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『日本橋』
青空文庫
跡方も無い嘘は吐けぬ。……爺さんは実に、前刻にお孝にもその由を話したが……平時は、縁日廻りをするにも、お千世が左褄を取るこの河岸あたりは憚っていたのである。が、抱主の家へは自分の了簡でも遠慮をするだけ、可愛い孫の
顔
は、長者星ほど宵から目先にちらつくので、同じ年齢の、同じ風俗の若い妓でも、同じ土地で見たさの余り、ふとこの夜に限って、西河岸の隅へ出たのであった。
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