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 『日本橋』 青空文庫

 帰りがけの霞の空の、真中を蔽う雲を抜けて、かんてらの前へ、飛出したお千世の姿は、爺さんの目には、背後の蔵から昨夜の雛が抜出したように見えて、あっと腰を抜いて、ぺたんと胡坐を掻いて、ものを言うより莞爾々々としていたのである。
 その間にお孝は、葛木と二人で参詣を済まして、知らぬ振して帰るも可い、が、かえって気まずく思わせよう。
(お爺さん虞美人草はないの、ぱっと散る。)桜草の前へ立った時、……お孝に挨拶をした爺さんが、(これは旦那様。)とその時葛木にお辞儀をしたので、

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