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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「休まっしゃりまし。」と呼びかけた。
 車輪の如き大さの、白段々《だんだら》の夏の蝶、河床は草にかくれて、清水のあとの土に輝く、山際に翼を廻すは、白の脚絆、草鞋穿、かすりの単衣のまくり手に、その看板の洋傘《こうもり》を、手拭持つ手に差翳した、三十《みそじ》ばかりの女房で。

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