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『日本橋』 青空文庫
「ええ、ええ、別に秘すではござりません、(これからお茶屋へ行って一口飲むから、待ってるからきっとおいで。)と、はい、そのきっとでござりますが、何の、貴下様、こんな爺に御一座が出来ますもので。姉さんがただ御串戯におっしゃったのでござりますよ。」
「串戯ではなかったがい。俺はな、あの、了いかけた見世物小屋の裏口に蹲んで聞いとったんだ。」
赤熊のこの容態では、成程|立聴をする隠れ場所に、見世物小屋を選ばねばならなかったろう、と思うほど、薄気味の悪い、その見世物は、人間の顔の尨犬であった。
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