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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 銀平は何思ひけむ、勢《いきほひ》に乗る八蔵を取つて突除《つきの》けづいと立ち、「勾引《かどはかし》の罪人、御用だッ。と呼ばはれば、八蔵もまた何とかしけむ、「えゝ、と吃驚《びつくり》身を翻がへして、外へ遁出し雲を霞、遁がすものかと銀平は門口まで追懸け出で、前途《ゆくて》を見渡し独言《ひとりごと》、「素早い、野郎だ。取遁がした、残念々々、と引返せば、得右衛門は興覚《きようざめがほ》にて、「つい混雑に紛れまして、未だ御挨拶も申しません。貴方は今しがた御着《おつき》になつたお客様、さては其筋の。と敬へば、銀平したりに打頷き、「応《うむ》、僕は横須賀の探偵だ。」

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