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『国貞えがく』 青空文庫
不沙汰見舞に来ていたろう。この婆は、よそへ嫁附《かたづ》いて今は産んだ忰にかかっているはず。忰というのも、煙管、簪、同じ事を業とする。
が、この婆娘《ばばあむすめ》は虫が好かぬ。何為《なぜ》か、その上、幼い記憶に怨恨《うらみ》があるような心持が、一目見ると直ぐにむらむらと起ったから――この時黄色い、でっぷりした眉のない顔を上げて、じろりと額で見上げたのを、織次は屹と唯一目。で、知らぬ顔して奥へ通った。
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