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『婦系図』 青空文庫
「水道橋まで歩行くが可い。ああ、酔醒《えいざ》めだ。」と、衣紋を揺《ゆす》って、ぐっと袖口へ突込んだ、引緊《ひきし》めた腕組になったと思うと、林檎の綺麗な、芭蕉実《バナナ》の芬《ふん》と薫る、燈《あかり》の真蒼《まっさお》な、明《あかる》い水菓子屋の角を曲って、猶予《ためら》わず衝《つ》と横町の暗がりへ入った。
下宿屋の瓦斯は遠し、顔が見えないからいくらか物が云いよくなって、
「奥さんが、お風邪気《け》でいらっしゃいますそうで、不可《いけ》ませんでございます。」
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