1139
まだ知らない、薄目を仰向けに、夕日で酔うた顔をして、日和下駄をかた/\、信玄袋を提げ :550/1139
   と叔母を呼んで、おつとりとした面長な顔を上げて、                :576/1139
つて、――其でも正気には成つた処へ、見舞に顔を見せた私に向つてはじめて云つた言葉だつ :587/1139
は除けて居た。高枕で、掻巻を深々と掛けて、顔ばかり出した、其の色艶も沈んだ叔父の顔が :590/1139
て、顔ばかり出した、其の色艶も沈んだ叔父の顔が、活きた名作の面のやうに見えたと思ふと :590/1139
                  従姉と顔を見合はせた。              :600/1139
つた遊女が、以前〈もと〉居た、はじめて私が顔を見た洲崎の楼〈うち〉のね、婦の部屋の床 :603/1139
           台湾から帰つたやうな顔をして、先刻お互に年も忘れた、喜の字の婆 :605/1139
ツと消して、莞爾〈につこり〉、……婆さんは顔を見ます。」               :610/1139
て、伊達巻の寝乱姿で、早や小さく成つた、朝顔の花を、蔓ながら、其処の掛花活へ、やせぎ :623/1139
             「婆さんが、私の顔色を憂慮つて、              :635/1139
らんには内証のものがござんした。しかしね、顔がそんなに成つたので、其の人には棄てられ :636/1139
い、)と云や、(否、治りましてから、こんな顔をして、まあ私。)ツて、上衣の禿げた紺の :636/1139
掛ばかり、綺麗なのを〆めて居て、其の前掛で顔を隠すかと思ふと、――小弥太さん、おいら :636/1139
と送つたが、何と階子段を下りるにも、矢張り顔を背けて居る。              :650/1139
だ……それまでは、狂人だと思つたらう、其で顔を見せないのだと極めて居たのに……あゝ、 :652/1139
と極めて居たのに……あゝ、あの、其の遊女の顔が浮草の面なのぢやないかと思つた。    :652/1139
状して、ふと外を覗いた。小弥太の夢のやうな顔は、霜に更けて、行燈と二つ白かつた。   :663/1139
恁う言ふ中にも、それ、然うやつたお前さんの顔も、矢張、一個の、ものを言ふ、活きた面に :682/1139
      さては寝惚けた、と親爺が、我が顔を指でさし、               :689/1139
すく/\と並んだ上へ、背向〈うしろむ〉きに顔を隠して、トンと身体を投掛けた。音さへ、 :747/1139
。其の袖を、しなやかに衝と挙げて、然うして顔を蔽ふと、乱れた振を透通つて、慄然〈ぞつ :750/1139
ないの、此の美しいのは、此の美しいのは私の顔です。」                 :760/1139
と、音もなく、スツとはづれた、小弥太は其の顔がそげたと思つた。……女性も亦、殆ど首が :761/1139
          「面ではないのよ。私の顔なの。美しいでせう、ねえ、美しいでせう。 :762/1139
く。頬のあたり薄りと玉の雫の血が通つて、死顔ながら莞爾した、白歯もちら/\と〓〈らふ :763/1139
                 も一つの顔は袖がくれ。               :767/1139
                     顔は合はす、が、仕事が違つて、然まで心易く :789/1139
こゝにも一人、月岡霞、――と小弥太は人々の顔を視た。                 :852/1139
いて聞いて居た矢右衛門も、向うから若旦那の顔を覗いた。                :871/1139
――居ない、居ない、ばあ――は可厭だ。で、顔を見せると、目の球がぶらりと出たか、―― :895/1139
い事を覚えぬと云ふのが、此の時、陰に篭つた顔して、                  :896/1139
               とむず/\と顔を掉つて、                :918/1139
かな水銀の泡が立つて、ぶくりと仰向に成つた顔が、其の赤めくれの、どろんと目球がぶら下 :953/1139
か、と一時苦労をする女。土左衛門の、そんな顔を見て、気に為ないで居られますか。何うし :954/1139
られますか。何うしよう、何うしよう、あんな顔に成つたらどうしよう、と其ばかりを苦に病 :954/1139
          「――ばあ――と袖から顔を出された時は、思はず、膝が、がくんと成 :958/1139
           頷くのが病気らしく、顔がふら/\と横に揺れて、         :975/1139
                 と優しい顔して、                  :990/1139
                 呼んで、顔を見て、目を閉じた。           :1002/1139
孫六は年紀を取つた。女は分けて、対手の男の顔を見る。……舞台に立てば、姫も御前も参ら :1003/1139
足を傍で押へました。見て居ると、活きながら顔の皮を切離すより残酷なんです。      :1022/1139
    最う、面が手に入つてからは、自分の顔がもとの通りに治つたと思ふかして、美しい :1023/1139
ど、霞のは唯、美しく成りたい、と其ばかり、顔を気にして気が違つた、心得違ひで。」   :1032/1139
月幽に映して、裂目の草を射る中から、五個の顔が差覗く。……霞は、あはれ、貴〈あで〉に :1092/1139
          「あゝ、美しい、綺麗な顔が、あら、あら流れて、それ、此処に、あれ :1106/1139
、金色の雲にきらりと映る、花の霞の暮れ行く顔が、瞼に颯と色を染めた。         :1110/1139


『半島一奇抄』 青空文庫

皺《しわ》を寄せて、鼻で撓《た》めるように顔を向けた。                :50/129
おき》な咳《せき》をしました。女がひょいと顔をそらして廂《ひさし》へうつむくと、猫が :55/129
まず》か、と思うのが、二人とも立って不意に顔を見合わせた目に、歴々《ありあり》と映る :63/129
 「いや、お待ち下さい、人間で。……親子は顔を見合わせたそうですが、助け上げると、ぐ :88/129
たと申しますが、鼠が女像の足を狙う。……朝顔を噛《か》むようだ。……唯今でも皆がそう :92/129
いますがな、これが変です。足を狙うのが、朝顔を噛むようだ。爪さきが薄く白いというのか :92/129
士だと、牡丹《ぼたん》のおひたしで、鼠は朝顔のさしみですかな。いや、お話がおくれまし :92/129


『蛇くひ』 青空文庫

る。跣足《せんそく》にて行歩甚だ健なり。容顔隠険の気を帯び、耳敏《さと》く、気鋭《す :7/35
《ていせい》に(応)は?と聞け、彼の変ずる顔色は口より先に答をなさむ。        :29/35


『雛がたり』 青空文庫

消して、雪洞《ぼんぼり》の影に見参らす雛の顔は、実際、唯《と》瞻《み》れば瞬きして、 :25/58
の故郷の雛によく肖《に》た、と思うと、どの顔も、それよりは蒼白くて、衣《きぬ》も冠《 :41/58
でない。雛は両方さしむかい、官女たちは、横顔やら、俯向いたの。お囃子《はやし》はぐる :43/58


『星あかり』 泉鏡花を読む

が数限なく群つて、動いて居る、毎朝此の水で顔を洗ふ。一杯頭から浴びようとしたけれども :10/36
く、片手を投出し、足をのばして、口を結んだ顔は、灯の片影になつて、一人すや/\と寐て :34/36


『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

内に屹度罪人を出しませう。と事も無げに謂ふ顔を警部は見遣りて、「君、鰒《ふぐ》でも食 :10/219
たといふ証拠は無いではないか。泰助は死骸の顔を指さして、「御覧なさい。人品《ひとがら :10/219
ある人が落魄《おちぶれ》たらしい、かういふ顔色《かほつき》の男には、得て奇妙な履歴が :10/219
い、私は医師です。早くお飲みなさい。といふ顔を先づ屹と視て、やがて四辺《あたり》を見 :12/219
て纔に慰め合ひつ、果は二人の中をもせきて、顔を見るさへ許さざれば垂篭めたる室《ま》の :20/219
涙を泛べつゝ、「此面影はありますまいよ。死顔でも見たい、もう一度逢ひたい。と現心《う :26/219
お前様《さん》は何しに来たのだ。問はれて醜顔《むくつけ》き巌丈男の声ばかり悪優しく。 :28/219
、「今の御客は。と問へば、訝かしげに泰助の顔を凝視《みつめ》しが、頬の三日月を見て慇 :30/219
来た。と一方ならず恐るゝ様子、「何も左様、顔色を変へて恐怖《おつかな》がる事もありま :38/219
知らぬは無いくらゐだ。といへば八蔵はしたり顔にて、「我《お》れも、あの創を目標《めじ :38/219
ぞ。と警戒《いましむ》れば、八蔵は高慢なる顔色《かほつき》にて、「たかが生ツ白《ちろ :38/219
きつ。湯殿に懸けたる姿見に、不図《ふと》我顔《わがかほ》の映るを見れば、頬の三日月露 :45/219
鞄を開きて、小瓶の中より絵具を取出し、好く顔に彩《いろど》りて、懐中鏡に映し見れば、 :45/219
なり、天井は墨の如く四隅は暗く物凄く、人の顔のみやう/\仄《ほの》めさ、逢魔が時とぞ :48/219
何ともいへぬ異変な声でございます。と泰助と顔を見合せ、亭主は膝下《ひざもと》までひた :48/219
さな窓から、ぬうと出たのは婦人《をんな》の顔、色真蒼で頬面《ほうツぺた》は消えて無い :48/219
《やみ》に消え、やがて泰助の面前に白き女の顔顕れ、拭ひたらむ様に又消えて、障子にさば :49/219
はだへ》の色真白く、透通るほど清らかにて、顔は太《いた》く蒼みて見ゆ。但《ただ》屹と :54/219
此方を向きて横様《よこさま》に枕したれば、顔も姿も能《よ》く見えたり。「やあ!と驚き :57/219
枕を上げて、窓をおふぎ見たる時、八蔵ぬつと顔差出し、拳に婦人を掴む真似して、「汝《う :57/219
て打戦《うちおのゝ》き、諸袖《もろそで》に顔を隠し、俯伏《うつぶし》になりて、「あれ :57/219
殺、馬鹿/\しい、と打笑ひつゝ泰助は曲者の顔を視めて、「おや、此奴は病院へ来た奴だ。 :64/219
を窺へとて八蔵を出し遣りたる後、穏かならぬ顔色にて急がはしく座を立ちて、二室《ふたま :66/219
大尽だ。どれ、ちよびと隠妾《かくしづま》の顔を見て慰まうか。と予てより下枝を幽閉せる :67/219
かづき》揺めき落ちて、妖麗《あでやか》なる顔の洩れ出でぬ。瑠璃の如き眼も動くやうなり :74/219
かなる、跫音彼方に起りぬれば、黒き髪と白き顔はふつと消え失せ、人形は又旧《もと》の通 :75/219
た。と睨附《ねめつ》くれば、老婆は驚きたる顔を上げ、「へい、下枝様《さん》が何《どう :77/219
、はゝゝゝはゝ。と溶解《とろ》けむばかりの顔色《かほつき》を、銀平は覗きて追従笑ひ、 :79/219
逢ひけり。擦違うて両人斉しく振返り、月明に顔を見合ひしが、見も知らぬ男なれば、銀平は :79/219
ゝき》無ければ、蜘蛛の巣計《ばか》り時を得顔に、霞を織る様哀なり。妖物屋敷《ばけもの :84/219
くなり》遊ばした母様《おつかさん》に、よく顔が肖《に》てお在《いで》だから、平常《い :89/219
道いことをしやあがる。と渋面つくりて銀平の顔を視め、「銀平、遅かつたわやい。「おらあ :96/219
いもんだよ。分別盛りの好い年をして、といふ顔色の尋常《たゞ》ならぬに得右衛門は打笑ひ :98/219
もしや婦人を尋ねにかと得右衛門も油断せず、顔打守りて、「貴方は御泊ではございませんか :103/219
した、残念々々、と引返せば、得右衛門は興覚顔《きようざめがほ》にて、「つい混雑に紛れ :104/219
お客様、さては其筋の。と敬へば、銀平したり顔に打頷き、「応《うむ》、僕は横須賀の探偵 :104/219
奪返しに来た様子だが。……と言ひつゝ亭主の顔を屹と見れば、鈍《おぞ》や探偵と信じて得 :106/219
悶えあせるを容赦なく引出しぬ。美人は両手に顔を押へて身を縮《すく》まして戦き居たり。 :111/219
いと》お儀式だ。と独り喜悦《よがり》の助平顔、老婆は歯朶《はぐき》を露《む》き出して :112/219
をお見上げ遊ばせ。如何《どんな》に優しいお顔でございませう。其は/\可愛がつて下さい :112/219
藤は呼吸《いき》も絶々《たえ/゛\》に、紅顔蒼白く変りつゝ、苛責の苦痛に堪へざりけむ :118/219
    颯と照射《さし》入る月影に、お藤の顔は蒼うなり、人形の形は朦朧と、煙の如く仄 :123/219
形の被《かづき》すらりと脱け落ちて、上臈の顔《かんばせ》顕はれぬ。〓呀《あなや》と顔 :125/219
の顔《かんばせ》顕はれぬ。〓呀《あなや》と顔を見合す処に、いと物凄き女の声あり。「無 :125/219
)を奢つて遣るが、と言へば四人《よつたり》顔見合はせ、「なるほどたかの知れた幽霊だ。 :142/219
えて見えざりければ、〓呀《あなや》とばかり顔色変じぬ。                :160/219
になりません。藤が居無くなりました。高田は顔色変へ、「何だ、お藤が居無くなつたと?「 :161/219
 良《やゝ》ありて戸を開き差出したる得三の顔は、眼据つて唇わなゝき、四辺《あたり》を :167/219
三は片頬に物凄き笑を含みて、「八蔵。といふ顔を下より見上げて、「へい。「お前にも左様 :168/219
ざま》を指さしていひけるは、「下枝見ろ、此顔色《つらつき》を。殺されるのはなか/\一 :175/219
産に聞かして遣る。汝《きさま》の母親はな。顔も気質《きだて》も汝《きさま》に肖て、矢 :175/219
》かしても許しはせぬ。と言ひ放てば、下枝は顔に溢《こぼ》れ懸る黒髪を颯と振分け、眼血 :176/219
志して爪探りに進み行けば、蝙蝠《かはほり》顔に飛び違ひ、清水の滴々《したゝり》膚《は :186/219
傍へずらして柱に寄せ、被《かづき》は取れて顔も形もあからさまなる、下枝を人形の跡へ突 :203/219
如く、愉快、愉快。と叫びける。同時に戸口へ顔を差出し、「赤城様、得三様。「やあ、汝《 :204/219


『海神別荘』 華・成田屋

の婦たちが、夏の頃、百合、桔梗、月見草、夕顔の雪の装(よそおい)などして、旭の光、月 :11/369
   これを見ないか。私の領分に入った女の顔は、白い玉が月の光に包まれたと同一(おな :112/369
亡日(もうにち)、島田乱れてはらはらはら、顔にはいつもはんげしょう、縛られし手の冷た :134/369
女、うつみきたるまましばし、皆無言。やがて顔を上げて、正しく公子と見向ふ。瞳を据えて :234/369
をする間に行かれる。(愍むごとくしみじみと顔を視る)が、気の毒です。         :310/369
                  (美女顔を上ぐ。その肩に手を掛く)ここに来た、貴 :312/369
  ああ、貴方。私を斬る、私を殺す、その、顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の清(すず :344/369


『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

は、うつむけにも仰向《あおむ》けにも、この顔さ立ちっこねえ処だったぞ、やあ。」    :44/257
     正面の額の蔭に、白い蝶が一羽、夕顔が開くように、ほんのりと顕《あら》われる :63/257
の左右に動くのを、黒髪で捌《さば》いた、女顔の木菟《みみずく》の、紅《あか》い嘴《く :156/257
うのが、見えるようで凄《すさま》じい。その顔が月に化けたのではない。ごらんなさいまし :156/257
ではない。捻《ひね》り廻して鬱《ふさ》いだ顔色《がんしょく》は、愍然《ふびん》や、河 :157/257
       二階のその角座敷では、三人、顔を見合わせて、ただ呆《あき》れ果ててぞい :180/257
かし》いくらい。ついでに婦《おんな》二人の顔が杓子と擂粉木にならないのが不思議なほど :181/257
《おもちゃ》を、膝について、鼻の下の伸びた顔でいる。……いや、愚に返った事は――もし :189/257
より、装《よそおい》を凝らした貴婦人令嬢の顔へ、ヌッと突出し、べたり、ぐしゃッ、どろ :190/257
まじない》にでもするのか、と気味の悪そうな顔をしたのを、また嬉しがって、寂寥《せきり :190/257
      宿へ遁返《にげかえ》った時は、顔も白澄むほど、女二人、杓子と擂粉木を出来 :192/257
、さしたり、引いたり、廻り踊る。ま、ま、真顔を見さいな。笑わずにいられるか。     :219/257


『化鳥』 青空文庫

と思つて向風《むかひかぜ》に俯向いてるから顔も見えない、着て居る蓑の裾が引摺つて長い :6/
小さな時分、何《いつ》日でしたつけ、窓から顔を出して見て居ました。          :8/
                  母様は顔をあげて、此方をお向きで、        :16/
が、内《うち》の前を通つて、私《わたし》の顔を見たから、丁寧にお辞義《じぎ》をすると :25/
                 と窓から顔を引込《ひつこ》ませた。         :27/
髪を束《たば》ねてしつとりして居らつしやる顔を見て、何か談話《はなし》をしい/\、ぱ :39/
こどもごゝろ》にも、アレ先生が嫌《いや》な顔をしたなト斯《か》う思つて取つたのは、ま :54/
ぶる/\ふるへて突立《つゝた》つてるうちは顔のある人間だけれど、そらといつて水に潜《 :58/
さういつたら、叱ツ、黙つて、黙つてツて恐い顔をして私《わたし》を睨めたから、あとじさ :64/
》つた婦人の方で、私《わたし》がさういふと顔を赤うした。それから急にツヽケンドンなも :78/
                といつて笑顔《ゑがほ》をなすつたが、これは私《わたし :82/
かない時、ちつとも叱《しか》らないで、恐い顔しないで、莞爾《につこり》笑つてお見せの :82/
            それでも先生が恐い顔をしておいでなら、そんなものは見て居ない :86/
                   また顔を出して窓から川を見た。さつきは雨脚が繁 :93/
め》の浮世床のおぢさんに掴《つか》まつて、顔《ひたひ》の毛を真四角《まつしかく》に鋏 :97/
、不思議な猿だの、まだ其他《そのた》に人の顔をした鳥だの、獣《けもの》だのが、いくら :106/
思出《おもひで》になるトいつちやあ、アノ笑顔《わらひがほ》をおしなので、私《わたし》 :106/
して生まじめで、けろりとした、妙《めう》な顔をして居るんだ。見える/\、雨の中にちよ :129/
ると、また殊にものなつかしい、あのおかしな顔早《はや》くいつて見たいなと、さう思つて :133/
靴《くつ》の大きな、帽子《ばうし》の高い、顔の長い、鼻の赤い、其は寒いからだ。そして :135/
が見えなくなつたんだから驚《おどろ》いた、顔中《かほぢう》帽子《ばうし》、唯口ばかり :140/
唯口ばかりが、其口を赤くあけて、あはてゝ、顔をふりあげて、帽子《ばうし》を揺りあげや :140/
わけではない。鮟鱇《あんかう》にしては少し顔がそぐはないから何にしやう、何に肖《に》 :169/
なさい。」とおつしやつた。先生妙《めう》な顔をしてぼんやり立つてたが少しむきになつて :186/
》つて、ずる/\と川へ落ちた。わつといつた顔へ一波《ひとなみ》かぶつて、呼吸《いき》 :201/
かおいひでなかつたのも此時ばかりで、そして顔の色をおかへなすつたのも此時ばかりで、そ :204/
んだから、とう/\余儀《よぎ》なさゝうなお顔色《かほつき》で、            :215/
行つちやあ立つて居たので、しまひにやあ見知顔《みしりがほ》で私《わたし》の顔を見て頷 :218/
にやあ見知顔《みしりがほ》で私《わたし》の顔を見て頷《うなづ》くやうでしたつけ、でも :218/
朱《しゆ》の欄干のついた窓があつてそこから顔を出す、其顔《そのかほ》が自分の顔であつ :232/
欄干のついた窓があつてそこから顔を出す、其顔《そのかほ》が自分の顔であつたんだらうに :232/
そこから顔を出す、其顔《そのかほ》が自分の顔であつたんだらうにトさう思ひながら破《や :232/
《とこ》へかぢりついて仰向《あふむ》いてお顔を見た時、フツト気が着いた。       :245/


『木の子説法』 青空文庫

      「――いり海老《えび》のような顔をして、赤目張《あかめば》るの――」   :36/231
のだいこ》のような兀《はげ》のちょいちょい顔を出すのが、ご新姐、ご新姐という、それが :82/231
、小股《こまた》のしまった、瓜《うり》ざね顔で、鼻筋の通った、目の大《おおき》い、無 :82/231
もしたそうですが、脉《みゃく》を引く前に、顔の真中《まんなか》を見るのだから、身が持 :87/231
《まっしろ》な大きな腹が、蒼《あお》ざめた顔して、宙に倒《さかさま》にぶら下りました :114/231
、ぞっとしたほど、さし俯向《うつむ》いて、顔を両手でおさえていました。――やっと小僧 :135/231
樹が熟《じっ》と凝視《みつ》めて、見る見る顔の色がかわるとともに、二度ばかり続け様に :181/231
《きりかむろ》で、白い袖を着た、色白の、丸顔の、あれは、いくつぐらいだろう、這《は》 :194/231
               あの世話方の顔と重《かさな》って、五六人、揚幕から。切 :208/231
                といって、顔をかくして、倒れた。顔はかくれて、両手は :227/231
     といって、顔をかくして、倒れた。顔はかくれて、両手は十ウの爪紅《つまべに》 :227/231


『高野聖』 泉鏡花を読む

瓢ばかりだ。」と粗忽ツかしく絶叫した。私の顔を見て旅僧は耐え兼ねたものと見える、吃々 :13/622
手を突いて畏つた、其の様子は我我と反対で、顔に枕をするのである。           :32/622
ぢやからというて、滅多に人通のない山道、朝顔の咲いてる内に煙が立つ道理もなし。    :42/622
と、いやどれもこれも克明で分別のありさうな顔をして。                 :50/622
未練のある内が可いぢやあねえか、)といつて顔を見合せて二人で呵々と笑つたい。     :54/622
張つてぞツと身の毛、毛穴が不残鱗に変つて、顔の色も其の蛇のやうになつたらうと目を塞い :113/622
はない、首筋をぐつたりと、耳を肩で塞ぐほど顔を横にしたまゝ小児らしい、意味のない、然 :175/622
いひながら目たゝきもしないで清しい目で私の顔をつくづく見て居た。           :198/622
         すると婦人が、下ぶくれな顔にゑくぼを刻んで、三ツばかりはき/\と続 :230/622
            私は余り気の毒さに顔も上げられないで密つと盗むやうにして見る :232/622
   (貴僧、あんなことを申しますよ。)と顔を見て微笑んだ。             :243/622
              「婦人は驚いた顔をして                  :304/622
す。)と弗と心付いて何の気もなしにいふと、顔が合うた。                :332/622
               白痴は情ない顔をして口を曲めながら頭を掉つた。     :445/622
(はい。)と故らしく、すねたやうにいつて笑顔造。                   :461/622
\あしらひかねたか、盗むやうに私を見て颯と顔を赧らめて初心らしい、然様な質ではあるま :464/622
辞儀をお忘れかい。)と親しげに身を寄せて、顔を差し覗いて、いそ/\していふと、白痴は :481/622
            天晴といひたさうな顔色で、                  :485/622
         白痴は婦人を見て、又私が顔をじろ/\見て、人見知をするといつた形で :488/622
き果てると、膝に手をついたツ切り何うしても顔を上げて其処な男女を見ることが出来ぬ、何 :497/622
ので、唄うたひの太夫、退屈をしたと見えて、顔の前の行燈を吸ひ込むやうな大欠伸をしたか :507/622
が散込むやうな。あなやと思ふと更に、もとの顔も、胸も、乳も、手足も全き姿となつて、浮 :564/622
欲のあればこそ恁うなつた上に躊躇するわ、其顔を見て声を聞けば、渠等夫婦が同衾するのに :566/622
急にものもいはれないで瞻ると、親仁はぢつと顔を見たよ。然うしてにや/\と、又一通りの :568/622
らぬ。谷川から上がつて来さしつた時、手足も顔も人ぢやから、おらあ魂消た位、お前様それ :572/622
まりは彼の嬢様が、それ、馴染の病人には毎日顔を合せる所から愛想の一つも、あなたお手が :587/622
  之が引摺つて、足を見ながら情けなさうな顔をする、蟋蟀が〓《も》がれた脚を口に銜へ :606/622
出すと、外聞もあり、少焦で、医者は可恐しい顔をして睨みつけると、あはれがつて抱きあげ :607/622
みつけると、あはれがつて抱きあげる娘の胸に顔をかくして縋る状に、年来随分と人を手にか :607/622


『国貞えがく』 青空文庫

を並べた両側の家に、別に知己《ちかづき》の顔も見えぬ。それでも何かにつけて思出す事は :25/317
の出た、頭の大きい、鼻のしゃくんだ、黄色い顔が、その長さ、大人の二倍、やがて一尺、飯 :28/317
毛の束ね髪、些と煤びたが、人形だちの古風な顔。満更の容色《きりょう》ではないが、紺の :79/317
      もう忘れたか、覚えがあろう、と顔を向ける、と黒目がちでも勢のない、塗った :83/317
こちらへ。」と、大きな声を出して、満面の笑顔を見せた平吉は、茶の室《ま》を越した見通 :98/317
から――この時黄色い、でっぷりした眉のない顔を上げて、じろりと額で見上げたのを、織次 :103/317
見上げたのを、織次は屹と唯一目。で、知らぬ顔して奥へ通った。             :103/317
         「ええ。」と言った女房の顔色の寂しいので、烏ばかり鳴くのが分る。が :129/317
、膝を立てて、それへ頬杖ついて、面長な思案顔を重そうに支えて黙然《だんまり》。    :167/317
           祖母《としより》は、顔を見て、しばらく黙って、         :173/317
                    と顔を背向《そむ》ける。           :185/317
子《かね》に代えるのである、と思った。……顔馴染の濃い紅、薄紫、雪の膚《はだえ》の姉 :188/317
も、ばさばさと髪を揺って、団扇の骨ばかりな顔を出す……隣の空地の棕櫚の樹が、その夜は :198/317
その小児《こども》に振向けた、真白な気高い顔が、雪のように、颯と消える、とキリキリキ :206/317
毛がはらはらとかかる、鼻筋のすっと通った横顔が仄見えて、白い拭布《ふきん》がひらりと :207/317
八十銭。何でも直ぐに買って帰って、孫が喜ぶ顔を見たさに、思案に余って、店端《みせさき :241/317
ら頤へかけて、べたりと薄髯の生えた、四角な顔を出したのは古本屋の亭主で。……この顔と :259/317
角な顔を出したのは古本屋の亭主で。……この顔と、その時の口惜《くやし》さを、織次は如 :259/317
で、ト先ず空惚けて、漸《やっ》と気が付いた顔色で、                  :278/317
》と振向くと、浪の浅葱の暖簾越に、また颯と顔を赧らめた処は、どうやら、あの錦絵の中の :288/317
つゆ》を替えた時は、この娘が、練物のような顔のほかは、着くるんだ花の友染で、その時分 :290/317
く、とまた屹と居直ると、女房の返事に、苦い顔して、横睨みをした平吉が、        :293/317
        と、これも気色ばんだ女房の顔を、兀上《はげあが》った額越《ひたいごし :299/317
その銭式《レコしき》の不義理があって、当分顔の出せない、といったような訳で、いずれ、 :300/317
     と怨めしそうな、情《なさけ》ない顔をする。                 :306/317


『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

わらいごえ》に一驚を吃して、和郎《わろ》の顔と、折敷《おしき》の団子を見較べた。   :43/1510
                と年寄は真顔に成り、見上げ皺を沢山《たんと》寄せて、 :48/1510
  とかごとがましい口ぶりだったが、柔和な顔に顰みも見えず、温順に莞爾して、     :101/1510
から帰ります、この辺のお百姓や、漁師たち、顔を知ったものが、途中から、乗《のっ》けて :131/1510
                   と真顔で法師の言うのを聞いて、姥は、いかさまな :137/1510
                と莞爾して顔を見る。                 :141/1510
、こう見た処で、二歩と一両、貴様に貸のない顔はないけれど、主人のものじゃ。引負をさせ :155/1510
っちらこ。幽霊船の歩《ぶ》に取られたような顔つきで、漕出したげでござりますが、酒の匂 :158/1510
す。人通りが少いで、露にひろがりました浜昼顔の、ちらちらと咲いた上を、ぐいと曳出して :199/1510
な高い髷からはずさっせえまして、真白なのを顔に当てて、団扇が衣服《きもの》を掛けたげ :209/1510
の時は、爺どのの方へ背《せなか》を向けて、顔をこう斜《はす》っかいに、」       :214/1510
                  団扇で顔を隠さしったなり、背後《うしろ》へ雪のよ :240/1510
              と姥は謹んだ、顔色《かおつき》をして、          :258/1510
ものらしい、少し俯向いて、ええ、やっぱり、顔へは団扇を当てたまんまで、お髪の黒い、前 :268/1510
恩返しじゃの、お名前を聞きたいの、唯一目お顔の、とこだわりましけ。柳に受けて歩行《あ :271/1510
               姥は分別あり顔に、                   :278/1510
 屹と振向かっしゃりました様子じゃっけ、お顔の団扇が飜然《ひらり》と飜《かえ》って、 :289/1510
え》って、斜《ななめ》に浴びせて、嘉吉の横顔へびしりと来たげな。           :289/1510
見据えて、私《わし》が爺《じじい》の宰八の顔をじろり。                :293/1510
い、細い声で、口々に、小児《こども》同士、顔さえ見れば唄い連れるではござりますが、近 :324/1510
一つ、穴を三つ開けたのを、ぬっぺりと、こう顔へ被ったものでござります。大《おおき》い :334/1510
殺しの親爺仁右衛門、渾名も苦虫、むずかしい顔をして、御隠居殿へ出向いて、まじりまじり :367/1510
常夏の花の俤立《おもかげだ》つのが、貴方の顔のあたりじゃ、と目を瞑って、おめでたを祈 :386/1510
目を瞑《つむ》って聞入った旅僧は、夢ならぬ顔を上げて、葭簀から街道の前後《あとさき》 :403/1510
惚れていた処、話の腰をおられては、と知らぬ顔でいたっけよ。              :432/1510
》の尖が、ストンと蟹の穴へ挟ったので、厭な顔をした訓導は、抜きざまに一足飛ぶ。    :520/1510
話が、御仁体じゃ。化物が、の、それ、たとい顔を嘗めればとって、天窓《あたま》から塩と :597/1510
どうやら饅頭の形した笠を被っているらしい。顔ぞと見る目鼻はないが、その笠は鴨居の上に :645/1510
それと知りつつ幾度も気に成っては、縁側から顔を出して植込の空を透かしては見い見いしま :653/1510
                    と顔を見て、                 :663/1510
                 と更めて顔を見る目も、法師は我ながら遙々《はるばる :670/1510
してはござるが、怪しい事が重なるかして、お顔の色も、日毎に悪い。           :682/1510
の筋までが蒼白く透通って、各自《てんで》の顔は、皆その熟した真桑瓜に目鼻がついたよう :720/1510
、いや女の生首だって、可加減な事ばかり。夕顔の花なら知らず、西瓜が何、女の顔に見える :805/1510
ばかり。夕顔の花なら知らず、西瓜が何、女の顔に見えるもんです。            :805/1510
                   変な顔をして、宰八が、             :832/1510
               と、僧は怪訝顔で、                   :840/1510
れでお窶れなさるのじゃ、貴下《あなた》、お顔の色が飛《とん》だ悪い!……       :854/1510
光りの影の先を、ころころと何か転げる、忽ち顔が露れたようでございましたっけ、熟《よ》 :879/1510
               といって厭な顔をしました。夫人が評判の美人だけに、校長 :929/1510
きたい、それさえ聞いたら、亡くなった母親の顔も見えよう、とあせり出して、山寺にありま :967/1510
あの白粉の花の蔭から、芋〓《ずいき》の葉を顔に当てた小児《こども》が三人、ちょろちょ :1027/1510
      と、僧も夜具包の上から伸上って顔を出した。                :1046/1510
同一《おなじ》処で、掌をあけながら、据腰で顔を見上げる、と皺面ばかりが燭《あかり》の :1130/1510
                  と変な顔色《がんしょく》で、鼻をしかめ、     :1139/1510
ものの書生坊《しょせっぽう》、悪く優しげな顔色《つらつき》も、絵草紙で見た児来也だぞ :1184/1510
したが、唇を洩る歯の白さ。草に鼻筋の通った顔は、忘れもせぬ鶴谷の嫁、初産《ういざん》 :1199/1510
 そういえば、掻き立てもしないのに、明の寝顔も、また悪く明るい。           :1221/1510
、ばあ、といってニタリと笑いそうで、自分の顔ながら気味の悪さ。            :1226/1510
              と熟《じっ》と顔を見ると、明の、眦の切れた睫毛の濃い、目 :1240/1510
《こしかた》は我にもあり、但御身は髪黒く、顔白きに、我は頭《かしら》蒼く、面《つら》 :1241/1510
か》な右の手に、畳んだままの扇を取って、温顔に微笑を含み、動《ゆる》ぎ出でつ、ともな :1312/1510
いう一秒時には、日輪の光によって、御身らが顔容《かおかたち》、衣服の一切《すべて》、 :1333/1510
                     顔容《かおかたち》に似ぬその志の堅固さよ。 :1340/1510
           と目ばかり働く、その顔を見て、でっぷりとした頬に笑を湛え、くつ :1346/1510
て、しかもその衣《きぬ》の色も、袴の色も、顔の色も、頭の毛の総髪も、鮮麗《あざやか》 :1383/1510
を、耳許白く梳って、櫛巻にすなおに結んだ、顔を俯向けに、撫肩の、細く袖を引合わせて、 :1386/1510
膝ばかりが控えて見える。そのいずれかが狗の顔、と思いをめぐらす暇もない。       :1387/1510
りに平伏《ひれふ》した。実《げ》にこそその顔《かんばせ》は、爛々たる銀《しろがね》の :1390/1510
              「おお、自分の顔を隠したさ。貴僧《あなた》を威す心ではな :1394/1510
にして威厳あり、眉美しく、目の優しさ、その顔《かんばせ》を差俯向け、しとやかに手を支 :1395/1510
かかって、お聞かせ申とうござんすけれど、今顔をお見せ申しますと、お慕いなさいます御心 :1413/1510
でいなさいます。お美しい、お優しい、あの御顔を見ましては、恋の血汐は葉に染めても、秋 :1420/1510
          一言も交わさずに、唯御顔を見たばかりでさえ、最愛《いとお》しさに :1421/1510
でもなし、灯でもない明《あかり》に、やがて顔を合わせましょう。            :1441/1510
、蝶々のように衝《つ》と抜けて、切禿で兎の顔した、女の童が、袖に載せて捧げて来た。手 :1468/1510
拭いいる客僧に立別れて、やがて静々――狗の顔した腰元が、ばたばたと前《さき》へ立ち、 :1496/1510
頬を見せた風采《とりなり》は、薄雲の下に朝顔の莟の解けた風情して、うしろ髪、打揺ぎ、 :1496/1510


『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

              今朝、松本で、顔を洗つた水瓶の水とともに、胸が氷に鎖され :35/330
ね……たら/\と赤いやつが沁みさうで、私は顔を見ましたよ。触ると撓びさうな痩せぎすな :70/330
            女中も俯向いて暗い顔した。                  :84/330
            「へゝ。」と薄暗い顔を上げてニヤリと笑ひながら、鳥打帽を取つ :125/330
飲むとするんだが、いまね、伊作さんが渋苦い顔をして池を睨んで行きました。何うも、鯉の :134/330
         と、をかしなベソをかいた顔をすると、手に持つ銚子が湯沸にカチ/\カ :151/330
つて聞える。それが止むと、お米が襖から円い顔を出して、                :168/330
けた婦と、もう一人の女中とが、といつた形に顔を並べて、一団に成つて此方を見た。其処へ :173/330
         屹と向いて、境を見た瓜核顔は、目ぶちがふつくりと、鼻筋通つて、色の :225/330
爾しながら、褄を合せ状にすつくりと立つた。顔が鴨居に、すら/\と丈が伸びた。     :227/330
一目散に、高い石段を駈下りました。私がその顔の色と、怯えた様子とてはなかつたさうでご :254/330
た。(内へ怪ものが出た、来てくれせえ。)と顔色、手振で喘いで言ふので。……こんな時鐡 :271/330
すまい、(天罰は立処ぢや、足四本、手四つ、顔二つのさらしものにして遣るべ、)で、代官 :272/330
上りに薄化粧をなすつた、めしものゝ藍鼠がお顔の影に藤色に成つて見えますまで、お色の白 :296/330


『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

四月、「新つや物語」文芸倶楽部、六月、「夕顔」三田文学。六月、「鏡花選集」十月、「遊 :36/50


『日本橋』 青空文庫

んと同じ恥辱だ、という心得から、誰も知らぬ顔で行違う。……もっとも対手は小児である。 :62/2195
   世渡やここに一|人、飴屋の親仁は変な顔。叱言を、と思う頬辺を窪めて、もぐもぐと :63/2195
に鼻を撫でる。当の狙われた若い妓は、はッと顔を背けたので、笹葉は片頬外れに肩へ辷って :93/2195
            小児等は同じように顔を合せて、猿眼に、猫の目、上り目、下り目 :132/2195
らと、台所|穿をはずませながら、傍見らしく顔を横にして、小走りに駆出したが、帰りがけ :147/2195
なのが、玉のような頸を伸して、瞳を優しく横顔で、熟と飴屋の方を凝視めたのがある。   :149/2195
                    と顔を上げて、甘えたそうに、ぴったり寄る。  :160/2195
       「笠を被っておいでなすって、顔はちっとも見えなかったんですもの……でも :164/2195
       と細りした頬に靨を見せる、笑顔のそれさえ、おっとりして品が可い。この姉 :175/2195
         「では、あの、姉さんはお顔を見たことがあるんですか。」       :219/2195
         「私は、ここで遠いもの。顔なんてどうして?……お前さんは見たんじゃ :220/2195
                 と恍けた顔。この大業なのが可笑いとて、店に突立った :240/2195
、手へ返して、清葉のその手に、縋るがごとく顔を仰いで、                :274/2195
                  寐起の顔にも、鬢の乱れは人に見せない身躾。他人の :295/2195
奴の間夫だか、田楽だか、頤髯の凄まじい赤ら顔の五十男が、時々長火鉢の前に大胡坐で、右 :300/2195
しないとか。病気が病気の事であるから、誰の顔の見さかえも有るまいが、それにしても大分 :305/2195
言出して、気にさせても詮ない事と、土地で故顔のお茶屋の女中、仕上げて隠居分の箱屋など :338/2195
                     顔の見える時はまだしもである。       :355/2195
小袖の黒繻子の、黒いに目立つ襟白粉、薄いが顔にも化粧した……何の心ゆかしやら――よう :424/2195
おいたと見える、開けたままの格子を潜って、顔を出したお千世は、一杯目に涙を湛えている :435/2195
わぬお孝を、その妹に教えながら、お千世の泣顔を、ともに誘って、涙ぐんだ目で欄干を仰い :472/2195
        「苦痛、……成程。道理で、顔色が非常に悪いな。」           :586/2195
             葛木は※るように顔を撫でて、                :596/2195
             「貴下は太くその顔色が悪いですね。」            :616/2195
       「なにしろじゃね、本職の前で顔色が悪うて、震えておらるるのは事実じゃね :627/2195
え、可いかね、都合のいい時でないと、容易に顔を見せちゃくれない……」         :811/2195
         と俯向けに、中折帽ぐるみ顔を圧えて、                :863/2195
            「……清葉命……と顔に書いてあるようだわね、口惜いね、明い処 :865/2195
兀げた坊主頭へ縞目の立った手拭の向顱巻。円顔で頬皺の深い口の大い、笑うと顔一杯になり :948/2195
の向顱巻。円顔で頬皺の深い口の大い、笑うと顔一杯になりそうな、半白眉の房りした爺さま :948/2195
ハハ、と罪も無げに仰向いて笑った、……その顔をこっちで見ると、葛木に寄縋って、一石橋 :948/2195
て、写絵の楽屋のごとき、一筋のかんてらに、顔と姿の写るのを、わざと立淀んで、お孝が視 :951/2195
は知っとるですわい。お前は何か、しかし俺の顔は知らんですか。」            :996/2195
引傾げて剥いで見せたは、酒気も有るか、赤ら顔のずんぐりした、目の細い、しかし眉の迫っ :997/2195
            「へい、いいえ、お顔は存じておりますほどでもござりませんが、 :998/2195
うほど、薄気味の悪い、その見世物は、人間の顔の尨犬であった。             :1008/2195
は自分の了簡でも遠慮をするだけ、可愛い孫の顔は、長者星ほど宵から目先にちらつくので、 :1026/2195
子が朦朧と顕れるけれども、坐った当座は、人顔も見えないという始末だからね、余り力を入 :1106/2195
                   と笑顔をお千世に向けて、トわざと睨んで見せる。 :1109/2195
人が来て対向いになると、臆面の無いほてった顔を、一皮|剥かれるように醒めるんだからの :1124/2195
みを振下げて出た。が、入交るのに、隣の客と顔が合うから、私は裏梯子を下りて、鉢前へち :1132/2195
                ここに、朝顔形の瀬戸の手水鉢が有るんです。これがまた :1133/2195
、あるお茶屋へ行くと、その時、しばらく振で顔を見た。何だか、打絶えていた親類に思掛け :1152/2195
くようになってから、余り月日を置かないで、顔だけも見るのは、やっと一昨年の夏からだと :1155/2195
。猪口は唇へ点けるくらいに過ぎますまい、朝顔の花を噛むように、」           :1158/2195
      思掛けない音に、ちょっと驚いた顔をした清葉にそう云って、土産じゃない、汐 :1209/2195
                 「黙って顔を見ましたかい。」            :1220/2195
、遣切れなくなって煩いついた。(少し変だ、顔を洗うのに澄まして片手で撫でる、気を鎮め :1238/2195
簪も抜けたり、その鬢の毛も凄いような、白い顔に解れたが――一重桜の枝を持って、袖で抱 :1243/2195
      それをね、姿見を見る形に、姉が顔を合せると、そこへ雪明りが映して蒼くなる :1244/2195
       「姉の優しい眉が凜となって、顔の色が蝋のように、人形と並んで蒼みを帯び :1270/2195
                     顔の色が分ったら祖母さんは姉を外へ出さなか :1271/2195
には逢ってくれない。二階の青簾、枝折戸の朝顔、夕顔、火の見の雁がね、忍返しの雪の夜。 :1283/2195
ってくれない。二階の青簾、枝折戸の朝顔、夕顔、火の見の雁がね、忍返しの雪の夜。それこ :1283/2195
い、手首が雪のように、ちらりと見えるのに、顔は榎に隠れたんだ。榎はどこか、深山の崖か :1295/2195
       「あら、お店の前の袖垣に、朝顔の咲いた、撫子の綺麗だった、千草煎餅の、 :1352/2195
いんです、今夜あたり。」と微笑んだ、が、笑顔の気高いのが凄いように見える。      :1370/2195
は、錦の綾に、緋総の紐、身を引きしめた朧の顔に、彩ある雲が、颯と通る。        :1431/2195
                    「顔が見たい、お孝さん。」          :1500/2195
度、右の千鳥女史と囁き合って、やがて巡査の顔を見い見い、二階に寝ていたのを起した始末 :1540/2195
                  お孝は顔を洗ったばかりの、縁起棚より前へする挨拶 :1555/2195
なお且つ信じないように、渋に朱を加えた赤い顔で――信ぜんのじゃ!――         :1576/2195
                   と真顔にお孝に打傾いて、左の手の自脈を取りつつ :1582/2195
               お孝の上げた顔は、颯と瞼が染ったのである。       :1610/2195
棄てて、すたすた行きおる。――あとで、その顔を覚えとったで、(なぜ通りかかって助けん :1633/2195
の中に一人外科の俊才で、渾名を梟と云う……顔が似たのではない。いかもの食の大腕白、か :1654/2195
                 お千世が顔を覗いて、                :1721/2195
                  国手、顔を見られないくらいなら、姿だけも見るが可 :1813/2195
俳優で、舞台だ思えば、何としていられても、顔を見て声を聞く方が、木戸に立って考えとる :1829/2195
     その勢で二階へ帰って来ると、まだ顔も洗わんでおる俺を捉まえて、さあ、突然帰 :1835/2195
前の夜さり、懐中に秘いておったですれども、顔を見ると、だらけて、はや、腑が抜けて、そ :1837/2195
一座に河岸の人が多かったでな。土地の芸者も顔が揃うた。二三度、その中に、国手、お前ん :1852/2195
  と、食った後の指を撮んで、けろりとした顔を上げて、気も無い様子で、        :1882/2195
、熟と黙って、やがて静に立直った時、酔覚の顔は蒼白い。                :1919/2195
柱へうしろ手に縛られていながらでも、お孝の顔を見ていたいで、便所の掃除でも何でもする :1931/2195
。犬になっても大事ねえだで、香が嗅ぎたい、顔が見たいで、この通り拝むだ、国手。恥も、 :1931/2195
仰いだ。が、夜露に、痛いほど濡れたかして、顔の色が真蒼であった。           :1952/2195
も、送る女が、送らるる男の肩に、なよなよと顔を持たせて、               :1960/2195
って、前へ突伏すがごとく、胸に抱いた人形の顔を熟と視た。               :1982/2195
、法体は去年の大晦日からだ、と洒落でなく真顔で云うよう、               :1991/2195
、反身になった車掌が言った。その帽の、庇も顔も真赤である。              :2000/2195
なじ消防夫に遮られつつ、口紅の色も白きまで顔色をかえながら、かかげた片褄、跣足のまま :2014/2195
の麻の葉の、膝もしどけなく頬杖して、宵暗の顔ほの白う、柳涼しく、この火の手を視めてい :2048/2195
るのを見て、清葉は座にと着きあえず、扇子で顔を隠して泣いた。             :2090/2195


『人魚の祠』 青空文庫

         私は、黙つて工学士の其の顔を視た。                 :8/122
のが、其が嬰児《あかんぼ》で、仰向けに寝た顔へ、白い帽子を掛けてある。寝顔に電燈を厭 :28/122
仰向けに寝た顔へ、白い帽子を掛けてある。寝顔に電燈を厭つたものであらう。嬰児《あかん :28/122
燈を厭つたものであらう。嬰児《あかんぼ》の顔は見えなかつた、だけ其だけ、懸念と云へば :28/122
     此の媚《なま》めいた胸のぬしは、顔立ちも際立つて美しかつた。鼻筋の象牙彫の :29/122
ともに人品を崩さないで且つ威がある……其の顔だちが帯よりも、きりゝと細腰を緊めて居た :29/122
   ――理学士は言掛《いひか》けて、私の顔を視て、而《そ》して四辺《あたり》を見た :64/122
の巣のかはりに幻の綾を織つて、脈々として、顔を撫でたのは、薔薇か菫かと思ふ、いや、そ :79/122
蔽うたとも見えないで、美《うつくし》い女の顔がはらはらと黒髪を、矢張り、同じ絹の枕に :81/122
巻の朱鷺色《ときいろ》にも紛ふ莟とも云つた顔の女は、芳香を放つて、乳房から蕊《しべ》 :83/122
も詰めて見ます間――で、余り調《そろ》つた顔容《かほだち》といひ、果して此は白像彩塑 :87/122
ろりと覗くやうに、茶色の偏平《ひらつた》い顔《つら》を出したと窺はれるのが、もぞり、 :88/122
たもの、毛だらけの凝団《かたまり》、足も、顔も有るのぢやない。成程、鼠でも中に潜つて :88/122


『婦系図』 青空文庫

                    素顔に口紅で美《うつくし》いから、その色に紛 :7/3954
がら、その癖恍惚《うっとり》した、迫らない顔色《かおつき》で、今度は口ずさむと言うよ :18/3954
の可い島田の女中が、逆上《のぼ》せたような顔色《かおつき》で、            :32/3954
爾して俯向いたが、ほんのり紅《あか》くした顔を勝手口から外へ出して路地の中《うち》を :37/3954
                  とその顔へ、打着《ぶつ》けるように声を懸けた。ま :39/3954
。例によって飲《き》こしめした、朝から赤ら顔の、とろんとした目で、お蔦がそこに居るの :41/3954
     と言ったばかり、こっちは忙がしい顔色《かおつき》で、女中は聞棄てにして、井 :149/3954
            得意らしく済ました顔は、柳に対して花やかである。       :161/3954
     振返って、額の広い、鼻筋の通った顔で、屹と見越した、目が光って、そのまま悠 :185/3954
ぱ》帽子の中から、夕映《ゆうやけ》のような顔色。                   :197/3954
                旦那様苦い顔で、                   :246/3954
              と主税は呆れた顔で呵々《からから》と笑って、       :285/3954
             と吃驚するほど真顔。                    :311/3954
          め組より、お蔦が呆れた顔をして、                 :342/3954
                とお蔦も真顔で訝《いぶか》った。           :363/3954
られちゃ大変だ。だが、何だ、旦那も知らねえ顔でいておくんねえ、とかく町内に事なかれだ :388/3954
       と何か考え込んだ、主税が急に顔を上げて、                :394/3954
めき》の薫に、お源は恍惚《うっとり》として顔を上げると、帯も、袂《たもと》も、衣紋も :433/3954
ら》となる矢車草より、薫ばかりも玉に染む、顔《かんばせ》酔《え》いて桃に似たり。   :448/3954
           その時台所へ落着いて顔を出した、主人《あるじ》の主税と、妙子は :469/3954
税もその扱にすれば、お嬢さんも晴がましく、顔の色とおなじような、毛巾《ハンケチ》を便 :493/3954
               珍らしそうに顔を見て、                 :635/3954
》にから来て見い、来て見い、と云うけれど、顔の方じゃ大した評判の無い学校だから、馬鹿 :665/3954
がある。沢山ない、滅多にないんだ。高級三百顔色なし。照陽殿裏第一人だよ。あたかも可《 :679/3954
      「美人だねえ。君、」とゆったり顔を見る。                 :693/3954
            また甘えるように、顔を正的《まとも》に差出して、頤を支えた指 :697/3954
と、澄まして云って、今度は心ありげに早瀬の顔を。                   :706/3954
を継ごうとして横向になっていたから、背けた顔に稲妻のごとく閃いた額の筋は見えなかった :716/3954
えに、ええ、旦那の、と湯上りの颯と上気した顔の色を変えたが、いいえ、河野様が御自分の :751/3954
御覧に入れるのは、平相国清盛に招かれて月が顔を出すようなものよ。」といささか云い得て :808/3954
                 且つその顔色《かおつき》が、紋附の羽織で、〓《ふき :844/3954
むか》いで祝杯を挙げかねないのが、冴えない顔をしながら、湯は込んでいたか、と聞いて、 :846/3954
か、半月ばかりは、英吉も例《いつも》になく顔を見せなかった。             :859/3954
の二人とも若死をして、目下《いま》のがまた顔色が近来、蒼《あお》い。         :867/3954
少くともめ組が出入りをするような家庭? へ顔出しをする筈がない。と一度《ひとたび》は :873/3954
《みだしなみ》よく、カラアが白く、磨込んだ顔がてらてらと光る。地《じ》の透く髪を一筋 :874/3954
人が媒妁《なこうど》ではなおの事。とお妙の顔が蒼《あお》くなって殺されでもするように :888/3954
か知っていたね、と云うと、勿怪《もっけ》な顔をして、いいえ、誰方のお年も存じません。 :899/3954
                  二人は顔を見合せて、ようように笑《わらい》が出た :901/3954
まばゆ》い日当りを遮った帳場から、ぬい、と顔を出したのは、酒井へお出入りのその車夫《 :908/3954
           余計な事を、と不興な顔をして、不愛想に分れたが、何も車屋へ捜り :912/3954
》せたのを、柄長に構えて、逆上《のぼ》せた顔色。                   :919/3954
ひとちょうし》、と莞爾して仰せある、優しい顔が、眩《まぶし》いように後退《しりごみ》 :934/3954
                 リボンも顔も単《ひとえ》に白く、かすりの羽織が夜の :953/3954
膝へ凭《もた》れかかって、でれでれと溶けた顔が、河野英吉に、寸分違わぬ。       :976/3954
》になり、禅の問答持って来い、という高慢な顔色で。                  :1000/3954
 会釈をしてわずかに擡《もた》げた、主税の顔を、その威のある目で屹と見て、      :1019/3954
         呆気《あっけ》に取られた顔をして、亭主が、ずッと乗出しながら、   :1022/3954
           下宿屋の瓦斯は遠し、顔が見えないからいくらか物が云いよくなって :1059/3954
団《ひとかたまり》の、弥次の上から、大路へ顔を出した……時であった。         :1124/3954
蔭になって、眩《まばゆ》い大目玉の光から、顔を躱わして免《まぬか》れていたは可いが、 :1159/3954
一木《ひとき》、月はなけれど、風情を知らせ顔にすっきりと彳むと、向い合った板塀越に、 :1187/3954
手な友染の模様が透いて、真円《まんまる》な顔を出したが、燈《あかり》なしでも、その切 :1191/3954
んざい》に廊下へ上る。先生に従うて、浮かぬ顔の主税と入違いに、綱次は、あとの戸を閉め :1196/3954
として、ついに無い、ものをも言わず、恐れた顔をして、ちょっと睨んで、そっと上って、開 :1200/3954
                   と横顔へ煙を吹くと、              :1255/3954
                   瓜核顔《うりざねがお》の、鼻の準縄《じんじょう :1270/3954
って、ぐいと開けた、気が入って膝を立てた、顔の色が厳しくなった。と見て胆《きも》を冷 :1295/3954
、小芳は恍惚《うっとり》したように、酒井の顔を視《なが》めると……          :1299/3954
理に堪《こら》えて、酒井を瞻《みまも》った顔が震えて、                :1313/3954
げな睫毛が、(どうかなさいよ。)と、主税の顔へ目配せする。              :1317/3954
     「はい、」と云って、思わず先生の顔を見ると、瞼が颯と暗くなるまで、眉の根が :1356/3954
                 と小芳が顔を上げて、                :1400/3954
                と思込んだ顔を擡《もた》げた、主税は瞼を引擦《ひっこ :1452/3954
く圧えた襦袢《じゅばん》の袖口。月に露添う顔を見て、主税もはらはらと落涙する。    :1468/3954
子を挙げて、猪口《ちょく》を取って、二人は顔を合せたのである。            :1520/3954
、どんなに何《なん》したって、私が知らない顔をしていれば可《よ》かったのですけれど、 :1530/3954
            と頬かむりを取った顔は……礼之進に捕まった、電車の中の、その :1562/3954
   と友達も、吃驚《びっくり》したような顔で〓《みまわ》すと、出口に一人、駒下駄《 :1580/3954
みちづれ》が、斉《ひと》しく三方からお妙の顔を瞻《みまも》って黙った。        :1580/3954
下を引返《ひっかえ》しながら、怒ったような顔をして、振向いて同じように胸の許を擦《さ :1586/3954
」と無意味な笑方をしたが、向直って真面目な顔で、                   :1598/3954
からざるものがあるように思われた。で、苦い顔をして、                 :1604/3954
                  と妙な顔をして、額でお妙を見上げて、       :1625/3954
            閑耕は、その背けた顔を覗込《のぞきこ》むようにして、胸を曲げ :1637/3954
、先ず七分立《しちぶだち》の写真のごとく、顔から半身を突入れて中を覗いたのは河野英吉 :1677/3954
と云いながら、お妙の背後《うしろ》から、横顔をじろりと見る。             :1686/3954
な、で、ないような、その辺あやふやなお妙の顔の見方をしたが、             :1696/3954
いと見れば、閑耕は額で睨《ね》めつけ、苦き顔して、その行過《やりすごし》を躾《たしな :1709/3954
ょいちょい、新聞を見るようにしては、お妙の顔を伺い伺い、嬢があらぬ方を向いて、今は流 :1740/3954
本の包に袖を重ねて、肩をせめて揉込むばかり顔を伏せて、声は立てずに泣くのであった。  :1755/3954
            河野英吉嬉しそうな顔をして、                 :1762/3954
                    と顔を隠したままお妙が云った。これには返す言 :1766/3954
  急《せ》いた声で賺《すか》すがごとく、顔を附着《くッつ》けて云うのを聞いて、お妙 :1770/3954
のと、擦違いに、お妙は衝《つい》と抜けて、顔に当てた袖を落した。           :1772/3954
て、木《こ》の実の生《な》った状《さま》に顔を並べて、斉《ひと》しくお妙を見送った、 :1774/3954
主税を見たが、水を汲んだ名残《なごり》か、顔の色がほんのりと、物いわぬ目は、露や、玉 :1799/3954
                    と顔を視《なが》めて元気らしく、呵々《からか :1801/3954
   「御手本は何です、姉様《あねさま》の顔ですか。」                :1807/3954
        と苦笑いをすると、お妙は真顔で、                   :1816/3954
            と雫を払った、硯は顔も映りそう。熟《じっ》と見て振仰いで、  :1844/3954
   「何が、可笑《おか》しいんです。え、顔に墨が刎《は》ねましたか。」       :1849/3954
窓からお饒舌《しゃべ》りの媽々《かかあ》の顔が出ているのも、路地口の野良猫が、のっそ :1872/3954
こなたを覗《なが》めた書生が、お妙のその笑顔を見ると、崩れるほどにニヤリとしたが、例 :1880/3954
た》く気を揉んだ様子だったが、ツンと怒った顔をしたと思うと、お盆を差出した女中《おん :1885/3954
             「憎らしい。」と顔を赤めて、刎《は》ね飛ばして、帽子《ハッ :1890/3954
叩いて、スーと云ったばかりで、斜めに酒井の顔を見込むと、               :1911/3954
               と妙に白けた顔が、燈火に赤く見えて、          :1914/3954
            礼之進、苦り切った顔色で、                  :1955/3954
                  と少し顔の色も変えて、              :1962/3954
って、道学者は口を開いて、茫然として酒井の顔を見ていたが、              :1988/3954
                  お妙の顔を一目見ると、主税は物をも言わないで、そ :2005/3954
      と先へ声を懸けられて、わずかに顔を上げてお妙を見たが、この時の俤は、主税 :2009/3954
たと思うと、お妙は拗《す》ねた状《さま》に顔だけを障子で隠して、そのつかまった縁を、 :2018/3954
《おおやさん》が、お前《め》さん、苦笑いの顔をひょっこり。これこれ、火の用心だけは頼 :2092/3954
、後を追っかけて留守だ、と言ったら、苦った顔色をしやがって、家賃は幾干《いくら》か知 :2108/3954
        はっと思うと、お蔦は知らぬ顔をして、またくるりと背《うしろ》を向いた :2143/3954
。それも、詰らなそうに、円い目で、貴婦人の顔を視《なが》めて、同一《おなじ》ようにそ :2156/3954
あるから、当の外国人は髯をもじゃもじゃと破顔して、ちょうど食後の林檎を剥《む》きかけ :2157/3954
を入れて聞かれたので、青年はなぜか、困った顔をして、                 :2182/3954
切の外に控えた、ボオイと硝子《がらす》越に顔の合ったのを、手招きして、        :2187/3954
               主税は驚いた顔で、                   :2237/3954
うな目は活々と、白い手首に瞳大きく、主税の顔を瞻《みまも》って、物打語るに疲れなかっ :2288/3954
            「まあ、」と飛んだ顔をして、斜めに取って見透《みすか》した風 :2341/3954
から、言句《もんく》は言わないまでも、苦い顔をして、髯の中から一睨《ひとにら》み睨む :2344/3954
て来ます。それまでは、私、実家《さと》へは顔を出さないつもりで、当分風邪をひいた分よ :2344/3954
       と火鉢の縁に肱をついて、男の顔を視《なが》めながら、魂の抜け出したよう :2345/3954
             トきょとんとした顔をして、婢は跡も閉めないで、のっそり引込 :2395/3954
                と振向いた顔の、花の色は、合歓《ねむ》の影。     :2411/3954
やって、前へ廻って覗き込むように瞳をためて顔を見た。                 :2429/3954
に、あわれや、笑を湛《たた》えて、婆さんの顔をじろりと見た。             :2466/3954
                が、夫人は顔を背けたから何にも知らない。       :2469/3954
               と切なそうに顔を獅噛《しか》める。           :2491/3954
  と重そうな頭《かぶり》を掉《ふ》って、顔を横向きに杖を上げると、尖《さき》がぶる :2497/3954
かねたか、早瀬の膝をハタと打つと、赤らめた顔を手巾《ハンケチ》で半ば蔽いながら、茶店 :2524/3954
                と澄ました顔で、洋傘《ひがさ》を持って来た柄の方を返 :2532/3954
な溝があるばかり、障子の破《やぶれ》から人顔も見えないので、その時ずッと寄って、   :2561/3954
こうとは思わない様子になって、別に苦にする顔色《かおつき》でもないが、腕を拱《こまぬ :2569/3954
暖簾を分けて、隣の紺屋の店前《みせさき》へ顔を入れた。                :2574/3954
             その燃ゆるような顔を凝《じっ》と見て、ややあって、     :2590/3954
でるし、坊やは肩から負われかかって、背ける顔へ頬を押着《おッつ》け、躱《かわ》す顔の :2608/3954
ける顔へ頬を押着《おッつ》け、躱《かわ》す顔の耳許《みみもと》へかじりつくばかりの甘 :2608/3954
まかぶれの、眠ったような俯目《ふしめ》の、顔を見ようとしないので、元気なく微笑みなが :2608/3954
  すらすらと読果てた。手紙を巻戻しながら顔を振上げると、乱れたままの後れ毛を、煩《 :2610/3954
、髪も衣紋も、帯も姿も萎《な》えたようで、顔だけは、ほんのりした――麦酒《ビイル》は :2672/3954
                それぎり、顔も見ないで、静岡へ引込《ひっこ》むつもり :2680/3954
      と酔っていた夫人が口を挟んで、顔を見て笑ったので、しばらくして、     :2682/3954
婦《おんな》は、お蔦の他ありません。母親の顔も知らないから、噫《ああ》、と喟然《きぜ :2691/3954
として天井を仰いで歎ずるのを見て、誰が赤い顔をしてまで、貸家を聞いて上げました、と流 :2691/3954
に羽にかわって、蝶々に化けて、瞳の黒い女の顔が、その同一《おなじ》処にちらちらする。 :2722/3954
忍び音に、魘《うな》された、目の美しい蝶の顔は、俯向けに菫の中へ落ちた。       :2731/3954
、鶯の声を見る時と同一《おんなじ》な可愛い顔で、路地に立って〓《みま》わしながら、橘 :2740/3954
声を懸けようとしたらしく、斜めに覗き込んだ顔を赤らめて、黙って俯向いて俯目《ふしめ》 :2740/3954
ちと不意討という風で、吃驚《びっくり》して顔を上げる。                :2746/3954
ので、我ながら忘れたように、心から美しい笑顔になって、                :2761/3954
             と袂《たもと》を顔に当てて、鈴のような目ばかり出して、   :2780/3954
重げに、透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけて、吻《ほっ》と今 :2803/3954
だ》のあがきで、寝床に添った押入の暗い方へ顔の向いたを、こなたへ見返すさえ術《じゅつ :2807/3954
擦着《すりつ》くように坐って、袖のわきから顔だけ出して、はじめて逢ったお蔦の顔を、瞬 :2816/3954
わきから顔だけ出して、はじめて逢ったお蔦の顔を、瞬もしないで凝《じっ》と視《なが》め :2816/3954
中《まんなか》にして左右から、珍らしそうに顔を見ると、俯向きながら打微笑み、     :2832/3954
手を掛けて、前髪を推込むばかり、額をつけて顔を隠した。                :2839/3954
              と驚いたような顔をして、                 :2867/3954
     小芳が吃驚《びっくり》したらしい顔を、お蔦は振上げた目で屹と見て、     :2869/3954
、小芳はお妙の声を聞くのを、楽しそうに待つ顔色《かおつき》。             :2887/3954
 と見る見る瞳にうるみを持ったが、活々した顔は撓《たわ》まず、声も凜々《りんりん》と :2907/3954
   と蓐《とこ》の端につかまって、お蔦の顔を覗くようにして、            :2921/3954
                 覚悟した顔の色の、颯と桃色なが心細い。       :2934/3954
                 とお妙が顔を赤うして云う。新聞に書いたのは(AB《 :2982/3954
       お妙が奈良漬にほうとなった、顔がほてると洗ったので、小芳が刷毛《はけ》 :2986/3954
       いいがかりに止むを得ず、厭な顔して、                  :3049/3954
気違かと危《あやぶ》んで、怪訝《けげん》な顔をしたが、試みに、            :3054/3954
          と留めて姉さんは興さめ顔。                    :3058/3954
             と、襖にどしんと顔《つら》を当てて、            :3060/3954
やかな円髷《まるまげ》で、誰にも似ない瓜核顔《うりざねがお》、気高く颯と乗出した処は :3084/3954
宿屋に居て寝坊をした時のように詰らなそうな顔をして、膳に向って新聞を読んでいた。火鉢 :3087/3954
て、縁から差覗いた、眉の柔《やわらか》な笑顔を、綺麗に、小さく畳んだ手巾《ハンケチ》 :3088/3954
   なぜ待っててくれないのだろう、と云う顔色《かおつき》もしないで、        :3097/3954
《み》えなさらないから、滝ちゃんや透さんの顔も見たくって、」             :3098/3954
          と調子高に笑って、厭な顔をして、                 :3132/3954
出る跫音に、ひょっこり台所《だいどこ》から顔を見せる。                :3139/3954
の、と思う妹の声も響かず、可訝《おかし》な顔をして出て来ようと思ったその(小使)でも :3150/3954
《どてら》のような絣の単衣でひょいと出て、顔を見ると、これは、とばかり笑み迎えて、さ :3150/3954
うち》に落着いた夫人もつい、口早になって、顔を振上げながら、ちと胸を反らして、片手で :3153/3954
《つった》っていたので、上下《うえした》に顔を見合わせた。余り騒がれたためか、内気な :3154/3954
合わせた。余り騒がれたためか、内気な夫人の顔《かんばせ》は、瞼に色を染めたのである。 :3154/3954
                     顔を見詰められたので、睫毛を伏せて、    :3158/3954
だ一目、ただ一目、貴女、夫人《おくさん》の顔が見たいと云います。」          :3191/3954
      貞造は、無事に健かに産れた児の顔を一目見ると、安心をして、貴女の七夜の御 :3207/3954
                  朝晩お顔を見ていちゃ、またどんな不了簡《ふりょう :3208/3954
てはどうか、余所《よそ》ながらお道さんのお顔を見られようから、と云いましたが、もって :3220/3954
花に咲かわって、その紫の雲の中に、貴女のお顔を見る嬉しさはどんなでしょう。      :3228/3954
って消えた。が、靡きかかる煙の中に、夫人の顔がちらちらと動いて、何となく、誘われて膝 :3236/3954
込んだせいか、赫《かっ》と逆上《のぼ》せた顔の色。                  :3248/3954
            と見下《みおろ》す顔を、斜めに振仰いだ、蒼白い姉の顔に、血が :3262/3954
みおろ》す顔を、斜めに振仰いだ、蒼白い姉の顔に、血が上《のぼ》って、屹となったが、寂 :3262/3954
め》の端を寛《ゆる》めた、辺《あたり》は昼顔の盛りのようで、明《あかる》い部屋に白々 :3276/3954
           「理想実行よ。」と笑顔で言う。                 :3328/3954
               「あんな恐い顔をして、(と莞爾して。)ほんとうはね、私 :3342/3954
        でなくって、どうして島山の顔や、母様の顔が見ていられます。第一、乳母 :3343/3954
  でなくって、どうして島山の顔や、母様の顔が見ていられます。第一、乳母《ばあや》に :3343/3954
るのだ、と思っているのかも知れなくってよ。顔さえ見りゃ、(私がどうかして早瀬さんに承 :3343/3954
      「そうすると、私もう、母さんの顔が見られなくなるかも知れませんよ。」   :3346/3954
      「僕だって活きて二度と、先生の顔が見られないように……」と思わず拳《こぶ :3347/3954
大不埒《だいふらち》を働いて置いて、知らん顔で口を拭いて澄ましていようなどと言う人が :3363/3954
―先生……には面は合わされない、お蔦……の顔も見ないものと思っている。この上は、どん :3376/3954
亀鑑《きかん》ともなるべき徳を備えた貴婦人顔をしようとするから、痩せもし、苦労もする :3377/3954
                 さすがに顔の色をかえて屹と睨むと、頷いて、     :3382/3954
                  と言う顔を斜めに視て、              :3408/3954
《まと》めた風情に、白やかな婦《おんな》の顔がそこを覗いた。             :3427/3954
てお上げなさいよ。ああ、暗くって、それでは顔が、」                  :3518/3954
        この明《あかり》で、貞造の顔は、活きて眼《まなこ》を開いたかと、蒼白 :3520/3954
や背屈《せかが》みをしたらしい、低い処へ横顔を見せて廊下を差覗くと、表階子の欄干《て :3542/3954
            寝台に沈んだ病人の顔の色は、これが早瀬か、と思うほどである。 :3546/3954
洞を裾に置いて、帯のあたりから胸を仄かに、顔を暗く、寝台に添うて彳んで、心《しん》を :3547/3954
             ト思うと、早瀬に顔を背けて、目を塞いだが、瞳は動くか、烈し :3548/3954
   「ようよう今日のお昼頃から、あの、人顔がお分りになるようにおなんなさいましたそ :3552/3954
たって、どの面《つら》さげて、先生はじめ、顔が合されますもんですか。」        :3568/3954
   と、熟《じっ》と頤を据えて、俯向いて顔を見ると、早瀬はわずかに目を開いて、   :3570/3954
        「第一、貴女に、見せられる顔じゃありません。」            :3573/3954
                颯となった顔を背けて、                :3579/3954
が、ビイルを呷《あお》ったらしい。充血した顔の、額に顱割《はちわれ》のある、髯の薄い :3594/3954
           と、その得も言われぬ顔を、例の鋭い目で、じろりと見て、     :3620/3954
一人、臨終《いまわ》のお蔦の枕許に、親しく顔を差寄せた。次の間には……        :3630/3954
島田が佳く出来た。早瀬なんかに分るものか。顔を見せな、さあ。」            :3649/3954
時、颯と薄桃色の瞼の霑《うる》んだ、冷たい顔が、夜の風に戦《そよ》ぐばかり、蓐の隈《 :3650/3954
そく》の流れぬばかり、絵にある燈台鬼という顔色。時々病人の部屋が寂《しん》とするごと :3652/3954
るごとに、隣の女連の中へ、四ツ這《ばい》に顔を出して、                :3652/3954
しく引返して、発奮《はずみ》に突込むように顔を出して、                :3715/3954
》へ言われて、はじめて吃驚《びっくり》した顔をして、                 :3729/3954
れもならず。蒼空の星を仰ぐがごとく、お妙の顔を見上げながら、             :3735/3954
《たもと》を取って、揉込《もみこ》むように顔を隠すと、美しい眉のはずれから、振《ふり :3740/3954
つつ》まれたかの思《おもい》がして、手足も顔も同じ色の、蝋にも石にも固《かたま》るか :3777/3954
遮った帽子を払って、柔かに起直って、待構え顔に屹《き》と見迎えた。その青年を誰とかな :3797/3954
《ふりおろ》す得物を留めると、主税は正面へ顔を出して、呵々《からから》と笑って、   :3877/3954
仕かけの噴水が、白粉の禿げた霜げた姉さんの顔を半分に仕切って、洒亜《しゃあ》と出てい :3882/3954
《づれ》、皆洋服で、まだ酔の醒《さ》めねえ顔も見えて、帽子は被《かぶ》っても大童《お :3882/3954
成程ちょろッかな(隼)の手でいかねえ。よく顔も見なかったのがこっちの越度《おちど》で :3885/3954
              「そんな野暮な顔をしねえで、よく言うことを聞け、と云うに :3915/3954
ですか、と尋ねたら、お前さん、もっての外な顔をして、いや、途方もない。そんな賤《いや :3927/3954
て下すった、先生御夫婦のお志。掏摸の野郎と顔をならべて、似而非道学者の坂田なんぞを見 :3930/3954


『親子そば三人客』 従吾所好

            〈わかいもの〉で、顔を燈に背けたから、年紀〈とし〉の頃よく分 :23/121
、親仁は苦々しい眉の顰んだ、然もトロンコの顔を上げて呼びかけた。           :45/121
      此方へ、と目くばせする、母親の顔を見て微笑んで、             :66/121
    客は其の容子と彳〈たたず〉んだ娘の顔を上下に打視め、             :72/121


『龍潭譚』 青空文庫

出来たるを、姉に見せばやと思ふに、俄にその顔の見たうぞなりたる。           :24/186
まだ家には遠しとみゆるに、忍びがたくも姉の顔なつかしく、しばらくも得堪へずなりたり。 :27/186
とて笑はれなむ。優しき人のなつかしけれど、顔をあはせていひまけむは口惜しきに。    :35/186
いたる土のひろびろと灰色なせるに際立ちて、顔の色白く、うつくしき人、いつかわが傍《か :43/186
見知りたる女《ひと》にあらねど、うつくしき顔の笑をば含みたる、よき人と思ひたれば、怪 :46/186
。瞳は水のしたたるばかり斜《ななめ》にわが顔を見て動けるほどに、あきらかにその心ぞ読 :50/186
                    人顔のさだかならぬ時、暗き隅に行くべからず、 :53/186
さるにてもさきの女《ひと》のうつくしかりし顔、優《やさし》かりし眼を忘れず。ここをわ :55/186
、足をのべ、板めに手をかけて眼ばかりと思ふ顔少し差出だして、外《と》の方をうかがふに :62/186
ばむとしてうつむく時、思ひかけず見たるわが顔はそもそもいかなるものぞ。覚えず叫びしが :79/186
のたまふに、縋りつかまくみかへりたる、わが顔を見たまひしが、             :81/186
して、つづれをまとうたる老夫《おやじ》の、顔の色いと赤きが縁近う入り来つ。      :103/186
腰をななめにうつむきて、ひつたりとかの筧に顔をあて、口をおしつけてごつごつごつとたて :105/186
しき状《さま》よと思ひてひたとその胸にわが顔をつけたるが、ふと眼をさましぬ。残燈《あ :133/186
て、香の薫《かおり》残りたり。枕をはづして顔をあげつ。顔に顔をもたせてゆるく閉たまひ :133/186
かおり》残りたり。枕をはづして顔をあげつ。顔に顔をもたせてゆるく閉たまひたる眼の睫毛 :133/186
り》残りたり。枕をはづして顔をあげつ。顔に顔をもたせてゆるく閉たまひたる眼の睫毛《ま :133/186
空《くう》を捻りて、うつくしき人は雛の如く顔の筋ひとつゆるみもせざりき。またその眼の :133/186
のなかなるものの形を取らむとするやう、わが顔はそのおくれげのはしに頬をなでらるるまで :133/186
近々とありながら、いかにしても指さきはその顔に届かざるに、はては心いれて、乳《ち》の :133/186
《おもて》をふせて、強く額もて圧したるに、顔にはただあたたかき霞のまとふとばかり、の :133/186
乳《ち》のあたりに落して据ゑたる、鼻たかき顔のあをむきたる、唇のものいふ如き、閉ぢた :138/186
た泣きに泣く泣くいつのまにか寝たりと覚し。顔あたたかに胸をおさるる心地に眼覚めぬ。空 :138/186
           われはハヤゆうべ見し顔のあかき老夫《おじ》の背《せな》に負はれ :139/186
くるくると次第にこまかくまはるまはる、わが顔と一尺ばかりへだたりたる、まぢかき処に松 :145/186
、とばかりありて眼の前《さき》にうつくしき顔の〓《ろう》たけたるが莞爾《につこ》とあ :145/186
も綿の如くうちかけらるるやう肩に負はれて、顔を垂れてぞともなはれし。見覚えある板塀《 :150/186
つ来りつす。さるにてもなほものありげにわが顔をみつつ行くが、冷かに嘲るが如く憎さげな :152/186
         といきつくづくぢつとわが顔をみまもりたまふ、涙痕《るいこん》したた :163/186
       その心の安んずるやう、強ひて顔つくりてニツコと笑うて見せぬ。      :164/186
       姉上は袖もてわれを庇ひながら顔を赤うして遁げ入りたまひつ。人目なき処に :169/186
まるや、世にただ一人なつかしき姉上までわが顔を見るごとに、気を確《たしか》に、心を鎮 :173/186
のも食はず、薬もいかでか飲まむ、うつくしき顔したりとて、優《やさ》しきことをいひたり :179/186
らだひとつ消えよかしと両手を肩に縋りながら顔もてその胸を押しわけたれば、襟をば掻きひ :182/186
腕《かいな》もゆるみたれば、ソとその懐より顔をいだしてこはごはその顔をば見上げつ。う :182/186
ば、ソとその懐より顔をいだしてこはごはその顔をば見上げつ。うつくしさはそれにもかはら :182/186


『春昼』 泉鏡花を読む

/\と春の日がさして、とろりと酔つたやうな顔色で、長閑に鍬を使ふ様子が――あの又其の :7/628
    親仁はのそりと向直つて、皺だらけの顔に一杯の日当り、桃の花に影がさした其の色 :15/628
揺りながら、鍬の柄を返して地について此方の顔を見た。                 :19/628
、納戸の破障子を半開きにして、姉さん冠の横顔を見た時、腕白く梭を投げた。其の年取つた :46/628
さつた雑樹の中から、真向にぬつと、大な馬の顔がむく/\と涌いて出た。         :62/628
              何心なく言つた顔を、訝しさうに打眺めた。         :154/628
たのです。今ぢや、生悟りに皆が悟りを開いた顔で、悪くすると地獄の絵を見て、こりや出来 :169/628
             出家は活々とした顔になつて、目の色が輝いた。心の篭つた口の :192/628
                    と顔を見合はせて二人が笑つた。        :314/628
るやうにして来たのが、真直に前へ出たのと、顔を見合はせて、両方へ避ける時、濃い睫毛か :357/628
             御新姐が、礼心で顔だけ振向いて、肩へ、頤をつけるやうに、唇 :393/628
なくつて、傍を向くと貴下、一厘土器が怪訝な顔色。                   :394/628
      爾時も、早や黄昏の、とある、人顔、朧ながら月が出たやうに、見違へない其人 :406/628
も無常も知り抜いた風に見える。身体つきにも顔つきにも、情が滴ると言つた状ぢや。    :434/628
、あれでもしをらしいもので、路端などを我は顔で伸してる処を、人が参つて、熟と視めて御 :450/628
して、段々頤がこけて、日に増し目が窪んで、顔の色が愈々悪い。             :477/628
、大奮発ぢや、と言うて、停車場前の床屋へ、顔を剃りに行かれました。其の時だつたと申す :478/628
と、大きな口をへの字形に結んで見て居た赭ら顔で、背高の、胸の大きい禅門が、鉄梃のやう :483/628
一緒でござらう。鼻をつまんだ禅門、苦々しき顔色で、指を持余した、塩梅な。       :487/628
に身を引いたのが、隔ての葭簀の陰になつて、顔を背向けもしないで、其処で向直つて此方を :489/628
音のするほど、此方を透すのに胸を動かした、顔がさ、葭簀を横にちらちらと霞を引いたかと :491/628
頭のあたりをざぶ/\と、仰いで天に愧ぢざる顔色でありました。が、日頃の行ひから察して :509/628
まづ坊主形の自然石と言うても宜しい。妙にお顔の尖がつた処が、拝むと凄うござつてな。  :547/628
               と胸を伏せて顔を見る。                 :553/628
つて立停まつて、見ると、其の踞つたものは、顔も上げないで俯向いたまゝ、股引やうのもの :575/628
、遠くの方は、小さくなつて、幽になつて、唯顔ばかり谷間に白百合の咲いたやう。     :590/628
り坐つた処で、此方を向いたでございませう、顔を見ると自分です。」           :601/628
              爾時、御新姐の顔の色は、こぼれかゝつた艶やかなおくれ毛を :616/628


『春昼後刻』 泉鏡花を読む

                  と一寸顔を上げて見ると、左の崕から椎の樹が横に出 :13/444
              其の莞爾々々の顔のまゝ、鍬を離した手を揉んで、      :29/444
                 真正直な顔をして、                 :77/444
は》つて、あゝ、我ながらまづいことを言つた顔色。                   :113/444
                美女は其の顔を差覗く風情して、瞳を斜めに衝と流しなが :114/444
反らして、すツきりとした耳許を見せながら、顔を反向けて俯向いたが、其まゝ身体の平均を :121/444
をかけたつもりの処、負けまい気の、魔ものの顔を見詰めて居たので、横ざまに落しつける筈 :127/444
もとで赫とほてつて、汗びつしより、まつかな顔をして且つ目をきよろつかせながら、    :135/444
         言の綾もございますわ。朝顔の葉を御覧なさいまし、表はあんなに薄つぺ :160/444
                  此処で顔を見合はせて、二人とも〓《むし》つて居た :232/444
                   と赭顔なのが白い歯を剥き出して云ふやうです。は :289/444
と思へばそれでもようござんす。それから○い顔にして、□い胴にして△に坐つて居る、今戸 :320/444
物あり、筆者に問へば知らずと答ふと、高慢な顔色をしても可いんですし、名を知らない死ん :321/444
して、ものも言はず、棒を呑んだ人形のやうな顔を、凝と見て、              :356/444
     と裳をずりおろすやうにして止めた顔と、未だ掴んだまゝの大きな銀貨とを互ひに :372/444
  と聞いて頷くのを見て、年紀上だけに心得顔で、危つかしさうに仰向いて吃驚した風で居 :386/444
つたかじめの如き、いづれも海に対して、我は顔をするのではないから、固より馴れた目を遮 :396/444
なじ鳴鶴ケ岬の岩に上つた時は二人であつた。顔が玉のやうな乳房にくツついて、緋母衣がび :443/444


『天守物語』 泉鏡花を読む

て、内を覗き、女童の戯るゝを視《み》つゝ破顔して笑ふ。                :104/480
けた》に開け、三尺ばかりの長き舌にて生首の顔の血をなめる)汚穢《むさ》や、(ぺろ/\ :159/480
りやこそ、申さぬことではなかつた。お土産の顔つきが、時の間に、細長う成りました。なれ :162/480
              亀姫 (扇子を顔に、透かし見る)あゝ、ほんになあ。    :163/480
たせの此の首は、もし、此の姫路の城の殿様の顔に、よく似ているではござんせぬか。    :165/480
            間。――夫人、姫と顔を合す、互に莞爾《くわんじ》とす。    :180/480
  夫人 えゝ何の。――然うおつしやる、お顔が見たい、唯一目。……千歳百歳《ちとせも :454/480
ゝ、私も、もう一目、あの、気高い、美しいお顔が見たい。(相縋る。)          :455/480


『歌行燈』 従吾所好

                  と苦い顔を渋くした、同伴の老人は、まだ、其の上を :10/744
引手繰るやうに切符を取られて、はつと駅夫の顔を見て、きよとんと生真面目。       :14/744
  「へい、」と言つたが、車夫は変哲もない顔色〈がんしよく〉で、其のまゝ棒立。    :25/744
軒の其の、うどんと紅で書いた看板の前に、横顔ながら俯向いて、たゞ影法師のやうに彳〈た :56/744
〈うち〉へすつきりと、出たのを一目、驚いた顔をしたのは、帳場の端に土間を跨いで、腰掛 :65/744
   で、優柔〈おとな〉しく頬被りを取つた顔を、唯〈と〉見ると迷惑処かい、目鼻立ちの :77/744
れう、と亭主は其の段含ませたさうな気の可い顔色〈かほつき〉。             :112/744
お声ですな。なあ、良人〈あんた〉。」と、横顔で亭主を流眄〈ながしめ〉。        :121/744
音〈ね〉が違ふ……女房さん、どれが、どんな顔〈つら〉の按摩だね。」          :170/744
処に燭台を傍にして、火桶に手を懸け、怪訝な顔して、                  :180/744
容子の可い、其の年増の女中が、これには妙な顔をして、                 :210/744
             と小父者納得した顔して頷く。                :220/744
                   と真顔で言ふ。                 :248/744
          小女が、きよとんとした顔を見ると、捻平に追つかけの酌をして居た年 :249/744
手を支き、畳の杯を凝〈じつ〉と見て、陰気な顔する。                  :256/744
          と小父者、二人の女中の顔へ、等分に手を掉つて、          :270/744
い、按摩がな。」と何か知らず、女中も読めぬ顔して聞返す。               :272/744
や。」と言ひながら、鼻赤の若い衆は、覗いた顔を外に曲げる。              :312/744
                   と真顔で言ふ。                 :369/744
                女房更めて顔を覗いて、                :376/744
                いや、其の顔色に似合はない、気さくに巫山戯た江戸児で :404/744
/\坐睡をして居たつけ。私あ若気だ、襟巻で顔を隠して、睨むやうに二人を見たのよ、ね。 :410/744
、肱を支いて、怪しく正面に眼の光る、悟つた顔の達磨様と、女の顔とを、七分三分に狙ひな :435/744
く正面に眼の光る、悟つた顔の達磨様と、女の顔とを、七分三分に狙ひながら、       :435/744
から、色の蒼い、鬢の乱れた、痩せた中年増が顔を出して、                :438/744
つたか、酌をせい、と仰有つても、浮々とした顔はせず……三味線聞かうとおつしやれば、鼻 :477/744
利けませんから、何が気に入らないで、失礼な顔をすると、お思ひ遊ばすのも無理はない、な :490/744
んだ目許を見得もなく、仰向けに成つて女中の顔。……色が見る見る柔いで、突いて立つた三 :492/744
心安う思うておいで、真個にまあ、よう和女、顔へ疵もつけんの。」            :503/744
                  と云ふ顔を俯向けて、恥かしさうに又手を支く。   :520/744
似なんです。」と、言ひも果てず、お千の膝に顔を隠して、小父者と捻平に背向〈そがい〉に :533/744
る。……明日にも江戸へ帰つて、可愛い孫娘の顔を見るまでは、死んでもなか/\目は瞑らぬ :543/744
影、静かに照々〈てら/\〉と開くとともに、顔を隠して、反らした指のみ、両方親骨にちら :549/744
自から、衣紋の位に年長けて、瞳を定めた其の顔〈かんばせ〉。硝子戸越に月さして、霜の川 :555/744
で柔かに取つて、膝の上へ据ゑながら、お千の顔を除けて、火鉢の上へ片手を裏表かざしつゝ :565/744
いた其の舞扇が、唇の花に霞むまで、俯向いた顔をひたと額につけて、片手を畳に支いて居た :567/744
いて居た。恁う捻平に声懸けられて、わづかに顔を振上げながら、きり/\と一先づ閉ぢると :567/744
翳す扇の利剣に添へて、水のやうな袖をあて、顔を隠した其の風情。人は声なくして、たゞ、 :582/744
          「よく聞いて、暫時熟と顔を見て居なさいました。          :610/744
御大言、年のお少さ。まだ一度も声は聞かず、顔は固より見た事もなけれども……当流の大師 :657/744
     (可懐いわ、若旦那、盲人の悲しさ顔は見えぬ。触らせて下され、つかまらせて下 :670/744
             瞳の動かぬ気高い顔して、恍惚と見詰めながら、よろ/\と引退 :723/744


『夜行巡査』 青空文庫

上下のものを視《なが》むるとき、さらにその顔を動かし、首を掉ることをせざれども、瞳は :28/164
             と女《むすめ》の顔を瞻れる、一眼盲いて片眼《へんがん》鋭し :65/164
                女は老人の顔を見たり。                :74/164
なく思わせて、おまえが心に泣いている、その顔を見たいばっかりよ。ははは」       :81/164
                    真顔になりて謂う風情、酒の業《わざ》とも思わ :93/164
             女はこらえかねて顔を振り上げ、               :101/164
濁りて、痘痕《とうこん》の充てる頬骨高き老顔の酒気を帯びたるに、一眼の盲いたるがいと :127/164
           とお香は下より巡査の顔を見上げたり。              :146/164


『薬草取』 青空文庫

》の紐《ひも》を結んだのが、露《つゆ》の朝顔の色を宿《やど》して、加賀笠《かががさ》 :13/283
に歩《ほ》を移していた高坂は、更にまた女の顔を見た。                 :27/283
ゆる》く、紅《べに》のような唇をつけて、横顔で振向《ふりむ》いたが、清《すず》しい目 :104/283
その先生の甥《おい》とかいう、ぺろりと長い顔の、額《ひたい》から紅《べに》が流れたか :118/283
もと》に手を支《つ》いて、其処《そこ》へ。顔を上げた私と、枕に凭《もた》れながら、熟 :127/283
《もた》れながら、熟《じっ》と眺めた母と、顔が合うと、坊や、もう復《なお》るよと言っ :127/283
宙へ釣《つる》されるようにして渡った時は、顔が赫《かっ》とする晃々《きらきら》と烈《 :139/283
胸へ突懸《つッか》けた皺だらけの手の黒さ、顔も漆《うるし》で固めたよう。       :191/283
ろ》を跨《また》いで、藤棚を潜《くぐ》って顔を出したが、柔和《にゅうわ》な面相《おも :193/283
乾く時、涙の出る時、何時《いつ》もその娘が顔を見せない事はなかったです。       :213/283
下の灯《あかり》に透《すか》して、気高い横顔で、熟《じっ》と見て、ああ好《い》い事、 :214/283
》く黙って瞳《ひとみ》を据《す》えて、私の顔を見ていたが、月夜に色の真紅《しんく》な :220/283
と出て、瓦屋根《かわらやね》へ下りると、夕顔の葉の搦《から》んだ中へ、梯子《はしご》 :222/283
      中《うち》に一人、見た事のある顔と、思い出した。黒婆《くろばば》が家に馬 :244/283
   恍惚《うっとり》した小児《こども》の顔を見ると、過日《いつか》の四季の花染《は :248/283
、土間へ焚火《たきび》をしたのに雪のような顔を照らされて、娘が縛られていたのを見まし :251/283
町へ帰っても言うのではありません、と蒼白い顔して言い聞かす中《うち》に、駕籠《かご》 :253/283
《おぶ》うと、娘は駕籠から出て見送ったが、顔に袖《そで》を当てて、長柄《ながえ》には :255/283
に桔梗《ききょう》を摘み、後《うしろ》に朝顔を手繰《たぐ》って、再び、鈴見《すずみ》 :273/283
のを、月を浴びて〓長《ろうた》けた、優しい顔で熟《じっ》と見て、少し頬《ほお》を傾け :278/283


『夜叉ヶ池』 青空文庫

せをしないが可《い》い。お百合さん、その夕顔の花に、ちょっと手を触ってみないか。   :54/564
うぞ御遠慮なく、上って御覧なさいまし。(夕顔の垣根について入《いら》んとす。)    :72/564
《ひや》してござんす、上げましょう。(と夕顔の蔭に立廻る。)             :84/564
見つつ)おお、咲きました。貴女《あなた》の顔を見るように。              :85/564
しらげ水は菖蒲《あやめ》の絞《しぼり》、夕顔の花の化粧になったと見えて、下流の水はや :101/564
かき取らんとしたるなるが、学円と双方、ふと顔を合せて、何とかしけん、燈火《ともしび》 :125/564
言いようが無い。十に九ツ君だろうと、今ね、顔を見た時、また先刻《さっき》からの様子で :152/564
ろく、ほろりとしながら)いや、私《わし》の顔を見たぐらいで、萩原――この夢は覚めんじ :163/564
ヤニヤと笑って、拝みながら死んだ。その時の顔を今に忘れん。              :197/564
      学円 (黙然《もくねん》として顔を見る。)                :205/564
         晃 (言葉途絶える)そう顔を見るな、恥入った。           :206/564
ばかりおっしゃる。(と優しく睨《にら》んで顔を隠す。)                :225/564
寂しゅうございます。(と云いながら、学円の顔をみまもり、小家《こや》の内を指し、うつ :259/564
あおむ》けに、鯉《こい》を一尾、嬉しそうな顔して見て、ニヤニヤと笑って出づ。     :270/564
         蟹五郎《かにごろう》。朱顔、蓬《おどろ》なる赤毛頭《あかげがしら》 :273/564
で)わっ、(と反る時、鯉ぐるみ竹の小笠を夕顔の蔭に投ぐ。)ひゃあ、藪沢《やぶさわ》の :274/564
       鯉七《こいしち》。鯉の精。夕顔の蔭より、するすると顕《あらわ》る。黒白 :276/564
がら来り、はたとその小笠を擲《なげう》つ。顔白く、口のまわり、べたりと髯《ひげ》黒し :276/564
は措《お》いてもお供しょう。姫様、お喜びの顔が目に見える。われらもお庇《かげ》で面目 :317/564
に反らして手を支き、打仰いで、熟《じっ》と顔を見合せ莞爾《にっこり》と笑む。     :559/564


『湯島の境内』 青空文庫

い。貴方の方で一所なんて、不思議だわね。(顔を見る)でも、悪い方へ不思議なんじゃない :52/205
案じられて気が急《せ》いて、貴方、ちょっと顔を見せて頂戴(背ける顔を目にして縋《すが :84/205
いて、貴方、ちょっと顔を見せて頂戴(背ける顔を目にして縋《すが》る)ああ(嬉しそうに :84/205
覗《のぞ》く)どうしたの。やはり屈託そうな顔をして。――こうやって一所に来たのは嬉し :84/205
も、涙拭《ぬぐ》うて三千歳が、恨めしそうに顔を見て、                 :130/205
》に何も鬱《ふさ》ぐ事はない、この二三日、顔を色を怪《あやし》まれる、屈託はこの事だ :139/205
涙)別れる切れると云う前に、夫婦で、も一度顔が見たい。(胸に縋《すが》って、顔を見合 :167/205
、も一度顔が見たい。(胸に縋《すが》って、顔を見合わす。)              :167/205
                 お蔦 (顔を上ぐ)貴方こそ、水がわり、たべものに気 :181/205


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 佐藤和雄(蟻) 2000.9.29