鏡花作品の語彙検索(KWIC)

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『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫

若い妻か、あるいは妾《おもいもの》か。世に美しい女の状《さま》に、一つはうかうか誘わ :98/143
                  すぐに美人が、手の針は、まつげにこぼれて、目に見 :106/143


『逢ふ夜』 従吾所好

を大事に持した三日目頃の、一寸ほつれたのも美しい、水の垂りさうな高島田で、此の裏通り :7/97


『絵本の春』 青空文庫

      二条ばかりも重《かさな》って、美しい婦《おんな》の虐《しいた》げられた― :5/84
。……あとで聞くと、月夜にこの小路へ入る、美しいお嬢さんの、湯上りのあとをつけて、そ :50/84
ええ、高島田で、紫色の衣《き》ものを着た、美しい、気高い……十八九の。……ああ、悪戯 :60/84
の紙ばかり、三日五日続けて見て立つと、その美しいお嬢さんが、他所《よそ》から帰ったら :63/84


『縁結び』 青空文庫

気の毒様だと申しましたのは、あなたはきっと美しい姉さんだと思っておいでなさいましょう :55/405
や》の踊《おどり》に、朝顔に扮《ふん》した美人である。                :79/405
の優《やさし》い、目の清《すずし》い、眉の美しい、十八九の振袖《ふりそで》が、裾《す :131/405
云って、無言ながら、懐《なつか》しげなその美い、そして恍惚《うっとり》となっている顔 :346/405
恍惚《うっとり》した雪のようなお君の顔の、美しく優しい眉《まゆ》のあたりを、ちらちら :399/405


『古狢』 青空文庫

かし、魔法を使うように、よく祈りのきいた、美しい巫女《みこ》がそこに居て、それが使っ :74/310
ニタニタと顕《あら》われた。廓《くるわ》の美人で顔がきく。この権ちゃんが顕われると、 :88/310
の割烹《かっぽう》で一酌し、場所をかえて、美人に接した。その美人たちが、河上の、うぐ :146/310
で一酌し、場所をかえて、美人に接した。その美人たちが、河上の、うぐい亭へお立寄り遊ば :146/310
》ねた、皿に余る尺ばかりな塩焼は、まったく美味である。そこで、讃歎すると、上流、五里 :150/310
      水と、柳のせいだろう。女中は皆美しく見えた。もし、妻女、娘などがあったら :151/310
はあるし、披露《ひろ》めのためなんだから、美しく婀娜《あだ》なお藻代の名だけは、なか :171/310
                  あの、美しい、鼻も口も、それッきり、人には見せず :189/310
ん》という処ですがね。と時に、見附を出て、美佐古《みさご》(鮨屋)はいかがです。」  :291/310


『外科室』 青空文庫

   かくて丘に上りて躑躅を見たり。躑躅は美なりしなり。されどただ赤かりしのみ。   :129/165
               「ああ、真の美の人を動かすことあのとおりさ、君はお手の :161/165


『義血侠血』 青空文庫

》にいくぶんのすごみを帯び、見るだに涼しき美人なり。                 :19/706
             馬車はこの怪しき美人をもって満員となれり。発車の号令は割る :22/706
                     美人はこれを望みて、            :25/706
                  怪しき美人は満面に笑みを含みて、起伏常ならざる席 :44/706
お》されて、半ば禿げたる法然頭はどっさりと美人の膝に枕せり。             :46/706
                    と美人はその肩をしかと抱きぬ。        :48/706
に顕われたり。冷々然たるはひとりかの怪しき美人のみ。                 :66/706
この頼もしさを見たりしは、わずかにくだんの美人あるのみなり。他はみな見苦しくも慌て忙 :68/706
神と仏とは心々に祷《いの》られき。なおかの美人はこの騒擾の間、終始御者の様子を打ち瞶 :68/706
          と遠慮がちに訴うるは、美人の膝枕せし老夫《おやじ》なり。馬は群が :75/706
                     美人は片すみにありて、応募の最終なりき。隗 :84/706
                     美人は軽《かろ》く会釈するとともに、その手 :86/706
一言を発せず、世話人はすこぶる得意なりき。美人は戯るるがごとくに詰《なじ》れり。   :120/706
は顔を見合わせて、この謎を解くに苦しめり。美人は渠の言うがままに車を下れば、     :126/706
」と御者はおのれの立てる馬のそばに招きぬ。美人はますますその意を得ざれども、なお渠の :127/706
うがままに進み寄りぬ。御者はものをも言わず美人を引っ抱えて、ひらりと馬に跨《またが》 :127/706
たりしに、その馬は奇怪なる御者と、奇怪なる美人と、奇怪なる挙動《ふるまい》とを載せて :128/706
一文字に馬を飛ばして、雲を霞と走りければ、美人は魂身に添わず、目を閉じ、息を凝らし、 :149/706
                 ほどなく美人は醒めて、こは石動の棒端《ぼうばな》な :151/706
心ひそかに疑えり。月を浴びてものすごきまで美しき女の顔を、無遠慮に打ち眺めたる渠の眼 :214/706
        馭者はいたく驚けり。月下の美人生面《せいめん》にしてわが名を識る。馭 :220/706
                     美人は紙縷《こより》を撚《ひね》りて、煙管 :256/706
                     美人は眉を昂《あ》げて、          :278/706
                     美人は愁然として腕を拱きぬ。馭者はまじめに :288/706
                     美人は黙して頷きぬ。            :298/706
りむしろ慄きたるなり。渠は色を変えて、この美しき魔性のものを睨《ね》めたりけり。さき :318/706
じて、他の一銭よりも吝《お》しまざりしこの美人の胆《たん》は、拾人の乗り合いをしてそ :318/706
                  馭者は美人の意《こころ》をその面に読まんとしたり :319/706
                     美人も希有なる面色《おももち》にて反問せり :321/706
                     美人は喜色満面に溢るるばかりなり。     :337/706
               かく言いつつ美人は微笑みぬ。              :352/706
しさを紛らわさんとせり。馭者は月に向かえる美人の姿の輝くばかりなるを打ち瞶《まも》り :361/706
              「あすこさ」と美人は磧《かわら》の小屋を指させり。    :377/706
         「ばかにするものか。実に美しい、何歳《いくつ》になるのだ」     :403/706
ばず、好みて下等社会の境遇を甘んじ、衣食の美と辺幅の修飾とを求めざりき。渠のあまりに :472/706
て、白糸の水芸は興行せられたりき。渠は例の美しき姿と妙なる技とをもって、希有の人気を :479/706
「知っとります段か、富山で見ました大評判の美艶《うつくしい》ので」          :636/706


『五大力』 従吾所好

によつて相伝した、銘を(浮草小町)と云ふ其美女の、宛然〈さながら〉生首の如き、なきざ :217/1139
         「否、面ぢやないの、此の美しいのは、此の美しいのは私の顔です。」  :760/1139
 「否、面ぢやないの、此の美しいのは、此の美しいのは私の顔です。」          :760/1139
      「面ではないのよ。私の顔なの。美しいでせう、ねえ、美しいでせう。」    :762/1139
ないのよ。私の顔なの。美しいでせう、ねえ、美しいでせう。」              :762/1139
の紅の色が、霜に颯と薄く冴え、もの凄いまで美しい。知らぬ昔の小町の首を女性が、其の衣 :763/1139
たので、恰も、白鷺の長き頸に、其の青褪めた美女、活きたる首を、みだれ髪で繋いで掛けた :763/1139
申して、下駄まで拾つて、お世話をした、其の美人なんです。……」            :854/1139
るより殊勝〈しほら〉しからう。容色自慢も、美しければ歌を詠むより頼母しい。」     :919/1139
を、他と競ふやうに、殆ど、自分の職として、美しくなければ成らない美しさに、美しいのは :931/1139
ど、自分の職として、美しくなければ成らない美しさに、美しいのはほこつても、人の醜いの :931/1139
職として、美しくなければ成らない美しさに、美しいのはほこつても、人の醜いのを嘲つたり :931/1139
せう。弁天様は霞と聞いて、それが人も知つた美しいのだ、と云ふだけに、えゝ口惜しい、口 :936/1139
              「其の癖、其の美しさつたらなかつたんです……私は死んだ婦 :962/1139
        成程、今以て、鎮まらない。美しさは尚増したつて云ふのに、動悸ばかりは :970/1139
自分の顔がもとの通りに治つたと思ふかして、美しいでせう、美しいでせう――と嬉々して、 :1023/1139
の通りに治つたと思ふかして、美しいでせう、美しいでせう――と嬉々して、同一気が違つて :1023/1139
ひをする勇気があるんですけれど、霞のは唯、美しく成りたい、と其ばかり、顔を気にして気 :1032/1139
                     美しいのは女の芸だ、姿だ、徳だ、位だ、それ :1034/1139
あゝ……其の死んだ遊女と言ひ、実に察しる。美しいがために活きて、醜きが故に亡びる。身 :1035/1139
鬼神に横道なしと言ふ、心ばかりも、其の婦が美しく成つた、と思へば、死んだ遊女の功徳に :1040/1139
別嬪だけ舞台へ連れろ。こゝに、小面、泣蔵、美女の面が数ある。浮草小町の模写もある。四 :1053/1139
               其の日、霞は美しく髪を上げて、白に裾模様を襲ねて居た。 :1082/1139
                 「あゝ、美しい、綺麗な顔が、あら、あら流れて、それ :1106/1139
                老の皺手も美しく、其時霞の肩を抱き、         :1108/1139
     「おゝ、舞台に映つた、私の素面が美しいか。むゝ美しいな。やあ、お女中。其の :1109/1139
ゝ、舞台に映つた、私の素面が美しいか。むゝ美しいな。やあ、お女中。其の目を閉ぢるな、 :1109/1139
大恩人よ、お女中。舞台に立つて、小町の如く美しかれと念ずる時、お許が目に、私の素面が :1115/1139


『半島一奇抄』 青空文庫

訳じゃ、茅野《ちの》と申して、ここから宇佐美の方へ三里も山奥の谷間《たにあい》の村が :48/129
》うどと称《とな》えて形も似ている、仙家の美膳《びぜん》、秋はまた自然薯《じねんじょ :52/129
くりとした浪が二ツ処立ったら、それがすぐに美人の乳房に見えましょう。宮の森を黒髪にし :60/129
。……青竹の中には、何ともたとえがたない、美しい女像がありました。ところが、天女のよ :91/129
                 何しろ、美《うつくし》い像だけは事実で。――俗間で :92/129
くれましたが、端初《はな》から、あなた――美しい像は、跣足《はだし》だ。跣足が痛わし :92/129


『蛇くひ』 青空文庫

可きのみ。生ける犬を屠りて鮮血を啜ること、美しく咲ける花を蹂躙すること、玲瓏たる月に :14/35


『雛がたり』 青空文庫

な抽斗《ひきだし》を開けると、中が紅いのも美しい。一双《いっそう》の屏風の絵は、むら :4/58
の、山のもの。筍《たかんな》の膚《はだ》も美少年。どれも、食《くい》ものという形でな :19/58
と、樹の根に一枚、緋の毛氈を敷いて、四隅を美しい河原の石で圧えてあった。雛市《ひない :47/58
してな。つい近い頃、東京から、それはそれは美しい奥さんが見えましたよ――       :54/58


『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

ぬ。手に取り見れば、年の頃二十歳ばかりなる美麗《うつくし》き婦人《をんな》の半身像に :10/219
            叔母に下枝、藤とて美しき二人の娘あり。我とは従兄妹同士にてい :18/219
うございませう。而《さう》して御約束の御褒美は。「家へ行つてから与《や》る。「間違ま :32/219
眼も動くやうなりしが、怪しい哉影法師の如き美人静々と室《ま》の中《うち》に歩み出でた :74/219
しき人形あり。人形の前に坐りたる、十七八の美人ありけり。               :88/219
 泰助は呼吸《いき》を殺して其様を窺へば、美人は何やらむ深く思ひ沈みたる風情にて、頭 :89/219
が、妖麗《あでやか》なることいはむ方無し。美人は正坐に堪へざりけん、居坐《ゐずまひ》 :89/219
                     美人は又た、「あれ堪忍して下さいましよ。貴 :90/219
人形の被《かづき》を潜つて入るよと見えし、美人は消えて見えずなりぬ。あまりの不思議に :91/219
らつとして中肉中背、戦慄《ぞつ》とするほど美《い》い女さ。と空嘯いて毛脛の蚊をぴしや :103/219
い、といふ声しつ。今しがた見えずなりたる、美人の小腕《こがひな》を邪慳に掴みて、身を :111/219
のが》れむと悶えあせるを容赦なく引出しぬ。美人は両手に顔を押へて身を縮《すく》まして :111/219
どほ》であつたらうの。と空嘯きて打笑へば、美人はわつと泣伏しぬ。高田はお藤をじろりと :112/219
、「何《どん》な女だ。「中肉中背、凄いほど美《い》い婦人《をんな》。と聞いて八蔵心可 :153/219
好きぞやらかせと、斉く人形室の前に至れば、美婦人正に刑柱にあり、白刃乳の下に臨める刹 :215/219


『海神別荘』 華・成田屋

          僧都  や、目覚しく、美しい、異(かわ)った扮装(いでたち)でお :6/369
      侍女一  御挨拶でございます。美しいかどうかは存じませんけれど、異った支 :7/369
やかに打仰ぐ)姿を映します。ああ、風情な。美しいと視めましたものでございますから、私 :11/369
り)でおいでなされた。その節は、今宵、あの美女がこれは輿入の儀はまだ極らなんだ。じた :12/369
わか)し。斉しく公子の背後に附添う。派手に美しき声す)月の灘の桃色の枝珊瑚、対の一株 :45/369
じゃ。早く彼が願(ねがい)を満たいて、誓の美女を取れ、と御意ある。よって、黒潮、赤潮 :54/369
津波となって、田畑も家も山へ流いた。片隅の美女の家へ、門背戸(かどせど)かけて、畳天 :54/369
たしましたればこそ、当御殿、お求めに従い、美女を沈めました儀にござります。もっとも、 :61/369
なる時、累々たる波の舞台を露(あらわ)す。美女。毛巻島田(けまきしまだ)に結う。白の :75/369
の燈(ともしび)の影はこれなり。黒潮騎士、美女の白竜馬をひしひしと囲んで両側二列を造 :75/369
                     美女  (夢見るようにその瞳を〓(みひら) :77/369
            女房  いいえ、お美しいお髪(おぐし)一筋、風にも波にもお縺 :78/369
                     美女  いつか、いつですか、昨夜(ゆうべ) :79/369
                     美女  まあ、灯(あかり)も消えずに・・・ :81/369
                     美女  最後に一目、故郷(ふるさと)の浦の :83/369
                     美女  でも、貴方(あなた)、雲が見えます :85/369
                     美女  そして、参って、私の身体(からだ) :87/369
                     美女  あの、捨小舟(すておぶね)に流され :89/369
                     美女  あすこまで、道程(みちのり)は?  :91/369
                     美女  ええ、そんなに。          :93/369
                     美女  潮風、磯の香、海松(みる)、海藻( :95/369
                     美女  人の魂が、海月と云って?      :97/369
                     美女  まあ、情(なさけ)ない、お恥しい。 :100/369
                     美女  ええ。(袖を落とす。――舞台転ず。 :102/369
   女房  (声のみして)急ぎましょう。美しい方を見ると、黒鰐、赤鮫が襲います。騎 :103/369
同一(おなじ)に、入道鰐、坊主鮫の一類が、美女と見れば、途中に襲撃って、黒髪を吸い、 :108/369
途中に襲撃って、黒髪を吸い、白き乳を裂き、美しい血を呑もうとするから、守備のために、 :108/369
れたと同一(おなじ)に、いよいよ清い。眉は美しく、瞳は澄み、唇の紅は冴えて、いささか :112/369
いきょうじいしゅん)の年若き女房、名だたる美女のおさん。手代茂右衛門と不義顕れ、すな :130/369
        公子  ただ、いい姿です、美しい形です。世間はそれでその女の罪を責め :136/369
くて、毎日ありし昔のごとく、黒髪を結わせて美わしき風情。               :144/369
いた。緋の牡丹が崩れるより、虹が燃えるより美しかった。恋の火の白熱は、凝って白玉とな :147/369
                     美女。先達の女房に、片手、手を曳かれて登場 :230/369
燈籠を侍女等の差置き果つるまでに、女房は、美女をその上段、紅き枝珊瑚の椅子まで導く順 :231/369
順にてありたし。女房、謹んで公子に礼して、美女に椅子を教う。             :231/369
                     美女、据置(すえお)かるる状(さま)に椅子 :233/369
                     美女、うつみきたるまましばし、皆無言。やが :234/369
き、手を取らんと衝と腕(かいな)を伸ばす。美女、崩るるがごとくに椅子をはずれ、床に伏 :235/369
                     美女  (声細く、されども判然)はい、・・ :237/369
に見た目はどこまでも附絡(つきまと)う。(美女に)貴女(あなた)、おい、貴女、これを :239/369
                     美女  (やや面を上ぐ)お召使が鮫の口に、 :240/369
                     美女  (起直(おきなお)り、会釈す)・・ :242/369
             女房、介抱して、美女、椅子に直る。             :244/369
                     美女  まあ、父に下さいました枝よりは、幾 :246/369
                     美女  あの、人の目に、それが、貴方?   :248/369
                     美女  ああ、見えはいたしますまい。お恥か :250/369
                     美女  でも、こんな御殿はないのです。   :252/369
                     美女  あんな事をおっしゃって、絵には活き :254/369
して人間の凡(すべ)てを貴いとは言わない、美(うつくし)いとは言わない。ただ陸(くが :255/369
て、その陸を浸す事が出来るんだ。ただ貴く、美(うつくし)いものは亡びない。・・・中に :255/369
くし)いものは亡びない。・・・中にも貴方は美しい。だから、陸の一浦を亡ぼして、ここへ :255/369
                     美女  いいえ、歎きはいたしません。悲しみ :257/369
                     美女  故郷(ふるさと)の人たちには。   :259/369
                     美女  (やや意気ぐむ)あの、私の親には。 :261/369
                     美女  こうして、活きておりますもの。   :263/369
                     美女  それは死ぬ事と思いました。故郷(ふ :265/369
                     美女  けれども、父娘(おやこ)の情愛でご :267/369
                     美女  父は涙にくれました。小船が波に放た :269/369
                     美女  いいえ、ですが、もう、海の幸も、枝 :271/369
                     美女  それでも、約束の女を寄越せと、海坊 :273/369
                     美女  はい。・・・(恥じて首低(うなだ) :275/369
                     美女  貴方。(向直る。声に力を帯ぶ)私は :277/369
ずき)を捧げて出づ。女房盞を取って、公子と美女の前に置く。侍女退場す。女房酒を両方に :279/369
                     美女  (辞宜す)私は、ちっとも。     :281/369
                     美女  あの、桃の露、(見物席の方へ、半ば :284/369
                     美女  嬉しい、嬉しい、嬉しい、貴方。私が :286/369
                     美女  でも、人は私が死んだと思っておりま :288/369
                     美女  ですけれども、ですけれども。    :290/369
                     美女  ええ、父をはじめ、浦のもの、それか :292/369
                     美女  いいえ、この宮殿、この宝玉、この指 :294/369
                     美女  だって、貴方、人に知られないで活き :296/369
                     美女  (微酔の瞼花やかに)誰も知らない命 :298/369
                     美女  ええ、ですから・・・来るお庭にも敷 :300/369
                     美女  それでは何にもなりません。何の効も :302/369
嶮(けわ)し)随分、勝手を云う。が、貴女の美しさに免じて許す。歌う鳥が囀るんだ、雲雀 :303/369
                     美女  (怯れたる内端な態度)もうもう、決 :305/369
                     美女  いいえ、唯今も申します通り、故郷( :307/369
   公子、無言にして頭掉(かぶりふ)る。美女、縋(すが)るがごとくす。       :308/369
                    (美女顔を上ぐ。その肩に手を掛く)ここに来た :312/369
                     美女  ええ。(驚く。)          :313/369
          公子  蛇身になった、美しい蛇になったんだ。           :314/369
                     美女、瞳を〓(みは)る。          :315/369
                     美女  あれ。(椅子を落つ。侍女の膝にて、 :317/369
鱗はない、無論どこも蛇にはならない。貴女は美しい女です。けれども、人間の眼(まなこ) :318/369
                     美女  (髪みだるるまでかぶりを掉(ふ)る :319/369
                     美女  どこに、故郷(ふるさと)の浦は・・ :321/369
                     美女  おお、(身震す)船の沈んだ浦が見え :323/369
に五個の燈籠斉(ひと)しく消ゆ。廻廊暗し。美女、その暗中に消ゆ。舞台の上段のみ、やや :323/369
 公子。椅子に凭(よ)る。――その足許に、美女倒れ伏す――疾く既に帰り来(きた)れる :326/369
                     美女悲泣(ひきゅう)す。          :328/369
                     美女  ええ、貴女方は楽(たのし)いでしょ :331/369
                     美女  お許しなくば、どうなりと。ええ、故 :333/369
                     美女  ええ、ええ、お殺しなさいまし。活き :335/369
錨をかついで顕る。騎士二三、続いて飛出づ。美女を引立て、一の騎士が倒(さかしま)に押 :337/369
                 公子  美しい女だ。花を〓(むし)るのも同じ事よ、 :341/369
                     美女  貴方、こんな悪魚の牙は可厭です。御 :342/369
る、私を殺す、その、顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の清(すず)しさ、眉の勇ましさ。 :344/369
                 騎士等、美女を助けて、片隅に退く。公子、剣を提(ひ :346/369
            こちらへおいで。(美女、手を曳(ひ)かる。ともに床に上(のぼ :347/369
                     美女  見覚えました花ですが、私はもう忘れ :352/369
                     美女  (うなだる)お見棄のう、幾久しく。 :360/369
                  公子、美女と手を携えて一歩す。美しき花降る。二歩 :363/369
      公子、美女と手を携えて一歩す。美しき花降る。二歩す、フト立停まる。三歩を :363/369
                     美女  一歩(ひとあし)に花が降り、二歩( :364/369
ろに、やや、ななめに立ちつつ、その竜の爪を美女の背にかく。雪の振袖、紫の鱗の端に仄に :366/369


『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

んべい、とやった処が、でしゅ……覗いた瞳の美しさ、その麗《うららか》さは、月宮殿の池 :110/257
も、人も、神巫《みこ》も、禰宜《ねぎ》も、美女も、裸も、虎の皮も、紅《くれない》の袴 :190/257


『化鳥』 青空文庫

つて、母様《おつかさん》の気高《けだか》い美しい、頼母《たのも》しい、温当《おんたう :39/
、一六会々長《いちろくくわい/\ちやう》、美術奨励会理事《びじゆつしやうれいくわいり :181/
    (鳥ぢやないよ、翼《はね》の生へた美しい姉さんだよ)             :212/


『木の子説法』 青空文庫

て少年の頃、師家の玄関番をしていた折から、美しいその令夫人のおともをして、某子爵家の :8/231
た》った凄味《すごみ》があって、且つ色白に美しい。一二の松も影を籠《こ》めて、袴《は :177/231
         女性の山伏は、いやが上に美しい。                  :189/231


『高野聖』 泉鏡花を読む

            丁度此の上口の辺に美濃の蓮大寺の本堂の床下まで吹抜けの風穴が :107/622
工合であらう、青だの、赤だの、ひだが入つて美しい処があつた。             :134/622
ぶらりと下つた、其の放れた指の尖から真赤な美しい血が垂々と出たから、吃驚して目の下へ :141/622
  (おゝ、御坊様。)と立顕れたのは小造の美しい、声も清しい、ものやさしい。     :184/622
間ばかり、水に臨めば音は然までにもないが、美しさは玉を解いて流したやう、却つて遠くの :277/622
、親仁を下手に控へ、馬に面して彳んだ月下の美女の姿を差覗くが如く、陰々として深山の気 :429/622
みて、女瀧の心を砕く姿は、男の膝に取ついて美女が泣いて身を震はすやうで、岸に居てさへ :564/622
々しい左右の胸の房を含んで、何うして彼ほど美しく育つたものだらうといふ。       :582/622
同一水で医者の内も死絶えた、さればかやうな美女が片田舎に生れたのも国が世がはり、代が :612/622
が垂るばかり、招けば活きた魚も来る、睨めば美しい木の実も落つる、袖を翳せば雨も降るな :616/622


『国貞えがく』 青空文庫

うのを力に、幼い眼を眩《くら》まして、その美しい姉様たちを、ぼったて、ぼったて、叩き :196/317
うちょう》の天鵝絨《びろうど》の羽のように美しく……一枚開くと、きらきらと字が光って :240/317
   縁《えん》の早い、売口《うれくち》の美《い》い別嬪の画であった。主《ぬし》が帰 :262/317


『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

巨匠が鑿を施した、青銅の獅子の俤あり。その美しき花の衣は、彼が威霊を称えたる牡丹花《 :28/1510
の長い、裾の薄蒼い、慄然《ぞっ》とすうほど美しらしいお人が一方。           :209/1510
れがお前様、真緑《まみどり》の、光のある、美しい、珠じゃったげにござります。     :264/1510
或晩、腕車《くるま》でお乗込み、天上ぬけに美《うつくし》い、と評判ばかりで、私《わし :363/1510
寝姿に集《たか》りますと、おなじ煩うても、美しい人の心かして、夢中で、こう小児《こど :384/1510
。別にハイそれを視《なが》めるでもねえだ。美しい目水晶ぱちくりと、川上の空さ碧く光っ :464/1510
構な青磁の菓子器に装《も》ったようで、志の美しさ。                  :829/1510
含みながら、生れない前《さき》に腹の中で、美しい母の胸を見るような心持の――唄なんで :904/1510
  といって厭な顔をしました。夫人が評判の美人だけに、校長さんは大した嫉妬深いという :929/1510
、女の児はませています、それに紅い手絡で、美しく髪なぞ結って、容《かたち》づくってい :934/1510
守唄、童唄なんぞ、百幾つというもの、綺麗に美しく、細々とかいた、文が来ました。    :937/1510
て其処に立った私の姿を見ると、フト立停った美人があります。              :969/1510
                    (美しき君の姿は、              :980/1510
返され――私は取返されたと思うんですね――美しく気高い、その婦人《おんな》の心では、 :1005/1510
                    (美しき君の姿は、              :1011/1510
                    (美しき君の庵は、              :1016/1510
                  「冷い美しい水が、満々《なみなみ》とありますよ。 :1105/1510
        「嘘を吐くもんでエねえ。何美い水があんべい。井戸の水は真蒼で、小川の :1106/1510
へ取ったは白鬼の面。端麗にして威厳あり、眉美しく、目の優しさ、その顔《かんばせ》を差 :1395/1510
                     美女《たおやめ》は褄を深う居直って、蚊帳を :1402/1510
、鬼とも言わず、私を拝んでいなさいます。お美しい、お優しい、あの御顔を見ましては、恋 :1420/1510
の保養に来ておいでなさいます、それはそれは美しい、余所《よそ》の婦人《おんな》が、気 :1432/1510
                   その美しい令室《おくがた》が、人に羞じ、世に恥 :1438/1510
の人、その時、はた明を待つまでもない、この美人《たおやめ》の手、一度我に触れなば、立 :1456/1510
                     美人《たおやめ》は更めて、         :1460/1510
童が、袖に載せて捧げて来た。手毬を取って、美女《たおやめ》は、掌《たなそこ》の白きが :1468/1510
   蚊帳をはらはら取巻いたは、桔梗刈萱、美しや、萩女郎花、優しや、鈴虫、松虫の―― :1471/1510
         身動《みじろ》ぎに、この美女《たおやめ》の鬢の後《おく》れ毛、さら :1485/1510
                     美しき夢見るお方、」            :1491/1510
すらと漕いで通る。大魔の袖や帆となりけん、美女《たおやめ》は船の几帳にかくれて、   :1504/1510


『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

んは御無事でした。此の贄川の川上、御岳口、美濃よりの峡は、よけいに取れますが、その方 :77/330
野郎で此の面だから、その芸妓のやうな、凄く美しく、山の神の化身のやうには見えまいがね :90/330
 白雪の飛ぶ中に、緋鯉の背、真鯉の鰭の紫は美しい。梅も、松もあしらつたが、大方は樫槻 :121/330
の池と言ふのがあつて、その池に、お一方、お美しい奥様が在らつしやると言ふことですが、 :246/330
沁みます。慄然します。……それで居てそのお美しさが忘れられません。勿体ないやうでござ :254/330
艶さん、私は然う存じます。私が、貴女ほどお美しければ、こんな女房がついて居ます。何の :307/330
と存じられます。……処を、桔梗ヶ池の凄い、美しいお方の事をおきゝなすつて、これが時々 :309/330
つて居て、自分の容色の見劣りがする段には、美しさで勝つことは出来ないと云ふ、覚悟だつ :309/330


『日本橋』 青空文庫

い妓の姿は、願の糸を掛けた状に、七夕らしく美しい。                  :108/2195
お孝を見舞いに行くのに、鮨というのも狂乱の美人、附属ものの笹の気が悪い。野暮な見立て :305/2195
笹の気が悪い。野暮な見立ても、萎るる人の、美しい露にもなれかしと、ここに水菓子を選ん :305/2195
の身は火消壺、蛍ばかりに消え残った、可哀に美しく凄い瞳に、自分のを直して着せた滝縞お :328/2195
           で、粋な音〆と聞えた美声。                   :343/2195
                     美人のこの姿は、浅草|海苔と、洗髪と、お侠 :358/2195
温室のような春の中に、そこに一人月のごとき美人や病む。                :381/2195
簾一枚、じきそこに、と思うのが、気の狂った美人である。……寝ながら扇を……      :388/2195
ず、微笑むらしいお孝の唇、紅をさしたように美しい。                  :434/2195
したより、蓮葉とより、薬玉の総切れ切れに、美しい玉の緒の縺れた可哀を白々地。萎えたよ :476/2195
第に髱の出た、襟脚の可いのが揃って、派手に美しく賑うのである。それも日本橋寄から仲通 :501/2195
               (お爺さん虞美人草はないの、ぱっと散る。)桜草の前へ立 :1029/2195
げた、瞼の色。お孝の瞳は恍惚と、湯気の朧に美しい。                  :1095/2195
と前だって、芝の大門通りの足袋屋に名代娘の美人が有った。               :1185/2195
のさえ有ると言うのさ。その増上寺に、年少な美僧で道心堅固な俊才のが一人あった。夏の晩 :1186/2195
に炭火に翳す、と節の長い紅宝王を嵌めたその美しい白い手が一つ。親か、姉か、見えない空 :1201/2195
の左右の欄干の、向って右へ、嫋娜と掛って、美しい片袖が見える。ト頬杖か何か、物思わし :1295/2195
の紅裏を飜す、お孝は獅子頭を刎ねたように、美しく威勢よく、きちんと起きて、      :1330/2195
          就中、丈、約七寸|許の美しい女の、袖には桜の枝をのせて、ちょっと :1603/2195
                     美挙                    :1624/2195
           十年勤務の間、唯一の美挙として、貴方に差上げたいものがある。  :1644/2195
            と声が迫って、涙が美しく輝いた。               :1649/2195
   と気を揉む頬の後毛は、寝みだれてなお美しい、柳の糸より優しいのである。     :1719/2195
ったり、……抱いて寝るそうだ。お前、女房は美しかったか、綺麗な児だって。ああ、幸福な :1918/2195
     ト片手ついたが、欄干に、雪の輝く美しい白い蛇の絡んだ俤。          :1971/2195
た手は、ここにただ天地一つ、白き蛇のごとく美しく、葛木の腕に絡って、潸々と泣く。   :2151/2195
って、雛芥子の散った花片の、煽で動くのを、美しい魂を散らすまいとか、胸の箱へ、拾い込 :2178/2195
家を、わざと稲葉家のあとに引移った。一家の美人十三人。                :2192/2195


『人魚の祠』 青空文庫

つす》りと色着《いろづ》いたのが一ツ一ツ、美《うつくし》い乳首のやうな形に見えた。  :23/122
《なま》めいた胸のぬしは、顔立ちも際立つて美しかつた。鼻筋の象牙彫のやうにつんとした :29/122
             あゝ、あの柳に、美《うつくし》い虹が渡る、と見ると、薄靄に :54/122
        御覧なさい。釣済ました当の美人が、釣棹を突離《つきはな》して、柳の根 :66/122
     一体あの辺には、自動車か何かで、美人が一日がけと云ふ遊山宿、乃至、温泉のや :68/122
て見せるくらゐ。膚を蔽うたとも見えないで、美《うつくし》い女の顔がはらはらと黒髪を、 :81/122
        しかし、綺麗に泳いで行く。美《うつくし》い肉の背筋を掛けて左右へ開く :95/122


『婦系図』 青空文庫

               素顔に口紅で美《うつくし》いから、その色に紛《まが》う :7/3954
れて、股引《ももひき》は縮んだ、が、盤台は美《うつくし》い。             :40/3954
れがために水澄んで、霞をかけたる蒼空が、底美しく映るばかり。先祖が乙姫に恋歌して、か :434/3954
事はありません。後《いま》にその筋から御褒美《ごほうび》が出ます。養老の滝でも何でも :504/3954
               「まあ、御褒美を差上げましょう。」           :509/3954
と肩書の名刺と共に、新《あたらし》いだけに美しい若々しい髯を押揉《おしも》んだ。ちと :535/3954
あり》、と同一《おんなじ》字だ。道理こそ皆美人であると、それあるいは然《しか》らむ。 :539/3954
でも撒きそうに思ってるんだ。何の事はない、美少年録のソレ何だっけ、安保箭五郎直行《あ :579/3954
直行《あほのやごろうなおゆき》さ。甚しきは美人局《つつもたせ》でも遣りかねないほど軽 :579/3954
た、富士見町あたりの大空の星の光を宿して、美しく活《いか》っている。         :645/3954
も首席よ。出来るんだね。そうして見た処、優美《しとやか》で、品が良くって、愛嬌《あい :679/3954
                    「美人だねえ。君、」とゆったり顔を見る。   :693/3954
          「ト遣った工合は、僕が美人のようだ、厭だ。結婚なんぞ申込んじゃ、 :694/3954
ありだ。それは大丈夫としてからが、ああいう美しいのには有りがちだから、肺病の憂《うれ :715/3954
蚕《がさん》である。しかるにこの不生産的の美人は、蚕の世を利するを知らずして、毛虫の :857/3954
、その痘痕《あばた》と、細君が若うして且つ美であるのをもって、処々の講堂においても、 :866/3954
発揮して、河野のためにその理想の、道義上完美にして非難すべき点の無いのを説くこと数千 :883/3954
お妙が、土性であることは、あらかじめお蔦が美《うつくし》い指の節から、寅卯戌亥《とら :969/3954
に渉《わた》ることは少ないが、宗教、文学、美術、演劇、音楽の品定めがそこで成立つ。現 :1082/3954
堂を兼備えて、薔薇《しょうび》薫じ星の輝く美的の会合、とあって、おしめと襷《たすき》 :1082/3954
                     美しい袂の影が、座敷へ通って、母様は心着い :1781/3954
およそ声なく言《ことば》なき世のそれらの、美しいものより美しく、歌よりも心が籠った。 :1799/3954
《ことば》なき世のそれらの、美しいものより美しく、歌よりも心が籠った。        :1799/3954
つまべに》と云って、貴娘、紅をさしたような美《うつくし》い手の先を台なしになさるから :1832/3954
うて笑ったが、前髪に隠れない、俯向いた眉の美しさよ。                 :2223/3954
がかつて、脱兎《だっと》のごとし、と評した美人《たおやめ》はこれであったか。     :2245/3954
が通《かよ》って、新《あらた》に薄化粧した美しさが背中まで透通る。白粉の香は座蒲団に :2328/3954
、この家に養われて中学へ通っている書生の、美濃安八《みのあはち》の男が、夫人が上京し :2397/3954
を夢みれば蝶となり、慕えば花となり、解けば美しき霞となり、結べば恐しき蛇となる。   :2727/3954
か、あ、と忍び音に、魘《うな》された、目の美しい蝶の顔は、俯向けに菫の中へ落ちた。  :2731/3954
云われたので、我ながら忘れたように、心から美しい笑顔になって、            :2761/3954
と圧えた、浴衣に映る紫栄えて、血を吐く胸の美しさよ。                 :2879/3954
子は品のいい処へ粋になって、またあるまじき美麗《あでやか》さを、飽かず視《なが》めて :2987/3954
だ。柏屋《かしわや》の綱次《つなじ》と云う美しいのが、忽然として顕れらあ。      :3015/3954
。秋の花は春のと違って、艶《えん》を競い、美を誇る心が無いから、日向《ひなた》より蔭 :3080/3954
目があると、以前、母様をお育て申した乳母が美濃安八《あはち》の者で、――唯今島山さん :3203/3954
仕事は、いかなる貴婦人がなすっても仔細ない美徳であるし、両親もたって希望なり、不問に :3532/3954
、前後を擁した二体の白衣も、天にもし有らば美しき獄卒の、法廷の高く高き処へ夫人を引立 :3535/3954
取って、揉込《もみこ》むように顔を隠すと、美しい眉のはずれから、振《ふり》が飜《ひる :3740/3954
                    と美しく流眄《ながしめ》に見返った時、危なく :3757/3954
き靡かしたごとく、死したる風も颯と涼しく、美女《たおやめ》たちの面を払って、久能の麓 :3789/3954
って、目を見交わして、姉妹《きょうだい》の美人《たおやめ》は、身を倒《さかさま》に崖 :3942/3954
君、能《あた》うべくは、我意を体して、より美《うつくし》く、より清き、第二の家庭を建 :3950/3954


『親子そば三人客』 従吾所好

い虹の如く、暗を貫く瓦斯燈の燈に、唯見れば美しい半襟であつた。            :113/121


『春昼』 泉鏡花を読む

ぞへに低くなつて、一面に颯と拡がる、浅緑に美しい白波が薄りと靡く渚のあたり、雲もない :47/628
とりするまで、眼前真黄色な中に、機織の姿の美しく宿つた時、若い婦女の衝と投げた梭の尖 :59/628
鉄、左官金。東京の浅草に、深川に。周防国、美濃、近江、加賀、能登、越前、肥後の熊本、 :89/628
一座の霊地は、渠等のためには平等利益、楽く美しい、花園である。一度詣でたらむほどのも :93/628
                 と優しく美く書いたのがあつた。           :101/628
すが、当節は余りござりません。以前は、荘厳美麗結構なものでありましたさうで。     :125/628
             「作がよければ、美術品、彫刻物として御覧なさらうと言ふ世間 :176/628
やうに思召しが願ひたい、御像の方は、高尚な美術品を御覧になるやうに、と存じて、つい御 :177/628
げて、是に衣ものを着せるんです。第一貴下、美人だつて、たかがそれまでのもんだ。    :186/628
ありませんが、いや、丁と其の詠み主のやうな美人でありましてな、」           :210/628
         真個に、あゝいふ世に希な美人ほど、早く結縁いたして仏果を得た験も沢 :214/628
   「それは見ることは誰にでも出来ます。美しいと申して、竜宮や天上界へ参らねば見ら :241/628
                  「其の美人の住居の前をですか。」         :248/628
のものですね。而して誰が見ても綺麗ですか、美人なんですかい。」            :256/628
人と云ふ東京からの客人で、目の覚めるやうな美麗な方もありまするが、なか/\此ほどのは :257/628
玉脇斉之助。令夫人おみを殿、其の歌をかいた美人であります、如何でございます、貴下、」 :321/628
と、巓の白い中へ、薄い虹がかゝつたやうに、美しく靡いて来たのがある。……       :345/628
            何んとも言へない、美しさでした。               :358/628
、其の朦朧とした頂に立つて、境は接しても、美濃近江、人情も風俗も皆違ふ寝物語の里の祭 :563/628
、頤をつけて、熟と客人の方を見向いた、其の美しさ!                  :592/628
ぼれかゝつた艶やかなおくれ毛を透いて、一入美しくなつたと思ふと、あの其の口許で莞爾と :616/628
濡らさず、裾があつて、路を通ふやうである。美人の霊が誘はれたらう。雲の黒髪、桃色衣、 :628/628


『春昼後刻』 泉鏡花を読む

傘と書いていちはちの花、字の通りだと、それ美人の持物。                :51/444
な指が、一寸、紫紺の半襟を引き合はせると、美しい瞳が動いて、             :70/444
                     美女は立直つて、              :81/444
                     美女は親しげに笑ひかけて、         :86/444
                     美女は其の顔を差覗く風情して、瞳を斜めに衝 :114/444
を、とヒヤリとして、漸と瞳を定めて見ると、美女は刎飛んだ杖を拾つて、しなやかに両手で :137/444
  と言に連れられた春の其の日中から、瞳を美女の姿にかへした。            :193/444
、はら/\とこぼれるやうで、長閑で、麗で、美しくつて、其れで居て寂しくつて、雲のない :214/444
                     美女は身を震はして、何故か嬉しさうに、   :239/444
かけて、心を篭めて見詰めたらしい、目の色は美しかつた。                :292/444
               と声をかけて美女は起直つた。今の姿を其のまゝに、雪駄は :333/444
                     美女は膝をずらしながら、帯に手をかけて、揺 :345/444
                     美女は莞爾して、              :383/444
我儘が言ひ足りず、話相手の欲しかつたらしい美女に辞して、袂を分つたが、獅子の飛ぶのに :393/444
衣がびつしより、其雪の腕にからんで、一人は美にして艶であつた。玉脇の妻は霊魂の行方が :443/444
、積もる、くぼめば、たまる、音もせぬ。たゞ美しい骨が出る。貝の色は、日の紅、渚の雪、 :444/444


『天守物語』 泉鏡花を読む

  萩 あゝ、内廓《うちぐるわ》の秋草が、美しい波を打ちます。            :53/480
》きて、手に/\秋草を花籠に挿す。色の其の美しき蝶の群、斉しく飛連れてあたりに舞ふ。 :63/480
、片手に竹笠、半ば面《おもて》を蔽ひたる、美しく気高き貴女、天守夫人、富姫。     :68/480
争ひ、お言葉の花が蝶のやうに飛びまして、お美しい事でござる。……さて、此方《こなた》 :153/480
沢山《たんと》お声がいゝから、この天守から美しい声が響くと、また立騒いでお煩《うるさ :199/480
《ときん》と云つぱ兜巾なり。お腰元と言つば美人なり。恋路と言つぱ闇夜なり。野道山路厭 :215/480
      蓑を取つて肩に装《よそほ》ふ、美しき胡蝶の群、ひとしく蓑に舞ふ。颯《さつ :256/480
す。やがて衝《つ》と翳《かざ》すとともに、美丈夫、秀でたる眉に勇壮の気満つ。黒羽二重 :280/480
せたのではありますまい。天守の棟に、世にも美しい鳥を視《み》て、それが欲しさに、播磨 :336/480
           図書 (沈思す、間)美しく、気高い、そして計り知られぬ威のある :345/480
》、すつきり花が咲いたやうな、水際立つてお美しい。……奥様。             :391/480
洞《ぼんぼり》を寄す)やあ、怪しく、凄く、美しい、婦《をんな》の立姿と見えたは此だ。 :420/480
貴夫人たちの落人《おちうど》だらう。絶世の美女だ。しやつ掴出《つかみいだ》いて奉れ、 :425/480
      図書 やあ、何のために貴女が、美しい姫の、この世にながらへておわすを土産 :451/480
図書 あゝ、私も、もう一目、あの、気高い、美しいお顔が見たい。(相縋る。)      :455/480
                  桃六 美しい人たち泣くな。(つか/\と寄つて獅子 :468/480


『歌行燈』 従吾所好

            女房は染めた前歯を美しく、                  :93/744
        (ヤヤ、難有い、仏壇の中に美婦〈たぼ〉が見えるわ、簀の子の天井から落 :188/744
んぞでいたします。矢張り松毬で焼きませぬと美味うござりませんで、当家〈うち〉では蒸し :218/744
ち〉では蒸したのを差上げます、味淋入れて味美〈あぢよ〉う蒸します。」         :218/744
                    「美しい跫音やな、何処の?」と聞く。     :311/744
これほどの松風は、東京でも聞けぬ、)と御賞美。                    :411/744
。帯も襟も唐縮緬ぢやあるが、もみぢのやうに美しい。結綿のふつくりしたのに、浅葱鹿の子 :463/744
とて、雲井、と銘ある秘蔵の塗胴。老の手捌き美しく、錦に梭〈ひ〉を、投ぐるやう、さら/ :630/744
耳に当ると、三四人立騒ぐ女の中から、すつと美しく姿を抜いて、格子を開けた門口で、しつ :679/744
。平時よりは尚ほ激しい。其処へ又影を見た。美しい影も見れば、可恐しい影も見た。此処で :703/744


『夜行巡査』 青空文庫

とするとき、一個の年紀《とし》少《わか》き美人はその同伴《つれ》なる老人の蹣跚《まん :58/164
天地寂として、星のみひややかに冴え渡れり。美人は人ほしげに振り返りぬ。百歩を隔てて黒 :61/164
   「どうだお香、あの縁女《えんじょ》は美しいの、さすがは一生の大礼だ。あのまた白 :83/164
おんな》が二度とないお晴れだな。縁女もさ、美しいは美しいが、おまえにゃ九目《せいもく :83/164
が二度とないお晴れだな。縁女もさ、美しいは美しいが、おまえにゃ九目《せいもく》だ。婿 :83/164


『薬草取』 青空文庫

                 「はい、美女《びじょ》ヶ原《はら》と申します。」  :63/283
                 「あの、美しい女と書きますって。」         :65/283
れでも何処《どこ》に桜があるか分りません。美女ヶ原へ行《ゆ》きますと、十里南《みなみ :71/283
                  「その美女ヶ原までどのくらいあるね、日の暮れない :73/283
ぎりで、一足《ひとあし》ずつ出さえすりゃ、美女ヶ原になりますか。」          :80/283
なのでございます。そして貴方《あなた》は、美女ヶ原にお心覚えの草があって、其処《そこ :85/283
             「確《たしか》に美女ヶ原というそれでしょうな、何でも躑躅《 :88/283
                 私が以前美女ヶ原で、薬草を採ったのは、もう二十年、 :109/283
顔で、熟《じっ》と見て、ああ好《い》い事、美しい髪も抜けず、汚《きたな》い虫も付かな :214/283
はだ》も、人の体も、その時くらい清く、白く美しいのは見た事がない。          :214/283
                    「美女ヶ原に今もその花がありましょうか。」  :230/283
くあったんですが、何時《いつ》もそうやって美女ヶ原へお出《いで》の事だから、御存じは :232/283
りませんが、黄昏《たそがれ》と思う時、その美女ヶ原というのでしょう。凡《およそ》八町 :238/283
たいびょう》、一刻も早くと、直《すぐ》に、美女ヶ原を後《あと》にしました       :241/283
《もうしわけ》の葬《とむらい》に、医王山の美女ヶ原、花の中に埋《うず》めて帰る。汝《 :262/283
一つ、花片《はなびら》となり、葉となって、美女ヶ原の花は高坂の袂《たもと》に匂《にお :270/283
高坂を待って、莞爾《にっこ》と笑《え》む、美しく気高き面《おも》ざし、威《い》ある瞳 :271/283
繰返して語りつつ、やがて一巡した時、花籠は美しく満たされたのである。         :273/283
            その時肩を落して、美女《たおやめ》が手を取ると、取られて膝を :278/283
に茎を掴《つか》んで、袂《たもと》は空に、美女ヶ原は咲満《さきみ》ちたまま、ゆらゆら :280/283


『夜叉ヶ池』 青空文庫

                晃 水は、美しい。いつ見ても……美しいな。      :31/564
     晃 水は、美しい。いつ見ても……美しいな。                 :31/564
は近江《おうみ》、北は加賀、幽《かすか》に美濃《みの》の山々峰々、数万《すまん》の松 :52/564
、鐘堂《つりがねどう》も知らない前に、この美《うつくし》い水を見ると、逆蜻蛉《さかと :99/564
、襟脚、脊筋も透通る。……凄《すご》いまで美しいが、……何か、細君は魔法つかいか。  :175/564
。そう信ぜい。堅く進ぜい。奥方の人を離れた美しさを見るにつけても、天がこの村のために :213/564
    百合 (行燈《あんどん》を手に黒髪美しく立出づる)私、どうしたら可《よ》うご :214/564
つえ》つき、片手に緋総《ひぶさ》結びたる、美しき文箱《ふばこ》を捧げて、ふらふらと出 :307/564
た処は、こりゃ虫が知らすと見えました。御褒美《ごほうび》に遣わさるる石臼なれば可《よ :327/564
                 蟹五郎 美濃の国には、名だたる揖斐《いび》川。   :405/564
               白雪 おお、美しいお百合さんか、何をしているのだろうね :421/564
て、つい忘れた。……私がこの村を沈めたら、美しい人の生命《いのち》もあるまい。鐘を撞 :426/564
、絶体絶命の旱《ひでり》の時には、村第一の美女を取って裸体《はだか》に剥《む》き…… :448/564
取らぬ。さるかわり、背に裸身《はだかみ》の美女を乗せたまま、池のほとりで牛を屠《ほふ :450/564
三男ではあるが、伯爵の萩原が、ただ、一人の美しさのために、一代鐘を守るではないか―― :499/564


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 佐藤和雄(蟻) 2000.9.29