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 『婦系図』 青空文庫

 やがて、水道橋の袂《たもと》に着く――酒井はその雲に駕《が》して、悠々として、早瀬は霧に包まれて、ふらふらして。
 無言の間、吹かしていた、香の高い巻莨《まきたばこ》を、煙の絡んだまま、ハタとそこで酒井が棄てると、蒸気は、ここで露になって、ジューと火が消える。
 萌黄の光が、ぱらぱらと暗《やみ》に散ると、炬《きょ》のごとく輝く星が、人を乗せて衝《つ》と外濠《そとぼり》を流れて来た。

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