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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 さあ、之からが名代の天生峠と心得たから、此方も其気になつて、何しろ暑いので、喘ぎながら先づ草鞋の紐を緊直した。
 丁度此の上口の辺に濃の蓮大寺の本堂の床下まで吹抜けの風穴があるといふことを年経つてから聞きましたが、なか/\其処どころの沙汰ではない、一生懸命、景色も奇跡もあるものかい、お天気さへ晴れたか曇つたか訳が解らず、目じろぎもしないですた/\と捏ねて上る。

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