検索結果詳細


 『龍潭譚』 青空文庫

 「どれ。」といひて立つたる折、のしのしと道芝を踏む音して、つづれをまとうたる老夫《おやじ》の、顔の色いと赤きが縁近う入り来つ。
 「はい、これはお児さまがござらつせえたの、可愛いお児じや、お前様も嬉しかろ。ははは、どりや、またいつものを頂きましよか。」
 腰をななめにうつむきて、ひつたりとかの筧に顔をあて、口をおしつけてごつごつごつとたてつづけにのみたるが、ふツといきを吹きて空を仰ぎぬ。

 103/186 104/186 105/186


  [Index]