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『五大力』 従吾所好
「孫六は年紀を取つた。女は分けて、対手の男の顔を見る。……舞台に立てば、姫も御前も参られよ、ぢやが、此の、よぼ/\の皺面が、」
と骨ある拳を確乎〈しつか〉と握り、
「炬燵の臭気〈にほひ〉で逢うて見ろ。老ゆれば孫にも侮らるゝ……修験の法師や、羅漢でない。能役者とて芸人だ。やれ、薄汚い爺ぢや、と婦一人にも思はれては、流儀の恥辱、俺の名折れよ。……なみの娘は然うも見まい、芸人だけに心外でな。」
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