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 『歌行燈』 従吾所好

 と苦い顔を渋くした、同伴の老人は、まだ、其の上を四つ五つで、やがて七十〈なゝそぢ〉なるべし。臘虎〈らつこ〉皮の鍔なし古帽子を、い眉尖〈まゆさき〉深々と被つて、鼠の羅紗の道行着た、股引を太く足袋の雪駄穿〈せつたばき〉。色褪せた鬱金の風呂敷、真中を紐で結へた包を、西行背負〈さいぎやうじよひ〉に胸で結んで、これも信玄袋を手に一つ。片手に杖は支いたけれども、足腰はしやんとした、人柄の可いお爺様。

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