鏡花作品の語彙検索(KWIC)

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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

に薩摩芋を突ついたり、柿を吸ったりする、目白鳥《めじろ》のように早く人馴れをするので :5/143
の柔な胸毛の色は、さし覗いたものの襟よりも白かった。                 :14/143
仔はずるく甘ッたれるもので。……あの胸毛の白いのが、見ていると、そのうちに立派に自分 :24/143
すぐにのろくなって、お飯粒《まんまつぶ》の白い処を――贅沢な奴らで、内のは挽割麦《ひ :24/143
、相州逗子に住った時(三太郎)と名づけて目白鳥《めじろ》がいた。           :28/143
う、鵯《ひよ》、駒鳥、あの辺にはよくいる頬白、何でも囀る……ほうほけきょ、ほけきょ、 :29/143
けきょ、明《あきら》かに鶯の声を鳴いた。目白鳥としては駄鳥かどうかは知らないが、私に :29/143
、一人は袖を濡らして帰った。が、――その目白鳥の事で。……(寒い風だよ、ちょぼ一風《 :29/143
り、バタンと撥返した。アッと思うと、中の目白鳥は、羽ばたきもせず、横木を転げて、落葉 :29/143
ね。」と襷がけのまま庖丁を、投げ出して、目白鳥を掌《てのひら》に取って据えた婦《おん :29/143
》の水を柄杓で切って雫にして、露にして、目白鳥の嘴を開けて含まして、襟をあけて、膚に :29/143
かなかの悪戯もので、逗子の三太郎……その目白鳥――がお茶の子だから雀の口真似をした所 :32/143
閑《しずか》な折から、雀が一羽、……丁ど目白鳥の上の廂合《ひあわい》の樋竹の中へすぽ :32/143
と籠の目へ、落したから可笑《おかし》い。目白鳥は澄まして、ペロリと退治た。吃驚仰天《 :32/143
ち、ひとり遊びが出来るようになると、胸毛の白いのばかりを残して、親雀は何処へ飛ぶのか :54/143
り、(坊主びっくり貂《てん》の皮)だから面白い。                   :56/143
高く越した日当《ひあたり》のいい一枝だけ真白に咲くと、その朝から雀がバッタリ。意気地 :58/143
こと萩に戯《たわむ》るるが如しである。花の白いのにさえ怯えるのであるから、雪の降った :58/143
病思うべしで、枇杷塚と言いたい、むこうの真白の木の丘に埋れて、声さえ立てないで可哀《 :58/143
ぎに、おなじ血筋ながら、いつか、黄色な花、白い花、雪などに対する、親雀の申しふくめが :60/143
の事である。ツィ――と寂しそうに鳴いて、目白鳥《めじろ》が唯一羽、雪を被《かつ》いで :72/143
た一輪、寒椿の花に来て、ちらちらと羽も尾も白くしながら枝を潜った。          :72/143
ら、飛びながら、啄《ついば》むと、今度は目白鳥が中へ交った。雀同志は、突合《つつきあ :73/143
つつきあ》って、先を争って狂っても、その目白鳥にはおとなしく優しかった。そして目白鳥 :73/143
の目白鳥にはおとなしく優しかった。そして目白鳥は、欲しそうに、不思議そうに、雀の飯《 :73/143
                 優しい目白鳥は、花の蜜に恵まれよう。――親のない雀 :75/143
島田髷《しまだ》の艶々しい、きゃしゃな、色白な女が立って手伝って、――肥大漢《でっぷ :94/143
曲《くね》ると、居勝手《いがって》が悪く、白い指がちらちら乱れる。          :110/143
と肉を置いて、背筋をすんなりと、撫肩して、白い脇を乳が覗いた。それでも、脱ぎかけた浴 :118/143
》と落ちた。が、憚りながら褌《ふんどし》は白い。一輪の桔梗《ききょう》の紫の影に映え :122/143
《はだか》のまま、井戸の前を、青すすきに、白く摺れて、人の姿の怪しい蝶に似て、すっと :124/143


『逢ふ夜』 従吾所好

ると、すつと痩せぎすな肩を出して、ほのかに白う差覗いた顔は、婀娜に細つて、且つあはれ :12/97
      と悄乎俯向く、トくつきりと襟が白い。                   :25/97


『絵本の春』 青空文庫

妙齢《としごろ》の娘でも見えようものなら、白昼といえども、それは崩れた土塀から影を顕 :6/84
脚を曳《ひ》いたように見える。見えつつ、面白そうな花見がえりが、ぞろぞろ橋を渡る跫音 :9/84
のだが、枝ごし葉ごしの月が、ぼうとなどった白紙《しらかみ》で、木戸の肩に、「貸本」と :17/84
をざわざわと鳴らすばかり、脊の高い、色の真白《まっしろ》な、大柄な婦《おんな》が、横 :18/84
ひったば》ねた黒髪の房々とした濡色と、色の白さは目覚ましい。             :19/84
《たばこ》を吸ったあとで、円い肘《ひじ》を白くついて、あの天眼鏡というのを取って、ぴ :38/84
たとな。……これこれ、まあ、聞きな。……真白《まっしろ》な腹をずぶずぶと刺いて開いた :43/84
              と、小母さんは白い顔して、ぺろりとその真紅《まっか》な舌 :51/84
                小僧は太い白蛇に、頭から舐《な》められた。      :52/84
           僥倖《さいわい》に、白昼の出水だったから、男女に死人はない。二 :76/84
ず脊筋も悚然《ぞっ》とした。……振返ると、白浜一面、早や乾いた蒸気《いきれ》の裡《な :83/84


『縁結び』 青空文庫

たかまげ》ふっくりした前髪《まえがみ》で、白茶地《しらちゃじ》に秋の野を織出した繻珍 :77/405
《わき》の、出窓の簾《すだれ》の中に、ほの白いものが見えたよ。紅《べに》の色も。   :142/405
きになって、格子戸へ顔をつけて、両袖でその白い顔を包んで、消えそうな後姿で、ふるえな :180/405
えて、お君《きみ》の肩はぶるぶると動いた。白歯《しらは》の色も涙の露《つゆ》、音する :183/405
う》かして寄って、火鉢にかけた指の尖が、真白に震《ふる》えながら、          :186/405
              それをまた、腕白《わんぱく》の強がりが、よく賭博《かけ》 :235/405
》を塗ったように古い額の、胡粉《ごふん》が白くくっきりと残った、目隈《めぐま》の蒼ず :242/405
                     白玉か何ぞと問いし古《いにし》えも、かくや :296/405
山の色は、その滑《なめら》かな土に、お君の白脛《しらはぎ》とかつ、緋《ひ》の裳《もす :315/405
牌堂。これには天井《てんじょう》から大きな白の戸帳《とばり》が垂《た》れている。その :327/405
。下へ突込んで、鼠の噛《かじ》った穴から、白い切《きれ》のはみ出した、中には白骨でも :340/405
穴から、白い切《きれ》のはみ出した、中には白骨でもありそうな、薄気味の悪い古葛籠《ふ :340/405
いと本堂の今は煙《けむり》のように見える、白き戸帳《とばり》を見かえりながら、    :358/405
と連立って墓参《はかまいり》に来たが、その白張《しらはり》の切籠は、ここへ来て、仁右 :368/405
           さあ、切籠が迷った、白張でうろうろする。            :371/405
てか、泣く声して、薄暗がりを一つあおって、白い手が膝の上へばたりと来た。       :389/405


『古狢』 青空文庫

かぞら》に抽出《ぬきんで》た、牙《きば》の白いのは湖である。丘を隔てて、一条《ひとす :28/310
が蝶のようにちらりと映って、レッテルの桜に白い頬がほんのりする。           :54/310
か、私はまた狐の糸工場かと思った。雨あしの白いのが、天井の車麩から、ずらずらと降って :65/310
              と頸《えり》の白さを、滑《なめら》かに、長く、傾いてちょ :97/310
ただし、開いていた、その黒い戸の、裏桟に、白いものが一条《ひとすじ》、うねうねと伝《 :128/310
と薄〓《うすひら》ったい処へ、指が立って、白く刎《は》ねて、動いたと思うと、すッと扉 :130/310
ので閉めたのさ。あとで思ってもまったく色が白かった、うつくしい女の手だよ――あ、どう :130/310
   一体、外套氏が、この際、いまの鹿落の白い手を言出したのは、決して怪談がかりに娘 :135/310
り吃驚《びっくり》した、厠《かわや》の戸の白い手も、先へ入っていた女が、人影に急いで :135/310
ういえば、朝また、ようをたした時は、ここへ白い手が、と思う真中のは、壁が抜けて、不状 :136/310
やかな、優しい人でした。……おじさん、その白い、細いのは、そのお藻代さんの手なんです :143/310
五《いつ》株、六《む》株。すぐに石ころ道が白く続いて、飛地のような町屋の石を置いた板 :148/310
明直にいえば、それが、うぐい亭のお藻代が、白い手の幻影《まぼろし》になる首途《かどで :155/310
寂しいんですわ……考えてみますと……雑で、白張《しらはり》のようなんですもの。」―― :158/310
ありませんか、五月闇《さつきやみ》に、その白提灯を、ぼっと松林の中に、という。……成 :161/310
                    と白い手と一所に、銚子《ちょうし》がしなうよ :166/310
あとを、お町がいう処の、墓所《はかしょ》の白張のような提灯を枝にかけて、しばらく待っ :173/310
あるが、朱鷺色《ときいろ》の薄いのに雪輪を白く抜いた友染である。径《みち》に、ちらち :175/310
気があって、今しがた明保野の娘が、お藻代の白い手に怯《おび》えて取縋った時は、内々で :179/310
《まぶた》を合わせていた、お藻代さんの肌の白いこと。……六畳は立籠《たてこ》めてある :184/310
辷《すべ》ったんです。まるで、黒雲の中から白い猪が火を噴いて飛蒐《とびかか》る勢《い :188/310
た。不意に人が来たんですね。――それが細い白い手よ。」                :213/310
。――轢《ひ》かれたのは、やっと夜《よ》の白みかかった時だっていうんですもの。もっと :219/310
、首……顔がないんです。あの、冷いほど、真白《まっしろ》な、乳も、腰も、手足も残して :224/310
ん》に轢《ひ》かれたんでしょう。血の池で、白魚が湧《わ》いたように、お藻代さんの、顔 :224/310
ですよ。)と云ってね。袋から、血だらけな頬白《ほおじろ》を、(受取ってくれたまえ。) :231/310
える》だと諺《ことわざ》に言うから、血の頬白は、〓《うぐい》になろうよ。――その男の :235/310
の市場で覗《のぞ》いたっけ。……あれは、面白い。」                  :242/310
》の蓮根市《はすいち》の影法師が、旅装で、白皙《はくせき》の紳士になり、且つ指環《ゆ :251/310
まい》へ続くらしい、細長い、暗い土間から、白髪《しらが》がすくすくと生えた、八十を越 :261/310
                    蒼白《まっさお》になって、お町があとへ引いた :262/310
目金と、耳までのマスクで、口が開いた、その白い顔は、湯葉一枚を二倍にして、土間の真中 :271/310
ると、町並樹の影に、その頸許《えりもと》が白く、肩が窶《やつ》れていた。       :303/310


『外科室』 青空文庫

えられたる、手術台なる伯爵夫人は、純潔なる白衣《びゃくえ》を絡《まと》いて、死骸のご :10/165
て、死骸のごとく横たわれる、顔の色あくまで白く、鼻高く、頤《おとがい》細りて手足は綾 :10/165
                   と真白く細き手を動かし、かろうじて衣紋《えもん :92/165
「どうぞ」と一言答《いら》えたる、夫人が蒼白なる両の頬に刷けるがごとき紅を潮しつ。じ :108/165
梅、血汐《ちしお》は胸よりつと流れて、さと白衣《びゃくえ》を染むるとともに、夫人の顔 :109/165
るとともに、夫人の顔はもとのごとく、いと蒼白くなりけるが、はたせるかな自若として、足 :109/165


『義血侠血』 青空文庫

の花の色を洗いて、清楚たる葉桜の緑浅し。色白く、鼻筋通り、眉に力みありて、眼色《めざ :19/706
縞《めくらじま》の腹掛け、股引きに汚れたる白小倉の背広を着て、ゴムの解《ほつ》れたる :22/706
、轡頭《くつわづら》に噛《は》み出だしたる白泡は木綿《きわた》の一袋もありぬべし。  :41/706
        あるいは勇んで躍り込みたる白銅あり。あるいはしぶしぶ捨てられたる五厘 :83/706
    なかんずく大評判、大当たりは、滝の白糸が水芸なり。太夫滝の白糸は妙齢一八、九 :156/706
、大当たりは、滝の白糸が水芸なり。太夫滝の白糸は妙齢一八、九の別品にて、その技芸は容 :156/706
みて、静々歩み出でたるは、当座の太夫元滝の白糸、高島田に奴元結《やっこもとゆ》い掛け :157/706
通りに控えさせましたるは、当座の太夫元滝の白糸にござりまする。お目見え相済みますれば :163/706
ゆんで》に把《と》りて、右手《めて》には黄白《こうはく》二面の扇子を開き、やと声発《 :164/706
                     白糸は群れいる客を推し排《わ》け、掻き排け :167/706
        何事や起こりたると、見物は白糸の踵《あと》より、どろどろと乱れ出ずる :170/706
擾《ひしめき》に、くだんの男は振り返りぬ。白糸ははじめてその面を見るを得たり。渠は色 :170/706
白糸ははじめてその面を見るを得たり。渠は色白く瀟洒《いなせ》なりき。         :170/706
               この女は滝の白糸なり。渠らの仲間は便宜上旅籠を取らずし :186/706
取らずして、小屋を家とせるもの寡なからず。白糸も然なり。               :186/706
                  かくて白糸は水を聴き、月を望み、夜色の幽静を賞し :191/706
より出でていまだ小屋に還らざれば、それかと白糸は間近に寄りて、男の寝顔を〓《のぞ》き :193/706
        つくづく視《なが》めたりし白糸はたちまち色を作《な》して叫びぬ。   :196/706
                     白糸は欄干に腰を憩めて、しばらくなすことも :203/706
                     白糸は微笑《えみ》を含みて、呆れたる馭者の :210/706
          馭者は黙して一礼せり。白糸はうれしげに身を進めて、        :212/706
                     白糸は片頬笑《かたほえ》みて、       :216/706
                袖を掩いて白糸は嫣然一笑せり。            :226/706
そうだ」横手を拍ちて、馭者は大声を発せり、白糸はその声に驚かされて、         :230/706
《すうしょ》の鐘声遠く響きて、月はますます白く、空はますます澄めり。         :238/706
                     白糸はあらためて馭者に向かい、       :239/706
           「御冗談もんだよ」と白糸は流眄《ながしめ》に見遣りぬ。     :245/706
て、直ちに物語の端を発《ひら》かんとせり。白糸は渠が吸い殻を撃《はた》くを待ちて、  :247/706
                     白糸は一吃を試みぬ。はたしてその言《ことば :252/706
                     白糸はまず二服を吃して、三服目を馭者に、  :270/706
口開いて馭者は心快《こころよ》げに笑えり。白糸は再び煙管を仮《か》りて、のどかに烟を :274/706
                     白糸は身に沁む夜風にわれとわが身を抱きて、 :283/706
                     白糸はしばらく沈吟したりしが、       :294/706
びしげなる男の顔をつくづく視《なが》めて、白糸は渠の物語るを待てり。         :300/706
もて》にはいうべからざる悲憤の色を見たり。白糸は情に勝《た》えざる声音にて、     :302/706
                     白糸は軽く小膝を拊《う》ちて、       :312/706
                     白糸は事もなげに、             :316/706
   渠は襟《きん》を正して、うやうやしく白糸の前に頭を下げたり。          :335/706
   馭者は夢みる心地しつつ耳を傾けたり。白糸は誠を面に露わして、          :344/706
    とみには返す語《ことば》もなくて、白糸は頭を低《た》れたりしが、やがて馭者の :354/706
                     白糸は鬢の乱《おく》れを掻き上げて、いくぶ :361/706
も》りつつ、固唾を嚥みてその語るを待てり。白糸は始めに口籠もりたりしが、直ちに心を定 :361/706
                     白糸ははたと語《ことば》に塞《つま》りぬ。 :371/706
            「見世物小屋さ」と白糸は異様の微笑《えみ》を含みぬ。     :380/706
。とはいえども渠はさあらぬ体に答えたりき。白糸は渠の心を酌みておのれを嘲りぬ。    :382/706
く言いつつ珍しげに女の面を〓《のぞ》きぬ。白糸はさっと赧《あから》む顔を背《そむ》け :391/706
                  「滝の白糸というのはおまえさんか」        :393/706
                     白糸は渠の語《ことば》を手もて制しつ。   :394/706
ところに答え得たる風情にて、欣弥は頷けり。白糸はいよいよ羞じらいて、         :396/706
             つと身を寄せて、白糸はやにわに欣弥を撞《つ》きたり。    :400/706
                     白糸は帯の間より白縮緬の袱紗包みを取り出だ :413/706
             白糸は帯の間より白縮緬の袱紗包みを取り出だせり。解《ひら》 :413/706
《ふたり》のかたわらに立ち住《ど》まりぬ。白糸はわずかに顧眄《みかえ》りて、棄つるが :422/706
     おもしろ半分に〓《まつわ》るを、白糸は鼻の端《さき》に遇《あしら》いて、  :427/706
          渠の答うるに先だちて、白糸は驚きかつ怪しみて問えり。       :436/706
             「これから?!」と白糸はさすがに心《むね》を轟かせり。    :440/706
                  五銭の白銅を把りて、まさに渡さんとせり。欣弥はそ :448/706
      渠は十分に決心の色を露わせり。白糸はとうていその動かす能わざるを覚《さと :450/706
             欣弥は手招けば、白糸は微笑《ほおえ》む。その肩を車夫はとん :462/706
     月はようやく傾きて、鶏声ほのかに白し。                   :466/706
                   滝の白糸は越後の国新潟の産にして、その地特有の :470/706
行と、罪業と、悪徳との養成にあらざるなし。白糸の鉄拐はこれを天真に発して、きわめて純 :472/706
、箸を控えて渠が饋餉《きしょう》を待てり。白糸は月々渠らを扶持すべき責任ある世帯持ち :473/706
                従来の滝の白糸は、まさにその放逸を縛し、その奇骨を挫 :474/706
となりぬ。その行ないにおいてはなおかつ滝の白糸たる活気をば有《たも》ちつつ、その精神 :474/706
の雪《せつ》世界はほとんど一年の三分の一を白き物の中に蟄居せざるべからざるをや。こと :476/706
   翌年の初夏金沢の招魂祭を当て込みて、白糸の水芸は興行せられたりき。渠は例の美し :479/706
                     白糸は諸方に負債ある旨を打ち明けて、その三 :480/706
二、三箇月を支うるを得ば足れり。無頓着なる白糸はただその健康を尋ぬるのみに安んじて、 :482/706
は、一時に垂《なんな》んとするころなりき。白昼《ひるま》を欺くばかりなりし公園内の万 :483/706
れたり。こはこれ、盗難に遇《あ》えりし滝の白糸が姿なり。               :505/706
                  程経て白糸は目覚ましぬ。この空小屋のうちに仮寝《 :507/706
に研ぎ澄ましたる出刃庖丁を提《ひさ》げて、白糸を追っ取り巻きぬ。           :508/706
かく言いつつ他の一個《ひとり》はその庖丁を白糸の前に閃かせば、四挺の出刃もいっせいに :512/706
                     白糸はすでにその身は釜中《ふちゅう》の魚た :513/706
                     白糸は死守せんものと決心せり。渠の唇は黒く :516/706
         その声を聞くとひとしく、白糸は背後《うしろ》より組み付かれぬ。振り :520/706
                     白糸は猿轡を吃《はま》されて、手取り足取り :524/706
。にわかに渠らの力は弛みぬ。虚《すか》さず白糸は起き復《かえ》るところを、はたと〓仆 :524/706
りある百金は、ついに還らざるものとなりぬ。白糸の胸中は沸くがごとく、焚《も》ゆるがご :525/706
                     白糸の眼色《めざし》はその精神の全力を鍾《 :528/706
   これ悪漢が持てりし兇器なるが、渠らは白糸を手籠《てご》めにせしとき、かれこれ悶 :531/706
                     白糸はたちまち慄然として寒さを感《おぼ》え :532/706
近づきてとくと視れば、浅葱地《あさぎじ》に白く七宝繋《つな》ぎの洗い晒したる浴衣の片 :535/706
          またこれ賊の遺物なるを白糸は暁《さと》りぬ。けだし渠が狼藉を禦《 :536/706
                     白糸は思案に余って、歩むべき力も失せつ。わ :542/706
                     白糸が佇みたるは、その裏口の枝折《しおり》 :544/706
戸はおのずから内に啓きて、吸い込むがごとく白糸を庭の内にぞ引き入れたる。       :544/706
寝鎮《ねしず》まりたる気勢《けはい》なり。白糸は一歩を進め、二歩を進めて、いつしか「 :545/706
            ここに思い到りて、白糸はいまだかつて念頭に浮かばざりし盗《と :547/706
がこの手段に用いたりし記念《かたみ》なり。白糸は懐に手を差し入れつつ、頭を傾けたり。 :547/706
躍の教峻を受けては然諾せり。良心と悪意とは白糸の恃《たの》むべからざるを知りて、つい :548/706
を啓きて、家内の一個《ひとり》は早くすでに白糸の姿を認めしに、渠は鈍《おぞ》くも知ら :551/706
前の雨戸は不意に啓きて、人は面を露わせり。白糸あなやと飛び退《すさ》る遑《ひま》もな :552/706
                     白糸の耳には百雷の一時に落ちたるごとく轟け :554/706
つ、重傷《いたで》に唸《うめ》く声を聞ける白糸は、戸口に立ち竦みて、わなわなと顫いぬ :555/706
はわれなり、わが手なりと思いぬ。しかれども白糸はわが心に、わが手に、人を殺せしを覚え :556/706
                     白糸は心乱れて、ほとんどその身を忘れたる背 :559/706
と聞こゆるは寝惚《ねぼ》れたる女の声なり。白糸は出刃を隠して、きっとそなたを見遣りぬ :561/706
《ひかげ》は縁を照らして、跫音は近づけり。白糸はひたと雨戸に身を寄せて、何者か来たる :562/706
              「静かに!」と白糸は身を露わして、庖丁を衝き付けたり。  :565/706
き、その場に打ち俯して、がたがたと慄いぬ。白糸の度胸はすでに十分定まりたり。     :566/706
、内儀は賊の需《もと》むる百円を出だせり。白糸はまずこれを収めて、          :577/706
    「偸児《どろぼう》!」と呼び懸けて白糸に飛び蒐《かか》りつ。         :580/706
を捻じ込みて、かの百円を奪い返さんとせり。白糸はその手に咬み着き、片手には庖丁振り抗 :581/706
         これまでなりと観念したる白糸は、持ちたる出刃を取り直し、躍り狂う内 :584/706
                  内儀は白糸の懐に出刃を裹《つつ》みし片袖を撈《さ :585/706
す狂いて再び喚《わめ》かんとしたりしかば、白糸は触《あた》るを幸いめった斫《ぎ》りに :585/706
き込みぬ。これ実に最後の一撃なりけるなり。白糸は生まれてよりいまだかばかりおびただし :585/706
                     白糸は生まれてより、いまだかかる最期の愴惻 :586/706
し業なり。われながら恐ろしきわが身かな、と白糸は念《おも》えり。渠の心は再び得堪うま :586/706
庭の木末《こずえ》を鳴らし、雨はぽっつりと白糸の面を打てり。             :587/706
  「まあお聞きなさい。ところで出刃打ちの白状には、いかにも賊を働きました。賊は働い :629/706
ざいません。奪《と》りましたのは水芸の滝の白糸という者の金で、桐田の門は通過《とおり :629/706
                  「滝の白糸というのはご存じでしょうな」      :634/706
ろが、出刃打ちの申し立てには、その片袖は、白糸の金を奪《と》るときに、おおかた断《ち :637/706
かま》やしません。おまえが悪い、ありていに白状しな、と出刃打ちの野郎を極め付けてやり :654/706
       はじめ判事らが出廷せしとき、白糸は徐《しず》かに面を挙げて渠らを見遣り :679/706
われたりし検事代理を見るやいなや、渠は色蒼白《あおざ》めて戦きぬ。この俊爽なる法官は :679/706
れど、紛うべくもあらず、渠は村越欣弥なり。白糸は始め不意の面会に駭《おどろ》きたりし :679/706
                     白糸はありうべからざるまでに意外の想いをな :680/706
にあらざるを覚えき。ああ、闊達豪放なる滝の白糸! 渠はこのときまで、おのれは人に対し :681/706
               恩人の顔は蒼白《あおざ》めたり。その頬は削《こ》けたり :684/706
らざりき。裁判長は事実を隠蔽せざらんように白糸を諭せり。渠はあくまで盗難に遭いし覚え :687/706
で盗難に遭いし覚えのあらざる旨を答えて、黒白は容易に弁ずべくもあらざりけり。     :687/706
りし眼を開くとともに、悄然として項を垂るる白糸を見たり。渠はそのとき声を励まして、  :688/706
ことは通常の人に言うことだ。そのほうも滝の白糸といわれては、ずいぶん名代の芸人ではな :691/706
なき者に罪を負わせたと聞いたならば、ああ、白糸はあっぱれな心掛けだと言って誉めるか、 :691/706
おのずからその異常なるを聞き得たりしなり。白糸の愁《うれ》わしかりし眼はにわかに清く :692/706
                  ついに白糸は自白せり。法の一貫目は情の一匁なるか :697/706
              ついに白糸は自白せり。法の一貫目は情の一匁なるかな、渠は :697/706
渠はそのなつかしき検事代理のために喜びて自白せるなり。                :697/706
    裁判長は軽く卓を拍《う》ちて、きと白糸を視たり。               :699/706
               これに次ぎて白糸はむぞうさにその重罪をも白状したりき。 :704/706
 これに次ぎて白糸はむぞうさにその重罪をも白状したりき。裁判長は直ちに訊問を中止して :704/706
検事代理村越欣弥は私情の眼を掩いてつぶさに白糸の罪状を取り調べ、大恩の上に大恩を累ね :705/706


『五大力』 従吾所好

                と車の上で白い呼吸〈いき〉。樹から落ちた其の烏のやう :9/1139
燻りも霜に冴えた茶飯屋の行燈〈あんどう〉の白い影に、ひしやげた帽子の茶な奴を見せて、 :11/1139
           と洞穴〈ほらあな〉の白い蝙蝠の、ふわ/\な笑声。        :32/1139
大丈夫……貸すかい。」と暖簾を払ふ、湯気に白けた優しい顔。袖に霜は置きながら、白無垢 :53/1139
湯気に白けた優しい顔。袖に霜は置きながら、白無垢ではないらしい。が、洲崎街道の茶飯屋 :53/1139
れて。えつちら、おつちら、……枯蘆の空へ、白い太陽〈ひ〉の出た深川を、(それ、千鳥だ :114/1139
の掛矢を挙げつつ、心の影を明星の輝く光に、白く浮彫にして、響く。           :148/1139
が開いたと思ふと、悪くお屋敷風に、襟なしで白粉を塗つた、右の絵師が許の飯炊が、傘を持 :156/1139
煙草屋、荒物屋を何ぞ択ばむ、古寺だと尚ほ面白かつた。……               :225/1139
懸つて、胸を圧して、寂しく肩を落したなり、白々とある頸〈うなじ〉を斜ツかひに、横向の :230/1139
つとり濡れた気のするばかりで、我が片袖の黒白〈あやめ〉も分らぬ。           :266/1139
すら/\と衣摺れの手応へして、我が爪尖が仄白い。                   :285/1139
に、お納戸色の石〈こく〉もちの紋着を着て、白い脚絆を穿いた、きれいな坊さんの、目の見 :322/1139
穿いた、きれいな坊さんの、目の見えぬ、色の白い飴屋さんが一人、ね、小児を対手に、悄然 :322/1139
下、灯のない絵襖の黒いやうな中に、青く、色白く、其の飴屋の幻影〈まぼろし〉。     :325/1139
             が、顔はあはれ、白い頸を、肩で捩ぢるばかり邪慳に引背けて居 :327/1139
袖、胸で撓〈た〉めた腕のしなひに袖口の指の白さを、幽かに細々と彩る緋紅。       :336/1139
た時、梅川の行燈に褪せて、渠〈かれ〉の顔は白けて居た。                :368/1139
ないやうな。何処か、其の川の真中あたりを、白いものがむく/\と持上げられて、其のまは :439/1139
    「死神が憑いたぞ、此は。……いまの白いのを、流れた面だなんぞと思つて、うつか :445/1139
ともない水光に、横顔の靄ながら、ほんのりと白く見えた、結上げた黒髪は、品の可い円髷ら :458/1139
      と空を仰ぐ……ト眉のあたりへ蒼白い影が射した。              :500/1139
                 手首の真白なのもすつきり見えた……         :503/1139
煙突さへ、月の面へぼつと吐く……短かな煙の白いのが、船の婦の立姿、まるで、白粉の刷毛 :505/1139
短かな煙の白いのが、船の婦の立姿、まるで、白粉の刷毛に見えた。            :505/1139
めに掛けて、仲の町へ浮ばねえ。しらふで、生白い面をして、へい、お袴を――当節の若いも :531/1139
                 それを、白い手で従姉が拭くんだ、頬から鼻の下をね… :586/1139
    で、開けて入ると、ちらりと見えた。白地に紺だと思ふ、あらい棒縞の寝ン寝子を着 :620/1139
遊女が、朝寒のしら/\あけに、麻の葉絞りの白地の浴衣の裾を敷いて、伊達巻の寝乱姿で、 :623/1139
宙で聞えたと思ふ……此店〈ここ〉の行燈の薄白いのが、途端に面のやうに見えたくらゐ、… :658/1139
     其処らの棟の鬼瓦でも、霜を被つて白けりや、噛りつきたいほどなんだ。」    :662/1139
太の夢のやうな顔は、霜に更けて、行燈と二つ白かつた。                 :663/1139
ると、向う側の土塀にも、路を開いた寒参詣、白衣〈びやくえ〉を透す星の数は、水垢離の玉 :711/1139
けて、呼吸を凝らして潜まり返つた弓張提灯の白い影が、輝く明星に冴渡る、大路の霜よりは :715/1139
て、前後〈あとさき〉遠く犬も鳴かぬ、冷たく白々〈しろ/゛\〉とある地〈つち〉に、白銀 :716/1139
たく白々〈しろ/゛\〉とある地〈つち〉に、白銀の糸の響を伝へて、気勢が近づく。    :716/1139
輪蒼く、うしろ状に、黒髪の艶に沈んで、頸を白く、……やゝ俯向けに袖を引合はせして胸を :721/1139
\と、一所に、左右から入乱れ、寄合はせて、白衣の影に弓張提灯の浅葱なすまで、星の下に :729/1139
              汐見橋が瑪瑙の白きが如く、女性を迎へて塵をも据ゑぬ。   :734/1139
と玉の雫の血が通つて、死顔ながら莞爾した、白歯もちら/\と〓〈らふ〉闌けた、得も言は :763/1139
な袖口開けて、面を取つて、差向けた時、手首白く、二の腕透いて伸びたので、恰も、白鷺の :763/1139
、手首白く、二の腕透いて伸びたので、恰も、白鷺の長き頸に、其の青褪めた美女、活きたる :763/1139
門が、会釈より前に伸上つた。が、片膝支いて白足袋の踵で極つて、ぴたりとした腰形〈こし :806/1139
、先生、先生がお好きな越後上布に緋縮緬、色白と云ふのを何うなすつたんです。」     :821/1139
あらし〉の夜路して、賽の河原に、ひら/\と白いものの動くを見たより、可恐い事を覚えぬ :896/1139
の高木履に、晃々蒔絵を蒔かせて、しまひには白無垢で、片化粧なんかしたんですつて。」  :914/1139
/\と巻いた切が蒼味がかつて、透通つて、真白な胸が、乳もふつくりと、脈を打つか、蒼い :943/1139
    それは、活きてる時も、まつたく色の白い婦でした。」              :944/1139
と言はれてな、最う弗〈ふツつ〉りと其つ切、白粉の香を知らぬ事、それから丁ど、やがて十 :1012/1139
      其の日、霞は美しく髪を上げて、白に裾模様を襲ねて居た。介添して恁う出で立 :1082/1139
つた体に、上下着けた釣船矢右衛門。偉大なる白き胡蘆〈ふくべ〉を、横ざまに着けたる体に :1094/1139
                   「面白も候、」                 :1127/1139
                   「面白も候。」                 :1132/1139


『半島一奇抄』 青空文庫

て、二里三里に余る大竜が一条《ひとすじ》、白浪の鱗《うろこ》、青い巌《いわ》の膚《は :16/129
めいろ》の面長《おもなが》で、髯《ひげ》の白い、黒の紋織《もんおり》の被布《ひふ》で :46/129
……それから近づきになって、やがて、富士の白雪あさ日でとけて、とけて流れて三島へ落ち :48/129
ょう。まずこの辺までは芥川さんに話しても、白い頬を窪まし、口許《くちもと》に手を当て :52/129
ながれ》の末じゃあ決してない。朝日でとけた白雪を、そのまま見たかったのに相違ないので :55/129
う冷い湿《しめっ》ぽい裡《なか》から、暗い白粉《おしろい》だの、赤い油だのが、何とな :55/129
の右斜《みぎななめ》な二階の廊下に、欄干に白い手を掛けて立っていた、媚《なまめ》かし :55/129
内が、ほとんど水源と申して宜《よろ》しい、白雪のとけて湧《わ》く処、と居士が言います :57/129
黒髪にして、ちょうど水脈の血に揺らぐのが真白《まっしろ》な胸に当るんですね、裳《すそ :60/129
。粂《くめ》の仙人を倒《さかさま》だ、その白さったら、と消防夫《しごとし》らしい若い :79/129
を狙うのが、朝顔を噛むようだ。爪さきが薄く白いというのか、裳《もすそ》、褄《つま》、 :92/129
ょう》の巌《いわ》の聳《そび》えたのに、純白な石の扉の、まだ新しいのが、ひたと鎖《と :118/129
       そのまま、沼津に向って、車は白鱗青蛇《はくりんせいだ》の背を馳《は》せ :129/129


『蛇くひ』 青空文庫

           然《しか》れども此の白昼横行《わうぎやう》の悪魔は、四時《しじ :15/35


『雛がたり』 青空文庫

なぎびな》、花菜《はなな》の雛、桃の花雛、白と緋《ひ》と、紫《ゆかり》の色の菫雛《す :3/58
                     白酒《しろざけ》入れたは、ぎやまんに、柳さ :5/58
はまぐり》が唄になり、皿の縁に浮いて出る。白魚よし、小鯛よし、緋の毛氈に肖つかわしい :5/58
、吉野紙の霞の中に、お雛様とお雛様が、紅梅白梅の面影に、ほんのりと出て、口許《くちも :15/58
は違うが、(ろうたけたるもの)として、(色白き児の苺くいたる)枕《まくら》の草紙は憎 :18/58
                   あの白酒を、ちょっと唇につけた処は、乳の味がし :22/58
                    色白で、赤い半襟をした、人柄な島田の娘が唯一 :32/58
《に》た、と思うと、どの顔も、それよりは蒼白くて、衣《きぬ》も冠《かむり》も古雛《ふ :41/58
                  薄暗い白昼《まひる》の影が一つ一つに皆映る。   :42/58
ない。夢を見るように、橋へかかると、これも白い虹が来て群青の水を飲むようであった。あ :47/58


『星あかり』 泉鏡花を読む

    門外の道は、弓形に一條、ほの/\と白く、比企ヶ谷の山から、由井ヶ浜の磯際まで :12/36
家が断えては続いたが、いづれも寐静まつて、白けた藁屋のなかに、何家も何家も人の気勢が :17/36
に、現在、恁く、悄然、夜露で重ツくるしい、白地の浴衣のしをれた、細い姿で首を垂れて、 :19/36
がら見ると、ぼやけた色で、夜の色よりも少し白く見えた車も、人も、山道の半あたりで、ツ :25/36
空に連つて居る。浪打際は綿をば束ねたやうな白い波、波頭に泡を立てゝ、だうと寄せては、 :27/36
ら浪打際まで、凡そ二百歩もあつた筈なのが、白砂に足を踏掛けたと思ふと、早や爪先が冷く :28/36


『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

るは、倉瀬泰助といふ当時屈指の探偵なり。色白く眼清《すゞ》しく、左の頬に三日月形《な :6/219
て下さい。誠に可哀相な者ですから。「何か面白い談話《はなし》がありましたらう。「些少 :29/219
おもしろ》くはありませんでした、が此から面白くなるだらうと思ふのです。追々お談話《は :29/219
高慢なる顔色《かほつき》にて、「たかが生ツ白《ちろ》い痩せた野郎、鬼神《おにがみ》で :38/219
つと暗中《やみ》に消え、やがて泰助の面前に白き女の顔顕れ、拭ひたらむ様に又消えて、障 :49/219
るに、年は二十二三なるべし。しを/\とある白地の浴衣《ゆかた》の、処々《ところ/゛\ :54/219
れて、柳の腰に纏ひたり。膚《はだへ》の色真白く、透通るほど清らかにて、顔は太《いた》 :54/219
見たりし時、物をも言はで莞爾《につこり》と白歯を見せて笑める様は、身の毛も弥立《よだ :54/219
黄昏《たそが》れて、森の中暗うなりつる頃、白衣を着けたる一人の婦人、樹の下蔭に顕れ出 :56/219
て婦人《をんな》あり。黒髪颯と夜風に乱して白き衣服《きもの》を着けたるが、月明りにて :68/219
荒らかなる、跫音彼方に起りぬれば、黒き髪と白き顔はふつと消え失せ、人形は又旧《もと》 :75/219
へ。「些《ちつと》も存じません。「ようし、白状しなけりや斯うするぞ。と懐中より装弾《 :77/219
足許にはたと落ちぬ、何やらんと拾ひ見るに、白き衣切《きぬぎれ》やうのものに、礫《いし :84/219
しも心附かざりき。額襟許清らに見え、色いと白く肉《しゝ》置き好く、髪房やかに結ひたる :89/219
の手を捉ふれば、「あれえ。「喧しいやい。と白き頸を鷲掴み、「此阿魔、生意気に人好《ひ :112/219
り前へ俯し、悶え苦しみのりあがり、紅蹴返す白脛はたはけき心を乱すになむ、高田駄平は酔 :114/219
呼吸《いき》も絶々《たえ/゛\》に、紅顔蒼白く変りつゝ、苛責の苦痛に堪へざりけむ、「 :118/219
開き見れば、射込む洋燈《ランプ》の光の下に白く蠢くもののあるにぞ、近寄り見れば果せる :159/219
 爾時《そのとき》得三は袖を掲げて、雪より白き下枝の胸を、乳も顕はに押寛ぐれば、動悸 :177/219
に入りつゝも、刀尋段々壊と唱ふる時、得三は白刃を取直し、電光胸前に閃き来りぬ。此景此 :196/219
打被《うちかぶ》せ、己が所業を蔽ひ隠して、白刃に袂を打着せながら洋燈《ランプ》の心を :199/219
間に据ゑられたる、肩は擦合ふばかりなれば、白刃ものを刺したるとき、下枝は胆消え目も眩 :203/219
人形室の前に至れば、美婦人正に刑柱にあり、白刃乳の下に臨める刹那、幸にして天地は悪魔 :215/219


『海神別荘』 華・成田屋

、蒼い炎の息を吹いても、素奴(しゃつ)色の白いはないか、袖の紅いはないか、と胴の間、 :10/369
、蘇芳貝、いろいろの貝を蕊にして、花の波が白く咲きます、その渚を、青い山、緑の小松に :11/369
あなた)は。私たちこの玉のような皆の膚は、白い尾花の穂を散らした、山々の秋の錦が水に :13/369
 紺青(こんじょう)、群青(ぐんじょう)、白群(びゃくぐん)、朱、碧(へき)の御蔵の :28/369
           侍女三、四、両人して白き枝珊瑚(えださんご)の椅子を捧げ、床の :35/369
げ、床の端近(はしぢか)に据う。大隋円形の白き琅〓(ろうかん)の、沈みたる光沢を帯べ :35/369
にあり。枝のままなる見事なる珊瑚の椅子、紅白二脚、紅きは花のごとく、白きは霞のごとき :35/369
る珊瑚の椅子、紅白二脚、紅きは花のごとく、白きは霞のごときを、相対して置く。侍女等が :35/369
女等が捧出でて位置を変えて据えたるは、その白き方一脚なり。              :35/369
の菫、露草は、若様、この度の御旅行につき、白雪の竜馬(りゅうめ)にめされ、渚を掛けて :49/369
するを夢のように抱きました時、あれの父親は白砂に領伏し(ひれふし)し、波の裙(すそ) :61/369
たかだかは人間同士、夥間(なかま)うちで、白い柔な膩身(あぶらみ)を、炎の燃立つ絹に :66/369
して波濤の音聞ゆ。やがて一個(ひとつ)、花白く葉の青き蓮華燈籠(れんげどうろう)、漂 :75/369
す。美女。毛巻島田(けまきしまだ)に結う。白の振袖、綾の帯、紅(くれない)の長襦袢、 :75/369
ともしび)の影はこれなり。黒潮騎士、美女の白竜馬をひしひしと囲んで両側二列を造る。お :75/369
の形相。手に手に、すくすくと槍を立つ。穂先白く晃々(きらきら)として、氷柱倒倒(さか :75/369
翠の琅〓(ろうかん)、花片(はなびら)の紅白は、真玉(まだま)、白珠、紅宝玉。燃ゆる :82/369
花片(はなびら)の紅白は、真玉(まだま)、白珠、紅宝玉。燃ゆる灯も、またたきながら消 :82/369
ような、空が見えます、瑠璃色の。そして、真白(まっしろ)な絹糸のような光が射します。 :85/369
た竜馬は風よりも早し、お道筋は黄金の欄干、白銀の波のお廊下、ただ花の香りの中を、やが :94/369
の間を、幽(かすか)に蒼い灯に照らされて、白馬の背に手綱したは、この度迎え取るおもい :108/369
美女と見れば、途中に襲撃って、黒髪を吸い、白き乳を裂き、美しい血を呑もうとするから、 :108/369
数の黒潮騎士を附添わせた。渠等(かれら)は白刃を揃えている。             :108/369
ない。けれども、また、僧都の言われるには、白衣に緋の襲した女子を馬に乗せて、黒髪を槍 :110/369
これを見ないか。私の領分に入った女の顔は、白い玉が月の光に包まれたと同一(おなじ)に :112/369
も個々別々、七彩に照って、かく開きました真白な枚(ペエジ)の上へ、自然と、染め出さる :119/369
、(取って披く(ひらく))これは・・・ただ白紙だね。                 :124/369
るより、虹が燃えるより美しかった。恋の火の白熱は、凝って白玉となる、その膚を、氷った :147/369
えるより美しかった。恋の火の白熱は、凝って白玉となる、その膚を、氷った雛芥子の花に包 :147/369
いて、赤潮に追払われて、醜く、ふらふらと生白く漾うて失する。あわれなものだ。娘は幸福 :148/369
  公子  可(よし)、ここに緑の活字が、白い雲の枚(ペエジ)に出た。――箱根を越え :176/369
と立ち、静かに剣を納めて、右手(めて)なる白珊瑚の椅子に凭(よ)る。騎士五人廻廊まで :215/369
差支えない。鱗に、爪に、角に、一糸掛けない白身(はくしん)を抱(いだ)かれ包まれて、 :241/369
船に送出す時、磯に倒れて悲しもうが、新しい白壁、艶ある甍を山際の月に照らさして、夥多 :274/369
うと思った。違う!これは楽しく歌う鳥だ、面白い。それも愉快だ。おい、酒を寄越せ。   :278/369
けて、三人の侍女、二罎(ふたびん)の酒と、白金の皿に一対の玉盞(たまのさかずき)を捧 :279/369


『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

だ。野山の狐鼬《いたち》なら、面《つら》が白いか、黄色ずら。青蛙のような色で、疣々《 :38/257
凄《すさま》じく咲き、野茨《のばら》の花の白いのも、時ならぬ黄昏《たそがれ》の仄明《 :49/257
極めて奇特な言《ことば》が一致して、裸体の白い娘でない、御供《ごく》を残して皈《かえ :51/257
             正面の額の蔭に、白い蝶が一羽、夕顔が開くように、ほんのりと :63/257
はその十《と》筋七《なな》筋の抜毛かと思う白髪《しらが》を覗《のぞ》かせたが、あしな :63/257
がに》も欲しゅう思わんでございましゅから、白い浪の打ちかえす磯端《いそばた》を、八葉 :90/257
の不思議に乱れぬ、ひからびた燈心とともに、白髪《しらが》も浮世離れして、翁《おきな》 :96/257
            「その脛《はぎ》の白さ、常夏《とこなつ》の花の影がからみ、磯 :99/257
の娘が、その声で。……淡い膏《あぶら》も、白粉《おしろい》も、娘の匂いそのままで、膚 :99/257
はだ》ざわりのただ粗《あら》い、岩に脱いだ白足袋の裡《なか》に潜って、熟《じっ》と覗 :99/257
、脛がよれる、裳が揚る、紅《あか》い帆が、白百合の船にはらんで、青々と引く波に走るの :99/257
ん》の娘の畜生め、などとぬかすでしゅ。……白足袋をつまんで。――           :106/257
羨《うらやま》しくも何ともないでしゅ。娘の白い頤《あご》の少しばかり動くのを、甘味《 :107/257
                 と翁は、白く笑った。                :119/257
むか》いたまえるは、細面《ほそおもて》ただ白玉の鼻筋通り、水晶を刻んで、威のある眦《 :122/257
うすく燃えつつ、すらすらと莟《つぼみ》なす白い素足で渡って。――神か、あらずや、人か :122/257
      はらりと、やや蓮葉《はすは》に白脛《しらはぎ》のこぼるるさえ、道きよめの :124/257
 足が浮いて、ちらちらと高く上ったのは――白い蝶が、トタンにその塗下駄の底を潜《くぐ :126/257
ち》のごとく暗く沈み、野茨《のばら》乱れて白きのみ。沖の船の燈《ともしび》が二つ三つ :131/257
れを撫《なで》つけております、頸《えり》の白うございますこと。次の室《ま》の姿見へ、 :155/257
らたら下りの坂道を、つかつかと……わずかに白い門燈を離れたと思うと、どう並んだか、三 :160/257
足許へ、茄子畑から、にょっにょっと、蹴出す白脛《しらはぎ》へ搦《から》ましょう。」こ :163/257
しらはぎ》へ搦《から》ましょう。」この時の白髪は動いた。               :163/257
ございますの。お、も、しーろし、かしらも、白し、富士の山、麓《ふもと》の霞――峰の白 :175/257
、白し、富士の山、麓《ふもと》の霞――峰の白雪。」                  :175/257
め》、山の雉子《きじ》の花踊。赤鬼、青鬼、白鬼の、面も三尺に余るのが、斧鉞《おのまさ :190/257
    宿へ遁返《にげかえ》った時は、顔も白澄むほど、女二人、杓子と擂粉木を出来得る :192/257
銀座の人込の中で、どうです、それ見たか、と白い……」                 :203/257
      社の格子が颯《さっ》と開くと、白兎が一羽、太鼓を、抱くようにして、腹をゆ :223/257
時よの。さらでもの、あの手負《ておい》が、白い脛《すね》で落ちると愍然《ふびん》じゃ :240/257


『化鳥』 青空文庫

花《かきつばた》が一杯《いつぱい》咲く。頬白、山雀《やまがら》、雲雀《ひばり》などが :24/
たちど》まつて、六本めの枝のさきに可愛い頬白が居たのを、棹でもつてねらつたから、あら :64/
ツと棹をのばして、覗《ねら》つてるのに、頬白は何にも知らないで、チ、チ、チツチツてツ :64/
                    頬白は智恵のある鳥さしにとられたけれど、囀《 :69/
を見て、嬉しさうだと思へば嬉しさうだし、頬白がおぢさんにさゝれた時悲しい声だと思つて :85/
織《はおり》を着て居る吉公《きちこう》の目白だの、それからお邸《やしき》のかなりやの :95/
あやめ》の池も皆父様《とつちやん》ので、頬白だの、目白だの、山雀《やまがら》だのが、 :102/
池も皆父様《とつちやん》ので、頬白だの、目白だの、山雀《やまがら》だのが、この窓から :102/
る、けれどもそれは紅雀がうつくしいのと、目白が可愛らしいのと些少《ちつと》も違ひはせ :112/
大方《おほかた》今の紅雀の其姉さんだの、頬白の其兄《にい》さんだのであつたらうと思は :122/
お膝の上の糸屑《いとくづ》を細《ほそ》い、白《しろ》い、指《ゆび》のさきで二《ふた》 :172/
《おほかみ》だとか、狐《きつね》だとか、頬白だとか、山雀《やまがら》だとか、鮟鱇《あ :204/
淀《よど》むで居るのに際立《きはだ》つて真白《まつしろ》に見えるのは鷺《さぎ》だつた :229/


『木の子説法』 青空文庫

えても転げるから、褄《つま》をすんなりと、白い足袋はだし、それでも、がさがさと針を揺 :8/231
らしい。一所《ひとところ》、板塀の曲角に、白い蝙蝠《こうもり》が拡《ひろが》ったよう :10/231
             これもまた……面白い。                   :13/231
ある。第一、順と見えて、六十を越えたろう、白髪《しらが》のお媼《ばあ》さんが下足《げ :20/231
えた。……思え、講釈だと、水戸黄門が竜神の白頭《しろがしら》、床几《しょうぎ》にかか :47/231
くその席を占めて、切髪の後室も二人ばかり、白襟で控えて、金泥《きんでい》、銀地の舞扇 :52/231
ように、乳を包んだだけで。……あとはただ真白《まっしろ》な……冷い……のです。冷い、 :82/231
すそ》が燃えるのかと思う、あからさまな、真白《まっしろ》な大きな腹が、蒼《あお》ざめ :114/231
げ》も鬢《びん》もひいやりと額にかかり……白い半身が逆になって見えましょう。……今時 :119/231
ね、きみは。……可愛がってくれるだろう。雪白肌の透綾娘《すきあやむすめ》は、ちょっと :133/231
樺色《うすかばいろ》の笠を逆《さかさ》に、白い軸を立てて、真中《まんなか》ごろのが、 :143/231
を畳に、足が、空で一つに、ひたりとついて、白鳥が目を眠ったようです。         :157/231
          脚気は喘《あえ》いで、白い舌を舐《な》めずり、政治狂は、目が黄色 :162/231
廻っている乳が、ふわふわと浮いて、滑らかに白く、一列に並んだように思う……      :164/231
《あぶな》い。)と、いうように聞えて、その白い菩薩の列の、一番框《かまち》へ近いのに :166/231
いでた》った凄味《すごみ》があって、且つ色白に美しい。一二の松も影を籠《こ》めて、袴 :177/231
密の声は朗らかに且つ陰々として、月清く、風白し。化鳥《けちょう》の調の冴《さ》えがあ :177/231
りと出たものがある。切禿《きりかむろ》で、白い袖を着た、色白の、丸顔の、あれは、いく :194/231
る。切禿《きりかむろ》で、白い袖を着た、色白の、丸顔の、あれは、いくつぐらいだろう、 :194/231
              鼻筋鋭く、頬は白澄《しろず》む、黒髪は兜巾《ときん》に乱 :203/231
いて、我と我が口にその乳首を含むと、ぎんと白妙《しろたえ》の生命《いのち》を絞った。 :224/231
爪紅《つまべに》は、世に散る卍《まんじ》の白い痙攣《けいれん》を起した、お雪は乳首を :227/231


『高野聖』 泉鏡花を読む

我ばかり、凡そ正午と覚しい極熱の太陽の色も白いほどに冴え返つた光線を、深々と戴いた一 :7/622
なしやかな風采で、羅紗の角袖の外套を着て、白のふらんねるの襟巻をしめ、土耳古形の帽を :15/622
め、土耳古形の帽を冠り、毛糸の手袋を嵌め、白足袋に日和下駄で、一見、僧侶よりは世の中 :15/622
柳ヶ瀬では雨、汽車の窓が暗くなるに従うて、白いものがちら/\交つて来た。       :23/622
つそりして一條二條縦横に、辻の角は広々と、白く積つた中を、道の程八町ばかりで、唯ある :27/622
くになつて、頸脚へ撥ねて耳に被つた、唖か、白痴か、これから蛙にならうとするやうな少年 :176/622
の方でいつたのは女ぢやから、南無三宝、此の白い首には鱗が生えて、体は床を這つて尾をず :183/622
頂戴して、縁から立つ時一寸見ると、それ例の白痴殿ぢや。                :226/622
を見たやうな拳で、背中をどんとくらはした、白痴の腹はだぶりとして、べそをかくやうな口 :247/622
いのがある。其中を潜つたが、仰ぐと梢に出て白い、月の形は此処でも別にかはりは無かつた :258/622
向でいひながら衣服の片褄をぐいとあげた。真白なのが暗まぎれ、歩行くと霜が消えて行くや :266/622
、目のあたり近いのはゆるぎ糸を捌くが如く真白に翻つて。                :283/622
                    (白桃の花だと思ひます。)と弗と心付いて何の :332/622
                     白痴はおなじ処に猶形を存して居る、海月も日 :381/622
  其馬がさ、私も別に馬は珍しうもないが、白痴殿の背後に畏つて手持不沙汰ぢやから今引 :391/622
     と親仁が喚くと、婦人は一寸立つて白い爪さきをちよろ/\と真黒に煤けた太い柱 :404/622
                     白痴にも之は可笑しかつたらう、此時ばかりぢ :407/622
    (あゝ、あゝ。)と濁つた声を出して白痴が件のひよろりとした手を差向けたので、 :424/622
とした身震をしたが、鼻面を地につけて一掴の白泡を吹出したと思ふと前足を折らうとする。 :431/622
縁側へ入つて来て、突然帯を取らうとすると、白痴は惜しさうに押へて放さず、手を上げて、 :435/622
                縁側に居た白痴は誰も取合ぬ徒然に絶へられなくなつたも :442/622
                     白痴は情ない顔をして口を曲めながら頭を掉つ :445/622
                     白痴はどんよりした目をあげて膳の上を睨めて :451/622
                     白痴が泣出しさうにすると、然も怨めしげに流 :460/622
棚の中から、鉢に入つたのを取り出して手早く白痴の膳につけた。             :460/622
せて、顔を差し覗いて、いそ/\していふと、白痴はふら/\と両手をついて、ぜんまいが切 :481/622
                     白痴は婦人を見て、又私が顔をじろ/\見て、 :488/622
が、励ますやうに、賺すやうにして勧めると、白痴は首を曲げて彼の臍を弄びながら唄つた。 :492/622
           不思議や、唄つた時の白痴の声は此話をお聞きなさるお前様は固より :496/622
の咽喉から出たものではない。先づ前の世の此白痴の身が、冥土から管で其のふくれた腹へ通 :496/622
薄暗くなつて参つたやうぢやが、恐らくこりや白痴の所為ぢやて。             :505/622
                   座が白けて、暫く言葉が途絶えたうちに所在がない :507/622
酷いから、心は少し茫乎して来た、何しろ夜の白むのが待遠でならぬ。           :526/622
其時は早や、夜がものに譬へると谷の底ぢや、白痴がだらしのない寐息も聞えなくなると、忽 :528/622
先刻はことを分けていひませなんだが、昨夜も白痴を寐かしつけると、婦人が又炉のある処へ :554/622
は、頻りに婦人が不便でならぬ、深山の孤家に白痴の伽をして言葉も通ぜず、日を経るに従う :554/622
れまい、いさゝ小川の水になりとも、何処ぞで白桃の花が流れるのを御覧になつたら、私の体 :555/622
四丈ばかりの瀧になつて哄と落ちて、又暗碧に白布を織つて矢を射るやうに里へ出るのぢやが :559/622
や、秘さつしやるな、おらが目は赤くツても、白いか黒いかはちやんと見える。       :570/622
     昔から物語の本にもある、屋の棟へ白羽の征矢が立つか、然もなければ狩倉の時貴 :583/622
        縁側へ遣つて来て、お嬢様面白いことをしてお目に懸けませう、不躾でござ :590/622
なく感得したものと見えて、仔細あつて、那の白痴に見を任せて山に篭つてからは神変不思議 :592/622
                   今の白痴も、件の評判の高かつた頃、医者の内へ来 :596/622
山に留まつたのは御坊が見らるゝ通り、又那の白痴につきそつて行届いた世話も見らるゝ通り :613/622
山へ帰りたかんべい、はて措かつしやい。彼の白痴殿の女房になつて世の中へは目もやらぬ換 :615/622


『国貞えがく』 青空文庫

は着ずに、小倉の袴で、久留米らしい絣の袷、白い襯衣《しゃつ》を手首で留めた、肥った腕 :9/317
暖簾が、ただ、男、女と上へ割って、柳湯、と白抜きのに懸替って、門《かど》の目印の柳と :47/317
》引いた、あたりの土塀の破目《われめ》へ、白々と月が射した。             :60/317
の橋を町家の屋根へ投げ懸ける。その上へ、真白な形で、瑠璃色の透くのに薄い黄金《きん》 :61/317
かけて、一面にどんよりと曇った中に、一筋真白な雲の靡くのは、やがて銀河になる時節も近 :66/317
る。トあたかもこの溝の左角が、合羽屋、は面白い。……まだこの時も、渋紙の暖簾が懸った :71/317
と茶の間から出た婦《おんな》は、下膨れの色白で、真中から鬢を分けた濃い毛の束ね髪、些 :79/317
える……祖母《おばあ》さんが頭巾もなしの真白な小さなおばこで、皿小鉢を、がちがちと冷 :169/317
る、……と偶《ふ》と寂しくなった。が、紅、白粉が何んのその、で、新撰物理書の黒表紙が :188/317
する、銀の簪の揺々《ゆらゆら》するのが、真白な脛《はぎ》も露わに、友染の花の幻めいて :195/317
     その小児《こども》に振向けた、真白な気高い顔が、雪のように、颯と消える、と :206/317
かかる、鼻筋のすっと通った横顔が仄見えて、白い拭布《ふきん》がひらりと動いた。    :207/317
って、店端《みせさき》に腰を掛けて、時雨に白髪を濡らしていると、其処の亭主が、それで :241/317
蓋を払ったように月が出る。山の形は骨ばかり白く澄んで、兎のような雲が走る。      :250/317


『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

浮んでいると、赫《かっ》とただ金銀銅鉄、真白に溶けた霄《おおぞら》の、何処に亀裂《ひ :15/1510
浮べる輩はぶくりと沈んで、四辺《あたり》は白泡となったと聞く。            :17/1510
べるのが、秋の暮方、誰もいない浪打際を、生白い痩脛《やせずね》の高端折《たかはしょり :18/1510
り中窪に削った断崖《がけ》の、見下ろす麓の白浪に、揺落《ゆりおと》さるる思《おもい》 :24/1510
橋と、月の武蔵野ほどに趣が激変して、浦には白帆の鴎が舞い、沖を黒煙の竜が奔る。    :26/1510
る潮の玉を砕くは、日に黄金《こがね》、月に白銀《しろがね》、あるいは怒り、あるいは殺 :28/1510
に見渡す、街道端《ばた》の――直ぐ崖の下へ白浪が打寄せる――江の島と富士とを、簾に透 :33/1510
だなり、肩をはずした振分けの小さな荷物の、白木綿の繋ぎめを、押遣って、        :35/1510
、子産石《こうみいし》の方を覗きたれば、面白や浪の、いうことも上の空。        :97/1510
           車輪の如き大さの、紅白段々《だんだら》の夏の蝶、河床は草にかく :109/1510
、清水のあとの土に輝く、山際に翼を廻すは、白の脚絆、草鞋穿、かすりの単衣のまくり手に :109/1510
の山に三度ばかり浪の調べを通わすほどに、紅白段々《だんだら》の洋傘《こうもり》は、小 :123/1510
勝手次第、勝負の上から代銭を払えば可い、面白い、遣るべいじゃ。            :133/1510
        茜色の顱巻《はちまき》を、白髪天窓《しらがあたま》にちょきり結び。結 :177/1510
ぞい、この野郎、贅沢べいこくなてえ、狐店の白ッ首と間違えてけつかるそうな、とぶつぶつ :202/1510
見たような高い髷からはずさっせえまして、真白なのを顔に当てて、団扇が衣服《きもの》を :209/1510
ばか、葦簀をはずれた日のかげりに、姥の頸が白かった。                 :215/1510
          「はい、両手を下げて、白いその両方の掌を合わせて、がっくりとなっ :218/1510
《あたり》には影もない。中空を見ますれば、白鷺の飛ぶような雲が見えて、ざっと一浪打ち :228/1510
遣《おしや》るようにさっせえた。お手の指が白々と、こう輻《やぼね》の上で、糸車に、は :240/1510
さりました指の尖へ、ほんのりと蒼く映って、白いお手の透いた処は、大《おおき》な蛍をお :266/1510
ます、山の上を、薄綿で包みますように、雲が白くかかりますと、音が先へ、颯《さ》あ―― :304/1510
。大《おおき》いのから小さいのから、その蒼白い筋のある、細ら長い、狐とも狸とも、姑獲 :334/1510
も気の所為か、逢魔が時に茫として、庄屋様の白壁に映して見ても、どれが孫やら、倅やら、 :348/1510
の秋谷で、邸と申しますれば――そりゃ土蔵、白壁造、瓦屋根は、御方一軒ではござりませぬ :358/1510
向かしった枕をこぼれて、さまで痩せも見えぬ白い頬へかかる髪の先を、確乎《しっかり》白 :386/1510
ぬ白い頬へかかる髪の先を、確乎《しっかり》白歯で噛ましったが、お馴染じゃ、私《わし》 :386/1510
か、と喜十郎様は、かさねがさねおつむりが真白で。おふくろ様も好いお方、おいとしい事で :400/1510
る通り、行脚とは言いながら、気散じの旅の面白さ。蝶々蜻蛉の道連《みちづれ》には墨染の :420/1510
ると、この辺には余り見懸けぬ、十八、九の色白な娘が一人、めりんす友染の襷懸け、手拭を :422/1510
て、草履穿きで裾をからげた、杖を突張った、白髪の婆さんの、お前さんとは知己《ちかづき :431/1510
飯草履、両足をしゃちこばらせて、舞鶴の紋の白い、萌黄の、これも大包。夜具を入れたのを :449/1510
ツ五ツ星に紛れて、山際薄く、流《ながれ》が白い。                   :454/1510
へ横投げに投出して、ソレ其処《そこい》ら、白鷺の鶏冠のように、川面へほんのり白く、す :459/1510
い》ら、白鷺の鶏冠のように、川面へほんのり白く、すいすいと出て咲いていら、昼間見ると :459/1510
かにのんどりした、この一巻の布は、朝霞には白地の手拭、夕焼には茜の襟、襷になり帯にな :538/1510
 霞に紛れ、靄に交《まじ》って、ほのぼのと白く、何時も水気《すいき》の立つ処から、言 :539/1510
ぎ》の煙ばかり、細く沖で救《すくい》を呼ぶ白旗のように、風のまにまに打靡く。海の方は :545/1510
なら世話をしても仔細あんめえ。第一、あの色白な仁体じゃ……化《ば》……仁右衛門よ。」 :571/1510
摺って、静に吸いつけた煙草の火が、その色の白い頬に映って、長い眉を黒く見せるほど室《 :647/1510
せば、庭先の柿の広葉が映る所為で、それで蒼白く見えるんだから、気にするな、とおっしゃ :683/1510
れという内に火が真丸になる、と見ている内、白くなって、それに蒼味がさして、茫として、 :719/1510
水へ突込んでるように、畝ったこの筋までが蒼白く透通って、各自《てんで》の顔は、皆その :720/1510
皿あたりへ、仕切って、うつむけに伏せた手が白かった。                 :772/1510
た処に丁《ちゃん》とあって、薄ぼんやり紙が白けたのは、もう雨戸の外が明方であったんで :781/1510
の巓《いただき》の方は蒼くなって、麓へ靄が白んでいました。              :812/1510
           「青葉の影の射す処、白瀬戸の小鉢も結構な青磁の菓子器に装《も》 :829/1510
なっておりますな――芝生を伝わって、夥しい白粉の花の中を、これへ。お縁側からお邪魔を :885/1510
                   あの白粉の花は見事です。ちらちら紅色のが交って :886/1510
。中に一本、見上げるような丈のびた山百合の白いのが、うつむいて咲いていました。いや、 :887/1510
時は小狗でした。鈴がついておりましたっけ。白垢《むく》の真白なのが、ころころと仰向け :926/1510
鈴がついておりましたっけ。白垢《むく》の真白なのが、ころころと仰向けに手をじゃれなが :926/1510
て左の方から来て、此方へ曲りそうにしたが、白地の浴衣を着て其処に立った私の姿を見ると :969/1510
前、私が縁側へ一人で坐っています処へ、あの白粉の花の蔭から、芋〓《ずいき》の葉を顔に :1027/1510
見た。おらが鼻の尖を、ひいらひいら、あの生白《なまちら》けた芋の葉の長面が、ニタニタ :1056/1510
に、めらめら破れのある工合が、ハイ一ツ一ツ白髑髏《しゃれこうべ》のようで、一人で立っ :1087/1510
水があんべい。井戸の水は真蒼で、小川の水は白濁りだ。」                :1106/1510
よ。ああ、葉越さんは綺麗好きだと見える。真白な手拭が、」               :1109/1510
るること二尺ばかり、消え残った燈籠のような白紙がふらりと出て、真四角に、燈が歩行《あ :1163/1510
見える。背筋の靡く、頸許《くびもと》のほの白さは、月に預けて際立たぬ。その月影は朧な :1194/1510
状《さま》で、二の腕の腹を此方へ、雪の如く白く見せて、静《しずか》に鬢の毛を撫でてい :1194/1510
                     白魚の指の尖の、ちらちらと髪を潜って動いた :1195/1510
愛なく膝節の崩れるのに驚いて、足を見る、と白粉の花の上。               :1197/1510
  と思ったがそれは遠い。このふっくりした白いものは、南無三宝仰向けに倒れた女の胸、 :1198/1510
り、据眼《すえまなこ》に熟《じっ》と見た、白い咽喉《のんど》をのけ様《ざま》に、苦痛 :1199/1510
痛に反らして、黒髪を乱したが、唇を洩る歯の白さ。草に鼻筋の通った顔は、忘れもせぬ鶴谷 :1199/1510
戦いたが、行燈に透かすと夜露に曝《さ》れて白けていた。                :1207/1510
に瞻らるるは床の間を背後《うしろ》にした仄白々とある行燈。              :1219/1510
               寝苦しいか、白やかな胸を出して、鳩尾へ踏落しているのを :1223/1510
こしかた》は我にもあり、但御身は髪黒く、顔白きに、我は頭《かしら》蒼く、面《つら》の :1241/1510
       紙を通して障子の彼方に、ほの白いその俤が……どうやら透いて見えるようで :1285/1510
》びらの帷子に引手の如き漆紋の着いたるに、白き襟をかさね、同一《おなじ》色の無地の袴 :1312/1510
爺《じじい》が汲んで来た、あれは川水。その白濁《しろにごり》がまだしも、と他の者はそ :1353/1510
ト》見ると、房々とある艶やかな黒髪を、耳許白く梳って、櫛巻にすなおに結んだ、顔を俯向 :1386/1510
の、細く袖を引合わせて、胸を抱いたが、衣紋白く、空色の長襦袢に、朱鷺色の無地の羅《う :1386/1510
             と、横へ取ったは白鬼の面。端麗にして威厳あり、眉美しく、目 :1395/1510
  とさも懸想したらしく胸を抱いたが、鼻筋白く打背《うちそむ》いて、         :1419/1510
                    と白銀黄金《しろがねこがね》を沢山《たんと》 :1433/1510
空の月も隠れましょう。二人の情の火が重り、白き炎の花となって、襖障子も燃えましょう。 :1441/1510
って、美女《たおやめ》は、掌《たなそこ》の白きが中に、魔界は然りや、紅梅の大いなる莟 :1468/1510
紅梅の大いなる莟と掻撫でながら、袂のさきを白歯で含むと、ふりが、はらりと襷にかかる。 :1468/1510
     その後を水が走って、早や東雲の雲白く、煙のような潦《にわたずみ》、庭の草を :1504/1510
に、月が沈んで舟となり、舳を颯と乗上げて、白粉の花越しに、すらすらと漕いで通る。大魔 :1504/1510


『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

。火鉢は太い。が火の気はぽつちり。で、灰の白いのにしがみついて、何しろ暖いものでお銚 :11/330
二ぜんもり込みだけに汁ぢがぽつちり、饂飩は白く乾いて居た。              :12/330
通り。階子下の暗い帳場に、坊主頭の番頭は面白い。                   :16/330
木綿だが、前垂がけの薩張した、年紀の少い色白なのが、窓、欄干を覗く、松の中を、攀登る :20/330
として、ふつと煙の立つ厚焼の玉子に、椀が真白な半ぺんの葛かけ、皿についたのは、此のあ :23/330
へ被つて、袖を包み、蔽い、裙を包んだのも面白い。あくる日、雪に成らうとてか、夜嵐の、 :109/330
り、晃々と陽がさしつゝ、それで、ちら/\と白いものが、飛んで、奥山に、熊が人立して、 :112/330
                     白雪の飛ぶ中に、緋鯉の背、真鯉の鰭の紫は美 :121/330
テ真暗である。いやいや、提灯が一燈ぼうと薄白く点いて居る。其処にもう一枚扉があつて閉 :136/330
か、芬と梅の香を、ぬくもりで溶かしたやうな白粉の香がする。              :140/330
艶な、しかし冷い、そして、にほやかな、霧に白粉を包んだやうな、人膚の気がすツと肩に絡 :180/330
の雪の色のやゝ薄い処に声を掛けた、其の池も白いまで水は少いのであつた。        :202/330
              「どつちです、白鷺かね、五位鷺かね。」          :206/330
からゾツとして、首筋を硬く振向くと、座敷に白鷺かと思ふ女の後姿の頸脚がスツと白い。  :219/330
、座敷に白鷺かと思ふ女の後姿の頸脚がスツと白い。                   :219/330
つとりと身についた藍鼠の縞小紋に、朱鷺色と白のいち松のくつきりした伊逹巻で乳の下の縊 :220/330
る。露の垂りさうな円髷に、桔梗色の手絡が青白い。浅葱の長襦袢の裏が媚めかしく搦んだ白 :220/330
青白い。浅葱の長襦袢の裏が媚めかしく搦んだ白い手で、刷毛を優しく使ひながら、姿見を少 :220/330
くる/\と丸げて、掌を拭いて落したのが畳へ白粉のこぼれるやうであつた。        :222/330
、少し斜めに居返ると、煙草を含んだ。吸口が白く、艶々と煙管が黒い。          :223/330
顔は、目ぶちがふつくりと、鼻筋通つて、色の白さは凄いやう。――気の篭つた優しい眉の両 :225/330
       山が真黒に成つた。いや、庭が白いと、目に遮つた時は、スツと窓を出たので :229/330
                     白い森も、白い家も、目の下に、忽ち颯と…… :230/330
                白い森も、白い家も、目の下に、忽ち颯と……空高く、松 :230/330
真桔梗の青い色でございます。桔梗は却つて、白い花のが見事に咲きますのでございまして… :250/330
奥が深くもございませんで、一面の草花。……白い桔梗でへりを取つた百畳敷ばかりの真青な :253/330
手製の猿の皮の毛頭巾を被つた。筵の戸口へ、白髪を振乱して、蕎麦切色の褌……可厭な奴で :271/330
、掻巻の襟の肩から辷つた半身で、画師の膝に白い手をかけて俯向に成りました、背中を男が :271/330
お顔の影に藤色に成つて見えますまで、お色の白さつたらありません、姿見の前で……。」  :296/330
           「畳のへりが、桔梗で白いやうに見えました。           :301/330
まで、棒端をさして、奈良井川の枝流れの、青白いつゝみを参りました。氷のやうな月が皎々 :310/330
  座敷は一面の水に見えて、雪の気はひが、白い桔梗の汀に咲いたやうに畳に乱れ敷いた。 :330/330


『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

、尚ほ章行の句読を正したまひたり。十月、「白羽箭」文芸倶楽部に出づ。月光、草に深き、 :23/50
           明治四十二年十月、「白鷺」東京朝日新聞に出づ。         :29/50
より。――この頃は里見氏有島家にあり。長髪白皙、しばしば家人の見る処。はじめ未だ逢は :31/50


『日本橋』 青空文庫

                    腕白ものの十ウ九ツ、十一二なのを頭に七八人。 :10/2195
、通一つの裏町ながら、撒水の跡も夢のように白く乾いて、薄い陽炎の立つ長閑さに、彩色し :10/2195
処を、捌いた褄も淀むまで、むらむらとその腕白共に寄って集られたものである。      :12/2195
屋の露地口。鼬のようにちょろりと出た同一腕白。下心あって、用意の為に引込んでいたらし :53/2195
          とつい、衣紋が摺って、白い襟。髪艶やかに中腰になった処を、発奮で :95/2195
            慌しく声を掛けて、白足袋のしょぼけた草鞋で、つかつかと寄ろう :97/2195
者を見ていらるる。――斜めに向う側の土蔵の白壁に、へまむし、と炭団の欠で楽書をしたご :99/2195
だ時は、早や乗合の中に紛れたのである。――白い火が飛ぶ上野行。――文明の利器もこう使 :138/2195
。片手も細り、色傘を重そうに支いて、片手に白塩瀬に翁格子、薄紫の裏の着いた、銀貨入を :153/2195
              とその塩瀬より白い指に、汗にはあらず、紅宝玉の指環。点滴 :188/2195
                 お千世は白い肱をちらりと見せ、細い二の腕を軽く叩い :258/2195
さるる。近所で(お竹蔵。)と呼んで恐をなす白壁が、町の表。小児も憚るか楽書の痕も無く :317/2195
も憚るか楽書の痕も無く、朦朧として暗夜にも白い。                   :317/2195
家の盛を見せた。夏の素膚の不断の絽明石、真白に透く膚とともに、汗もかかない帯の間に、 :322/2195
がら、涙の暗闇のみだれ髪、はらはらとかかる白い手の、掴んだ拳に俯伏せに、魂は枕を離れ :328/2195
  が、姿は雨に、月の朧に、水髪の横櫛、頸白く、水色の蹴出し、蓮葉に捌く裾に揺れて、 :329/2195
く、水色の蹴出し、蓮葉に捌く裾に揺れて、蒼白く燃える中に、いつも素足の吾妻下駄。うし :329/2195
山兀として阿房宮、富士の霞に日の出の勢、紅白粉が小溝に溢れて、羽目から友染がはみ出す :336/2195
羽。輝く胡蝶の翼一尺、閃く風に柳を誘って、白い光も青澄むまで塵を払った表二階。    :380/2195
拍子でない。……畳に辷った要の響。日ざしの白い静かさは、深山桜が散るようである。   :383/2195
るよう、一枚小袖の黒繻子の、黒いに目立つ襟白粉、薄いが顔にも化粧した……何の心ゆかし :424/2195
    生際曇る、柳の葉越、色は抜けるほど白いのが、浅黄に銀の刺繍で、これが伊達の、 :425/2195
黄に銀の刺繍で、これが伊達の、渦巻と見せた白い蛇の半襟で、幽に宿す影が蒼い。     :425/2195
裳を曳きながら、……踊で鍛えた褄は乱れず、白脛のありとも見えぬ、蹴出捌きで、すっと来 :431/2195
居た。荷の陰で引飲けながら、フトその見事な白壁を見て、その蔵は?           :464/2195
の総切れ切れに、美しい玉の緒の縺れた可哀を白々地。萎えたように頬杖して、片手を白く投 :476/2195
可哀を白々地。萎えたように頬杖して、片手を白く投掛けながら、             :476/2195
茶色な前歯、金の入歯と入乱れて、窪んだ頬に白粉の残滓。                :484/2195
つばかり、裡紫の壺|二個。……その欠皿も、白魚の指に、紅猪口のごとく蒼く輝く。    :740/2195
        向う岸に鷺が居て、雲はやや白くなった。                :753/2195
                「隠さず、白状をなすったから、私がつかまって行くのは :911/2195
爽としてむしろ槊を横えて詩を赤壁に賦した、白面の曹操の概がある。           :932/2195
                  「色が白くて、髪が黒い処へ、細りしてるから、よく :939/2195
深い口の大い、笑うと顔一杯になりそうな、半白眉の房りした爺さま一人、かんてらの裸火の :948/2195
ら、ざっと刎ねて、坊さんが穿きたての新しい白足袋を泥だらけにしたんだとね。……当時は :1186/2195
に翳す、と節の長い紅宝王を嵌めたその美しい白い手が一つ。親か、姉か、見えない空から、 :1201/2195
しながら片手の指を顋に隠した。その指には、白金の小蛇の目に、小さな黒金剛石を象嵌した :1202/2195
の目に、小さな黒金剛石を象嵌したのが、影の白魚のごとく絡っていたのである。      :1202/2195
     後で知れた、――衣類の紋も、同じ白色の小蛇の巻いた渦巻であった。      :1203/2195
     膝に島田を乗せながら、葛木の色は白澄んだ。                 :1226/2195
                    (白酒をおあがり、晋ちゃん、私が縁起直しに鉢 :1242/2195
て、簪も抜けたり、その鬢の毛も凄いような、白い顔に解れたが――一重桜の枝を持って、袖 :1243/2195
黄と金茶の翁格子の伊達巻で、ぐいと縊った、白い乳房を夢のように覗かせながら、ト跪いて :1257/2195
                   襟足白く、起上るようにして、ずるりと咽喉まで引 :1258/2195
凄いが、艶である。その緋の絞の胸に抱く蔽の白紙、小枕の濃い浅黄。隅田川のさざ波に、桜 :1267/2195
                     白鳥を提げてね、景気よく飲むんだって……当 :1274/2195
奉公を止して、中学校の寄宿舎へ入る。続いて白筋の制帽となって、姉の思一つなんだ。かみ :1277/2195
 川の水が少し渺として、月が出たのか、日が白いのか、夜だか昼だか分らない。……間がお :1304/2195
い。菱餅も焼くのを知って、それが草色でも、白でも、紅色でも、色の選好みは忘れている、 :1379/2195
に身抜けが出来ず――以前|盗人が居直って、白刃を胸へ突きつけた時、小夜着を被せて私を :1391/2195
とすらりと抜いて、衝と欄干へ姿を斜めに、指白々と口に取る。              :1434/2195
ての襖に密と手を掛けた、ひらめく稲妻、輝く白金、きらりと指環の小蛇を射る。      :1502/2195
     掻巻の裾を渚のごとく、電燈に爪足白く、流れて通って、花活のその桜の一枝、舞 :1512/2195
お廻り。」と、婆やが水口の障子で怒鳴ると、白磨竹を突着けられた千鳥の前は、拷問の割竹 :1533/2195
               「ついね、お白酒の持越しで、酔っていたものですから、ほ :1556/2195
た。一銭雛じゃね、土人形五個なのです。が、白い手飾の、あの綺麗な手で扱われると、数千 :1602/2195
こに物語った通りであった。それさえ、神境に白き菊に水あるごとき言うべからざる科学の威 :1653/2195
う……顔が似たのではない。いかもの食の大腕白、かねて御殿山の梟を生捕って、雑巾に包ん :1654/2195
靄の有る、瓦斯ほの暗き五月闇。浅黄の襟に頬白う、………また雨催の五位鷺が啼くのに、内 :1683/2195
、足数七八つ、二間ばかり奥へ入った処に、仇白くなって字が見える、………紙が歩行いた勘 :1700/2195
男を思うあわれさよ。鶴を折る手と、中指に、白金の白蛇輝く手と、合せた膝に、三筋五筋| :1731/2195
うあわれさよ。鶴を折る手と、中指に、白金の白蛇輝く手と、合せた膝に、三筋五筋|観世捻 :1731/2195
影の黒く大なるに対して、葛木の手のカウスは白く、杖は細かった。            :1751/2195
他の点燈に色を分けて、雛の松明のごとく、軸白く桃色に、輝いた時、彼はそこに、姉を思っ :1758/2195
れと斉しく、どろんとしつつも血走った眼を、白眼勝に仰向いて、赤熊の筒袖の皮|擦れ、毛 :1759/2195
て、そのまんま、蒲団の下へ突込んで置いた、白鞘の短刀が転がって出たですが。      :1837/2195
て見せよう。さあ早く。)と洞爺湖の雪よか真白な肌を脱いで、背筋のつるつると朝日で溶け :1839/2195
            豊艶と覗いた乳首が白い蛇の首に見えて、むらむらと鱗も透く、あ :1840/2195
見えて、むらむらと鱗も透く、あの指の、あの白金が、そのまま活きて出たらしいで、俺はこ :1840/2195
して、鵲のごとく黒く行く。橋冷やかに、水が白い。                   :1906/2195
黙って、やがて静に立直った時、酔覚の顔は蒼白い。                   :1919/2195
  ト片手ついたが、欄干に、雪の輝く美しい白い蛇の絡んだ俤。             :1971/2195
 と心悲しい、が冴えた声。鈴を振るごとく、白銀の、あの光、あけの明星か、星に響く。  :1979/2195
。清葉とお孝の名を記にした納手拭の、一つは白く、一つは青く、春風ながら秋の野に葛の裏 :1990/2195
後を、おなじ消防夫に遮られつつ、口紅の色も白きまで顔色をかえながら、かかげた片褄、跣 :2014/2195
横町の表から引込んだ処に、不思議なばかり、白磨の千本格子がぴたりと閉って、寐静ったよ :2016/2195
葉の、膝もしどけなく頬杖して、宵暗の顔ほの白う、柳涼しく、この火の手を視めていた。… :2048/2195
。」と呼ぶと斉しく、立って逃げもあえず、真白な腕をあわれ、嬰児のように虚空に投げて、 :2071/2195
でもてなすことも出来ないで、陰気な茶の間が白けたのであったが。            :2075/2195
、店頭へすっくと立つと、会釈も無く、持った白刃を取直して、切尖で、ずぶりとそこにあっ :2132/2195
が、剥きづらかったか、あわれ血迷って、足で白刃を、土間へ圧当て蹈延ばして、反を直して :2136/2195
お孝の彼を抉った手は、ここにただ天地一つ、白き蛇のごとく美しく、葛木の腕に絡って、潸 :2151/2195
    その時、舞扇を開いた面は、銀よりも白ずんだ。                 :2189/2195


『人魚の祠』 青空文庫

》ンの雪かと思ふ、散敷《ちりし》いた花で真白であつた。                :17/122
           成程、近々と見ると、白い小さな花の、薄《うつす》りと色着《いろ :23/122
――墓地とは反対――の処に、二十三四の色の白い婦人が居る……             :26/122
                先づ、色の白い婦《をんな》と云はう、が、雪なす白さ、 :27/122
、色の白い婦《をんな》と云はう、が、雪なす白さ、冷《つめた》さではない。薄桜《うすざ :27/122
青い。青いのが葉に見えて、先刻《さつき》の白い花が俤立《おもかげだ》つ……撫肩《なで :28/122
其が嬰児《あかんぼ》で、仰向けに寝た顔へ、白い帽子を掛けてある。寝顔に電燈を厭つたも :28/122
りと解けて、帯も浴衣も其のまゝ消えて、膚の白い色が颯《さつ》と簇《むらが》つて咲かう :29/122
 ふと明いた窓へ横向きに成つて、ほつれ毛を白々とした指で掻くと、あの花の香が強く薫《 :30/122
く薫《かを》つた、と思ふと緑の黒髪に、同じ白い花の小枝を活きたる蕚《うてな》、湧立つ :30/122
気心の知れないものです。分けて底澄んで少し白味を帯びて、とろ/\と然《しか》も岸とす :46/122
面《おもて》に眼《まなこ》があつて、薄目に白く人を窺ふやうでした。          :46/122
に又一輪づゝ、言交《いひか》はしたやうに、白い花が交《まじ》つて咲く……       :49/122
》に一叢《ひとむら》の森がある、中へ横雲を白くたなびかせて、もう一叢《ひとむら》、一 :51/122
花の上かけて、霞の如き夕靄がまはりへ一面に白く渡つて来ると、同じ雲が空から捲き下して :52/122
して見るやうに透明で。詰《つま》り、上下が白く曇つて、五六尺水の上が、却つて透通《す :53/122
                     白い手が、ちら/\と動いた、と思ふと、鉛を :55/122
              唯《と》、其の白い手も見える、莞爾《につこり》笑ふ面影さ :62/122
  「鯉は、其は鯉でせう。が、玉のやうな真白な、あの森を背景にして、宙に浮いたのが、 :65/122
を背景にして、宙に浮いたのが、すつと合せた白脛《しろはぎ》を流す……凡そ人形ぐらゐな :65/122
白脛《しろはぎ》を流す……凡そ人形ぐらゐな白身《はくしん》の女子の姿です。釣られたの :65/122
ろ》つた顔容《かほだち》といひ、果して此は白像彩塑で、何う云ふ事か、仔細あつて、此の :87/122
たと見ると、婦《をんな》が掻巻から二の腕を白く抜いて、私の居る方へぐたりと投げた。寝 :89/122
                     白い踵《くびす》を揚げました、階段を辷り下 :92/122
らぼふし》に、わな/\身悶《みもだえ》する白い足が、あの、釣竿を持つた三人の手のやう :93/122
うすもの》を捌《さば》くやうです。其の膚の白い事、あの合歓花《ねむのはな》をぼかした :95/122
一《おなじ》やうな男が、其処へも出て来て、白身《はくしん》の婦人《をんな》を見て居る :101/122
に散る、と其の淡紅《うすべに》の波の中へ、白く真倒《まつさかさま》に成つて沼に沈んだ :108/122
              (分らんかい、白痴《たはけ》めが。)と、ドンと胸を突いて :111/122


『婦系図』 青空文庫

い裏を見せて引《ひっ》くり返っているのを、白い指でちょいと直し、素足に引懸《ひっか》 :16/3954
花いろいろの立姿。まあ! 紫と、水浅黄と、白と紅咲き重なった、矢車草を片袖に、月夜に :433/3954
に、吾妻下駄《あずまげた》が可愛く並んで、白足袋薄く、藤色の裾を捌いて、濃いお納戸《 :447/3954
            「怪しからん。黒と白との、待て? 海老茶と緋縮緬《ひぢりめん :669/3954
      人事《ひとごと》ながら、主税は白面に紅《こう》を潮して、         :777/3954
であるが、身躾《みだしなみ》よく、カラアが白く、磨込んだ顔がてらてらと光る。地《じ》 :874/3954
いましたから、私は嬉しくって、三銭の見料へ白銅一つ発奮《はず》みました。可い気味でご :898/3954
の間数《けんすう》を示した標杙《くい》が仄白《ほのしろ》く立って、車は一台も無かった :946/3954
縺《もつ》れ髪の頸《うなじ》清らかに、襟脚白く、女房がお辞儀をした、仰向けになって、 :946/3954
        リボンも顔も単《ひとえ》に白く、かすりの羽織が夜の艶に、ちらちらと蝶 :953/3954
        肩が離れて、大《おおき》な白足袋の色新しく、附木《つけぎ》を売る女房 :959/3954
言うに及ばずながら、奥方はどうかすると、一白九紫を口にされる。同じ相性でも、始《はじ :970/3954
          通りかかる時、蒸気が真白《まっしろ》な滝のように横ざまに漲《みな :1072/3954
                カラアの純白《まっしろ》な、髪をきちんと分けた紳士が :1110/3954
         やがて、貸切と書いた紙の白い、その門の柱の暗い、敷石のぱっと明《あ :1186/3954
                   座の白ける間は措かず、綱次はすぐに引返《ひっか :1261/3954
き》二枚袷、藍気鼠《あいけねずみ》の半襟、白茶地《しらちゃじ》に翁格子《おきなごうし :1272/3954
         と、主税を見て莞爾して、白歯を染めても似合う年紀《とし》、少しも浮 :1281/3954
            「また寄鍋だろう、白滝沢山と云う。」             :1286/3954
り》が打つのを圧えたそうに、火箸に置く手の白々と、白けた容子を、立際に打傾《うちかし :1483/3954
つのを圧えたそうに、火箸に置く手の白々と、白けた容子を、立際に打傾《うちかし》いで、 :1483/3954
前垂掛けとはがらりと変って、鉄お納戸地に、白の角通《かくとお》しの縮緬、かわり色の裳 :1488/3954
、寂《ひっそ》りした横町の、とある軒燈籠の白い明《あかり》と、板塀の黒い蔭とに挟《は :1558/3954
の色は、瞼のその朱《あけ》を奪うて、寂しく白く見えたのである。            :1660/3954
から半身を突入れて中を覗いたのは河野英吉。白地に星模様の竪《たて》ネクタイ、金剛石《 :1677/3954
万太《まんた》と云うんだ。其奴《そいつ》の白状した処では、電車の中で掏った時、大不出 :1726/3954
からしっかり握った袂《たもと》をそのまま、白羽二重の肌襦袢の筒袖の肱を円《まろ》く、 :1755/3954
窶《おもやつ》れがした上に、色が抜けるほど白くなって、品の可いのが媚かしい。     :1778/3954
は上衣を引取《ひっと》って、露《あらわ》に白い小腕《こがいな》で、羽二重で結《ゆわ》 :1829/3954
               「あの、庭の白百合はもう咲いたの、」          :1860/3954
                  と妙に白けた顔が、燈火に赤く見えて、       :1914/3954
膝へ上げた時、お妙のリボンは、何の色か、真白な蝶のよう、燈火《ともしび》のうつろう影 :2007/3954
後れ毛さえ、眉を掠《かす》めてはらはらと、白き牡丹の花片に心の影のたたずまえる。   :2010/3954
差俯向《さしうつむ》くと、仄かにお妙の足が白い。                   :2044/3954
お前《めえ》さん、手ばかりが、あすこで、真白《まっしろ》にこうちらつく工合は、何の事 :2072/3954
。やあ、酒屋の小僧か、き様喇叭節を唄え。面白え、となった処へ、近所の挨拶を済《すま》 :2078/3954
蔦ちゃんが香《におい》を隠して置いたらしい白粉入《おしろいいれ》を引出しながら、空家 :2100/3954
しとしと、窓の緑に降りかかる雨の中を、雲は白鷺《しらさぎ》の飛ぶごとく、ちらちらと来 :2153/3954
                    真白なリボンに、黒髪の艶は、金蒔絵《きんまき :2155/3954
あにい》より、これは外国の小父さんの方が面白いから、あどけなく見入って傾く。     :2156/3954
たのではなく、親類の不出来《ふでか》しを面白がったように見える。           :2257/3954
無くなって見えたが、鈴のような目は活々と、白い手首に瞳大きく、主税の顔を瞻《みまも》 :2288/3954
髪《かみ》も洗ったように水々しく、色もより白くすっきりあく抜けがしたは、水道の余波《 :2298/3954
った土間の薄暗さ、衣《きぬ》の色朦朧と、俤白き立姿、夫人は待兼ねた体に見える。    :2306/3954
と、縁の突当り正面の大姿見に、渠の全身、飛白《かすり》の紺も鮮麗《あざやか》に、部屋 :2323/3954
袋と向合った壁に、棚を釣って、香水、香油、白粉の類《たぐい》、花瓶まじりに、ブラッシ :2324/3954
らた》に薄化粧した美しさが背中まで透通る。白粉の香は座蒲団にも籠ったか、主税が坐ると :2328/3954
           と火箸を圧えたそうな白い手が、銅壺の湯気を除《よ》けて、ちらち :2330/3954
、垢抜けのした、意気の壮《さかん》な、色の白いのが着ると、汗ばんだ木瓜《ぼけ》の花の :2424/3954
い》やら、上に春野山、と書いて、口の裂けた白黒まだらの狗の、前脚を立てた姿が、雨浸《 :2573/3954
だ衣紋の、胸から、柔かにふっくりと高い、真白《まっしろ》な線を、読みかけた玉章《たま :2604/3954
のあたりまで振かかるのを掻《か》い払うその白やかな手が、空を掴んで悶えるようで、(乳 :2608/3954
、と見れば尊き光かな、裸身《はだみ》に颯と白銀《しろがね》を鎧《よろ》ったように二の :2632/3954
         膳は片附いて、火鉢の火の白いのが果敢ないほど、夜も更けて、寂《しん :2672/3954
声を放って鳴くがごとく、何となく雲が出て、白く移り行くに従うて、動揺《どよみ》を造っ :2693/3954
のを掛けたらしい、冷く手に触って、ほんのり白粉の香《におい》がする。         :2713/3954
肩あたりに、幻の花環は、色が薄らいで、花も白澄んだけれども、まだ歴々《ありあり》と瞳 :2720/3954
》えた頭《かしら》重げに、透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけ :2803/3954
                  と余り白くて、血の通るのは覚束《おぼつか》ない頸 :2820/3954
           そんな事よりねえ、面白いことをしてお遊びなさいよ。」      :2898/3954
    「お嬢さん、その貴嬢《あなた》、面白いことが無いんですもの、」と勢《せい》の :2900/3954
           夫の所好《このみ》で白粉は濃いが、色は淡い。淡しとて、容色《き :3080/3954
腕《かいな》に靡いて、引緊《ひきしま》った白の衣紋着《えもんつき》。車を彩る青葉の緑 :3084/3954
毛一筋も乱れない円髷の艶も溢《こぼ》さず、白粉の濃い襟を据えて、端然とした白襟、薄お :3114/3954
ぼ》さず、白粉の濃い襟を据えて、端然とした白襟、薄お納戸のその紗綾形《さやがた》小紋 :3114/3954
んつき》で、味噌汁《おつけ》を装《よそ》う白々《しろしろ》とした手を、感に堪えて見て :3114/3954
に違いない、と籠勝《こもりがち》な道子は面白いものを見もし聞《きき》もしするような、 :3149/3954
もあったように、真蒼《まっさお》になって、白襟にあわれ口紅の色も薄れて、頤深く差入れ :3201/3954
までも望むんじゃないのです。弥陀《みだ》の白光《びゃっこう》とも思って、貴女を一目と :3228/3954
と見下《みおろ》す顔を、斜めに振仰いだ、蒼白い姉の顔に、血が上《のぼ》って、屹となっ :3262/3954
は昼顔の盛りのようで、明《あかる》い部屋に白々地《あからさま》な、衣《きぬ》ばかりが :3276/3954
         「何を云ってるんです、面白くもない。」               :3282/3954
云うから、洗濯をするに可いの、瓜が冷せて面白いのッて、島山にそう云って、とうとうあす :3324/3954
の面《おも》に月輪を纏《まと》めた風情に、白やかな婦《おんな》の顔がそこを覗いた。  :3427/3954
       早瀬は今更ながら、道子がその白襟の品好く麗《うるわ》しい姿を視《なが》 :3456/3954
             「こうですか。」白地を被《かぶ》って俯向けば、黒髪こそは隠 :3463/3954
ろう、あたかもその頸《うなじ》の上に、例の白黒斑《まだら》な狗が踞《うずくま》ってい :3494/3954
の顔は、活きて眼《まなこ》を開いたかと、蒼白《あおざめ》た鼻も見えたが、松明《たいま :3520/3954
げた。火はこれがために消えて、しばらくは黒白《あやめ》も分かず。阿部街道を戻り馬が、 :3521/3954
、その二階へ、雪洞《ぼんぼり》を手にした、白衣《びゃくえ》の看護婦を従えて、真中《ま :3533/3954
夜帯を……もっともお太鼓に結んで、紅鼻緒に白足袋であったが、冬の夜なぞは寝衣《ねまき :3534/3954
帯《しごき》という事がある。そんな時は、寝白粉《ねおしろい》の香も薫る、それはた異香 :3534/3954
と巻かれたよう。従って、前後を擁した二体の白衣も、天にもし有らば美しき獄卒の、法廷の :3535/3954
患者無しに行抜けの空は、右も左も、折から真白《まっしろ》な月夜で、月の表には富士の白 :3536/3954
真白《まっしろ》な月夜で、月の表には富士の白妙《しろたえ》、裏は紫、海ある気勢《けは :3536/3954
     例に因って、室々へ、雪洞が入り、白衣が出で、夫人が後姿になり、看護婦が前に :3537/3954
へ向いた病室の前へ来ると、夫人は立留って、白衣は左右に分れた。            :3537/3954
、二人附着《くッつ》いて、こなたを見ていた白衣が、さらりと消えて、壇に沈む。     :3542/3954
な骨が動いた時、道子の肩もわなわなして、真白な手の戦《おのの》くのが、雪の乱るるよう :3574/3954
    と魚《うお》の渇けるがごとく悶ゆる白歯に、傾く鬢からこぼるるよと見えて、衝《 :3578/3954
また、早瀬の病室の前で、道子に別れた二人の白衣《びゃくえ》が、多時《しばらく》宙にか :3589/3954
         壇の下から音もなく、形の白い脊の高いものが、ぬいと廊下へ出た、と思 :3592/3954
は幾千代までも、早やその下に消えそうな、薄白んだ耳に口を寄せて、           :3632/3954
《たしか》なのが分って、両側のそちこちに、白い金盥《かなだらい》に昇汞水《しょうこう :3676/3954
月は屋の棟に上ったろう、影は見えぬが青田の白さ。                   :3679/3954
、暗い中に、昼間被《き》かえた自分の浴衣の白いのを、視《なが》めて悚然《ぞっ》として :3681/3954
んど転《ころが》って飛ぶのは、大きな、色の白い蛾《ひとりむし》で。          :3689/3954
                   「面白い!」                  :3699/3954
                と出掛けた白衣《びゃくえ》の、腰の肥《ふと》いのを呼 :3713/3954
                 看護婦の白衣にかさなって、紫の矢絣《やがすり》の、 :3720/3954
                     白昼凝って、尽《ことごと》く太陽の黄なるを :3778/3954
               田を行く時、白鷺が驚いて立った。村を出る時、小店の庭の :3789/3954
とく戸を鎖して、蜻蛉《とんぼう》も飛ばず。白茶けた路ばかり、あかあかと月影を見るよう :3790/3954
な谷に望んで、幹には浦の苫屋を透し、枝には白き渚《なぎさ》を掛け、緑に細波《さざなみ :3796/3954
見迎えた。その青年を誰とかなす――病後の色白きが、清く瘠せて、鶴のごとき早瀬主税。  :3797/3954
へ打《ぶっ》かけるように、仕かけの噴水が、白粉の禿げた霜げた姉さんの顔を半分に仕切っ :3882/3954
の星よと見えて、天に連《つらな》った一点の白帆は、二人の夫等の乗れる船にして、且つ死 :3943/3954


『親子そば三人客』 従吾所好

がて十能に真赤なのを堆く、紅の襷がけ、円く白い二の腕あたり惜気もなう、効々しく、土間 :5/121
                 面長で色白な、些と柄は大いが、六か七と見えてあどけ :6/121
でございませう。御都合はまゝあることなり潔白に然うやつて形を置いて行つて遣らうとおつ :82/121
                    ト白けて皆が黙りの折から、ぞろオリ/\と高い :86/121


『龍潭譚』 青空文庫

き色のあかきがなかに、緑と、紅と、紫と、青白《せいはく》の光を羽色《はいろ》に帯びた :31/186
土のひろびろと灰色なせるに際立ちて、顔の色白く、うつくしき人、いつかわが傍《かたわら :43/186
たる突あたりに小さき稲荷の社あり。青き旗、白き旗、二、三本その前に立ちて、うしろはた :50/186
て、ちらちらと眼に映ずる雪なす膚《はだえ》白かりき。                 :93/186
時、颯《さ》と音して、烏よりは小さき鳥の真白きがひらひらと舞ひおりて、うつくしき人の :94/186
   と答へて去る。山風颯とおろして、彼の白き鳥また翔《た》ちおりつ。黒き盥のふちに :110/186
その乳房をふくませたまひぬ。露《あらわ》に白き襟、肩のあたり鬢のおくれ毛はらはらとぞ :125/186
         片手をば胸にあてて、いと白くたをやかなる五指《ごし》をひらきて黄金 :138/186
》わたる淵の上には、塵一葉の浮べるあらで、白き鳥の翼広きがゆたかに藍碧《らんぺき》な :183/186


『春昼』 泉鏡花を読む

た其の色に対して、打向ふ其方の屋根の甍は、白昼青麦を〓《あぶ》る空に高い。      :15/628
を半開きにして、姉さん冠の横顔を見た時、腕白く梭を投げた。其の年取つた方は、前庭の乾 :46/628
低くなつて、一面に颯と拡がる、浅緑に美しい白波が薄りと靡く渚のあたり、雲もない空に歴 :47/628
   あの、西南一帯の海の潮が、浮世の波に白帆を乗せて、此しばらくの間に九十九折ある :53/628
、ちらりと見たのみ、呉織文織は、恰も一枚の白紙に、朦朧と描いた二個の其の姿を残して余 :57/628
白紙に、朦朧と描いた二個の其の姿を残して余白を真黄色に塗つたやう。二人の衣服にも、手 :57/628
     戸張を垂れた御厨子の傍に、造花の白蓮の、気高く俤立つに、頭を垂れて、引退く :86/628
             合天井なる、紅々白々牡丹の花、胡粉の俤消え残り、紅も散留つ :87/628
此処に来て、虚空に花降る景色を見よう。月に白衣の姿も拝まう。熱あるものは、楊柳の露の :93/628
        菜種にまじる茅屋の彼方に、白波と、松吹風を右左、其処に旗のやうな薄霞 :265/628
映つて、とき色の服の姿が浪の青いのと、巓の白い中へ、薄い虹がかゝつたやうに、美しく靡 :345/628
見たんですが、目鼻立ちのはつきりした、色の白いことゝ、唇の紅さつたらありませんでした :356/628
             絽でせう、空色と白とを打合はせの、模様は一寸分らなかつたが :372/628
模様は一寸分らなかつたが、お太鼓に結んだ、白い方が、腰帯に当つて水無月の雪を抱いたや :372/628
歳位のがじやれて、其の腰へ抱き着いたので、白魚といふ指を反らして、軽く其の小児の背中 :388/628
の児が、駈けて返つて、橋の上へ落して行つた白い手巾を拾つたのを、懐中へ突込んで、黙つ :392/628
          「客人は、其の穴さへ、白髑髏の目とも見えたでありませう。     :456/628
             冷奴に紫蘇の実、白瓜の香の物で、私と取膳の飯を上ると、帯を :510/628
              あの音もさ、面白可笑しく、此方も見物に参る気でもござると :528/628
る夕日の影と、消え残る夕焼の雲の片と、紅蓮白蓮の咲乱れたやうな眺望をなさつたさうな。 :536/628
路は、崕の上を高い堤防を行く形、時々、島や白帆の見晴しへ出ますばかり、あとは生繁つて :546/628
            谷には鶯、峰には目白四十雀の囀つて居る処もあり、紺青の巌の根 :547/628
舞台の左右、山の腹へ斜めにかゝつた、一幅の白い靄が同じく幕でございました。むら/\と :588/628
小さくなつて、幽になつて、唯顔ばかり谷間に白百合の咲いたやう。            :590/628
枕にすると、黒髪が、ずる/\と仰向いて、真白な胸があらはれた。其の重みで男も倒れた、 :616/628


『春昼後刻』 泉鏡花を読む

込む古池と云ふへ行けさ。化粧部屋覗きをつて白粉つけてどうしるだい。白鷺にでも押惚れた :40/444
化粧部屋覗きをつて白粉つけてどうしるだい。白鷺にでも押惚れたかと、ぐいとなやして動か :40/444
                     白魚のやうな指が、一寸、紫紺の半襟を引き合 :70/444
             徐ら、雪のやうな白足袋で、脱ぎ棄てた雪駄を引寄せた時、友染 :80/444
                    と白い掌を、膝に仰向けて打仰ぎ、       :190/444
ず聞き澄んだ散策子の茫然とした目の前へ、紅白粉の烈しい流が眩い日の光で渦いて、くる/ :217/444
          頂の松の中では、頻に目白が囀るのである。             :234/444
               と赭顔なのが白い歯を剥き出して云ふやうです。はあ、そん :289/444
             と土筆のたけの指白う、又うつゝなげに草を摘み、摘み、    :296/444
  と言ひ/\抜き取つた草の葉をキリ/\と白歯で噛んだ。               :298/444
、麦畠へ真正面。話をわきへずらさうと、青天白日に身構へつつ、             :306/444
と見えたが、すぐに久能谷の出口を突切り、紅白の牡丹の花、はつと俤に立つばかり、ひらり :331/444
かは目に紅を潮して、口許の可愛らしい、色の白い児であつた。              :338/444
             と衝と手を袴越に白くかける、とぐいと引寄せて、横抱きに抱く :362/444
          と其の○□△を落書の余白へ、鉛筆を真直に取つてすら/\と春の水の :374/444
でお辞儀をすると、すた/\と駈け出した。後白波に海の方、紅の母衣翩翻として、青麦の根 :388/444
          正面にくぎり正しい、雪白な霞を召した山の女王のましますばかり。見 :396/444
長閑さはしかし野にも山にも増つて、あらゆる白砂の俤は、暖い霧に似て居る。       :397/444
先になり、脚絆の足を入れ違ひに、頭を組んで白浪を被ぐばかり浪打際を歩行いたが、やがて :423/444
の音もせず――獅子はひとへに嬰児になつた、白光は頭を撫で、緑波は胸を抱いた。何等の寵 :428/444


『天守物語』 泉鏡花を読む

             所  播州姫路。白鷺城の天守、第五重。           :4/480
            撫子 はい、それは白露でございますわ。            :40/480
            花につれて、黄と、白、紫の胡蝶の群、ひら/\と舞上る。    :48/480
》う云ふうちに、色もかくれて、薄ばかりが真白に、水のやうに流れて来ました。      :54/480
て、上に、金色《こんじき》の眼《まなこ》、白銀《しろがね》の牙、色は藍の如き獅子頭、 :63/480
を受け取る。貴女の面《おもて》、凄きばかり白く臈長《らふた》けたり。         :72/480
、それでも貴女《あなた》がめしますと、玉、白銀《しろがね》、揺《ゆるぎ》の糸の、鎧の :78/480
面の色朱よりも赤く、手と脚、瓜に似て青し。白布《しろぬの》にて蔽うたる一個の小桶を小 :104/480
          朱の盤 はゝッ。(その白布の包を出し)姫君より、貴女《あなた》様 :147/480
   包《つゝみ》を開く、首桶。中より、色白き男の生首を出し、もとゞりを掴んで、づう :154/480
出で、桶を皺手に犇《ひし》と圧《おさ》へ、白髪《しらが》を、ざつと捌《さば》き、染め :159/480
萄、手造りの猿の酒、山峰の蜜、蟻の甘露、諸白《もろはく》もござります。が、お二人様の :205/480
               萩 もし、面白いお話を聞かして下さいましな。      :214/480
葛 利験はござんせうけれどな、そんな話は面白うござんせぬ。              :218/480
            亀姫 まあ、翼の、白い羽の雪のやうな、いゝ鷹を持つて居るよ。 :252/480
          ひらりと落す時、一羽の白鷹颯と飛んで天守に上るを、手に捕ふ。   :258/480
》に据ゑました、殿様が日本一とて御秘蔵の、白い鷹を、このお天守へ逸《そら》しました、 :335/480
う》の世間へなど、もうお帰りなさいますな。白銀《しろがね》、黄金《こがね》、球、珊瑚 :346/480
人 然《しか》し、然《さ》うは云ふものの、白鷹を据ゑた、鷹匠だと申すよ――縁だねえ。 :384/480
ちたと云ふを拾つて来て、近習が復命をした、白木に刻んだ三輪牡丹高彫《たかぼり》のさし :425/480


『歌行燈』 従吾所好

るべし。臘虎〈らつこ〉皮の鍔なし古帽子を、白い眉尖〈まゆさき〉深々と被つて、鼠の羅紗 :10/744
々と被つて、鼠の羅紗の道行着た、股引を太く白足袋の雪駄穿〈せつたばき〉。色褪せた鬱金 :10/744
か、汽車は最〈も〉う遠くの方で、名物焼蛤の白い煙を、夢のやうに月下に吐いて、真蒼な野 :15/744
       「はゝはゝ、法性寺入道前の関白太政大臣と言つたら腹を立ちやつた、法性寺 :33/744
と言つたら腹を立ちやつた、法性寺入道前の関白太政大臣様と来て居る。」と又アハヽと笑ふ :33/744
て、両側の暗い軒に、掛行燈が疎〈まばら〉に白く、枯柳に星が乱れて、壁の蒼いのが処々。 :49/744
状〈さま〉、恰も獺が祭礼〈まつり〉をして、白張の地口行燈を掛連ねた、鉄橋を渡るやうで :50/744
て、千里の果も同じ水に、筑前の沖の月影を、白銀〈しろがね〉の糸で手繰つたやうに、星に :52/744
を流して居る。……つい目の前の軒陰に。……白地の手拭、頬被、すらりと痩ぎすな男の姿の :56/744
の湯気に朦として立つて居た。……浅葱の襷、白い腕を、部厚な釜の蓋に一寸載せたが、円髷 :71/744
に一寸載せたが、円髷をがつくりさした、色の白い、歯を染めた中年増。此の途端に颯と瞼を :71/744
、海と一所の、大〈いか〉い揖斐の川口ぢや。白帆の船も通りますわ。鱸は刎ねる、鯔は飛ぶ :102/744
               と釜の湯気の白けた処へ、星の凍てさうな按摩の笛。月天心 :142/744
     と亭主瞬きして頤を出す。女房は面白半分、見返りもしないで、         :157/744
            と聞く。……其時、白眼〈しろまなこ〉の座頭の首が、月に蒼ざめ :171/744
揖斐川の流れの裾は、潮〈うしほ〉を篭めた霧白く、月にも苫を伏せ、蓑を乾す、繋船〈かゝ :180/744
             「床に活けたは、白の小菊ぢや、一束にして掴みざし、喝采〈お :194/744
霜の上の燗酒で、月あかりに直ぐ醒める、色の白いのも其まゝであつたが、二三杯、呷切(あ :290/744
六ツ急いでな。」と草履穿きの半纏着、背中へ白く月を浴びて、赤い鼻をぬいと出す。    :307/744
い紫の座敷着で、褄を蹴出さず、ひつそりと、白い襟を俯向いて、足の運びも進まないやうに :329/744
つて、杖を脚許へ斜交ひに突張りながら、目を白く仰向いて、月に小鼻を照らされた流しの按 :337/744
と早や、影法師も同然なもので。」と掠れ声を白く出して、黒いけんちう羊羹色の被布を着た :349/744
    此の叔父さんのお供だらう。道中の面白さ。酒はよし、景色はよし、日和は続く。何 :405/744
して居る。神路山の樹は蒼くても、二見の波は白からう。酷い勢、ぱつと吹くので、たぢたぢ :431/744
出来て、洋燈〈ランプ〉は油煙に燻つたが、真白に塗つた姉さんが一人居る、空気銃、吹矢の :434/744
に先づ袴を穿かせる仕向をするな、真剣勝負面白い。で、此方も勢、懐中から羽織を出して着 :464/744
/\と鳴りさう。左の一眼べとりと盲ひ、右が白眼で、ぐるりと翻つた、然も一面、念入の黒 :468/744
房りした島田の鬢を重さうに差俯向く……襟足白く冷たさうに、水紅色〈ときいろ〉の羽二重 :474/744
げな、座敷が浮かぬ、お見やんせ、蝋燭の灯も白けると、頼むやうにして聞かいても、知らぬ :478/744
で饂飩でも食べてくれ。私が驕る。で。何か面白い話をして遊ばして、軈〈やが〉て可い時分 :501/744
               師走の闇夜に白梅の、面を蝋に照らされる。        :512/744
いたが、膚身に着けたと思はるゝ、……胸やゝ白き衣紋を透かして、濃い紫の細い包、袱紗の :548/744
、燭台に照つて、颯と輝く、銀の地の、あゝ、白魚の指に重さうな、一本の舞扇。      :548/744
隠して、反らした指のみ、両方親骨にちらりと白い。                   :549/744
、寒の中で、八百八島あると言ふ、どの島も皆白い。霜風が凍りついた、巌の角は針のやうな :580/744
人は声なくして、たゞ、ちり/\と、蝋燭の涙白く散る。                 :582/744
其の事は言はぬけれど、明方の三時から、夜の白むまで垢離取つて、願懸けすると頼んだら、 :613/744
所から音信れたら、叔父には内証で、居候の腕白が、独楽を廻す片手間に、此の浦船でも教へ :664/744
               「痘瘡の中に白眼を剥いて、よた/\と立上つて、憤つた声 :669/744
の門口で、爽に調子を合はした。……其の声、白き虹の如く、衝と来て、お三重の姿に射した :735/744
の、雲も恋人の影も立添う、光を放つて、灯を白めて舞ふのである。            :738/744
                  路一筋白くして、掛行燈の更けた彼方此方、杖を支い :744/744


『夜行巡査』 青空文庫

らの事々物々、たとえばお堀端の芝生の一面に白くほの見ゆるに、幾条の蛇《くちなわ》の這 :29/164
                兇徒あり、白刃を揮いて背後《うしろ》より渠を刺さんか :32/164
は美しいの、さすがは一生の大礼だ。あのまた白と紅との三枚襲で、と羞ずかしそうに坐った :83/164
たる、ときに寒冷謂うべからず、見渡す限り霜白く墨より黒き水面に烈しき泡の吹き出ずるは :142/164


『薬草取』 青空文庫

      女は片手拝《かたておが》みに、白い指尖《ゆびさき》を唇にあてて、俯向《う :11/283
あたま》の兀《は》げたくせに髪の黒い、色の白い、ぞろりとした優形《やさがた》な親仁《 :117/283
              橋は、雨や雪に白《しら》っちゃけて、長いのが処々《ところ :137/283
いました。この医王山の頂《いただき》に、真白な月が出ていたから。           :138/283
なじ》時刻、正午《ひる》頃です。岩も水も真白な日当《ひあたり》の中を、あの渡《わたし :141/283
、流《ながれ》が蒼く搦《から》み着いて、真白に颯《さっ》と翻《ひるがえ》ると、乗った :170/283
並木、青田《あおだ》の縁《へり》の用水に、白鷺《しらさぎ》の遠く飛ぶまで、畷《なわて :189/283
ふ》を半挺《はんちょう》、皺手《しわで》に白く積んで、そりゃそりゃと、頬辺《ほっぺた :190/283
、柔和《にゅうわ》な面相《おもざし》、色が白い。                   :193/283
が許《とこ》へござれ、と言う。疾《はや》く白媼《しろうば》が家《うち》へ行《ゆ》かっ :194/283
》にくるんでいたです。その間《あいだ》に、白媼《しろうば》の内《うち》を、私を膝に抱 :207/283
呻吟《うめ》いていたばかり。尤《もっと》も白姥《しろうば》の家に三晩《みばん》寝まし :208/283
膚《はだ》も、人の体も、その時くらい清く、白く美しいのは見た事がない。        :214/283
たてま》したと見えて、襖《ふすま》がない、白い床《ゆか》へ、月影が溌《ぱっ》と射した :215/283
と、町へ帰っても言うのではありません、と蒼白い顔して言い聞かす中《うち》に、駕籠《か :253/283
》来《きた》り、紫《むらさき》去《さ》り、白《しろ》過《す》ぎて、蝶《ちょう》の戯《 :269/283
唯《と》見ると堆《うずたか》き雪の如く、真白《ましろ》き中に紅《くれない》ちらめき、 :270/283
袂《たもと》の端、大輪《たいりん》の菊の色白き中に佇《たたず》んで、高坂を待って、莞 :271/283
、黒婆《くろばば》の生豆腐《なまどうふ》、白姥《しろうば》の焼茄子《やきなすび》、牛 :273/283
に牡丹《ぼたん》の咲重《さきかさな》って、白き象《ぞう》の大《おおい》なる頭《かしら :281/283


『夜叉ヶ池』 青空文庫

                     白雪姫(夜叉ヶ池の主)           :8/564
                     白男の鯉七                 :10/564
         劇中名をいうもの。――(白山剣ヶ峰、千蛇ヶ池の公達)        :28/564
      萩原晃《はぎわらあきら》この時白髪《しらが》のつくり、鐘楼《しょうろう》 :30/564
                 百合 (白髪の鬢《びん》に手を当てて)でも、白いの :35/564
合 (白髪の鬢《びん》に手を当てて)でも、白いのでございますもの。          :35/564
        百合 方々旅を遊ばした、面白い、珍しい、お話しでございます。     :120/564
じゃ。(と小膝《こひざ》を拍《うっ》て)面白い。話しましょう。……が、さて談話という :123/564
親友に、何かかねて志す……国々に伝わった面白い、また異《かわ》った、不思議な物語を集 :130/564
             学円 それでは面白かったのじゃね。             :135/564
たなりで座に入る)いや、その頭も頭じゃが、白髪はどうじゃ、白髪はよ?……       :154/564
)いや、その頭も頭じゃが、白髪はどうじゃ、白髪はよ?……               :154/564
艶《つや》、雪国と聞くせいか、まだ消残って白いように、襟脚、脊筋も透通る。……凄《す :175/564
           学円 (乗出でて)面白い。                   :186/564
               晃 いや、面白いでは済まない、大切な事です。      :187/564
目を、ちょっとは紛らす事もあろうと、昼間は白髪の仮髪《かつら》を被《かむ》る。    :204/564
           晃 そんなに、お前、白粉《おしろい》を粧《つ》けて。      :224/564
のが、寝床を覗《のぞ》くと、いつでもへい、白蛇《しろへび》の長《なげ》いのが、嬢様の :271/564
夕顔の蔭より、するすると顕《あらわ》る。黒白鱗《こくびゃくうろこ》の帷子《かたびら》 :276/564
ら来り、はたとその小笠を擲《なげう》つ。顔白く、口のまわり、べたりと髯《ひげ》黒し。 :276/564
》なども知る通りよ。姫様は、それ、御縁者、白山《はくさん》の剣ヶ峰千蛇ヶ池の若旦那に :290/564
                蟹五郎 面白い。                   :301/564
しの頭巾《ずきん》、面《つら》一面に黒し。白き二根《にこん》の髯《ひげ》、鼻下より左 :307/564
生でないの。……これは、北陸道無双の霊山、白山、剣ヶ峰千蛇ヶ池の御公達《ごきんだち》 :312/564
お引出ものなさる。……あの、黄金《こがね》白銀《しろがね》、米、粟《あわ》の湧《わき :326/564
としま》がござった。裸身《はだかみ》の色の白さに、つい、とろとろとなって、面目なや、 :329/564
                夜叉ヶ池の白雪姫。雪なす羅《うすもの》、水色の地に紅 :349/564
湯尾峠の万年姥《まんねんうば》。針のごとき白髪《しらが》、朽葉色《くちばいろ》の帷子 :350/564
                     白雪 ふみを読むのに、月の明《あかり》は、 :353/564
                     白雪 (下襲《したがさね》を引いて、袖口の :355/564
                     白雪 可懐《なつか》しい、優しい、嬉しい、 :358/564
                     白雪 どこへ?……(と聞返す。)      :361/564
                     白雪 何?                 :363/564
                     白雪 あれ、お前は何を言う……私の行くのは :365/564
                     白雪 聞かずと大事ないものを――千蛇ヶ池と :367/564
                     白雪 む、(と眦《まなじり》をあげて、鐘楼 :369/564
様とても同じ事、ここへお運びとなりますと、白山谷は湖になりますゆえ、そのために彼方《 :370/564
                     白雪 そんな、理窟を云って……姥、お前は人 :371/564
                     白雪 誓盟《ちかい》は、誰がしたえ。    :373/564
                     白雪 知っています。(とつんとひぞる。)  :375/564
                     白雪 ええ、怨《うら》めしい……この鐘さえ :377/564
                     白雪 おお、遠い路を、大儀。すぐにお返事を :393/564
                     白雪 姥《うば》、どう思うても私は行《ゆ》 :395/564
                     白雪 人の生命のどうなろうと、それを私が知 :397/564
                     白雪 あんな気の長い事ばかり。あこがれ慕う :399/564
                     白雪 義理や掟《おきて》は、人間の勝手ずく :402/564
                     白雪 ええ、煩《うるさ》いな、お前たち。義 :412/564
  とじれて、鉄杖《てつじょう》を抜けば、白銀《しろがね》の色、月に輝き、一同は、は :415/564
、天の御罰《ごばち》を蒙《こうむ》っても、白雪の身よ、朝日影に、情《なさけ》の水に溶 :416/564
                     白雪 (じっと聞いて、聞惚《ききほ》れて、 :419/564
                     白雪 おお、美しいお百合さんか、何をしてい :421/564
                     白雪 恋しい人と分れている時は、うたを唄え :423/564
                     白雪 思いせまって、つい忘れた。……私がこ :426/564
                     白雪 (椿に)お前も唄うかい。       :428/564
                     白雪 人形抱いて、私も唄おう……剣ヶ峰のお :433/564
                     白雪 お返事を上げよう……一所に――椿や、 :435/564
、途中で言聞かした通りじゃ。汝《きさま》に白羽の矢が立ったで、否応《いやおう》はない :448/564
、守唄の声が聞えた。……唄の声がこの月に、白玉《しらたま》の露を繋《つな》いで、蓬《 :474/564
あるでしょう、また御承知がなければ、恐らく白痴《ばか》と言わんけりゃならんですが、こ :479/564
》に買われたな。これ、昔も同じ事があった。白雪、白雪という、この里の処女だ。権勢と迫 :521/564
われたな。これ、昔も同じ事があった。白雪、白雪という、この里の処女だ。権勢と迫害で、 :521/564
火を放つと、鞭《むち》を当てるまでもない。白い手を挙げ、衝《つ》とさして、麓《ふもと :521/564
のお》が立つのを見て、笑《えみ》を含んで、白雪は夜叉ヶ池に身を沈めたというのを聞かぬ :521/564
ぎゃく》の民を知らん! 天に、――天に銀河白し、滝となって、落ちて来い。(合掌す。) :529/564
                     白雪。一際《ひときわ》烈《はげ》しきひかり :551/564
                     白雪 姥《うば》、嬉しいな。        :553/564
                     白雪 人間は?               :555/564
                     白雪 この新しい鐘ヶ淵《ふち》は、御夫婦の :558/564


『湯島の境内』 青空文庫

くるわ》へ近き畦道《あぜみち》も、右か左か白妙《しろたえ》に、            :9/205


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 佐藤和雄(蟻) 2000.9.29