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 『化鳥』 青空文庫

今ではそんな楽しい、うつくしい、花園がないかはり、前に橋銭を受取る笊《ざる》の置いてある、この小《ちい》さな窓から風《ふう》がはりな猪《いぬしゝ》だの、奇躰《きたい》な簟《きのこ》だの、不思議な猿だの、まだ其他《そのた》に人の顔をした鳥だの、獣《けもの》だのが、いくらでも見えるから、ちつとは思出《おもひで》になるトいつちやあ、アノ笑顔《わらひがほ》をおしなので、私《わたし》もさう思つて見る故《せい》か、人があるいて行く時、片足をあげた処は一本脚の鳥のやうでおもしろい、人の笑ふのを見ると獣《けだもの》が大きな赤い口をあけたよと思つておもしろい、みいちやんがものをいふと、おや小鳥が囀《さへづ》るかトさう思つてをかしいのだ。で、何でもおもしろくツてをかしくツて吹出《ふきだ》さずには居られない。
だけれど今しがたも様《おつかさん》がおいひの通り、こんないゝことを知つてるのは、様《おつかさん》と私《わたし》ばかりで何うして、みいちやんだの、吉公《きちこう》だの、それから学校の女の先生なんぞに教へたつて分るものか。

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