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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

あわきび》の実る時は、平家の大軍を走らした水鳥ほどの羽音を立てて、畷行《なわてゆ》き :20/143
、おなじく餌を含んで、親雀が、狭い庭を、手水鉢の高さぐらいに舞上ると、その胸のあたり :23/143
の、ご秘蔵――長屋の破軒《やぶれのき》に、水を飲ませて、芋で飼ったのだから、笑って故 :29/143
しょう。」そ、その時だ。試《こころみ》に手水鉢《ちょうずばち》の水を柄杓で切って雫に :29/143
。試《こころみ》に手水鉢《ちょうずばち》の水を柄杓で切って雫にして、露にして、目白鳥 :29/143
                     水でも飲まして遣りたいと、障子を開けると、 :31/143
                     水上さんがこれを聞いて、莞爾《にっこり》し :51/143
つつ悶えている。屋根の上に雀も少くなり、下水の埃《ごみ》も少くなった。」と言うのでは :70/143
前年の生垣も煉瓦にかわったのが多い。――清水谷《しみずだに》の奥まで掃除が届く。―― :81/143
釣瓶《はねつるべ》でざぶりと汲上げ、片手の水差《みずさし》に汲んで、桔梗に灌いで、胸 :92/143
て案じたが、家に帰ると、転げ落ちたまま底に水を残して、南天の根に、ひびも入らずに残っ :138/143
残して、南天の根に、ひびも入らずに残った手水鉢《ちょうずばち》のふちに、一羽、ちょん :138/143


『逢ふ夜』 従吾所好

持した三日目頃の、一寸ほつれたのも美しい、水の垂りさうな高島田で、此の裏通りの、向う :7/97


『絵本の春』 青空文庫

》に入れて、組屋敷の陪臣《ばいしん》は、行水、嗽《うがい》に、身を潔《きよ》め、麻上 :46/84
》の日の午《うま》の時頃から、その大川に洪水した。――水が軟《やわらか》に綺麗で、流 :73/84
うま》の時頃から、その大川に洪水した。――水が軟《やわらか》に綺麗で、流《ながれ》が :73/84
、町のもう一つの大河が可恐《おそろし》い洪水した。七の数が累《かさ》なって、人死《ひ :74/84
橋杭《はしぐい》が鼻の穴のようになったため水を驚かしたのであろうも知れない。     :75/84
       僥倖《さいわい》に、白昼の出水だったから、男女に死人はない。二階家はそ :76/84
                     水の出盛った二時半頃、裏向《むき》の二階の :78/84
、あの峰へ、と山に向って、膝《ひざ》を宙に水を見ると、肱の下なる、廂屋根《ひさしやね :78/84
》に、圧《おし》にのせた石の数々はわずかに水を出た磧《かわら》であった。       :78/84
の、就中《なかんずく》、山より高い、二三尺水を出た幹を、ひらひらと昇って、声するばか :79/84
出た幹を、ひらひらと昇って、声するばかり、水に咽《むせ》んだ葉に隠れた。――瞬く間で :79/84
が巣くっていたろう。蝮《まむし》が多くて、水に浸った軒々では、その害を被ったものが少 :80/84
屈竟《くっきょう》なのが、二人ずれ、翌日、水の引際を、炎天の下に、大川添《ぞい》を見 :82/84
、コツ、カタカタカタと鳴って響いた。――洪水に巻かれて落ちつつ、はじめて柔《やわらか :83/84


『縁結び』 青空文庫

、まあ、あら良《い》い香《にお》い、何て香水《こうすい》を召《め》したんでございます :31/405
               「どこにも香水なんぞありはしないよ。」         :33/405
ばらくすると、大きな榎《えのき》の下に、清水《しみず》が湧《わ》いていて、そこで冷い :166/405
水《しみず》が湧《わ》いていて、そこで冷い水を飲んだ気がする。清水には柵《さく》が結 :166/405
いていて、そこで冷い水を飲んだ気がする。清水には柵《さく》が結《ゆ》ってあってね、昼 :166/405
         帰途《かえり》は、その清水の処あたりで、もう日が暮《く》れた。婆《 :170/405
て、外へ出て、広々とした山の上の、小さな手水鉢《ちょうずばち》で手を洗って、これは手 :335/405


『古狢』 青空文庫

かにも、湖は晃々《きらきら》と見える。が、水が蒼穹《おおぞら》に高い処に光っている。 :28/310
                   その水の光は、足許《あしもと》の地《つち》に影 :29/310
     「沸《わか》すんですよ……ただの水を。」                  :44/310
                 「ただの水はよかった、成程。」           :45/310
。一方が洗面所で、傍《そば》に大きな石の手水鉢《ちょうずばち》がある、跼《かが》んで :114/310
来ていて、筧《かけひ》で谿河《たにがわ》の水を引くらしい……しょろ、しょろ、ちゃぶり :114/310
》のかかわりもない。続いて、仙女香、江戸の水のひそみに傚《なら》って、私が広告を頼ま :146/310
がま》えで、筧《かけひ》の流れ、吹上げの清水、藤棚などを景色に、四つ五つ構えてあって :147/310
敷は川に向っているが、すぐ磧《かわら》で、水は向う岸を、藍《あい》に、蒼《あお》に流 :147/310
の――短夜《みじかよ》や(何とかして)川手水《かわちょうず》――がそっくり想出された :149/310
のざんまい》の跡とも、山窩《さんか》が甘い水を慕って出て来るともいう。人の灰やら、犬 :149/310
                     水と、柳のせいだろう。女中は皆美しく見えた :151/310
に、銚子《ちょうし》がしなうように見えて、水色の手絡《てがら》の円髷《まるまげ》が重 :166/310
、ちらちらと、この友染が、小提灯で、川風が水に添い、野茨《のばら》、卯《う》の花。且 :175/310
ふるやしき》の門内に安置して、花筒に花、手水鉢に柄杓《ひしゃく》を備えたのを、お町が :179/310
                   (お水《ひや》を取かえて参りましょうか。)枕頭 :185/310
わやま》を視《なが》めるように珍らしく、手水鉢《ちょうずばち》に筧《かけひ》のかかっ :209/310
は、霧のように、スッと通って、悠然と筧で手水をしたでしょう。」            :219/310
ぐっしょり、ずぶ濡れだったんですって。……水ごりでも取りましたか、それとも途中の小川 :221/310
、黒髪のおくれ毛ばかりも、怨恨《うらみ》は水茎のあとに留めなかったというのに。――  :282/310
        唯今、七彩五色の花御堂に香水を奉仕した、この三十歳の、竜女の、深甚微 :290/310


『外科室』 青空文庫

うにという肚《はら》だ。ね、それ、まん中の水ぎわが立ってたろう。いま一人が影武者とい :139/165


『義血侠血』 青空文庫

やじ》なり。馬は群がる蠅と虻との中に優々と水飲み、奴は木蔭《こかげ》の床几に大の字な :75/706
 なかんずく大評判、大当たりは、滝の白糸が水芸なり。太夫滝の白糸は妙齢一八、九の別品 :156/706
衣《ひとえ》に、銀糸の浪の刺繍《ぬい》ある水色絽の〓〓《かみしも》を着けたり。渠はし :157/706
            さて太夫はなみなみ水を盛りたるコップを左手《ゆんで》に把《と :164/706
              渠は山に倚り、水に臨み、清風を担い、明月を戴き、了然たる :178/706
               かくて白糸は水を聴き、月を望み、夜色の幽静を賞して、よ :191/706
 四顧寥廓《しこりょうかく》として、ただ山水と明月とあるのみ。〓戻《りょうれい》たる :241/706
                  「私は水島友といいます」             :369/706
                    「水島友? そうしてお宅は?」        :370/706
          「無官の太夫じゃない、水芸の太夫さ。あんまり聞いておくれでないよ :388/706
                    「水芸の太夫? ははあ、それじゃこのごろ評判 :390/706
の地特有の麗質を備えたるが上に、その手練の水芸は、ほとんど人間業を離れて、すこぶる驚 :470/706
翌年の初夏金沢の招魂祭を当て込みて、白糸の水芸は興行せられたりき。渠は例の美しき姿と :479/706
の死寂に眠れるとき、〓谺《こだま》に響き、水に鳴りて、魂消る一声、          :499/706
                     水は沈濁して油のごとき霞が池の汀に、生死も :504/706
と覚しきばかりの光を帯びて、病めるに似たる水の面を屹《き》と視《み》たり。      :528/706
も謂えないいやな心地《こころもち》だ。この水を飲んだら、さぞ胸が清々するだろう! あ :529/706
熱を消さんがために、この万斛《ばんこく》の水をば飲み尽くさんと覚悟せるなり。渠はすで :530/706
蛙《かわず》は、礫《つぶて》を打つがごとく水を鳴らせり。               :537/706
》あらざりき。渠が塀ぎわに徘徊せしとき、手水口《ちょうずぐち》を啓きて、家内の一個《 :551/706
んに走り出ずれば、心急《こころせ》くまま手水口の縁に横たわる躯《むくろ》のひややかな :586/706
の顛末を聞かんとせり。乙者《おつ》も劣らず水を向けたりき。髭ある人の舌本《ぜっぽん》 :608/706
た覚えはございません。奪《と》りましたのは水芸の滝の白糸という者の金で、桐田の門は通 :629/706
               「実にこれは水掛け論さ。しかしとどのつまり出刃打ちが殺 :648/706
》れたる茶羅紗《ちゃらしゃ》のチョッキに、水晶の小印《こいん》を垂下《ぶらさ》げたる :666/706
。傍聴席は人の山を成して、被告および関係者水島友は弁護士、押丁《おうてい》らとともに :675/706
               満廷粛として水を打ちたるごとくなれば、その靴音は四壁に :676/706
                    「水島友、村越欣弥が……本官があらためて訊問 :689/706


『五大力』 従吾所好

む……霜を刻むや、気競へる声々。懺悔の鏨を水に刺して、清浄の掛矢を挙げつつ、心の影を :148/1139
                 「氷つた水道の上へですか。」            :182/1139
聞く、都より便船して下しし時、船とともに湖水に沈んで年経たのが、おのづから竹生島の御 :217/1139
れ、捌いた裾の、心易くすら/\として、秋の水の流るゝ風情に、濡れた浅葱の其の端緒さへ :232/1139
三ツと、物置の間に隙間のある、其処を通れば水が見えた。降続いたのに、又宵の雨。水溜に :243/1139
通れば水が見えた。降続いたのに、又宵の雨。水溜に搗〈か〉てて加へて、だぶ/\と汐がさ :243/1139
へて、だぶ/\と汐がさす。底光りする濁つた水が、三日月もかけず、柳の影を、華奢な骸骨 :243/1139
、真暗に成る。……ト又前途〈ゆくて〉へ其の水あかり。一筋毎に前なのが薄く成つて、果は :244/1139
     物置、五ツ、……二度ばかり、其の水を見て過ぎた時、雨脚が又一時〈ひとしきり :246/1139
〈むかう〉に未〈ま〉だ消残る其の地を這つた水明りが、一筋、路を横に拡がつた、……其処 :287/1139
うれ、それと窺ふと、物置の一ツ其の隙間が、水嵩高く、どんよりと、雨も川も小さな湖ほど :287/1139
よりと、雨も川も小さな湖ほどに見えた。其の水面に、人の無い、大きな船が茫と浮んで、だ :287/1139
                   「出水なんですか。」              :288/1139
               前に又一筋、水明りが遙に映〈さ〉した。……板塀の影も筏 :358/1139
実際よりは余程ふけて居よう、と考へるのに、水々と若いんだから。            :380/1139
ど、物置の間の処で、四辺〈あたり〉は深川の水ばかりだ。                :402/1139
へ出たくつて、ぢやば/\と行く……背戸へも水が着いたかと思つた……大地の石がひとりで :403/1139
て、妙に気が抜けて、胸が空洞〈うつろ〉で、水岸へ駈出す足許へ、ぢやばりと其の石のやう :409/1139
            近い話は、……割下水の掘井戸で、俎を辷らかして庖丁を落した、 :410/1139
         それ、一杯にさした汐と雨水で、物置の間までびちや/\と、浪だらう、 :413/1139
向つた首を逃げて、慌てて、つかまへ直すと、水を離れて、鼈はぶらりと下る。       :434/1139
無い、二三度ぐる/\と廻つた。薄明るいのは水ばかり、道も自分も真暗です。       :438/1139
まの婦に奪られたか、と思ふと……又ね、其の水の上へ、一面に雨上りの霧がかゝつて、向う :439/1139
、岸に立つて見れば、其の舷〈ふなばた〉が、水を抽〈ぬ〉いて見上げるやうでね、霧に映つ :448/1139
              其の船底から、水が湧いて、霧へふら/\と溢れたやうな、大 :451/1139
ぐ、と云ふより、船は皆尾鰭で魚の泳ぐ形――水の底に都があるなら、此は鮒、鯰と云ふ長屋 :456/1139
りとした半身が、舷の上に一人。何処ともない水光に、横顔の靄ながら、ほんのりと白く見え :458/1139
                    と水に響いた。                :473/1139
縺れるやうに、舷へ掛けて、背も袖も乱れて、水を倒に覗いたんです。」          :474/1139
まあ、左の脚も、取れちやつた……おや変だ、水に浮いて、水に浮いて、)         :481/1139
も、取れちやつた……おや変だ、水に浮いて、水に浮いて、)               :481/1139
    婦人〈をんな〉は又舷に俯向いて熟と水を見て居た。               :510/1139
代の小町の面だ。……一寸紙入の底へ入れて、水引の掛つた……叔母へ内証の謝儀づつみ五ツ :530/1139
つた野郎が心掛りな恩愛の涙が瞼を流れる……水洟と一所でね。              :584/1139
た寒参詣、白衣〈びやくえ〉を透す星の数は、水垢離の玉散るばかり、明星恰も月に似たり。 :711/1139
                  深川の水の黒さ。                 :737/1139
が、夜の小路の響にも知れた。――素足の霜に水を搦めて、浅葱の端緒ではあるまじいが、… :751/1139
筏を流して、小弥太の地につかず立つ足許も、水に漾ふ心地であつた。           :766/1139
   何処で笑つたか、袖の中から、怪い声が水に響く……                :772/1139
               然も、時雨の水に流れたのが、降〈お〉りかはつて、銀河か :796/1139
那は、お縫が一寸敷いて置く、膝の手巾の上へ水洟をぼた/\落す……其の癖、片手にづかり :843/1139
   其の座敷が、肱掛窓の欄干から、すぐに水で、襲ね蒲団で、釣も出来れば、蘆の月も汲 :910/1139
な姿の好い、身体に品のある婦なんですから、水を隔てたり、橋の彼方此方〈あちこち〉で見 :911/1139
               秋のやうに、水が澄切つた日だつたさうです。       :939/1139
                  鰻でも水の上を渡ると思ふ……黒い筋がスーツと浮い :940/1139
      最う、欄干の下、二三間さきから水死人だと知れました。           :941/1139
おじぎ〉をするやうに俯向いた。が、すつと、水の中に立つて居ます。           :942/1139
                  肩が、水面へすれ/\で、紺の筒袖の尻切なのを一枚 :943/1139
           「其が其の寒いやうな水に透いて、半身が見えたと言ふんです。が、 :948/1139
て居て、そして、何れだけ長いんだか、づツと水底まで届いて、まだ、其の下へする/\と曲 :948/1139
         欄干の下を通ると見ると、水草の根が切れたやうに、底から、ぼろ/\と :953/1139
根が切れたやうに、底から、ぼろ/\と静かな水銀の泡が立つて、ぶくりと仰向に成つた顔が :953/1139
ださうで。人の栄耀〈ええう〉と云ふものは、水を廊下に為たいらしい、驕つたものは、昔か :985/1139
若くつて死んだつけ。」とぽた/\と、あゝ、水洟。                   :1014/1139
雨て来たわ、驚破々々〈すはや/\〉、深川の水も嵩増す、ざんざ/\。」         :1099/1139
                     水面に映す、其の俤は尊かつた。       :1105/1139


『半島一奇抄』 青空文庫

く咲き、屋根に蔭つくる樹の下に、山吹が浅く水に笑う……家ごとに申合せたようである。  :11/129
んがね――三島女郎衆《じょろしゅ》の化粧の水などという、はじめから、そんな腥《なまぐ :52/129
            「すなわち、化粧の水ですな。」                :54/129
下りると言うと、居士が一所に参って、三島の水案内をしようと言います。辞退をしましたが :55/129
ようにしたから、帯腰がすらりと見える。……水浅葱《みずあさぎ》の手絡《てがら》で円髷 :55/129
えのき》の宮八幡宮――この境内が、ほとんど水源と申して宜《よろ》しい、白雪のとけて湧 :57/129
宮前の通《とおり》から、小橋を一つ、そこも水が走っている、門ばかり、家は形もない―― :58/129
ました。川というより色紙形の湖です。一等、水の綺麗な場所でな。居士が言いましたよ。耕 :60/129
正面に乙女峠が見渡される……この荒庭のすぐ水の上が、いま詣《もう》でた榎の宮裏で、暗 :60/129
もう》でた榎の宮裏で、暗いほどな茂りです。水はその陰から透通る霞のように流れて、幅十 :60/129
から透通る霞のように流れて、幅十間ばかり、水筋を軽くすらすらと引いて行《ゆ》きます。 :60/129
を軽くすらすらと引いて行《ゆ》きます。この水面に、もし、ふっくりとした浪が二ツ処立っ :60/129
見えましょう。宮の森を黒髪にして、ちょうど水脈の血に揺らぐのが真白《まっしろ》な胸に :60/129
》な細い葉に、ぱらぱらと露を丸く吸ったのが水の中に映るのですが――浮いて通るその緋色 :61/129
》の山椿が……藻のそよぐのに引寄せられて、水の上を、少し斜《ななめ》に流れて来て、藻 :61/129
               目の前へ――水が、向う岸から両岐《ふたつ》に尖《とが》 :63/129
そひろ》がりに、風に半幅を絞った形に、薄い水脚が立った、と思うと、真黒《まっくろ》な :63/129
り、左右へ、いぶりを振って、ひゅっひゅっと水を捌《さば》いて、真横に私たちの方へ切っ :63/129
ゃんばしゃん、氷柱《ひょうちゅう》のように水が刎《は》ねる、小児《こども》たちは続け :69/129
三度続けて打った。二度とも沈んで、鼠の形が水面から見えなくなっては、二度とも、むくむ :70/129
度とも、むくむくと浮いて出て、澄ましてまた水を切りましたがね、あたった! と思う三度 :70/129
                     水は清く流れました、が、風が少し出ましてね :71/129
となくざっと鳴ると、……まさか、そこへ――水を潜《くぐ》って遁げたのではありますまい :71/129
。……一町ばかり下《しも》に、そこに第一の水車《みずぐるま》が見えます。四五間さきに :71/129
水車《みずぐるま》が見えます。四五間さきに水車、また第三の水車、第四、第五と続いたの :71/129
》が見えます。四五間さきに水車、また第三の水車、第四、第五と続いたのが見えます。流《 :71/129
に覗いていました。――見る内に、その第一の水車の歯へ、一輪紅椿が引掛《ひっかか》った :71/129
っからま》って、廻りながら累るのが、流れる水脚のままなんですから、早いも遅いも考える :71/129
て、それが一つ一つ、舞いながら、ちらちらと水晶を溶いた水に揺れます。呆気《あっけ》に :71/129
つ一つ、舞いながら、ちらちらと水晶を溶いた水に揺れます。呆気《あっけ》に取られて、あ :71/129
れて、ああ、綺麗だ、綺麗だ、と思ううちに、水玉を投げて、紅《くれない》の〓《しぶき》 :71/129
》ごとの軒より高く、とさかの燃えるように、水柱を、颯《さっ》と揃って挙げました。   :71/129
せん。宮裏に、この地境《じざかい》らしい、水が窪み入った淀《よど》みに、朽ちた欄干ぐ :74/129
        「鼠です。大鼠がずぶずぶと水を刎《は》ねて、鯰《なまず》がギリシャ製 :76/129
畜生! と言ったが夢中で遁《に》げました。水車のあたりは、何にもありません、流《なが :79/129
、ぱらぱらと落ちかかる巌膚《いわはだ》の清水より、私たちは冷汗になった。乗違えた自動 :103/129


『蛇くひ』 青空文庫

間《このあひだ》十里見通しの原野にして、山水の佳景いふべからず。其《その》川幅最も広 :3/35
ゞね》にて鋳たる鼎(に類す)を裾ゑ、先づ河水《かはみづ》を汲み入るゝこと八分目余、用 :13/35


『雛がたり』 青空文庫

小松に丹頂の鶴、雛鶴《ひなづる》。一つは曲水の群青に桃の盃、絵雪洞《えぼんぼり》、桃 :4/58
             遠くで、内井戸の水の音が水底《みなそこ》へ響いてポタン、と :39/58
         遠くで、内井戸の水の音が水底《みなそこ》へ響いてポタン、と鳴る。不 :39/58
に、橋へかかると、これも白い虹が来て群青の水を飲むようであった。あれあれ雀が飛ぶよう :47/58


『星あかり』 泉鏡花を読む

を載せたり、湿臭い塔婆を掴んだり、花筒の腐水に星の映るのを覗いたり、漫歩をして居たが :6/36
        門の左側に、井戸が一個。飲水ではないので、極めて塩ツ辛いが、底は浅い :10/36
なのが数限なく群つて、動いて居る、毎朝此の水で顔を洗ふ。一杯頭から浴びようとしたけれ :10/36
濁に濁つて、果なくおつかぶさつたやうに堆い水面は、おなじ色に空に連つて居る。浪打際は :27/36
の後には、此の大陸を浸し尽くさうとする処の水で、いまも、瞬間の後も、咄嗟のさきも、正 :27/36
皆ずぶ/\に濡れて、冷こく、宛然網の下を、水が潜つて寄せ来るやう、砂地に立つてゝも身 :28/36
て、がつくり俯向いた目に、船底に銀のやうな水が溜つて居るのを見た。          :30/36


『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

》の見納かなあ。得たりと医師は膝立直して、水薬を猪口に移し、「さあ此をお飲みなさい。 :11/219
地に僵《たふ》れ、苦しんで居る処へ誰やらむ水を持来りて、呑まして呉るゝ者あり。眼も眩 :22/219
み出でたり。此幻影《まぼろし》喩へば月夜に水を這ふ煙に似て、手にも取られぬ風情なりき :74/219
りて踏むべき路も分難し、崩れたる築山あり。水の涸れたる泉水あり。倒れ懸けたる祠には狐 :84/219
も分難し、崩れたる築山あり。水の涸れたる泉水あり。倒れ懸けたる祠には狐や宿を藉りぬら :84/219
しはしねえ。早く追ひ出してお了ひなさい。「水を打懸《ぶつか》けるぞ。「啖《くら》ひ附 :98/219
み行けば、蝙蝠《かはほり》顔に飛び違ひ、清水の滴々《したゝり》膚《はだへ》を透して、 :186/219
                  幾度か水火の中に出入して、場数巧者《かうしや》の :209/219


『海神別荘』 華・成田屋

は、白い尾花の穂を散らした、山々の秋の錦が水に映ると同じに、こうと思えば、ついそれな :13/369
振袖、綾の帯、紅(くれない)の長襦袢、胸に水晶の数珠をかけ、襟に両袖を占めて、波の上 :75/369
                 女房  水に目のお馴れなさいません、貴女には道しる :80/369
         女房  その雲は波、空は水。一輪の月と見えますのは、これから貴女が :86/369
娘は幸福(しあわせ)ではないのですか。火も水も、火は虹となり、水は滝となって、彼の命 :148/369
ではないのですか。火も水も、火は虹となり、水は滝となって、彼の命を飾ったのです。抜身 :148/369
伸上る)はは、いかさま、いや、若様。あれは水晶の数珠にございます。海に沈みまする覚悟 :153/369
して仇光(あだびか)りがする、あれは・・・水晶か。                  :154/369
                 博士  水晶とは申す条、近頃は専ら硝子(ビイドロ) :155/369
んなに謙遜をするには当らん。陸には名山、佳水(かすい)がある。峻岳(しゅんがく)、大 :251/369
だ陸(くが)は貴い。けれども我が海は、この水は、一畝(ひとうね)りの波を起して、その :255/369


『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

道は通ったが、段の下は、まだ苗代にならない水溜《みずたま》りの田と、荒れた畠《はたけ :6/257
てか、窪地でたちまち氾濫《あふ》れるらしい水場のせいか、一条《ひとすじ》やや広い畝《 :20/257
くすると、薄墨をもう一刷《ひとはけ》した、水田《みずた》の際を、おっかな吃驚《びっく :28/257
                「何しろ、水ものには違えねえだ。野山の狐鼬《いたち》 :38/257
離れた処でしゅ。――国境《くにざかい》の、水溜りのものでございまっしゅ。」      :66/257
――処ででしゅ、この吸盤《すいつき》用意の水掻《みずかき》で、お尻を密《そっ》と撫《 :101/257
は、細面《ほそおもて》ただ白玉の鼻筋通り、水晶を刻んで、威のある眦《まなじり》。額髪 :122/257
                 と河童は水掻《みずかき》のある片手で、鼻の下を、べ :149/257
こん度は円髷《まるまげ》、――あの手がらの水色は涼しい。ぽう、ぽっぽ――髷の鬢《びん :155/257
流れて、褄《つま》が飜《かえ》る。足腰が、水馬《みずすまし》の刎《は》ねるように、ツ :160/257
      「……諏訪《すわ》――の海――水底《みなそこ》、照らす、小玉石――手には :175/257
ひゅうら、ひゅ、ひゅうら、ひゅ、諏訪の海、水底《みなそこ》照らす小玉石、を唄いながら :190/257
宿《ゆやど》で、あすこに廊下の橋がかりに川水を引入れた流《ながれ》の瀬があるでしょう :200/257
を、池の鯉が揃って、競って昇るんですわね。水をすらすらと上るのは割合やさしいようです :200/257
も、御恩の姫君。事おわして、お召とあれば、水はもとより、自在のわっぱ。電火、地火、劫 :236/257
               「漁師町は行水時よの。さらでもの、あの手負《ておい》が :240/257


『化鳥』 青空文庫

るうちは顔のある人間だけれど、そらといつて水に潜《もぐ》ると、逆《さかさ》になつて、 :58/
水に潜《もぐ》ると、逆《さかさ》になつて、水潜《みづくゞり》をしい/\五分間ばかりも :58/
の泳いでる尾鰭《をひれ》の姿や、ぴら/\と水銀色を輝かして刎ねてあがる鮎なんぞの立派 :58/
べものになるのぢやあない。さうしてあんな、水浸《みづびたし》になつて、大川《おほかは :58/
ては、花を持たせる、手拭を被《かむ》せる、水鉄砲《みづてつぽう》を浴びせるといふ、好 :95/
する、眼のさきに見える気にくわないものに、水をぶつかけて、天窓《あたま》から洗《あら :177/
何だか茫乎《ぼんやり》したが俄《にわか》に水ン中だと思つて叫《さけ》ばうとすると水を :201/
》に水ン中だと思つて叫《さけ》ばうとすると水をのんだ。もう駄目《だめ》だ。      :201/
に胸が痛かつた、それから悠々《いういう》と水を吸つた、するとうつとりして何だか分らな :202/
りで菖蒲《あやめ》の短いのがむらがつてゝ、水の色の黒い時分、此処へも二日《ふつか》、 :225/
の樹が飛《とび》々に暗くなる。枝々のなかの水田《みづた》の水がどむよりして淀《よど》 :229/
々に暗くなる。枝々のなかの水田《みづた》の水がどむよりして淀《よど》むで居るのに際立 :229/
空《そら》へ斜《なゝめ》に足から糸のやうに水を引いて立つてあがつたが音がなかつた、そ :229/
つて、足があつて、身躰《からだ》があつて、水ン中に居て、そして声を出すのだ。一ツ一ツ :240/


『木の子説法』 青空文庫

あら》われて、消えた。……思え、講釈だと、水戸黄門が竜神の白頭《しろがしら》、床几《 :47/231
て、涙でしょう、濡れている。悲惨な事には、水ばかり飲むものだから、身籠《みごも》った :82/231
                   と、水浸しの丸太のような、脚気の足を、襖《ふす :151/231
の前、妙乗の床のほとりに、瑜伽《ゆが》の法水を湛《たた》え――」           :172/231
《くくりばかま》、脚絆《きゃはん》、腰帯、水衣《みずぎぬ》に包まれ、揃って、笠を被る :183/231
     這う子は早い。谿河《たにがわ》の水に枕なぞ流るるように、ちょろちょろと出て :198/231


『高野聖』 泉鏡花を読む

几の前には冷たさうな小流があつたから手桶の水を汲まうとして一寸気がついた。      :43/622
                  (この水はこりや井戸のでござりますか。)と、極り :46/622
山したの方には大分流行病がございますが、此水は何から、辻の方から流れて来るのではあり :48/622
、お前様、私は真赤になつた、手に汲んだ川の水を飲みかねて猶予つて居るとね。      :55/622
うな根が幾筋ともなく露れた、其根から一筋の水が颯と落ちて、地の上へ流れるのが、取つて :69/622
る? あゝ/\本道ぢや、何ね、此間の梅雨に水が出て、とてつもない川さ出来たでがすよ。 :86/622
         (未だずつと何処までも此水でございませうか。)           :87/622
お前様、見たばかりぢや、訳はござりませぬ、水になつたのは向うの那の藪までで、後は矢張 :88/622
等はこれでも一ツの村でがした、十三年前の大水の時、から一面に野良になりましたよ、人死 :88/622
つたやうぢやが、いやなか/\の臆病者、川の水を飲むのさへ気が怯けたほど生命が大事で、 :94/622
くと我身で持余す蛭の吸殻を真逆に投込んで、水に浸したら嘸可い心地であらうと思ふ位、何 :166/622
膝のあたりに置いた桶の中へざら/\と一幅、水を溢すやうにあけて縁をおさへて、手で掬つ :200/622
                  (崖の水まで一寸。)               :240/622
   其処は早や一面の岩で、岩の上へ谷川の水がかゝつて此処によどみを作つて居る、川幅 :277/622
処によどみを作つて居る、川幅は一間ばかり、水に臨めば音は然までにもないが、美しさは玉 :277/622
のやら、目の届く限り不残岩で、次第に大きく水に〓《ひた》つたのは唯小山のやう。」   :278/622
           「(可い塩梅に今日は水がふえて居りますから、中へはいりませんで :282/622
  自分達が立つた側は、却て此方の山の裾が水に迫つて、丁度切穴の形になつて、其処へ此 :283/622
               (はい、此の水は源が瀧でございます、此山を旅するお方は :285/622
申しまして、丁度今から十三年前、可恐しい洪水がございました、恁麼高い処まで川の底にな :288/622
れから両方の肩から、背、横腹、臀、さら/\水をかけてはさすつてくれる。        :308/622
いたせゐか、婦人の温気か、手で洗つてくれる水が可い工合に身に染みる、尤も質の佳い水は :309/622
れる水が可い工合に身に染みる、尤も質の佳い水は柔かぢやさうな。            :309/622
面に被つたから吃驚、石に尻餅を搗いて、足を水の中に投げ出したから落ちたと思ふ途端に、 :316/622
も三度も来ては恁うやつて汗を流します、此の水がございませんかつたら何ういたしませう、 :321/622
ながら立つた姿、唯これ雪のやうなのを恁る霊水で清めた、恁う云ふ女の汗は薄紅になつて流 :329/622
れましても、半日彼処につかつて居りますと、水々しくなるのでございますよ。尤も那のこれ :474/622
ひ、川も崖も不残雪になりましても、貴僧が行水を遊ばした彼処ばかりは水が隠れません、然 :474/622
ましても、貴僧が行水を遊ばした彼処ばかりは水が隠れません、然うしていきりが立ちます。 :474/622
れども、此人の病ばかりはお医者の手でも那の水でも復りませなんだ、両足が立ちませんので :486/622
た様子、雨戸をばたりと開けるのが聞えた、手水鉢へ柄杓の響。              :521/622
の、再びお目にはかゝられまい、いさゝ小川の水になりとも、何処ぞで白桃の花が流れるのを :555/622
、何れほど遠くても里に出らるゝ、目の下近く水が躍つて、瀧になつて落つるのを見たら、人 :555/622
                   瀧の水を見るにつけても耐へ難いのは其事であつた :557/622
居てさへ体がわなゝく、肉が躍る。況して此の水上は、昨日孤家の婦人と水を浴びた処と思ふ :564/622
が躍る。況して此の水上は、昨日孤家の婦人と水を浴びた処と思ふと、気の所為か其の女瀧の :564/622
れて、沈んだと思ふと又浮いて、千筋に乱るゝ水とともに其の膚が粉に砕けて、花片が散込む :564/622
 地体並のものならば、嬢様の手が触つて那の水を振舞はれて、今まで人間で居よう筈はない :571/622
あつた、あの恐しい魔処へ入らうといふ岐道の水が溢れた往来で、百姓が教へて、彼処は其の :580/622
からツぺた、外科なんと来た日にやあ、鬢附へ水を垂らしてひやりと疵につける位な処。   :584/622
快、お苦しさうなといつて腹をさすつて遣ると水あたりの差込の留まつたのがある、初手は若 :587/622
蝙蝠を見たであらう、兎も蛇も皆嬢様に谷川の水を浴びせられて畜生にされたる輩!     :593/622
から、しく/\蚊のやうに泣いて居るのを、手水に起きた娘が見つけてあまり不便さに抱いて :603/622
                  此の洪水で生残つたのは、不思議にも娘と小児と其に :611/622
                   同一水で医者の内も死絶えた、さればかやうな美女 :612/622
につきそつて行届いた世話も見らるゝ通り、洪水の時から十三年、いまになるまで一日もかは :613/622
を話したら、嬢様を不便がつて、薪を折つたり水を汲む手助けでもしてやりたいと、情けが懸 :615/622
、飽けば、息をかけて獣にするわ、殊に其の洪水以来、山を穿つたこの流れは天道様がお授け :615/622
この流れは天道様がお授けの、男を誘ふ怪しの水、生命を取られぬものはないのぢや。    :615/622
足が細れば、谷川を浴びると旧の通り、其こそ水が垂るばかり、招けば活きた魚も来る、睨め :616/622


『国貞えがく』 青空文庫

…その柳の一処《ひとところ》繁った中に、清水の湧く井戸がある。……大通り四ツ角の郵便 :5/317
、向った玄関に段々《だんだら》の幕を打ち、水桶に真新しい柄杓を備えて、恭《うやうや》 :25/317
け、一軒づもりポカリと抜けた、一町内の用心水《ようじんみず》の水溜《みずたまり》で、 :69/317
と抜けた、一町内の用心水《ようじんみず》の水溜《みずたまり》で、石畳みは強勢《ごうせ :69/317
ょろり、と饒舌《しゃべ》るのは、けだしこの水溜《みずたまり》からはじまった事であろう :70/317
         時雨の雲の暗い晩、寂しい水菜で夕餉が済む、と箸も下に置かぬ前《さき :163/317
しより》が、孫と君の世話をして、この寒空に水仕事だ。                 :232/317


『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

浜で、逗子から森戸、葉山をかけて、夏向き海水浴の時分《ころ》、人死《ひとじに》のある :14/1510
す。いで、紺青《こんじょう》の波を踏んで、水天《すいてん》の間に糸の如き大島山に飛ば :28/1510
だんだら》の夏の蝶、河床は草にかくれて、清水のあとの土に輝く、山際に翼を廻すは、白の :109/1510
御親切に、勿体ない……お手ずから薫の高い、水晶を噛みますような、涼しいお薬を下さって :261/1510
晶を噛みますような、涼しいお薬を下さって、水ごと残して置きました、……この手桶から、 :261/1510
                    「水も汲んで、くくめてお遣り遊ばした。嘉吉の :263/1510
し》などは夜さり店を了いますると、お菓子、水菓子、商物《あきないもの》だけを風呂敷包 :286/1510
はござりませぬが、太閤様は秀吉公、黄門様は水戸様でのう、邸は鶴谷に帰《き》したもの。 :358/1510
したなれど、不気味じゃで、誰も、はい、その水を飲みたがりませぬ処から、井桁も早や、青 :395/1510
イそれを視《なが》めるでもねえだ。美しい目水晶ぱちくりと、川上の空さ碧く光っとる星い :464/1510
面へ乗出して、母衣《ほろ》を倒《さかさ》に水に映した。                :467/1510
ばとって、直ぐに突《つ》ん流れるような疾え水脚では、コレ、ねえものを、其処は他国の衆 :472/1510
方で、ざぶざぶ真中で追かける、人の煽りで、水が動いて、手毬は一つくるりと廻った。岸の :472/1510
ねえ道理よ。私《わし》が手を伸すとの、また水に持って行かれて、手毬はやっぱり、川の中 :474/1510
ものに知己《ちかづき》のように話をするが、水潜りをするなんて、猫化けの怪談にも、つい :481/1510
己《ちかづき》だ。何も厭な事はねえけんど、水ひたしの毛がよれよれ、前足のつけ根なぞは :482/1510
》え泡だらけになって、どんみりと流れたわ、水とハイ摺々《すれすれ》での――その方は岸 :485/1510
当はつかねえ、けんど、主が袂から滝のように水が出るのを見るにつけても、何とかハイ勘考 :513/1510
裾のたよりなく草に隠れるにつけて、明神の手水洗《みたらし》にかけた献燈の発句には、こ :538/1510
靄に交《まじ》って、ほのぼのと白く、何時も水気《すいき》の立つ処から、言い習わしたも :539/1510
、近間《ちかま》なる柳の根も、いずれもこの水の淀んだ処で。畑《はた》一つ前途《ゆくて :540/1510
》一つ前途《ゆくて》を仕切って、縦に幅広く水気《すいき》が立って、小高い礎を朦朧と上 :540/1510
手で欄干はついているが、細流《せせらぎ》の水静かなれば、偏《ひとえ》に風情を添えたよ :544/1510
方は、藁屋続きに、海が映って空も明い。――水上の奥になるほど、樹の枝に、茅葺の屋根が :545/1510
つ、やがて一つ、窓の明《あかり》も射さず、水を離れた夕炊《ゆうかしぎ》の煙ばかり、細 :545/1510
                  「第一水が悪い。あの、また真蒼な、草の汁のような :562/1510
                     水へ、ザブン。               :589/1510
             背後《うしろ》で水車《みずぐるま》の如く杖《ステッキ》を振 :590/1510
              映る手なんざ、水へ突込んでるように、畝ったこの筋までが蒼 :720/1510
りゃ何です、可い加減な年配でした――かつて水兵をした事があるとかいって、予て用意した :722/1510
        自分のだけに、手を繃帯した水兵の方が、一番に蚊帳を出ました。     :755/1510
出して、畳に擦附けるように、耳を澄ます。と水兵の方は、真中で耳を傾けて、腕組をして立 :756/1510
がる事がありましても、慌てて消す処は破れ、水を掛けた処は濡れますが、それなりの処は、 :862/1510
方は先ずともかくもいらっしゃる。人が住めば水も要ろうで、何も釣瓶の音が不思議というで :874/1510
なく思ってでもおりました所為か、そのどうも水を汲む音が、馴れた女中衆《おなごしゅ》で :874/1510
次郎法師は、生れて以来、聞いただけの、風と水と、鐘の音、楽、あらゆる人の声、虫の音、 :905/1510
  その山寺の森をくぐって、里に落ちます清水の、麓に玉散《たまち》る石を噛んで、この :968/1510
       「入口の、この出窓の下に、手水鉢があったのを、入りしなに見て置いたが、 :1097/1510
見さっせえまし、大した唐銅《からかね》の手水鉢の、この邸さ曳いて来る時分に牛一頭かか :1100/1510
              そ、その鉢にゃ水があれば可いがね、なくば座敷まで我慢さっ :1102/1510
               「冷い美しい水が、満々《なみなみ》とありますよ。」   :1105/1510
      「嘘を吐くもんでエねえ。何美い水があんべい。井戸の水は真蒼で、小川の水は :1106/1510
くもんでエねえ。何美い水があんべい。井戸の水は真蒼で、小川の水は白濁りだ。」     :1106/1510
美い水があんべい。井戸の水は真蒼で、小川の水は白濁りだ。」              :1106/1510
    これは、と驚くと、仔細ござります。水を一口、という舌も硬ばり、唇は土気色。手 :1178/1510
蛛の囲《い》の大きなのに、はらりと乗って、水車《みずぐるま》に霧が懸った風情に見える :1194/1510
        周囲《まわり》が広いから、水差茶道具の類も乗せて置く。        :1297/1510
      総て一度唯一人の瞬きする間に、水も流れ、風も吹く、木の葉も青し、日も赤い :1334/1510
「別でない。それそれその戸袋に載った朱泥の水差、それに汲んだは井戸の水じゃが、久しい :1352/1510
袋に載った朱泥の水差、それに汲んだは井戸の水じゃが、久しい埋井《うもれい》じゃに因っ :1352/1510
ゃが、久しい埋井《うもれい》じゃに因って、水の色が真蒼じゃ、まるで透通る草の汁よ。  :1352/1510
参った、爺《じじい》が汲んで来た、あれは川水。その白濁《しろにごり》がまだしも、と他 :1353/1510
瑪瑙の壺から、回生剤《きつけ》として、その水にしたたらし置くが習じゃ。」       :1354/1510
に触る手と手の指は、五ツと五ツと打合って、水晶の玉の擦れる音、戦《わなな》く裳《もす :1444/1510
後《うしろ》、位牌堂の暗い畳廊下から、一人水際立った妖艶《うつくし》いのが、突きはせ :1483/1510
斗《さかとんぼ》に引くりかえると、ざぶりと水を溢《こぼ》しながら、アノ手でつかつかと :1503/1510
                 その後を水が走って、早や東雲の雲白く、煙のような潦 :1504/1510


『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

         今朝、松本で、顔を洗つた水瓶の水とともに、胸が氷に鎖されたから、何 :35/330
      今朝、松本で、顔を洗つた水瓶の水とともに、胸が氷に鎖されたから、何の考へ :35/330
         すぐ窓の外、間近だが池の水を渡るやうな料理番――その伊作の声がする :101/330
に料理番が立つて、つくねんと腕組して、熟と水を瞻るのが見えた。例の紺の筒袖に尻からす :123/330
雪の凌ぎに鳥打帽を被つたのは、苟も料理番が水中の鯉を覗くとは見えない。大な鷭が沼の鰌 :123/330
        同時に、さら/\さら/\と水の音が響いて聞える。「――又誰か洗面所の :127/330
敷を、此処へ取替へない前に、些と遠いが、手水を取るのに清潔だからと女中が案内をするか :127/330
、此の離座敷に近い洗面所に来ると、三ヶ所、水道口があるのに其のどれを捻つても水が出な :127/330
三ヶ所、水道口があるのに其のどれを捻つても水が出ない。然ほどの寒さとは思へないが凍て :127/330
みます。」と駈出して行くと、やがて、スツと水が出た。――座敷を取替へたあとで、はゞか :127/330
を取替へたあとで、はゞかりに行くと、外に手水鉢がないから、洗面所の一つを捻つたが、そ :127/330
     しばらくすると、頻に洗面所の方で水音がする。炬燵から潜出て、土間へ下りて橋 :128/330
間へ下りて橋がかりからそこを覗くと、三つの水道口、残らず三條の水が一斉にざつと灌いで :128/330
らそこを覗くと、三つの水道口、残らず三條の水が一斉にざつと灌いで、徒らに流れて居た。 :128/330
にざつと灌いで、徒らに流れて居た。たしない水らしいのに、と一つ一つ、丁寧にしめて座敷 :128/330
。ト其の時料理番が引込むと、やがて洗面所の水が、再び高く響いた。           :128/330
             又しても、三條の水道が、残らず開放しに流れて居る。おなじ事 :129/330
らず開放しに流れて居る。おなじ事、たしない水である。あとで手を洗はうとする時は、屹と :129/330
 いま、午後の三時ごろ、此の時も、更に其の水の音が聞え出したのである。庭の外には小川 :130/330
も流れる。奈良井川の瀬も響く。木曽へ来て、水の音を気にするのは、船に乗つて波を見まい :130/330
事など、あとで分つた。「女中さんかい、其の水を流すのは。」閉めたばかりの水道の栓を、 :132/330
んかい、其の水を流すのは。」閉めたばかりの水道の栓を、女中が立ちながら一つづゝ開ける :132/330
せて裏の川から引くのだが、一年に一二度づゝ水涸があつて、池の水が干ようとする。鯉も鮒 :132/330
のだが、一年に一二度づゝ水涸があつて、池の水が干ようとする。鯉も鮒も、一処へ固つて、 :132/330
立てて弱るので、台所の大桶へ汲込んだ井戸の水を、遥々と此の洗面所へ送つて、橋がかりの :132/330
が居て湯を使ふ気勢がする。此の時、洗面所の水の音がハタと留んだ。           :138/330
、洗面所の方へ落合つたらしい。ちよろ/\と水の音が又響出した。男の声も交つて聞える。 :168/330
\と三筋に……恁う順に流れて、洗面所を打つ水の下に、先刻の提灯が朦朧と、半ば暗く、巴 :176/330
にあつた次第ではない。境は、斜に影の宿つた水中の月を手に取らうとしたと同一である。  :178/330
                 洗面所の水の音がぴつたり留んだ。          :185/330
るかつた。巴の提灯は此の光に消された。が、水は三筋、更にさら/\と走つて居た。    :194/330
ばちや、ばちや、ちやツと、けたゝましく池の水の掻攪さるゝ音を聞いたかであつた。    :197/330
のやゝ薄い処に声を掛けた、其の池も白いまで水は少いのであつた。            :202/330
の事ではありませんが、……此の、旦那、池の水の涸れる処を狙ふんでございます。鯉も鮒も :211/330
本城の天守をすれ/\に飛んだやうに思ふと、水の音がして、もんどり打つて池の中へ落ちる :230/330
かりと言ふのではございません。唯其の大池の水が真桔梗の青い色でございます。桔梗は却つ :250/330
ます。……あれは山間の瀧か、いや、ぽんぷの水の走るのだと申すくらゐ。此の大南風の勢で :252/330
つしたお姿と存じまして、一日でも、此の池の水を眺めまして、その面影を思はずには居られ :254/330
す。巌石、ぐわうぐわうの細い谿川が、寒さに水涸れして、さら/\さら/\……あゝ、丁ど :310/330
               「一寸、あの水口を留めて来ないか、身体の筋々へ沁渡るや :311/330
大きいのが枯れて立ちます。それが危かしく、水で揺れるやうに月影に見えました時、ジ、イ :316/330
と、お艶様の方で人が来るのを、よけようと、水が少いから、つい川の岩に片足をおかけなす :322/330
をおかけなすつた。桔梗ヶ池の怪しい奥様が、水の上を横に伝ふと見て、パツと臥打に狙をつ :322/330
               座敷は一面の水に見えて、雪の気はひが、白い桔梗の汀に咲 :330/330


『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

              大正五年十月、水上瀧太郎氏英国より帰る。此の年、初夏のは :37/50
して、多日稿成らず。作者酒間に鬱ぐを見て、水上瀧太郎氏、我が小遣其の額に余る、金子を :39/50
              大正十年二月、水上瀧太郎氏編する処の著作細表、「蜻蛉集」 :42/50


『日本橋』 青空文庫

。日本橋に手の届く、通一つの裏町ながら、撒水の跡も夢のように白く乾いて、薄い陽炎の立 :10/2195
    「違ったか。雪や氷、冷い氷よ。そら水の上に丶なんだ。」            :25/2195
。赤い涎掛を荷の正面へ出して、小児の捌口へ水を向ける。                :106/2195
ではない。そこに、小紅屋と云う苺が甘そうな水菓子屋がある。二人は並んでその店頭。帳場 :233/2195
になるに及びません。ほんとにお坊ちゃんは、水菓子がお好きでいらっしゃいます事!    :242/2195
御縁で、学校のお帰りなんぞに、(小母さんお水を一杯。)なんて、お寄りなすって下さいま :243/2195
萎るる人の、美しい露にもなれかしと、ここに水菓子を選んだのである。          :305/2195
のままぞろりと青畳に敷いて、起居に蹴出しの水色|縮緬。伊達巻で素足という芸者家の女房 :322/2195
         が、姿は雨に、月の朧に、水髪の横櫛、頸白く、水色の蹴出し、蓮葉に捌 :329/2195
、姿は雨に、月の朧に、水髪の横櫛、頸白く、水色の蹴出し、蓮葉に捌く裾に揺れて、蒼白く :329/2195
は附いて廻ると云うけれど、お前さんにゃ、貰水とお茶がついて廻るんだ。お茶の水は本郷の :404/2195
んにゃ、貰水とお茶がついて廻るんだ。お茶の水は本郷の名所だっけ。日本橋にゃ要らないも :404/2195
                 食べると水膨んだよ。……あの上|水膨れちゃ、御当人 :406/2195
     食べると水膨んだよ。……あの上|水膨れちゃ、御当人より傍のものが助からない :406/2195
そんなお尻は鳶の突くが落だ、と云う。お茶と水とは附いて廻る、駿河台に水車が架ったか、 :413/2195
、と云う。お茶と水とは附いて廻る、駿河台に水車が架ったか、と云う。          :413/2195
についた連名の、昼鳶がお尻を突く、駿河台の水車、水からくりの姉さんが、ここにも一人と :415/2195
た連名の、昼鳶がお尻を突く、駿河台の水車、水からくりの姉さんが、ここにも一人と、飛込 :415/2195
                   なお水菓子が好きだと云う、三歳になる男の児の有 :462/2195
、外濠電車のキリキリ軋んで通るのさえ、池の水に映って消える長廊下の雪洞の行方に擬う。 :504/2195
     その寒いのにじゃね……先刻から、水に臨んで、橋の上に、ここに暫時立っていた :628/2195
                     水の面は暗かった。             :630/2195
投げたよりは、年の少い医学士と云う人間の、水に棄てたものは意外であった。       :640/2195
         ばっと鳴って、どどどんと水の音。                  :750/2195
                梅ヶ枝の手水鉢                    :1127/2195
と寝転ぶ音。――楠の正成がーと梅ヶ|枝の手水鉢で唄い出す。              :1131/2195
         ここに、朝顔形の瀬戸の手水鉢が有るんです。これがまた清葉が寄進に附 :1133/2195
さ。お鹿の内には、まだ開業当時というので手水鉢も柄杓も無かった。湯殿の留桶に水を汲ん :1133/2195
うので手水鉢も柄杓も無かった。湯殿の留桶に水を汲んで、簀の子の上に出してある。恐らく :1133/2195
で、簀の子の上に出してある。恐らく待合の手水鉢に柄杓の無いのは、厠に戸の無いより始末 :1133/2195
         何ですよ、奥庭に有った手水鉢を見ましたがね、青銅のこんな形、とお鹿 :1135/2195
                 清葉の手水鉢、でいささか酔覚の気味。二階は梅ヶ枝の :1137/2195
鉢、でいささか酔覚の気味。二階は梅ヶ枝の手水鉢。いや、楠の正成だ。……大将も惜い事に :1137/2195
家へと云って貰いたかった。……私はそこへ手水鉢なんぞじゃない、摺鉢と采配を両手に持っ :1145/2195
正成で、梅ヶ枝をお呼びなさいよ、……その手水鉢へ、私なら三百円入れてやりたい、とこっ :1147/2195
ごそと通掛ると、その足袋屋の小僧の、店前へ水を打っていた奴、太粗雑だから、ざっと刎ね :1186/2195
、かねて大切なお山の若旦那だから、打たての水に褄を取ると、お極りの緋縮緬をちらりと挟 :1187/2195
土彩色の一もん雛です。中にね、――潰島田に水色の手柄を掛けた――年数が経って、簪も抜 :1243/2195
姉さんは? 見て来て下さい。)と言う。私も水へ飛込み兼ねない勢で、台所へ出ようとする :1273/2195
    天井を高く仰いで云った、学士の瞳は水のごとし。                :1293/2195
に川が一筋……川が一筋。……で、夢だろう。水はその下を江戸川の(どんどん)ぐらいな流 :1294/2195
幽だのに、一枝、二枝、枝は、ざわざわと緑の水を浴びて落ちる。」            :1299/2195
                   川の水が少し渺として、月が出たのか、日が白いの :1304/2195
町を隔て、屋根を隔てて、かしこにただ一人、水に臨んで欄干に凭れて彳む。……男の夢の流 :1338/2195
流ではない、一石橋の上なのである。が、姿も水もその夢よりは幻影である。        :1338/2195
がかりに、その何となく悄れたのを見て、下に水ある橋の夜更、と爺が案じたほどのものでは :1344/2195
亡くなった姉に、生命がけの情人が有って、火水の中でも添わねばならない、けれど、借金の :1391/2195
たり。風も、貝寄せに、おくれ毛をはらはらと水が戦ぐと、沈んだ栄螺の影も浮いて、青く澄 :1435/2195
         河童の時計の蒼い浪、幽な水音。どぶりと一つ、……一時であろう。   :1441/2195
いた、花の霞を裳に包んで、夢の色濃き萌黄の水に、鴛鴦の翼に肩を浮かせて、向うむきに潰 :1513/2195
、しかも二組になって御法度の花骨牌。軒の玉水しとしとと鳴る時、格子戸がらり。     :1528/2195
だね、羅宇屋さん、裏へお廻り。」と、婆やが水口の障子で怒鳴ると、白磨竹を突着けられた :1533/2195
出すのを取って、熟と俯向く、……潰島田の、水浅黄の手柄のはらはらと揺るるを視ながら、 :1652/2195
った通りであった。それさえ、神境に白き菊に水あるごとき言うべからざる科学の威厳と情緒 :1653/2195
、と書いたのが、じめじめとして、さながら、水から這上った流灌頂のごとく、朦朧として陰 :1690/2195
を点けた。燃えさしの燐寸をト棄てようとして水に翳すと、ちらちらと流れる水面の、他の点 :1758/2195
棄てようとして水に翳すと、ちらちらと流れる水面の、他の点燈に色を分けて、雛の松明のご :1758/2195
で溶けて、露の滴りそうな生々としたやつを、水浅黄ちらめかいて、柔りと背向きに突着けた :1839/2195
殺として、鵲のごとく黒く行く。橋冷やかに、水が白い。                 :1906/2195
             摺って出るように水を覗く、と風が冷かに面を打つ。欄干に確と :1919/2195
斯を、逆に細流を浴びたごとく濡萎れた姿で、水際を立てて、そこへお孝が、露の垂りそうに :1957/2195
                   黒い水の、箱を溢るるばかり、乗客は総立ちに硝子 :2001/2195
頸へ、火の粉がばらばらとかかるので、一人が水びたしの半纏を脱いで掛けた。       :2034/2195
の炎に照されたが、群集の肩を踏まないでは、水管の通った他に、一足も踏込む隙間は無かっ :2035/2195
                 「手向の水だい。」                 :2037/2195
前へどんと倒れる。地獄の口の開いた中から、水と炎の渦巻を浴びて、黒煙を空脛に踏んで火 :2039/2195
       「坊主、咽喉が乾いたろうで、水のかわりに、好なものを遣るぞ。おお、女房 :2135/2195


『人魚の祠』 青空文庫

がれ》が汎濫して、田に、畠に、村里に、其の水が引残つて、月を経、年を過ぎても涸れない :40/122
月を経、年を過ぎても涸れないで、其のまゝ溜水《たまりみづ》に成つたのがあります。…… :40/122
、時々、否《いや》、毎日一ツ二ツは度々此の水に出会《でつくは》します。此を利根の忘れ :41/122
《でつくは》します。此を利根の忘れ沼、忘れ水と呼んで居る。              :41/122
には又、あの流《ながれ》を邸内へ引いて、用水ぐるみ庭の池にして、筑波の影を矜《ほこ》 :42/122
                  一体、水と云ふものは、一雫《ひとしづく》の中にも :46/122
薄いけれども平《たひら》に日を包むと、沼の水は静《しづか》に成つて、そして、少し薄暗 :47/122
の映る処は、松葉が流れるやうに、ちら/\と水が揺れます。小魚《こうを》が泳ぐのでせう :50/122
しずばり》の茶店が見えて、横が街道、すぐに水田《みづた》で、水田のへりの流《ながれ》 :51/122
見えて、横が街道、すぐに水田《みづた》で、水田のへりの流《ながれ》にも、はら/\燕子 :51/122
が、袖には掛らず、肩にも巻かず、目なんぞは水晶を透して見るやうに透明で。詰《つま》り :53/122
で。詰《つま》り、上下が白く曇つて、五六尺水の上が、却つて透通《すきとほ》る程なので :53/122
        一尺、金鱗を重く輝かして、水の上へ翻然《ひらり》と飛ぶ。」      :57/122
ふと、上へ絞つた糸が真直に伸びて、するりと水の空へ掛つた鯉が――」          :63/122
私が声を掛けた。隙《ひま》も無しに、陰気な水音が、だぶん、と響いた……        :94/122
美《うつくし》い肉の背筋を掛けて左右へ開く水の姿は、軽い羅《うすもの》を捌《さば》く :95/122
              が、其の姿が、水に流れて、柳を翠の姿見にして、ぽつと映つ :101/122
、ぽつと映つたやうに、人の影らしいものが、水の向うに、岸の其の柳の根に薄墨色に立つて :101/122
に沈んだ。汀を広くするらしい寂《しづ》かな水の輪が浮いて、血汐の綿がすら/\と碧を曳 :108/122


『婦系図』 青空文庫

乗出すようにして、つい目の前《さき》の、下水の溜りに目を着けた。           :19/3954
覗くは失礼と控えたのが、遁腰《にげごし》で水口から目ばかり出したと思うと、反返《そり :425/3954
ごき》も、花いろいろの立姿。まあ! 紫と、水浅黄と、白と紅咲き重なった、矢車草を片袖 :433/3954
した流汁の溝溜《どぶだまり》もこれがために水澄んで、霞をかけたる蒼空が、底美しく映る :434/3954
んど》地に、浅黄と赤で、撫子《なでしこ》と水の繻珍《しゅちん》の帯腰、向う屈《かが》 :447/3954
繻珍《しゅちん》の帯腰、向う屈《かが》みに水瓶《みずがめ》へ、花菫《はなすみれ》の簪 :447/3954
             成程、そこまでは水口の明《あかり》が取れたが、奥へ行く道は :466/3954
            「じゃ、なぜそんな水口からなんぞお入んなさいます。ちゃんと玄 :472/3954
からじゃ大業ですもの。それに、あの、花にも水を遣りたかったの。」           :475/3954
      「あの砂埃《すなほこり》の中を水際立って、駈け抜けるように、そりゃ綺麗だ :690/3954
羽織で、〓《ふき》の厚い内君《マダム》と、水兵服の坊やを連れて、別に一人抱いて、鮨に :844/3954
イと出掛けた様子も、その縁談を聞いた耳を、水道の水で洗わんと欲する趣があった。    :846/3954
掛けた様子も、その縁談を聞いた耳を、水道の水で洗わんと欲する趣があった。       :846/3954
せて歩行《ある》く中《うち》に、誰かの口で水を注《さ》せば、直ぐに川留めの洪水ほどに :855/3954
かの口で水を注《さ》せば、直ぐに川留めの洪水ほどに目を廻わしてお流れになるだろう。  :855/3954
たび》れても同一《おなじ》香《におい》の香水で、追《おっ》かけ追かけ香《にお》わせて :875/3954
いに遣ったのに、大分後れたにもかかわらず、水口の戸を、がたひし勢《いきおい》よく、唯 :895/3954
にげこ》むと、まだその煙は消えないので、雑水《ぞうみず》を撒きかけてこの一芸に見惚れ :921/3954
と掛けると、おかしな皮の臭がして、そこら中水だらけ。                 :921/3954
                    「水道橋まで歩行くが可い。ああ、酔醒《えいざ :1058/3954
かり》の真蒼《まっさお》な、明《あかる》い水菓子屋の角を曲って、猶予《ためら》わず衝 :1058/3954
                 やがて、水道橋の袂《たもと》に着く――酒井はその雲 :1073/3954
   もっとも、薬師の縁日で一所になって、水道橋から外濠線に乗った時は、仰せに因って :1159/3954
色を重ねたのは、隅田へ潮がさすのであろう、水の影か、星が閃《きらめ》く。       :1178/3954
、三味線《さみせん》の音《ね》が、チラチラ水の上を流れて聞える、一軒大構《おおがまえ :1186/3954
鼓の帯の後姿が、あたかも姿見に映ったれば、水のように透通る細長い月の中から抜出したよ :1270/3954
         「そりゃ可い事をした、泥水稼業を留《や》めたのは芽出度い。で、どこ :1319/3954
らん、そんな仲よしがあるものか、薄情だよ、水臭いよ。」                :1331/3954
それは不可《いけ》ませんこと。」と縁側に、水際立ってはらりと取った、隅田の春の空色の :1555/3954
、四辺《あたり》を〓《みまわ》したが、湯も水も有るのでない、そこで、         :1613/3954
つも素通りにして、横の木戸をトンと押して、水口から庭へ廻って、縁側へ飛上るのが例で。 :1775/3954
そみじか》なのをちっとも介意《かま》わず、水口から木戸を出て、日の光を浴びた状《さま :1792/3954
けさせないので、ここへは馴染《なじみ》で、水心があって、つい去年あたりまで、土用中は :1793/3954
と思うと、金盥へ入れた硯の上へ颯とかかる、水が紫に、墨が散った。           :1793/3954
よば》れて、手を留《とめ》て主税を見たが、水を汲んだ名残《なごり》か、顔の色がほんの :1799/3954
                 「また、水いたずらをしているんですね。」      :1800/3954
の中《うち》も、井戸端へ持出して、ざあざあ水を使うんだから、こうやって洗うのにも心持 :1830/3954
                     水に映った主税の色は、颯と薄墨の暗くなった :1857/3954
ますから、貴娘《あなた》、暑中休暇には、海水浴にいらしって下さい。          :2045/3954
側を拭《ふ》き直そう、と云う腹で、番手桶に水を汲んで控えていて、どうぞ御安心下さいま :2092/3954
連ってキラキラ人の眼《まなこ》を射るのは、水晶の珠数を爪繰《つまぐ》るに似て、非ず、 :2155/3954
もえ》の、巴川に渦を巻いて、お濠《ほり》の水の溢《あふ》るる勢《いきおい》。     :2253/3954
々《つくづく》視ればどこにか俤が似通って、水晶と陶器《せと》とにしろ、目の大きい処な :2255/3954
》てたが、車は確に、軒に藤棚があって下を用水が流れる、火の番小屋と相角《あいかど》の :2296/3954
《なぎはな》しの頭髪《かみ》も洗ったように水々しく、色もより白くすっきりあく抜けがし :2298/3954
く、色もより白くすっきりあく抜けがしたは、水道の余波《なごり》は争われぬ。土地の透明 :2298/3954
森の流るるを見、俯《ふ》して、濠《ほり》の水の走るを見た。たちまち一朶《いちだ》紅の :2300/3954
がある。戸袋と向合った壁に、棚を釣って、香水、香油、白粉の類《たぐい》、花瓶まじりに :2324/3954
は、あたかもこの庭の、黒塀の外になって、用水はその下を、門前の石橋続きに折曲って流る :2325/3954
がれ》に臨むと、頃日《このごろ》の雨で、用水が水嵩《みずかさ》増して溢《あふ》るるば :2421/3954
》に臨むと、頃日《このごろ》の雨で、用水が水嵩《みずかさ》増して溢《あふ》るるばかり :2421/3954
のではなかった。露《あらわ》にその長襦袢に水紅《とき》色の紐をぐるぐると巻いた形《な :2425/3954
ちゃな赤毛布《あかげっと》が敷いてあって、水々しい婆さんが居ますね、お茶を飲んで行き :2434/3954
鮮麗《あざやか》で、青葉越に緋鯉の躍る池の水に、影も映りそうに彳んだが、手巾《ハンケ :2529/3954
               塀の前を、用水が流るるために、波打つばかり、窓掛に合歓 :2603/3954
           枕許《まくらもと》に水指《みずさし》と、硝子杯《コップ》を伏せ :2703/3954
とこ》で泳がせるぞ、浜町界隈《かいわい》洪水だ。地震より恐怖《おっかね》え、屋体骨《 :3018/3954
「待ちな待ちな。大夫前芸と仕って、一ツ滝の水を走らせる、」              :3031/3954
                    手水《ちょうず》鉢の処へめ組はのっそり。里心 :3038/3954
、遍《あまね》く御施しになろうという如露の水を一雫、一滴で可《よ》うございます、私の :3175/3954
っしゃる間には、貴女の母様《おっかさん》が水にもしようか、という考えから、土地に居て :3203/3954
                 「貴女が水臭い事を言うからさ。」          :3322/3954
                「どっちが水臭いんだか分りはしない。私はまさか、夜《 :3323/3954
―虫の音や、蛙《かわず》の声を聞きながら用水越に立っていて、貴女があの黒塀の中から、 :3324/3954
う云って、とうとうあすこの、板塀を切抜いて水門を拵《こしら》えさせたんだわ。     :3324/3954
ゆらと動いて、やがて礫《つぶて》した波が、水の面《おも》に月輪を纏《まと》めた風情に :3427/3954
闇《やみ》の気勢《けはい》に目を圧えて、用水の音凄《すさま》じく、地を揺《ゆ》るごと :3481/3954
た、小使が、のそりと入ると、薄色の紋着を、水のように畳に流して、夫人はそこに伏沈んで :3523/3954
廊下の真中《まんなか》を、ト一列になって、水彩色《みずさいしき》の燈籠の絵の浮いて出 :3537/3954
ふたおや》がついて、かねてこれがために、清水港《みなと》に、三保に近く、田子の浦、久 :3590/3954
        酒井は猶予《ため》らわず、水薬を口に含んだのである。         :3662/3954
のそちこちに、白い金盥《かなだらい》に昇汞水《しょうこうすい》の薄桃色なのが、飛々の :3676/3954
                  ざぶり水を注《か》けながら、見るともなしに、小窓 :3679/3954
渡ると見れば、波のように葉末が分れて、田の水の透いたでもなく、ちらちらと光ったものが :3680/3954
                    手水《ちょうず》と、その景色にぶるぶると冷く :3681/3954
つけて飲忘れた、一度ぶり残った呑かけの――水薬《すいやく》の瓶に、ばさばさと当るのを :3690/3954
けて、垂々《たらたら》と濺《そそ》ぐと――水薬の色が光って、守宮の頭を擡《もた》げて :3694/3954
                早瀬はその水薬《すいやく》の残余《のこり》を火影《ほ :3698/3954
保養は、河野さんの皆さんがいらっしゃる、清水港の方へ来てしてはどうか、と云って下さい :3710/3954
薄いが鮮麗《あざやか》に、朱緞子に銀と観世水のやや幅細な帯を胸高に、緋鹿子の背負上《 :3720/3954
拡げた蒼き綿のようになって、興津、江尻、清水をかけて、三保の岬、田子の浦、久能の浜に :3778/3954
えず続いて、轟々《ごろごろ》と田舎道を、清水港の方から久能山の方へ走らして通る、数八 :3779/3954
云うのを……仔細あって……早瀬が留めて、清水港の海水浴に誘ったのである。       :3780/3954
……仔細あって……早瀬が留めて、清水港の海水浴に誘ったのである。           :3780/3954
                  共に清水港の別荘に居る、各々《めいめい》の夫は、 :3783/3954
つら》へ打《ぶっ》かけるように、仕かけの噴水が、白粉の禿げた霜げた姉さんの顔を半分に :3882/3954
た海に向けて、蝕ある凄《すご》き日の光に、水底《みなそこ》のその悪竜の影に憧るる面色 :3938/3954
                その夜、清水港の旅店において、爺《じじい》は山へ柴苅 :3944/3954


『親子そば三人客』 従吾所好

  はて、何処へ、持つてく土産だらう、」と水を飲んだより一層醒めた、酒の名も知らぬら :118/121


『龍潭譚』 青空文庫

のあかきはなくて、たそがれの色、境内の手洗水《みたらし》のあたりを籠めたり。柵結ひた :31/186
空地《くうち》なるをソとめくばせしき。瞳は水のしたたるばかり斜《ななめ》にわが顔を見 :50/186
、鼻うつばかり冷たき風あり。落葉、朽葉堆く水くさき土のにほひしたるのみ、人の気勢《け :51/186
すの画と句など書いたり。灯をともしたるに、水はよく澄みて、青き苔むしたる石鉢の底もあ :79/186
心を籠めて、気を鎮めて、両の眼を拭ひ拭ひ、水に臨む。                 :79/186
      道いかばかりなりけむ、漫々たる水面やみのなかに銀河の如く横《よこた》はり :87/186
に灯ともしたる灯影《ほかげ》すずしく、筧の水むくむくと湧きて玉ちるあたりに盥を据ゑて :91/186
              筧《かけい》の水はそのたらひに落ちて、溢《あふ》れにあふ :92/186
ままおそれげもなう翼を休めたるに、ざぶりと水をあびせざま莞爾とあでやかに笑うてたちぬ :94/186
       やがて添臥したまひし、さきに水を浴びたまひし故にや、わが膚をりをり慄然 :115/186
みもせざりき。またその眼のふちをおしたれど水晶のなかなるものの形を取らむとするやう、 :133/186
        かくて大沼の岸に臨みたり。水は漫々として藍《らん》を湛へ、まばゆき日 :144/186
ゆき日のかげも此処《ここ》の森にはささで、水面をわたる風寒く、颯々として声あり。をぢ :144/186
倒れぬ。舟といふものにははじめて乗りたり。水を切るごとに眼くるめくや、背後《うしろ》 :145/186
」と喚きざま、引立てたり。また庭に引出して水をやあびせられむかと、泣叫びてふりもぎる :154/186
に、一幅《ひとはば》の青き光颯と窓を射て、水晶の念珠《ねんじゆ》瞳をかすめ、ハツシと :179/186
もに来り見き。その日一天うららかに空の色も水の色も青く澄みて、軟風《なんぷう》おもむ :183/186
き鳥の翼広きがゆたかに藍碧《らんぺき》なる水面を横ぎりて舞へり。           :183/186
たる、おのづからなる堤防をなして、凄まじき水をば湛へつ。一たびこのところ決潰せむか、 :185/186
決潰せむか、城《じよう》の端《はな》の町は水底《みなそこ》の都となるべしと、人々の恐 :185/186


『春昼』 泉鏡花を読む

ないか、やがて半分ばかり垣根へ入つて、尾を水の中へばたりと落して、鎌首を、あの羽目板 :36/628
―蝶の飛ぶのも帆艇の帆かと見ゆるばかり、海水浴に開けて居るが、右の方は昔ながらの山の :48/628
処を見た、柱なる蜘蛛の糸、あざやかなりけり水茎の跡。                 :197/628
\と染んで出たのが、真紅な、ねば/\とした水ぢや、」                 :288/628
の中でも紅色の鱗は目覚しい。土を穿つて出る水も、然ういふ場合には紫より、黄色より、青 :294/628
                 客人は海水帽を脱いだばかり、未だ部屋へも上らず、其 :348/628
          盛装と云ふ姿だのに、海水帽をうつむけに被つて――近所の人ででもあ :357/628
が、お太鼓に結んだ、白い方が、腰帯に当つて水無月の雪を抱いたやうで、見る目に、ぞツと :372/628
を繙く、それ露が滴るやうに婀娜なと言うて、水道の水で洗ひ髪ではござらぬ。人跡絶えた山 :436/628
、それ露が滴るやうに婀娜なと言うて、水道の水で洗ひ髪ではござらぬ。人跡絶えた山中の温 :436/628
/\と涙が落ちる。目を〓《みは》つて、其の水中の木材よ、いで、浮べ、鰭ふつて木戸に迎 :472/628
うが、矢張其の荒物店であります処、戸外へは水を打つて、軒の提灯には未だ火を点さぬ、溝 :479/628
声で。おまけに一人の親仁なぞは、媽々衆が行水の間、引渡されたものと見えて、小児を一人 :481/628
て、ちら/\真紅に、黄昏過ぎの渾沌とした、水も山も唯一面の大池の中に、其の軒端洩る夕 :536/628
の巌の根に、春は菫、秋は龍胆の咲く処。山清水がしと/\と涌く径が薬研の底のやうで、両 :547/628
                    (水を下さい。)               :618/628
の矢倉と言ふのは、此の裏山の二ツ目の裾に、水のたまつた、むかしからある横穴で、わツと :627/628
と底知れず奥の方へ十里も広がつて響きます。水は海まで続いて居ると申伝へるでありますが :627/628


『春昼後刻』 泉鏡花を読む

             畜生め。われさ行水するだら蛙飛込む古池と云ふへ行けさ。化粧 :40/444
じろぎで、片前下りに友染の紅匂ひこぼれて、水色縮緬の扱帯の端、やゝずり下つた風情さへ :138/444
もありません。燃えるやうにちら/\咲いて、水へ散つても朱塗の杯になつてゆる/\流れま :189/444
が蕩けるのだつて言ひますが、私は何んだか、水になつて、其の溶けるのが消えて行きさうで :208/444
               それから……水中に物あり、筆者に問へば知らずと答ふと、 :321/444
の余白へ、鉛筆を真直に取つてすら/\と春の水の靡くさまに走らした仮名は、かくれもなく :374/444
                     水の底をもかつき見てまし          :376/444
見た。波は平かである。青麦につゞく紺青の、水平線上雪一山。              :377/444
くほろ/\と崩れると、又傍からもり添へる。水を掴むやうなもので、捜ればはら/\とたゞ :400/444
                     水の底を捜したら、渠がためにこがれ死をした :402/444
云ふ心で、君と其みるめおひせば四方の海の、水の底へも潜らうと、(ことづけ)をしたので :403/444
        もし又うつせ貝が、大いなる水の心を語り得るなら、渚に敷いた、いさゝ貝 :416/444
つたが、泳ぎは知らぬ児と見える。唯勢よく、水を逆に刎ね返した。手でなぐつて、足で踏む :428/444
に刎ね返した。手でなぐつて、足で踏むを、海水は稲妻のやうに幼児を包んで其の左右へ飛ん :428/444
               それから更に水に入つた。些と出過ぎたと思ふほど、分けら :431/444
のやうな海面へ、綾を流して、響くと同時に、水の中に立つたのが、一曲、頭を倒に。    :432/444


『天守物語』 泉鏡花を読む

ふうちに、色もかくれて、薄ばかりが真白に、水のやうに流れて来ました。         :54/480
つて手をつく。階子《はしご》の上より、先づ水色の衣《きぬ》の褄、裳《もすそ》を引く。 :68/480
月があつて、雁金《かりがね》のやうに(其の水色の袖を圧《おさ》ふ)其の袖に影が映つた :94/480
わ。鱗の落ちた鱸《すゞき》の鰭《ひれ》を真水で洗ふ、手の悪い魚売人《ぎよばいにん》に :157/480
骨《かうぼね》、すつきり花が咲いたやうな、水際立つてお美しい。……奥様。       :391/480
ざ》いた、とな。続いて三年、毎年、秋の大洪水よ。何が、死骸取片づけの山神主《やまかん :425/480
いたと云ふが触出《ふれだ》しでな。打続く洪水は、その婦《をんな》の怨《うらみ》だと、 :425/480
を恐れぬ荒気《あらき》の大名。おもしろい、水を出さば、天守の五重を浸してみよ、とそれ :425/480


『歌行燈』 従吾所好

霜月十日あまりの初夜。中空は冴切つて、星が水垢離取りさうな月明に、踏切の桟橋を渡る影 :6/744
    輻〈やぼね〉の下に流るゝ道は、細き水銀の川の如く、柱の黒い家の状〈さま〉、恰 :50/744
ばかり、灘の浪を川に寄せて、千里の果も同じ水に、筑前の沖の月影を、白銀〈しろがね〉の :52/744
、加減〈さしひき〉だけで済むものを、醤油に水を割算段。                :141/744
後は直ぐに縁、欄干にずらりと硝子戸の外は、水煙渺として、曇らぬ空に雲かと見る、長洲の :180/744
、曇らぬ空に雲かと見る、長洲の端に星一つ、水に近く晃らめいた、揖斐川の流れの裾は、潮 :180/744
    「月は寒し、炎のやうな其の指が、火水と成つて骨に響く。胸は冷い、耳は熱い。肉 :394/744
宵寝をした、叔父の夜具の裾を叩いて、枕許へ水を置き、                 :428/744
何うした、よく言ふ口だが芥溜〈はきだめ〉に水仙です、鶴です。帯も襟も唐縮緬ぢやあるが :463/744
を重さうに差俯向く……襟足白く冷たさうに、水紅色〈ときいろ〉の羽二重の、無地の長襦袢 :474/744
寒いお月様のさす影で、恥かしいなあ、柄杓で水を立続けて乳へも胸へもかけられましたの。 :487/744
折重なるまで摺寄りながら、黙然で、燈の影に水の如く打揺ぐ、お三重の背中を擦つて居た。 :502/744
         空には蒼い星ばかり、海の水は皆黒い。暗の夜の血の池に落ちたやうで、 :581/744
         と翳す扇の利剣に添へて、水のやうな袖をあて、顔を隠した其の風情。人 :582/744
        と乱れた襦袢の袖を銜えた、水紅色〈ときいろ〉映る瞼のあたり、ほんのり :590/744
結弗〈ふツ〉つと切れ、肩に崩るゝ緑の黒髪。水に乱れて、灯に揺めき、畳の海は裳に澄んで :732/744


『夜行巡査』 青空文庫

《あきら》めてもらった日にゃあ、おれが志も水の泡さ、形なしになる。ところで、恋という :96/164
に足場をあやまり、身を横ざまに霜を辷りて、水にざんぶと落ち込みたり。         :140/164
堤防の上につと立ちて、角燈片手に振り翳し、水をきっと瞰下ろしたる、ときに寒冷謂うべか :142/164
冷謂うべからず、見渡す限り霜白く墨より黒き水面に烈しき泡の吹き出ずるは老夫の沈める処 :142/164
欲しつつありし悪魔を救わんとて、氷点の冷、水凍る夜半《よわ》に泳ぎを知らざる身の、生 :164/164


『薬草取』 青空文庫

てこの山路《やまみち》は何処《どこ》にも清水なぞ流れてはおりません。その代《かわり》 :58/283
《か》みますと、それはもう、冷《つめた》い水を一斗《いっと》ばかりも飲みましたように :58/283
ます。それがないと凌《しの》げませんほど、水の少い処《ところ》ですから、菖蒲《あやめ :58/283
って、倒《さかさま》に雲に映《うつ》るか、水底《みなそこ》のような天《てん》の色、神 :72/283
《おくれげ》を掻上《かきあ》げて、そして手水《ちょうず》を使って、乳母《うば》が背後 :126/283
ら羽織《はお》らせた紋着に手を通して、胸へ水色の下じめを巻いたんだが、自分で、帯を取 :126/283
一《おなじ》時刻、正午《ひる》頃です。岩も水も真白な日当《ひあたり》の中を、あの渡《 :141/283
            真蒼《まっさお》な水底《みなそこ》へ、黒く透《す》いて、底は :171/283
《すいよ》せられた。岸は可恐《おそろし》く水は深い。                 :171/283
ま》が雲を吐いて、処々《ところどころ》田の水へ、真黒な雲が往《い》ったり、来たり。  :176/283
りの松並木、青田《あおだ》の縁《へり》の用水に、白鷺《しらさぎ》の遠く飛ぶまで、畷《 :189/283
する犬の、と呟《つぶや》いて、ぶくりとまた水へ落して、これゃ、慈悲を享《う》けぬ餓鬼 :191/283
ろうと、思われるのは、姥《うば》の娘で、清水谷《しみずだに》の温泉へ、奉公《ほうこう :209/283
半腹《はんぷく》は暗いが、真珠を頂いた峰は水が澄んだか明るいので、山は、と聞くと、医 :217/283
  其雲所出《ごうんしょしゅつ》  一味之水《いちみしすい》             :268/283


『夜叉ヶ池』 青空文庫

ゆ。晃やがて徐《おもむろ》に段を下りて、清水に米を磨《と》ぐお百合《ゆり》の背後に行 :30/564
                   晃 水は、美しい。いつ見ても……美しいな。   :31/564
                   その水の岸に菖蒲《あやめ》あり二三輪小さき花咲 :33/564
           晃 綺麗《きれい》な水だよ。(微笑《ほほえ》む。)       :34/564
を掛く)お勝手働き御苦労、せっかくのお手を水仕事で台なしは恐多い、ちとお手伝いと行こ :36/564
さんのそうした処は、咲残った菖蒲を透いて、水に影が映《さ》したようでなお綺麗だ。   :38/564
《やしゃ》ヶ池へも映るらしい。ちょうどその水の上あたり、宵の明星の色さえ赤い。……な :52/564
……その竜が棲《す》む、夜叉ヶ池からお池の水が続くと申します。ここの清水も気のせいや :53/564
ヶ池からお池の水が続くと申します。ここの清水も気のせいやら、流《ながれ》が沢山《たん :53/564
             百合 ああ冷い。水の手にも涼しいほど、しっとり花が濡れまし :57/564
悩みましたが――可恐《おそろ》しい事には、水らしい水というのを、ここに来てはじめて見 :97/564
たが――可恐《おそろ》しい事には、水らしい水というのを、ここに来てはじめて見ました。 :97/564
のを、ここに来てはじめて見ました。これは清水と見えます。               :97/564
》と申します。貴客、それは、おいしい冷い清水。……一杯汲んで差上げましょうか。    :98/564
どう》も知らない前に、この美《うつくし》い水を見ると、逆蜻蛉《さかとんぼ》で口をつけ :99/564
            学円 いや、しらげ水は菖蒲《あやめ》の絞《しぼり》、夕顔の花 :101/564
》、夕顔の花の化粧になったと見えて、下流の水はやっぱり水晶。ささ濁りもしなかった。が :101/564
の化粧になったと見えて、下流の水はやっぱり水晶。ささ濁りもしなかった。が、村里一統、 :101/564
。ささ濁りもしなかった。が、村里一統、飲む水にも困るらしく見受けたに、ここの源《みな :101/564
                  百合 水の源《もと》はこの山奥に、夜叉ヶ池と申し :104/564
します。凄《すご》い大池がございます。その水底《みなそこ》には竜が棲《す》む、そこへ :104/564
その貴客《あなた》、流《ながれ》の石には、水がかかって、紫だの、緑だの、口紅ほどな小 :104/564
学円 (伸上り納戸越に透かして見て)おい、水があるか、蘆《あし》の葉の前に、櫛《くし :175/564
      晃 ここに伝説がある。昔、人と水と戦って、この里の滅びようとした時、越《 :185/564
ともすれば、誓《ちかい》を忘れて、狭き池の水をして北陸七道に漲《みなぎ》らそうとする :185/564
ともに、夜叉ヶ池から津浪が起って、村も里も水の底に葬って、竜神は想うままに天地を馳《 :185/564
         山沢、花は人の目を誘う、水は人の心を引く。君も夜叉ヶ池を見に来たと :196/564
掌《たなそこ》をめぐらさず、田地田畠、陸は水になる、沼になる、淵《ふち》になる。幾万 :197/564
遠い。三度の掟《おきて》でその外は、火にも水にも鐘を撞くことはならないだろう。    :198/564
らし》にすら、そよりとも動かない、その池の水が、さらさらと波を立てると聞く。元来、竜 :200/564
んべい。大沼小沼が干たせいか、じょんじょろ水に、びちゃびちゃと泳いだ処を、ちょろりと :271/564
なさを、今にして思当った。某《それがし》が水離れしたと同然と見える。……おお、大蟹、 :277/564
                 蟹五郎 水心、魚心だ、その礼に及ぼうかい。また、だ :278/564
の頃の旱《ひでり》で、やれ雨が欲しい、それ水をくれろ、と百姓どもが、姫様《ひいさま》 :287/564
い大津波が起って、この村里は、人も、馬も、水の底へ沈んでしまう……          :292/564
はるか》に仰いで)はあ、争われぬ、峰の空に水気が立つ。嬉しや、……夜叉ヶ池は、あれに :308/564
        鯰入 文箱《ふばこ》の中は水ばかりよ。                :345/564
          と云う時、さっと、清き水流れ溢《あふ》る。            :346/564
 夜叉ヶ池の白雪姫。雪なす羅《うすもの》、水色の地に紅《くれない》の焔《ほのお》を染 :349/564
》しませぬ。この鐘の鳴りますうちは、村里を水の底には沈められぬのでござります。    :376/564
ても、白雪の身よ、朝日影に、情《なさけ》の水に溶くるは嬉しい。五体は粉に砕けようと、 :416/564
ったで、否応《いやおう》はないわ。六ヶ村の水切れじゃ。米ならば五万石、八千人のために :448/564
きらるるか。稲は活きても人は餓《う》える、水は湧いても人は渇《かつ》える。……無法な :500/564
ちまちまた暗し。既にして巨鐘《きょしょう》水にあり。晃、お百合と二人、晃は、竜頭《り :559/564
ず》に頬杖《ほおづえ》つき、お百合は下に、水に裳《もすそ》をひいて、うしろに反らして :559/564
く一人鐘楼《しょうろう》に佇《たたず》み、水に臨んで、一揖《いちゆう》し、合掌す。  :561/564


『湯島の境内』 青空文庫

                  お蔦 水臭い、貴方は。……初手《しょて》から覚悟 :25/205
の生命《いのち》を懸けた、わけしりでいて、水臭い、芸者の真《まこと》を御存じない!  :149/205
ぼみ》を吹いて、ふくらましていたんですよ、水を遣《や》って下さいな……それから。   :175/205
       お蔦 (顔を上ぐ)貴方こそ、水がわり、たべものに気をつけて下さいよ。私 :181/205
         〓いえど此方《こなた》は水鳥の浮寝の床の水離れ、よしあし原をたちか :190/205
 〓いえど此方《こなた》は水鳥の浮寝の床の水離れ、よしあし原をたちかぬれば、     :190/205


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 佐藤和雄(蟻) 2000.9.29