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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
宰八紅顱巻《あかはちまき》をかなぐって、
「こりゃ、はい、御坊様御免なせえまし。御本家からも宜しくでござりやす。いずれ喜十郎様お目に懸りますだが、まず緩りと休まっしゃりましとよ。
私《わし》こういうぞんざいもんだで、お辞儀の仕様もねえ。婆様がよッくハイ御挨拶しろというてね、お前様《めえさま》旨がらしっけえ、団子をことづけて寄越しやした。茶受にさっしゃりやし。あとで私《わし》が蚊いぶしを才覚しながら、ぶつぶつ渋茶を煮立てますべい。
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