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『五大力』 従吾所好
小弥太は此を聞いて、人の世の芸人の栄誉を思つた。霞をお師匠さんと云ふ、――一人残つた――孫六の、此の末の娘は。幼より飼鳥に鼓打つて聞かせ、斉眉〈かしづ〉く人形に舞うて見せた、所帯をつもる二尺指、肩を拍つのも法に合〈かな〉ふ、比類なき舞の上手である。
潜りを入ると、深き楽屋の大姿見に、二人の姿がちらりと映つて、其から、やがて橋がかりを手を曳いたが、背後へ廻つて、静と据ゑる。……霞が舞台に着いた時、お縫は小走りに引返して、高台を背後に、小弥太が彳〈たゝず〉んだ傍へ来た。
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