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 『国貞えがく』 青空文庫

 「さて、どうも、お珍しいとも、何んとも早や。」と、平吉は坐りも遣らず、中腰でそわそわ。
 「お忙しいかね。」と織次は構わず、更紗の座蒲団を引寄せた。
 「ははは、勝手に道楽で忙しいんでしてな、つい暇でもございまするしね、怠《なま》け仕事に板前で庖丁の腕前を見せていた所でしてねえ。ええ、織さん、この二、三日は浜で鰯がとれますよ。」と縁《えん》へはみ出るくらい端近に坐ると一緒に、其処にあった塵を拾って、ト首を捻《ひね》って、土間に棄てた、その手をぐいと掴んで、指を揉み、

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