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 『木の子説法』 青空文庫

 食あたりだ。医師《いしゃ》のお父さんが、診察をしたばかりで、薮《やぶ》だからどうにも出来ない。あくる朝なくなりました。きらずに煮込んだ剥身《むきみ》は、小指を食切るほどの勢《いきおい》で、私も二つ三つおすそわけに預るし、皆も食べたんですから、看板の〓《しこ》のせいです。幾月ぶりかの、お魚だから、大人は、坊やに譲ったんです。その癖、出がけには、坊や、晩には玉子だぞ。お土産は電車だ、と云って出たんですのに。――
 お雪さんは、歌磨の絵の女《あま》のような姿で、鮑《あわび》――いや小石を、そッと拾っては、鬼門をよけた雨落《あまおち》の下へ、積み積みしていたんですね。

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