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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
「はい、それさ、そのキャアだから、お前様《めえさま》、どうした仁右衛門と、いうと、苦虫が、面さ渋くして、(ああ、厭なものを見た。おらが鼻の尖を、ひいらひいら、あの生白《なまちら》けた芋の葉の長面が、ニタニタ笑えながら横に飛んだ。精霊棚の瓢箪が、ひとりでにぽたりと落ちても、御先祖の戒とは思わねえで、酒を留めねえ己《おら》だけんど、それにゃ蔓が枯れたちゅう道理がある。風もねえに芋の葉が宙を歩行《ある》くわけはねえ。ああ、厭だ、総毛立つ、内へ帰って夜具を被って、ずッしり汗でも取らねえでは、煩いそうに頭も重い。)
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