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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 丁度此の上口の辺に美濃の蓮大寺の本堂の床下まで吹抜けの風穴があるといふことを年経つてから聞きましたが、なか/\其処どころの沙汰ではない、一生懸命、景色も奇跡もあるものかい、お天気さへ晴れたか曇つたか訳が解らず、目じろぎもしないですた/\と捏ねて上る。
 とお前様お聞かせ申す話は、これからぢやが、最初に申す通り路がいかにも悪い、宛然人が通ひさうでない上に、恐しいのは、で。両方の叢に尾と頭とを突込んで、のたりと橋を渡して居るではあるまいか。

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