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『龍潭譚』
青空文庫
「どれ。」といひて立つたる折、のしのしと道芝を踏む音して、つづれをまとうたる老夫《おやじ》の、顔の色いと赤きが縁近う入り来つ。
「はい、これはお児さまが
ござ
らつせえたの、可愛いお児じや、お前様も嬉しかろ。ははは、どりや、またいつものを頂きましよか。」
腰をななめにうつむきて、ひつたりとかの筧に顔をあて、口をおしつけてごつごつごつとたてつづけにのみたるが、ふツといきを吹きて空を仰ぎぬ。
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