鏡花作品の語彙検索(KWIC)

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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

 あの、仔雀が、チイチイと、ありッたけ嘴を赤く開けて、クリスマスに貰ったマントのよう :23/143
一本《ひともと》咲いたり、蓼《たで》が穂を紅らめる。                 :23/143
羽も、忽ちぐにゃぐにゃになって、チイチイ、赤坊声で甘ったれて、餌《うまうま》を頂戴と :24/143
んで虫を退治た。また、冬の日のわびしさに、紅椿の花を炬燵へ乗せて、籠を開けると、花を :29/143
の老手である。並木づたいに御油《ごゆ》から赤坂まで行く間に、雀の獲もの約一千を下らな :64/143
鳥《めじろ》が唯一羽、雪を被《かつ》いで、紅に咲いた一輪、寒椿の花に来て、ちらちらと :72/143
誼《じぎ》をしたまま、うしろ姿で、ちらりと赤い小さなもの、年紀《とし》ごろで視て勿論 :94/143
              「ああ、これ、紅い糸で縫えるものかな。」         :108/143
めの疲労《つかれ》には、みめよき女房の面が赤馬の顔に見えたと言う、むかし武士《さむら :135/143


『絵本の春』 青空文庫

》に咲くので、その一ならびの塀の内に、桃、紅梅、椿《つばき》も桜も、あるいは満開に、 :4/84
               桃も桜も、真紅《まっか》な椿も、濃い霞に包まれた、朧《 :14/84
《まないた》はなかろうよ。雨戸に、その女を赤裸《はだか》で鎹《かすがい》で打ったとな :43/84
を開けるとな。……血肝《ちぎも》と思った真赤《まっか》なのが、糠袋《ぬかぶくろ》よ、 :46/84
《しら》べると、あんぐり開けた、口一杯に、紅絹《もみ》の糠袋……」          :48/84
 と、小母さんは白い顔して、ぺろりとその真紅《まっか》な舌。             :51/84
その時さえこの川は、常夏《とこなつ》の花に紅《べに》の口を漱《そそ》がせ、柳の影は黒 :74/84
、トちらりと見たのは、一条《ひとすじ》の真赤《まっか》な蛇。手箱ほど部の重《かさな》 :79/84
――鼓の転がるように流れたのが、たちまち、紅《べに》の雫《しずく》を挙げて、その並木 :79/84


『縁結び』 青空文庫

のである。が、薄化粧《うすげしょう》に、口紅《くちべに》濃《こ》く、目のぱっちりした :97/405
《すだれ》の中に、ほの白いものが見えたよ。紅《べに》の色も。             :142/405
    その養子というのは、日にやけた色の赤黒い、巌乗《がんじょう》づくりの小造《こ :163/405
糸で編んだ、萌黄《もえぎ》の手袋を嵌めて、赤い襯衣《しゃつ》を着て、例の目を光らして :165/405
に当てた襦袢《じゅばん》の袖の燃ゆる色も、紅《くれない》寒き血に見える。       :188/405
                  と顔を赤らめながら、               :275/405
七八計《ばかり》なる女房《にょうぼう》の、赤き袴に、柳裏《やなぎうら》の五衣《いつつ :292/405
       片褄《かたづま》取って、その紅《くれない》のはしのこぼれたのに、猶予《 :311/405
が氷《こおり》を削《けず》ったような裾を、紅、緑、紫の山でつつまれた根まで見える、見 :331/405


『古狢』 青空文庫

前ならびに、子供の履《はき》ものの目立って紅《あか》いのも、もの侘《わび》しい。蒟蒻 :48/310
   市場を出た処の、乾物屋と思う軒に、真紅《まっか》な蕃椒が夥多《おびただ》しい。 :59/310
斜《ななめ》に見える市場の裏羽目に添って、紅蓼《べにたで》と、露草の枯れがれに咲いて :64/310
かたづまはしょり》に、乾物屋の軒を伝って、紅端緒《べにはなお》の草履ではないが、つい :90/310
の烏賊《いか》と蝦《えび》は結構だったし、赤蜻蛉《あかとんぼ》に海の夕霧で、景色もよ :114/310
けて、裏を見せて、繊《ほっそ》り肌襦袢の真紅なのが、縁の糸とかの、燃えるように、ちら :184/310
帯をしめるのにも。そうして手巾に(もよ)と紅糸《あかいと》で端縫《はしぬい》をしたの :201/310
と顔一面、山女《あけび》を潰《つぶ》して真赤《まっか》になった。           :272/310
いて、三人で斉《ひと》しく振返ると、一脈の紅塵《こうじん》、軽く花片《はなびら》を乗 :309/310


『外科室』 青空文庫

。助手三人と、立ち会いの医博士一人と、別に赤十字の看護婦五名あり。看護婦その者にして :9/165
たる、夫人が蒼白なる両の頬に刷けるがごとき紅を潮しつ。じっと高峰を見詰めたるまま、胸 :108/165
              と見れば雪の寒紅梅、血汐《ちしお》は胸よりつと流れて、さ :109/165
躅を見たり。躑躅は美なりしなり。されどただ赤かりしのみ。               :129/165
なさい、アレアレちらほらとこうそこいらに、赤いものがちらつくが、どうだ。まるでそら、 :148/165


『義血侠血』 青空文庫

る婀娜者あり。紺絞りの首抜きの浴衣を着て、赤毛布を引き絡《まと》い、身を持て余したる :179/706
火のぱっと燃えたる影に、頬被りせる男の顔は赤く顕われぬ。黒き影法師も両三箇《ふたつみ :491/706
間にあまねく、行潦《にわたずみ》のごとき唐紅の中に、数箇所の傷を負いたる内儀の、拳を :585/706
たり。制服を絡《まと》いたる判事、検事は、赤と青とカバーを異にせるテーブルを別ちて、 :678/706


『五大力』 従吾所好

つた時は、其のちら/\が、ほつと成つて、薄紅梅に見えるけれども、凄い星が紫がかつて、 :186/1139
、通りがかり間近な所、低い軒に、切干大根を紅殻で染めたやうな、くな/\の端緒〈はなを :219/1139
云ひ/\、ふツ/\と膝を吹いたが、古下駄に赤めの入歯を、鉄槌でコトンと敲く。     :228/1139
なひに袖口の指の白さを、幽かに細々と彩る緋紅。                    :336/1139
球が、ぷく/\と膨れて、まつげぐるみ、瞼が赤く翻〈かへ〉つて、ぶらりと出る。……胸も :371/1139
がむく/\と持上げられて、其のまはりへ、薄赤い〓〈しぶき〉がかゝる風に、岸の火影がさ :439/1139
     捌く褄に颯と燃えつゝ、炎の氷つた紅が靡くと、霜の色が淡〈うす〉く揺れかゝつ :719/1139
と〓〈らふ〉闌けた、得も言はれぬ唇に、濃い紅の紅の色が、霜に颯と薄く冴え、もの凄いま :763/1139
〈らふ〉闌けた、得も言はれぬ唇に、濃い紅の紅の色が、霜に颯と薄く冴え、もの凄いまで美 :763/1139
乳のやうに、両方の目の突出た、瞼のまくれて赤いのは、私ぢやない、私ぢやない。」    :769/1139
いて、それでも些と飲〈まゐ〉つたか、耳朶を赤くして、釣船矢右衛門……控へてござる。  :787/1139
、毎晩日参をしたさうです。――其の目の球の赤剥げにぶら下る、骨と皮ばかりで、下腹の膨 :926/1139
泡が立つて、ぶくりと仰向に成つた顔が、其の赤めくれの、どろんと目球がぶら下つて、―― :953/1139


『半島一奇抄』 青空文庫

裡《なか》から、暗い白粉《おしろい》だの、赤い油だのが、何となく匂って来ると――昔を :55/129
。――見る内に、その第一の水車の歯へ、一輪紅椿が引掛《ひっかか》った――続いて三ツ四 :71/129
早いも遅いも考える間はありません。揃って真紅な雪が降積るかと見えて、それが一つ一つ、 :71/129
麗だ、綺麗だ、と思ううちに、水玉を投げて、紅《くれない》の〓《しぶき》を揚げると、ど :71/129
の小橋を跨《また》ぎかけて、あッと言った、赤い鼠! と、あ、と声を内へ引いて遁込んで :79/129
、あれえあれえと二階を飛廻って欄干へ出た。赤い鼠がそこまで追廻したものらしい。キャッ :79/129
刻過ぎで、浦近く、あれ、あれです、……あの赤島のこっちまで来ると、かえって朦朧《もう :86/129
《つま》、裾《すそ》が、瑠璃《るり》、青、紅《あか》だのという心か、その辺が判明《は :92/129
だ。たちまち道を一飛びに、鼠は海へ飛んで、赤島に向いて、碧色《へきしょく》の波に乗っ :124/129


『蛇くひ』 青空文庫

り、遁れ出でんと吐き出《いだ》す繊舌炎より紅く、笊の目より突出《つきいだ》す頭《かし :13/35


『雛がたり』 青空文庫

指ぐらいな抽斗《ひきだし》を開けると、中が紅いのも美しい。一双《いっそう》の屏風の絵 :4/58
金目《かねめ》のものではあるまいけれども、紅糸で底を結えた手遊《おもちゃ》の猪口《ち :9/58
入った南京砂《なんきんずな》も、雛の前では紅玉である、緑珠《りょくしゅ》である、皆敷 :9/58
      朧夜《おぼろよ》には裳《も》の紅《くれない》、袖の萌黄が、色に出て遊ぶで :13/58
くと、吉野紙の霞の中に、お雛様とお雛様が、紅梅白梅の面影に、ほんのりと出て、口許《く :15/58
。それが咲乱れた桜の枝を伝うようで、また、紅の霞の浪を漕ぐような。……そして、少しそ :18/58
                 色白で、赤い半襟をした、人柄な島田の娘が唯一人で店 :32/58


『星あかり』 泉鏡花を読む

りに産する何とかいふ蟹、甲良が黄色で、足の赤い、小さなのが数限なく群つて、動いて居る :10/36


『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

やいへりし大名邸の旧跡《あと》なるを、今は赤城得三が住家《すみか》とせり。      :5/219
いふ者。幼少の折父母を失ひければ、鎌倉なる赤城家に嫁ぎたる叔母の許にて養はれぬ。仮の :17/219
嫁ぎたる叔母の許にて養はれぬ。仮の叔父なる赤城の主人は大酒のために身を損ひて、其後病 :17/219
彼《かの》悪僕に追立てられて詮方無く、其夜赤城の家を出で、指して行方もあらざれば其日 :22/219
て、乞食《こつじき》の境遇にも、忘れ難きは赤城の娘、姉妹《あねいもうと》とも嘸《さぞ :22/219
ら、お念仏申しましよ。と殊勝らしく眼を擦り赤めて徐《やお》ら病院を退出《まかんで》ぬ :29/219
おかひこ》ぐるみ、時計の金鎖胸にきら/\、赤城といふは此者ならむと泰助は帳場に行きて :32/219
泰助は帳場に行きて、宿帳を検すれば、明かに赤城得三とありけり。(度胸の据つた悪党だ、 :32/219
、泰助の来れるをも知らざりけるが、時々、「赤城家の秘密……怨めしき得三……恋しき下枝 :36/219
》なる八橋楼に投宿して、他所《よそ》ながら赤城の様子を聞くに、「妖物《ばけもの》屋敷 :36/219
り。少しも早く探索せむずと雪の下に赴きて、赤城家の門前に佇みつゝ云々《しか/゛\》と :37/219
                   此時赤城得三も泰助と同じ終汽車《しまふぎしや》 :38/219
               今夜を過さず赤城家に入込みて、大秘密を発《あば》きくれ :46/219
「御主人外《ほか》でも無いが、あの雪の下の赤城といふ家。と皆まで言はぬに早合点《はや :46/219
》けませなんだので。すると貴客《あなた》、赤城の高楼《たかどの》の北の方の小さな窓か :48/219
しどけ》無く打纏ひ、衣紋開きて帯も占めず、紅のくけ紐を胸高に結びなし、脛《はぎ》も顕 :54/219
だいふ》には些《ちと》男が好過《よす》ぎる赤城の下男八蔵なり。彼《か》れ先刻《さきに :56/219
泰助は急ぎ身支度して、雪の下へと出行きぬ。赤城の下男八蔵は、墓原に来て突当《つきあた :57/219
顔を視めて、「おや、此奴は病院へ来た奴だ。赤城の手下に違ひないが、ふむ敵はもう我《お :64/219
りては千金にも勝りたる獲物ぞかし。之あらば赤城家へ入込むに便あり造化至造妙《しあわせ :64/219
              却説《こゝに》赤城得三は探偵の様子を窺へとて八蔵を出し遣 :66/219
に廻り出でて、欄干に凭り懸れば、此処はこれ赤城家第一の高楼《たかどの》にて、屈曲縦横 :67/219
              先刻《さき》に赤城得三が、人形室を出行きたる少時《しばら :74/219
       高田は得三を見て声をかけ、「赤城様《さん》、今晩は。得三は出迎へて、「 :79/219
は昼来て要害を見知りたれば、其足にて直ぐと赤城家の裏手に行き、垣の破目《やれめ》を潜 :83/219
泣《ひたなき》に泣きけるが、力無げに起直り赤めたる眼を袖にて押拭ひて、件の人形に打向 :89/219
                     赤城家にては泰助が、日蔽《ひおほひ》に隠れ :111/219
と後へ反り前へ俯し、悶え苦しみのりあがり、紅蹴返す白脛はたはけき心を乱すになむ、高田 :114/219
お藤は呼吸《いき》も絶々《たえ/゛\》に、紅顔蒼白く変りつゝ、苛責の苦痛に堪へざりけ :118/219
《わかものども》、よしこの都々逸唱ひ連れ、赤城の裏手へ来たりしが、此処にて血の痕途断 :142/219
さき》で旨く世間を欺けば、他に親類は無し、赤城家の財産はころりと我《おれ》が手へ転が :169/219
しき古巣に帰るとき、多くの人に怪しませて、赤城家に目を附けさせなば、何かに便《たより :190/219
かるべしと小指一節喰ひ切つて、彼の血の痕を赤城家の裏口まで印し置きて、再び件の穴に入 :190/219
                  二十 赤城様――得三様              :194/219
あてて眉を顰めつ、傾聴すれば、慥に人声、「赤城様《さん》――得三様《さん》。」    :198/219
どなた》ぢや。と呼懸くれば、答は無くて、「赤城様。得三様。しや忌々し何奴ぞと得三から :199/219
、彼声《かのこゑ》少し遠ざかりて、また、「赤城様、得三様。「えゝ、誰だ。とつか/\と :199/219
、廊下をばた/\走る音して姿は見えずに、「赤得、赤得。背後《うしろ》の方にて又別人の :199/219
をばた/\走る音して姿は見えずに、「赤得、赤得。背後《うしろ》の方にて又別人の声、「 :199/219
赤得。背後《うしろ》の方にて又別人の声、「赤城様、得三様。〓呀《あなや》と背後《うし :199/219
》と背後《うしろ》を見返れば以前の声が、「赤得、赤得。と笑ふが如く泣くが如く恨むが如 :199/219
後《うしろ》を見返れば以前の声が、「赤得、赤得。と笑ふが如く泣くが如く恨むが如く嘲け :199/219
近くより、透間もあらせず呼立てられ、得三は赤くなり、蒼くなり、行きつ戻りつ、うろ、う :199/219
戻りつ、うろ、うろ、うろ。拍子に懸けて、「赤、赤、赤、赤。「何者だ。何奴だ。出合へ出 :199/219
つ、うろ、うろ、うろ。拍子に懸けて、「赤、赤、赤、赤。「何者だ。何奴だ。出合へ出合へ :199/219
うろ、うろ、うろ。拍子に懸けて、「赤、赤、赤、赤。「何者だ。何奴だ。出合へ出合へ。と :199/219
、うろ、うろ。拍子に懸けて、「赤、赤、赤、赤。「何者だ。何奴だ。出合へ出合へ。といひ :199/219
       途端に烈しく戸を打叩きて、「赤得、赤得。と叫び立つれば、「汝《うぬ》野 :200/219
    途端に烈しく戸を打叩きて、「赤得、赤得。と叫び立つれば、「汝《うぬ》野狐奴《 :200/219
。と小声に教へて、己《おのれ》は大音に、「赤城様、得三様。」いふかと思へば姿は亡《な :203/219
快。と叫びける。同時に戸口へ顔を差出し、「赤城様、得三様。「やあ、汝《うぬ》は!と得 :204/219
                時正に東天紅。                    :217/219


『海神別荘』 華・成田屋

ても、素奴(しゃつ)色の白いはないか、袖の紅いはないか、と胴の間、狭間、帆柱の根、錨 :10/369
央にあり。枝のままなる見事なる珊瑚の椅子、紅白二脚、紅きは花のごとく、白きは霞のごと :35/369
枝のままなる見事なる珊瑚の椅子、紅白二脚、紅きは花のごとく、白きは霞のごときを、相対 :35/369
寸の珠三十三粒(りゅう)、八分の珠百五粒、紅宝玉三十顆、大さ鶴の卵、粒を揃えて、これ :36/369
の分までにござった。(公子に)鶴の卵ほどの紅宝玉、孔雀の渦巻の緑宝玉、青瑪瑙の盆、紫 :47/369
誓の美女を取れ、と御意ある。よって、黒潮、赤潮の御手兵をちとばかり動かしましたわ。赤 :54/369
、赤潮の御手兵をちとばかり動かしましたわ。赤潮の剣は、炎の稲妻、黒潮の黒い旗は、黒雲 :54/369
        僧都  いや、いや、黒潮と赤潮が、密と爪弾きしましたばかり。人命を断 :57/369
の鏡を寄越せ。(闥開く。侍女六、七、二人、赤地の錦の蔽(おおい)を掛けたる大なる姿見 :71/369
える(ただよえる)がごとく顕る。続いて花の赤き同じ燈籠、中空(なかぞら)のごとき高処 :75/369
(けまきしまだ)に結う。白の振袖、綾の帯、紅(くれない)の長襦袢、胸に水晶の数珠をか :75/369
翡翠の琅〓(ろうかん)、花片(はなびら)の紅白は、真玉(まだま)、白珠、紅宝玉。燃ゆ :82/369
はなびら)の紅白は、真玉(まだま)、白珠、紅宝玉。燃ゆる灯も、またたきながら消えない :82/369
て)急ぎましょう。美しい方を見ると、黒鰐、赤鮫が襲います。騎馬が前後を守護しました。 :103/369
、いよいよ清い。眉は美しく、瞳は澄み、唇の紅は冴えて、いささかも窶れなし。憂えておら :112/369
道鰐、黒鮫の襲いまする節は、御訓練の黒潮、赤潮騎士、御手の剣でのうては御退けになりま :127/369
          博士  (朗読す)――紅蓮の井戸堀、焦熱の、地獄のかま塗(ぬり) :132/369
りになって、現に、姉上の宮殿に今も十七で、紅の珊瑚の中に結綿の花を咲かせているのでは :147/369
の海月になった。――時々未練に娘を覗いて、赤潮に追払われて、醜く、ふらふらと生白く漾 :148/369
近頃は、かんてらの灯の露店(ほしみせ)に、紅宝玉(ルビイ)、緑宝玉(エメラルド)と申 :159/369
であろう。一番上りのものには、瑪瑙の莢に、紅宝玉の実を装った、あの造りものの吉祥果を :176/369
置き果つるまでに、女房は、美女をその上段、紅き枝珊瑚の椅子まで導く順にてありたし。女 :231/369
             女房  貴女の薄紅なは桃の露、あちらは菊花の雫です。お国で :283/369
   その貴女の身に輝く、宝玉も、指環も、紅、紫の鱗の光と、人間の目に輝くのみです。 :316/369
える。(飜然(ひらり)と飛ぶ。・・・乱るる紅、炎のごとく、トンと床を下りるや、颯と廻 :323/369
手首を取って刃を腕(かいな)に引く、一線の紅血(こうけつ)、玉盞(ぎょくさん)に滴る :347/369
お前の故郷(くに)の、浦の磯に、岩に、紫と紅の花が咲いた。それとも、星か。      :349/369


『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

なまち》が、雨路《あまみち》に滴って、草に赤い。                   :12/257
銀を鎧《よろ》った諸侯なるに対して、これは赤合羽《あかがっぱ》を絡《まと》った下郎が :13/257
                    「赤沼の若いもの、三郎でっしゅ。」      :68/257
れと裳《もすそ》を、脛がよれる、裳が揚る、紅《あか》い帆が、白百合の船にはらんで、青 :99/257
    「口に出して言わぬばかり、人間も、赤沼の三郎もかわりはないでしゅ。翁様――処 :101/257
ねて御守護の雑司《ぞうし》ヶ谷《や》か、真紅《まっか》な柘榴《ざくろ》が輝いて燃えて :105/257
ほのめいた、が、匂はさげ髪の背に余る。――紅地金襴《べにじきんらん》のさげ帯して、紫 :122/257
朽目の青芒《あおすすき》に、裳《もすそ》の紅《くれない》うすく燃えつつ、すらすらと莟 :122/257
く、あわれや、片手の甲の上に、額を押伏せた赤沼の小さな主は、その目を上ぐるとひとしく :129/257
遠近《おちこち》の法規《おきて》が乱れて、赤沼の三郎が、角の室という八畳の縁近に、鬢 :132/257
   「おおよそ御合点と見うけたてまつる。赤沼の三郎、仕返しは、どの様に望むかの。ま :150/257
か》にその真正面へ、ぱっと電燈の光のやや薄赤い、桂井館の大式台が顕《あらわ》れた。  :156/257
捌《さば》いた、女顔の木菟《みみずく》の、紅《あか》い嘴《くちばし》で笑うのが、見え :156/257
及ばぬ。お山の草叢《くさむら》から、黄腹、赤背の山鱗《やまうろこ》どもを、綯交《なえ :163/257
、菖蒲《あやめ》、山の雉子《きじ》の花踊。赤鬼、青鬼、白鬼の、面も三尺に余るのが、斧 :190/257
、禰宜《ねぎ》も、美女も、裸も、虎の皮も、紅《くれない》の袴《はかま》も、燃えたり、 :190/257
か》み、ぶつぶつ小じれに焦《じ》れていた、赤沼の三郎が、うっかりしたように、思わず、 :220/257
                  姫は、赤地錦の帯脇に、おなじ袋の緒をしめて、守刀 :221/257
                     赤沼の三郎は、手をついた――もうこうまいる :229/257


『化鳥』 青空文庫

た婦人の方で、私《わたし》がさういふと顔を赤うした。それから急にツヽケンドンなものい :78/
だのが袂《たもと》の菓子を分けて与つたり、赤い着物を着て居る、みいちやんの紅雀だの、 :95/
与つたり、赤い着物を着て居る、みいちやんの紅雀だの、青い羽織《はおり》を着て居る吉公 :95/
々《とき/″\》悪戯《いたづら》をして、其紅雀の天窓《あたま》の毛を〓つたり、かなり :96/
ともあつたさうだし、ひら/\と青いなかから紅い切《きれ》のこぼれて居る、うつくしい鳥 :97/
、人の笑ふのを見ると獣《けだもの》が大きな赤い口をあけたよと思つておもしろい、みいち :106/
うなのはうつくしいのである、けれどもそれは紅雀がうつくしいのと、目白が可愛らしいのと :112/
           大方《おほかた》今の紅雀の其姉さんだの、頬白の其兄《にい》さん :122/
きな、帽子《ばうし》の高い、顔の長い、鼻の赤い、其は寒いからだ。そして大跨《おほまた :135/
やあ歩行《ある》いて来る、靴《くつ》の裏の赤いのがぽつかり、ぽつかりと一ツづゝ此方《 :135/
沈《しづ》み出して、見てるうちにすつぼり、赤い鼻の上へ被《かぶ》さるんだもの。眼鏡《 :140/
ぢう》帽子《ばうし》、唯口ばかりが、其口を赤くあけて、あはてゝ、顔をふりあげて、帽子 :140/
                   で、赤い鼻をうつむけて、額越《ひたひごし》に睨 :167/
何にしやう、何に肖《に》て居るだらう、この赤い鼻の高いのに、さきの方が少し垂れさがつ :169/
事《びじゆつしやうれいくわいりじ》、大日本赤十字社社員《だいにつぽんせきじふじしや/ :181/
た鼻のさきがふら/\して、手で、胸にかけた赤十字《せきじふじ》の徽章《きしやう》をは :183/
なくなつたと思ふと溌《ぱつ》と糸のやうな真赤《まつか》な光線がさして、一巾《ひとはゞ :202/
                     赤い口をあいたんだなと、自分でさうおもつて :235/


『木の子説法』 青空文庫

 「――いり海老《えび》のような顔をして、赤目張《あかめば》るの――」        :36/231
弱り目に祟《たた》り目でしょう。左の目が真紅《まっか》になって、渋くって、辛くって困 :117/231
《あわせ》、お雪さんの肌には微《かす》かに紅《くれない》の気《け》のちらついた、春の :119/231
に、小児《こども》の絵入雑誌を拡げた、あの赤い絵の具が、腹から血ではないかと、ぞっと :135/231
て、耳朶《みみたぶ》と、咽喉《のど》に、薄紅梅の血が潮《さ》した。          :160/231
だのに、打振《うちふる》うその数珠は、空に赤棟蛇《やまかがし》の飛ぶがごとく閃《ひら :203/231
落した肩を左から片膚《かたはだ》脱いだ、淡紅の薄い肌襦袢《はだじゅばん》に膚が透く。 :212/231
ら響いた。が、子の口と、母の胸は、見る見る紅玉の柘榴《ざくろ》がこぼれた。      :224/231
お客さん――これは人間ではありません。――紅茸《べにたけ》です。」          :226/231
して、倒れた。顔はかくれて、両手は十ウの爪紅《つまべに》は、世に散る卍《まんじ》の白 :227/231


『高野聖』 泉鏡花を読む

        年紀は若し、お前様、私は真赤になつた、手に汲んだ川の水を飲みかねて猶 :55/622
図面というて、描いてある道は唯栗の毬の上へ赤い筋が引張つてあるばかり。        :124/622
には光線が森を射通す工合であらう、青だの、赤だの、ひだが入つて美しい処があつた。   :134/622
いてぶらりと下つた、其の放れた指の尖から真赤な美しい血が垂々と出たから、吃驚して目の :141/622
なのを恁る霊水で清めた、恁う云ふ女の汗は薄紅になつて流れよう。            :329/622
旨煮か、腹篭の猿の蒸焼か、災難が軽うても、赤蛙の干物を大口にしやぶるであらうと、潜と :462/622
やの。うんにや、秘さつしやるな、おらが目は赤くツても、白いか黒いかはちやんと見える。 :570/622
く稲の穂が目に入ると、それから煩ふ、脂目、赤目、流行目が多いから、先生眼病の方は少し :584/622


『国貞えがく』 青空文庫

いて、脳天から振下《ぶらさが》ったような、紅い舌をぺろりと出したのを見て、織次は悚然 :33/317
と》は、と一目見ると、石を置いた屋根より、赤く塗った柱より、先ずその山を見て、暫時《 :38/317
黄色な絵具の光る、巨大な蜈〓《むかで》が、赤黒い雲の如く渦を巻いた真中に、俵藤太が、 :47/317
親父はその晩、一合の酒も飲まないで、燈火の赤黒い、火屋《ほや》の亀裂《ひび》に紙を貼 :167/317
代えるのである、と思った。……顔馴染の濃い紅、薄紫、雪の膚《はだえ》の姉様たちが、こ :188/317
を出る、……と偶《ふ》と寂しくなった。が、紅、白粉が何んのその、で、新撰物理書の黒表 :188/317


『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

くずれ》の巌の膚は、春は紫に、夏は緑、秋は紅に、冬は黄に、藤を編み、蔦を絡《まと》い :28/1510
            車輪の如き大さの、紅白段々《だんだら》の夏の蝶、河床は草にか :109/1510
阿弥陀かぶり、縞の襯衣《しゃつ》の大膚脱、赤い団扇を帯にさして、手甲、甲掛厳重に、荷 :110/1510
うの山に三度ばかり浪の調べを通わすほどに、紅白段々《だんだら》の洋傘《こうもり》は、 :123/1510
早や、貴女《あなた》の術で、活きながら鋏の紅い月影の蟹に成った、とあとで村の衆にひや :253/1510
             きかぬ気の宰八、紅の鋏を押立《おった》て、         :626/1510
     あの白粉の花は見事です。ちらちら紅色のが交って、咲いていますが、それにさえ :886/1510
があって板塀続きの、邸ごとに、むかし植えた紅梅が沢山あります。まだその古樹がちらほら :922/1510
何《なあに》、女の児はませています、それに紅い手絡で、美しく髪なぞ結って、容《かたち :934/1510
                しまいへ、紅で、                   :938/1510
《あらいがみ》を櫛巻きに結んで、笄なしに、紅ばかり薄くつけるのだそうです。      :962/1510
                   宰八紅顱巻《あかはちまき》をかなぐって、    :1047/1510
上げる、と皺面ばかりが燭《あかり》の影に真赤になった。――この赤親仁と、青坊主が、廊 :1130/1510
が燭《あかり》の影に真赤になった。――この赤親仁と、青坊主が、廊下はずれに物言う状《 :1130/1510
らいを――大庄屋の夜の調度――浅緑を垂れ、紅麻《こうあさ》の裾長く曳いて、縁側の方に :1217/1510
に、水も流れ、風も吹く、木の葉も青し、日も赤い。天下に何一つ消え失するものは無うして :1334/1510
なって会釈すると、面を上げた寂しい頬に、唇紅う莞爾して、               :1397/1510
うばかり、雲間を漏れる高楼《たかどの》の、紅の欄干《てすり》を乗出して、叱りも睨みも :1420/1510
、草さえ受けて、暁の旭の影には瑠璃、紺青、紅の雫ともなるものを。           :1446/1510
し婦《おんな》、と気が着くと、襖も壁も、大紅蓮。跪居《ついい》る畳は針の筵。袖には蛇 :1451/1510
も赫《かっ》と、胡粉に注いだ臙脂の目許に、紅の涙を落すを見れば、またこの恋も棄てられ :1452/1510
発《はっ》として、肩に萌黄の姿つめたく、薄紅が布目を透いて、             :1463/1510
掌《たなそこ》の白きが中に、魔界は然りや、紅梅の大いなる莟と掻撫でながら、袂のさきを :1468/1510
ちた木の葉も、ぱらぱらと、行燈を繞って操る紅。中を縢《かが》って雪の散るのは、幾つと :1477/1510


『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

つて、両側に遊郭らしい家が並んで、茶めし、赤い行燈もふはりと目の前にちらつくのに―― :11/330
又夥多しい。青い火さきが、堅炭を搦んで、真赤に〓《おこ》つて、窓に沁入る山颪は颯と冴 :21/330
は手巾で口を圧へたんですがね……たら/\と赤いやつが沁みさうで、私は顔を見ましたよ。 :70/330
れ堀の苔むす石垣を這つて枯残つた小さな蔦の紅の、鶫の血のしたゝる如きのを見るにつけて :118/330
タンに、一つ二つ電燈がスツと息を引くやうに赤く成つて、橋がかりのも洗面所のも一斉にパ :175/330


『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

明治二十二年四月、友人の下宿にて、はじめて紅葉先生の、「いろ懺悔」を読む。庭に桃桜咲 :9/50
、敦賀より汽車にて上京。予て崇慕渇仰したる紅葉先生たらむとのみ志ししが、ながく面接の :10/50
四年十月、牛込横寺町四十七番地に、はじめて紅葉先生を訪ぬ。志を述ぶるや、ただちに門下 :11/50
ふため、小石川戸崎町大橋乙羽氏の宅に移る。紅葉先生、弟子の行を壮(さかん)ならしむる :15/50
の郷友、吉田賢龍氏の厚誼なり。十月三十日、紅葉先生逝去さる。十一月より、国民新聞に「 :23/50
月、「紅雪録」四月、「続紅雪録」――雪中の赤帽は、名古屋停車場に、これを見たるなり。 :24/50
           明治三十七年三月、「紅雪録」四月、「続紅雪録」――雪中の赤帽は :24/50
  明治三十七年三月、「紅雪録」四月、「続紅雪録」――雪中の赤帽は、名古屋停車場に、 :24/50


『日本橋』 青空文庫

辻の飴屋の前に、押競饅頭で集った。手に手に紅だの、萌黄だの、紫だの、彩った螺貝の独楽 :10/2195
さず、可愛い素足に台所|穿を引掛けたのが、紅と浅黄で羽を彩る飴の鳥と、打切飴の紙袋を :12/2195
じめたので、あわれ、若い妓の素足の指は、爪紅が震えて留まる。             :59/2195
らさぬかわりに、いつでも広告の比羅がわり、赤い涎掛をしている名代の菩薩でなお可笑い。 :65/2195
          潮を踏んだ飴屋は老功。赤い涎掛を荷の正面へ出して、小児の捌口へ水 :106/2195
                  「僕は赤鞘の安兵衛てんです。」          :119/2195
  とその塩瀬より白い指に、汗にはあらず、紅宝玉の指環。点滴るごとき情の光を、薄紫の :188/2195
、地蔵様へ参詣をしたのではない。そこに、小紅屋と云う苺が甘そうな水菓子屋がある。二人 :233/2195
。其奴の間夫だか、田楽だか、頤髯の凄まじい赤ら顔の五十男が、時々長火鉢の前に大胡坐で :300/2195
                    小紅屋の女房|揉手をして、          :306/2195
                    小紅屋の奴、平の茶目が、わッ、と威して飛出す :319/2195
                  そこに紅梅の風情は無いが、姿見に映る、江一格子の :320/2195
、しゃら解けさして、四十歳宿場の遊女どの、紅入友染の長襦袢。やっぱり、勝手に拝借もの :328/2195
蜀山兀として阿房宮、富士の霞に日の出の勢、紅白粉が小溝に溢れて、羽目から友染がはみ出 :336/2195
          もっとも中頃、火取虫が赤いほど御神燈に羽たたきして、しきりに蛞蝓 :338/2195
   悪戯児の悪関係から、火の番の立話、小紅屋へ寄ったまで、ちょっと時間が取れている :413/2195
したろう、……座敷で、お千世がいつも着る、紅と浅黄と段染の麻の葉|鹿の子の長襦袢を、 :430/2195
なり、何にも言わず、微笑むらしいお孝の唇、紅をさしたように美しい。          :434/2195
間を落ちた、片膝立てた段|鹿の子の、浅黄、紅、露わなのは、取乱したより、蓮葉とより、 :476/2195
に、向う角の火災保険の煉瓦に映る、縁結びの紅い燈は、あたかも奥庭の橋に居て、御殿の長 :502/2195
              巡査は魔を射る赤い光を、葛木の胸にぴたり。        :556/2195
声。ほんのりと一重桜、カランと吾妻下駄を、赤電車の過ぎた線路に遠慮なく響かすと、はっ :712/2195
手の中皿の、半月|形に破れたのに、小さな口紅三つばかり、裡紫の壺|二個。……その欠皿 :740/2195
紫の壺|二個。……その欠皿も、白魚の指に、紅猪口のごとく蒼く輝く。          :740/2195
見よ。英気|颯爽としてむしろ槊を横えて詩を赤壁に賦した、白面の曹操の概がある。    :932/2195
、西河岸の袂あたりに、そこへ……その夜は、紅い涎掛の飴屋が出ていた。         :946/2195
            これがもし対丈で、赤皮の靴を穿けば、樺太の海賊であるが、腰の :964/2195
て、引傾げて剥いで見せたは、酒気も有るか、赤ら顔のずんぐりした、目の細い、しかし眉の :997/2195
な膏ぎったちょんぼり目を膃肭臍、毛並の色で赤熊とも人呼んで、いわゆるお孝の兄さんであ :1002/2195
                     赤熊は指揮する体に頤で掬って、       :1004/2195
                     赤熊のこの容態では、成程|立聴をする隠れ場 :1008/2195
                     赤熊は、チェと俯向けの股へ唾を吐いて、   :1017/2195
                     赤熊が顕れた。               :1032/2195
                赫となった赤熊が、握拳を被ると斉しく、かんてらが飛ん :1046/2195
  苦とも言わせず、踏のめす気か足を挙げた赤熊は、四辺に人は、邪魔は、と見る目に、御 :1047/2195
来る清葉の前を、真角に切って飛んで遁げた、赤熊の周章てた形は、見る見る日本橋の袂へ小 :1047/2195
                    「赤熊。」と二人は囁いて、ちょっと目配。   :1059/2195
  「清葉さん。」と薄目で見越して、猪口は紅を噛んだかと思う、微笑のお孝の唇。    :1083/2195
熟と視ると、波打つ胸の切符に寄せる、夕日に赤い渚を切って、千鳥が飛ぶように、サの字が :1094/2195
らするくらい。その勢で、かッとなる目の颯と赤い中へ、稲妻と見たサの字なんだ。     :1123/2195
巻かれたように、跪いて細目に開けると、翠帳紅閨に、枕が三つ。床の柱に桜の初花。    :1179/2195
                    口紅                     :1181/2195
た為に口を添えた、皓歯でその、足袋の紐に口紅の附いたのを見て、晩方の土の紺泥に、真紅 :1187/2195
口紅の附いたのを見て、晩方の土の紺泥に、真紅の蓮花が咲いたように迷出して、大堕落をし :1187/2195
                「でね、口紅がついていたんだ。」           :1190/2195
に寄せて、暖めるのに炭火に翳す、と節の長い紅宝王を嵌めたその美しい白い手が一つ。親か :1201/2195
露命をつないでいる。私が小僧になったのは、赤坂台町の葉茶屋だった。」         :1225/2195
てほとんど見えない。二人の孫を手探りにして赤い涙を流すんじゃないか。         :1239/2195
閉めようとしてちょっと立姿で覗く。羽二重の紅なるに、緋で渦巻を絞ったお千世のその長襦 :1266/2195
で、乳の下、鳩尾、窪みに陰の映すあたり、鮮紅に血汐が染むように見えた――俎に出刃を控 :1266/2195
干に立って、私を守っているようでもあるし、紅蓮大紅蓮という雪の地獄に、俎に縛られて、 :1284/2195
って、私を守っているようでもあるし、紅蓮大紅蓮という雪の地獄に、俎に縛られて、胸に庖 :1284/2195
め、チョッ。」と膝を丁と支くと、颯と掻巻の紅裏を飜す、お孝は獅子頭を刎ねたように、美 :1330/2195
も焼くのを知って、それが草色でも、白でも、紅色でも、色の選好みは忘れている、……ああ :1379/2195
       ああ、七年の昔を今に、君が口紅流れしあたり。風も、貝寄せに、おくれ毛を :1435/2195
今もなお且つ信じないように、渋に朱を加えた赤い顔で――信ぜんのじゃ!――       :1576/2195
たですよ。柱の電鈴を圧さるると、小使どんが紅茶を持って来るのじゃった……       :1599/2195
たのに――やがて仔細有って、この日の午後、赤熊の毛皮をそのまま、爪を磨ぎ、牙を噛んで :1653/2195
をしろ――ッて謎じゃないか。こりゃ、お前、赤熊の為業だあね、あの、鰊野郎の。」    :1711/2195
る祠は、瓦斯燈の靄を曳いて、空地に蓮の花の紅いがごとく、池があるかと浮いて見える。  :1726/2195
わず地声を出したらしい。……で、頭を下げて赤熊は橋の上に蹲る。            :1757/2195
田の人形を思った、栄螺と蛤を思った、吸口の紅を思って、火を投げるに忍びなくって、―― :1758/2195
としつつも血走った眼を、白眼勝に仰向いて、赤熊の筒袖の皮|擦れ、毛の落ち、処々、大な :1759/2195
                     赤熊はすっくと立った。           :1789/2195
                     赤熊は身構、口吻、さて、急に七つ八つ年を取 :1805/2195
った時は、知ったほどの誰も彼も、不断云う、赤熊だことの、膃肭臍だことの、渾名を止めて :1850/2195
                     赤熊は星が痛そうに、額を確と両手で蔽い、  :1860/2195
                     赤熊は、まじまじとして、頽然と俯向いたが、 :1878/2195
を背けて、はっと吐こうとした唾を、清葉の口紅と、雛の思出、控えて手巾を口に当てた。  :1888/2195
                半ば聞いて赤熊はまた頽然とした。           :1923/2195
、夢にもこうとは知らなかった。――一石橋で赤熊に逢って、浮世を思捨てるばかり、覚悟し :1960/2195
んだ、葛木を仰ぎ見て、夥多たび押頂いたのは赤熊である。                :1981/2195
を潜って、土間の縁台の薄暗い処で、折敷装の赤飯を一盆だけ。              :1994/2195
になった車掌が言った。その帽の、庇も顔も真赤である。                 :2000/2195
に、前と後を、おなじ消防夫に遮られつつ、口紅の色も白きまで顔色をかえながら、かかげた :2014/2195
出の衣服の、肩を揉んで身をあせる、火の粉は紅梅のごとく衣紋を切って散るのである。   :2020/2195
          とばかり呻って出たのは赤熊である。                :2041/2195
しいまでにひそまり返って、ただ処々、廂に真赤な影は、そこへ火を呼ぶか、と凄いのである :2059/2195
蛇のごとく空に躍って、ちょうどそこへ来た、赤熊の額を尾でたたいて、ハタと落ちた。   :2061/2195
                     赤熊は今日も附狙って、清葉が下に着た段鹿子 :2072/2195
          箱屋が来て、薄べりに、紅裏|香う、衣紋を揃えて、長襦袢で立った、 :2111/2195
破や見舞、と駆込んで、台所口へ廻ったのが、赤熊と一足違い。              :2122/2195
れた。あたかも甚平の魂のごとくに挫けて、真紅の雛芥子は処女の血のごとく、めらめらと颯 :2123/2195
      と蹴出しの浅黄を蹈くぐみ、その紅を捌きながら、ずるずると着衣を曳いて、  :2129/2195
                 仲通の小紅屋の小僧は、張子の木兎のごとく、目を光ら :2131/2195
に出した手に、はっと、女神の命に従う状に、赤熊は黙ってその刀を渡した。        :2138/2195
ら、咽喉へはずれる、その真中、我と我が手に赤熊が両手に握って、            :2143/2195
 と、忘れたように柄を離すと、刀は落ちて、赤熊は真仰向けに、腹を露骨に、のっと反る。 :2150/2195
でいたのは茶缶婆で、胸に突疵がある。さては赤熊が片附けた。              :2165/2195
に接吻していた、自分のよりは色のまだ濡々と紅な、お千世の唇を放して、         :2180/2195


『人魚の祠』 青空文庫

                     赤坂の見附《みつけ》に近い、唯《と》ある珈 :10/122
      私たちは七丁目の終点から乗つて赤坂の方へ帰つて来た……あの間の電車は然《 :25/122
絞《たてしぼり》の浴衣を唯一重、糸ばかりの紅も見せず素膚に着た。襟をなぞへに膨《ふつ :28/122
ま》の憑ものがしたやうに、毛が赫《かつ》と赤く成つて、草の中を彼方《あつち》へ、此方 :92/122
           動止《うごきや》んだ赤茶けた三俵法師《さんだらぼふし》が、私の :96/122
を焼く音がして、ばら/\と飛着いた、棕櫚の赤いのは、幾千万とも数の知れない蚤の集団《 :97/122
けて、棕櫚の毛の蚤が、うよ/\ぞろ/\……赤蟻の列を造つてる……私は立窘《たちすく》 :105/122
紅《からくれなゐ》。糸を乱して、卯の花が真赤に散る、と其の淡紅《うすべに》の波の中へ :108/122
》と張る乳の下に、星の血なるが如き一雫の鮮紅《からくれなゐ》。糸を乱して、卯の花が真 :108/122
。糸を乱して、卯の花が真赤に散る、と其の淡紅《うすべに》の波の中へ、白く真倒《まつさ :108/122


『婦系図』 青空文庫

                 素顔に口紅で美《うつくし》いから、その色に紛《まが :7/3954
上に揃えた、菠薐草《ほうれんそう》の根を、紅に照らしたばかり。            :16/3954
           と莞爾した、その唇の紅を染めたように、酸漿を指に取って、衣紋を :23/3954
すると、お源は莞爾して俯向いたが、ほんのり紅《あか》くした顔を勝手口から外へ出して路 :37/3954
えぬ。例によって飲《き》こしめした、朝から赤ら顔の、とろんとした目で、お蔦がそこに居 :41/3954
    俎板をポンと渡すと、目の下一尺の鮮紅《からくれない》、反《そり》を打って飜然 :81/3954
と扱《しご》いた時、襦袢《じゅばん》の裏の紅いのがチラリと翻《かえ》る。       :177/3954
いき》づかいと、早口の急込《せきこみ》に真赤《まっか》になりながら、直ぐに台所から居 :404/3954
                    「赤いか、」                 :411/3954
ろいろの立姿。まあ! 紫と、水浅黄と、白と紅咲き重なった、矢車草を片袖に、月夜に孔雀 :433/3954
を捌いて、濃いお納戸《なんど》地に、浅黄と赤で、撫子《なでしこ》と水の繻珍《しゅちん :447/3954
違いないが、早瀬はいつもこの人から、その収紅拾紫《しゅうこうしゅうし》、鶯《うぐいす :631/3954
のある処を知るに苦《くるし》む、などと、〓紅をさして、蚯蚓《みみず》までも突附けて、 :631/3954
   人事《ひとごと》ながら、主税は白面に紅《こう》を潮して、            :777/3954
、ちらちらと蝶が行交う歩行《あるき》ぶり、紅ちらめく袖は長いが、不断着の姿は、年も二 :953/3954
その娘はまた同じことをここで云って、ぼうと紅くなる。                 :1148/3954
の燈と、街路の燈と、蒼《あお》に、萌黄に、紅に、寸隙《すきま》なく鏤《ちりば》められ :1177/3954
って、先方《さき》でも落籍《ひき》祝いに、赤飯ぐらい配ったろう、お前食ったろう、そい :1324/3954
  阿嬢《おじょう》は、就中活溌に、大形の紅入友染の袂《たもと》の端を、藤色の八ツ口 :1571/3954
           一言聞くと、颯と瞼を紅にして、お妙は友染の襦袢《じゅばん》ぐる :1654/3954
るべ》へ唇を押附《おッつ》けるので、井筒の紅梅は葉になっても、時々花片《はなびら》が :1793/3954
     「恩に被せるんじゃありません。爪紅《つまべに》と云って、貴娘、紅をさしたよ :1832/3954
りません。爪紅《つまべに》と云って、貴娘、紅をさしたような美《うつくし》い手の先を台 :1832/3954
           「憎らしい。」と顔を赤めて、刎《は》ね飛ばして、帽子《ハット》 :1890/3954
         と妙に白けた顔が、燈火に赤く見えて、                :1914/3954
、なおこの上の事の破れ、と礼之進行詰って真赤《まっか》になり、            :1991/3954
ぎに端が解けた、しどけない扱帯《しごき》の紅。                    :2020/3954
、薄色の褄を襲《かさ》ねて、幽《かす》かに紅の入った黒地友染の下襲《したがさ》ね、折 :2155/3954
附属の化粧料があるから、天のなせる麗質に、紅粉の装《よそおい》をもってして、小遣が自 :2252/3954
はしたが、玉の膚《はだえ》豊かにして、汗は紅の露となろう、宜《むべ》なる哉《かな》、 :2252/3954
          当時、女学校の廊下を、紅色の緒のたった、襲裏《かさねうら》の上穿 :2253/3954
》の水の走るを見た。たちまち一朶《いちだ》紅の雲あり、夢のごとく眼《まなこ》を遮る。 :2300/3954
、雪なす袖を飜《ひるがえ》して、軽くその薄紅の合歓の花に乗っていた。         :2326/3954
ではなかった。露《あらわ》にその長襦袢に水紅《とき》色の紐をぐるぐると巻いた形《なり :2425/3954
るばかり、撓《たわ》まぬ膚《はだえ》の未開紅、この意気なれば二十六でも、紅の色は褪せ :2430/3954
だえ》の未開紅、この意気なれば二十六でも、紅の色は褪せぬ。              :2430/3954
    「お誂《あつら》え通り、皺くちゃな赤毛布《あかげっと》が敷いてあって、水々し :2434/3954
し》がっくりと落ち、小鼻が出て、窪んだ目が赤味走って、額の皺は小さな天窓《あたま》を :2465/3954
」と堪りかねたか、早瀬の膝をハタと打つと、赤らめた顔を手巾《ハンケチ》で半ば蔽いなが :2524/3954
                 かつ散る紅、靡いたのは、夫人の褄と軒の鯛で、鯛は恵 :2572/3954
突出した物干棹《ものほしざお》に、薄汚れた紅《もみ》の切《きれ》が忘れてある。下に、 :2573/3954
毛が開いて、艶やかに湿《うるお》って、唇の紅が濡れ輝く。手足は冷えたろうと思うまで、 :2672/3954
プ》を火に翳してその血汐《ちしお》のごとき紅を眉に宿して、大した学者でしょう、などと :2677/3954
ん》として天井を仰いで歎ずるのを見て、誰が赤い顔をしてまで、貸家を聞いて上げました、 :2691/3954
         と見ると、手巾の片端に、紅の幻影《まぼろし》が一条《ひとすじ》、柔 :2726/3954
を巻きながら、頭《かしら》に婦人の乳の下を紅見せて噛んでいた。            :2729/3954
懸けようとしたらしく、斜めに覗き込んだ顔を赤らめて、黙って俯向いて俯目《ふしめ》にな :2740/3954
               とお妙が顔を赤うして云う。新聞に書いたのは(AB《アア :2982/3954
こがるる、芙蓉は丈のびても物寂しく、さした紅も、偏《ひと》えに身躾《みだしなみ》らし :3082/3954
引張出すんだと云いましたから、今頃は盛に長紅舌を弄《ろう》しておるでしょう、は、はは :3131/3954
、真蒼《まっさお》になって、白襟にあわれ口紅の色も薄れて、頤深く差入れた、俤を屹と視 :3201/3954
立つ音して、戸を開けるのと、ついその框に真赤《まっか》な灯の、ほやの油煙に黒ずんだ小 :3495/3954
はないか! 天井が真紫に、筵が赫《かっ》と赤くなった。                :3519/3954
浴衣に昼夜帯を……もっともお太鼓に結んで、紅鼻緒に白足袋であったが、冬の夜なぞは寝衣 :3534/3954
烈しく廻るのが、見る見る朱を流したように真赤《まっか》になって、ぶるぶると足を縮める :3694/3954
おそれげ》も無く、一分時の前は炎のごとく真紅《まっか》に狂ったのが、早や紫色に変って :3700/3954
まどか》なる太陽《ひ》の光を蔽うやとて、大紅玉の悩める面を、拭い洗わんと、苛立ち、悶 :3778/3954


『親子そば三人客』 従吾所好

、」と媚かしい声で通したが、やがて十能に真赤なのを堆く、紅の襷がけ、円く白い二の腕あ :5/121
声で通したが、やがて十能に真赤なのを堆く、紅の襷がけ、円く白い二の腕あたり惜気もなう :5/121
     「おう、何だぜ、」といひさま細い赤大名〈あかだい〉の双子の、寐皺は寄つたが :52/121
ゑたのを、真砂町の原の角あたりから、一筋の赤い虹の如く、暗を貫く瓦斯燈の燈に、唯見れ :113/121


『龍潭譚』 青空文庫

の花残りたり。路《みち》の右左、躑躅の花の紅なるが、見渡す方、見返る方、いまを盛なり :5/186
なじのぼりになりぬ。見渡せば、見まはせば、赤土の道幅せまく、うねりうねり果しなきに、 :19/186
てあはひも透かで躑躅咲きたり。日影ひとしほ赤うなりまさりたるに、手を見たれば掌に照り :25/186
にぱつと茜さして、眼もあやに躑躅の花、ただ紅の雪の降積めるかと疑はる。        :28/186
樹立のなかより見えぬ。かくてわれ踏迷ひたる紅の雪のなかをばのがれつ。背後《うしろ》に :31/186
咲埋めたるあかき色のあかきがなかに、緑と、紅と、紫と、青白《せいはく》の光を羽色《は :31/186
眉あざやかに、瞳すずしく、鼻やや高く、唇の紅なる、額つき頬のあたり〓《ろう》たけたり :97/186
れをまとうたる老夫《おやじ》の、顔の色いと赤きが縁近う入り来つ。           :103/186
つかぬに、燈《ともしび》にすかす指のなかの紅なるは、人の血の染みたる色にはあらず、訝 :138/186
しの絹をすきて見ゆるその膚にまとひたまひし紅の色なりける。いまはわれにもあらで声高《 :138/186
     姉上は袖もてわれを庇ひながら顔を赤うして遁げ入りたまひつ。人目なき処にわれ :169/186
石壇をのぼり、大《おおい》なる門を入りて、赤土《あかつち》の色きれいに掃きたる一条《 :179/186


『春昼』 泉鏡花を読む

に、しつとりと汗ばみさうな、散りこぼれたら紅の夕陽の中に、ひら/\と入つて行きさうな :7/628
空に歴々と眺めらるゝ、西洋館さへ、青異人、赤異人と呼んで色を鬼のやうに称ふるくらゐ、 :47/628
そんな風に――よし、村のものの目からは青鬼赤鬼でも――蝶の飛ぶのも帆艇の帆かと見ゆる :48/628
                     赤棟蛇が、菜種の中を輝いて通つたのである。 :60/628
   曲角の青大将と、此傍なる菜の花の中の赤棟蛇と、向うの馬の面とへ線を引くと、細長 :65/628
               合天井なる、紅々白々牡丹の花、胡粉の俤消え残り、紅も散 :87/628
なる、紅々白々牡丹の花、胡粉の俤消え残り、紅も散留つて、恰も刻んだものの如く、髣髴と :87/628
を右左、其処に旗のやうな薄霞に、しつとりと紅の染む状に桃の花を彩つた、其の屋の棟より :265/628
た鍬について、じと/\と染んで出たのが、真紅な、ねば/\とした水ぢや、」       :288/628
        「穿当てました。海の中でも紅色の鱗は目覚しい。土を穿つて出る水も、然 :294/628
場合には紫より、黄色より、青い色より、其の紅色が一番見る目を驚かせます。       :294/628
       「大蛇が顋を開いたやうな、真赤な土の空洞の中に、づほらとした黒い塊が見 :299/628
鼻立ちのはつきりした、色の白いことゝ、唇の紅さつたらありませんでした。        :356/628
相の浪も物凄くなりかけた折からなり、彼の、赤鬼青鬼なるものが、かよわい人を冥土へ引立 :411/628
                 花房夜搗紅守宮、  くわばうよるつくこうしゆきゆう :463/628
、海の果には入日の雲が焼残つて、ちら/\真紅に、黄昏過ぎの渾沌とした、水も山も唯一面 :536/628
端洩る夕日の影と、消え残る夕焼の雲の片と、紅蓮白蓮の咲乱れたやうな眺望をなさつたさう :536/628
映つて居て、篝でも焼いて居るかと、底澄んで赤く見える。其の辺に、太鼓が聞える、笛も吹 :562/628
              「これだけな、赤地の出た上へ、何か恁うぼんやり踞つたもの :572/628
と、谷底の灯の影がすつきり冴えて、鮮かな薄紅梅。浜か、海の色か、と見る耳許へ、ちやら :614/628


『春昼後刻』 泉鏡花を読む

の廂を掠めるばかり、大波を乗つて、一跨ぎに紅の虹を躍り越えたものがある。       :20/444
れに空想の前途を遮られて、驚いて心付くと、赤棟蛇のあとを過ぎて、機を織る婦人の小家も :21/444
て、お天気が上ると、お前様、雨よりは大きい紅色の露がぽつたりぽつたりする、あの桃の木 :42/444
と流しながら、華奢な掌を軽く頬に当てると、紅がひらりと搦む、腕の雪を払ふ音、さら/\ :114/444
なしが、いまの身じろぎで、片前下りに友染の紅匂ひこぼれて、水色縮緬の扱帯の端、やゝず :138/444
せず聞き澄んだ散策子の茫然とした目の前へ、紅白粉の烈しい流が眩い日の光で渦いて、くる :217/444
矮い藁屋の、屋根にも葉にも一面の、椿の花の紅の中へ入つて、菜畠へ纔に顕れ、苗代田で又 :242/444
いて居る、四十恰好の、巌乗な、絵に描いた、赤鬼と言つた形のもののやうに、今恁うやつて :289/444
四と見えたが、すぐに久能谷の出口を突切り、紅白の牡丹の花、はつと俤に立つばかり、ひら :331/444
                 ト獅子は紅の切を捌いて、二つとも、立つて頭を向けた :334/444
に反つた、のけ様の頤ふつくりと、二かは目に紅を潮して、口許の可愛らしい、色の白い児で :338/444
と、ぴよいと立直つて頭の堆く大きく突出た、紅の花の廂の下に、くるツとした目を〓《みは :343/444
と、すた/\と駈け出した。後白波に海の方、紅の母衣翩翻として、青麦の根に霞み行く。  :388/444
もせぬ。たゞ美しい骨が出る。貝の色は、日の紅、渚の雪、浪の緑。            :444/444


『天守物語』 泉鏡花を読む

とく余して、一面に高く高麗べりの畳を敷く。紅の鼓の緒、処々に蝶結びして一條、これを欄 :8/480
眼《まなこ》円《つぶら》かに面の色朱よりも赤く、手と脚、瓜に似て青し。白布《しろぬの :104/480
            女重三 べいゝ。(赤べろする。)               :114/480
、古びて黄ばめる練衣《ねりぎぬ》、褪せたる紅の袴にて従ひ来る。            :125/480
《むさ》や。どれ/\掃除して参らせうぞ。(紅の袴にて膝行《いざ》り出で、桶を皺手に犇 :159/480


『歌行燈』 従吾所好

らりと痩ぎすな男の姿の、軒の其の、うどんと紅で書いた看板の前に、横顔ながら俯向いて、 :56/744
手に、其の柄で弾くやうにして、仄のりと、薄赤い、其屋〈そこ〉の板障子をすらりと開けた :63/744
白い、歯を染めた中年増。此の途端に颯と瞼を赤うしたが、竈〈へツつひ〉の前を横ツちよに :71/744
中を、邪険に火箸で掻い掘〈ほじ〉つて、赫と赤く成つた処を、床几の門附へずいと寄せ、  :87/744
と草履穿きの半纏着、背中へ白く月を浴びて、赤い鼻をぬいと出す。            :307/744
、こんの島家の新妓ぢや。」と言ひながら、鼻赤の若い衆は、覗いた顔を外に曲げる。    :312/744
黒いけんちう羊羹色の被布を着た、燈の影は、赤く其の皺の中へさし込んだが、日和下駄から :349/744
     がた/\と身震ひしたが、面は幸に紅潮して、                 :387/744
に竹の欄干に成つて、毛氈の端は刎上り、畳に赤い縞が出来て、洋燈〈ランプ〉は油煙に燻つ :434/744
重さうに差俯向く……襟足白く冷たさうに、水紅色〈ときいろ〉の羽二重の、無地の長襦袢の :474/744
       と乱れた襦袢の袖を銜えた、水紅色〈ときいろ〉映る瞼のあたり、ほんのりと :590/744
呂敷の中を見よ。土佐の名手が画いたやうな、紅い調は立田川、月の裏皮、表皮。玉の砧を、 :630/744
しつかりと掴まる。吹きつけて揉む風で、颯と紅い褄が搦むやうに、私に縋つたのが、結綿の :679/744


『夜行巡査』 青空文庫

こと、英国公使館の二階なるガラス窓の一面に赤黒き燈火の影の射せること、その門前なる二 :29/164
しいの、さすがは一生の大礼だ。あのまた白と紅との三枚襲で、と羞ずかしそうに坐った恰好 :83/164


『薬草取』 青空文庫

袖に、はらはらと五片三片《いつひらみひら》紅《くれない》を点じたのは、山鳥《やまどり :70/283
でかた》の優しい上へ、笠の紐弛《ゆる》く、紅《べに》のような唇をつけて、横顔で振向《 :104/283
紅《べに》が流れたかと思う鼻の尖《さき》の赤い男、薬箪笥《くすりだんす》の小抽斗《こ :118/283
かいう、ぺろりと長い顔の、額《ひたい》から紅《べに》が流れたかと思う鼻の尖《さき》の :118/283
だは、ああ、向うの山から、月影に見ても色の紅《くれない》な花を採って来て、それを母親 :151/283
》の裾《すそ》をぐいと端折《はしょ》って、赤脛《からずね》に脚絆《きゃはん》、素足に :163/283
の畦《あぜ》三つばかり横に切れると、今度は赤土《あかつち》の一本道、両側にちらほら松 :175/283
                     赤蛙《あかがえる》が化けたわ、化けたわと、 :184/283
なわて》がずっと見渡されて、西日がほんのり紅《あか》いのに、急な大雨で往来《ゆきき》 :189/283
  こういう澄み渡った月に眺めて、その色の赤く輝く花を採って帰りたいと、始《はじめ》 :220/283
す》えて、私の顔を見ていたが、月夜に色の真紅《しんく》な花――きっと探しましょうと言 :220/283
の花の中に花片《はなびら》の形が変って、真紅《まっか》なのが唯《ただ》一輪。     :239/283
簪《かんざし》の花になっても、月影に色は真紅《しんく》だったです。          :240/283
《うつ》ったが、見つつ進む内に、ちらちらと紅《くれない》来《きた》り、黄《き》来《き :269/283
うずたか》き雪の如く、真白《ましろ》き中に紅《くれない》ちらめき、瞶《みつ》むる瞳《 :270/283
らりと立った、その黒髪の花唯《ただ》一輪、紅《くれない》なりけり月の光に。      :276/283
               かくて胸なる紅《くれない》の一輪を栞《しおり》に、傍《 :283/283


『夜叉ヶ池』 青空文庫

ちょうどその水の上あたり、宵の明星の色さえ赤い。……なかなか雨らしい影もないな。   :52/564
茶店《ちゃや》に茶汲女《ちゃくみおんな》が赤前垂《あかまえだれ》というのが事実なら、 :91/564
んが、何と、その湯の尾峠の茶汲女は、今でも赤前垂じゃろうかね。            :93/564
に焼込《やけこ》むようにも見える。こりゃ、赤前垂より、雪女郎で凄《すご》うても、中の :95/564
の石には、水がかかって、紫だの、緑だの、口紅ほどな小粒も交《まじ》って、それは綺麗で :104/564
わうそ》に、海坊主、天守におさかべ、化猫は赤手拭《あかてぬぐい》、篠田《しのだ》に葛 :268/564
五郎《かにごろう》。朱顔、蓬《おどろ》なる赤毛頭《あかげがしら》、緋《ひ》の衣したる :273/564
の白雪姫。雪なす羅《うすもの》、水色の地に紅《くれない》の焔《ほのお》を染めたる襲衣 :349/564
、朽葉色《くちばいろ》の帷子《かたびら》、赤前垂《あかまえだれ》。          :350/564
を焼いた。……麓にぱっと塵《ちり》のような赤い焔《ほのお》が立つのを見て、笑《えみ》 :521/564


 507 件確認
 佐藤和雄(蟻) 2000.9.29