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 『半島一奇抄』 青空文庫

 うの花にはまだ早い、山田小田《おだ》の紫雲英《げんげ》、残《のこん》の菜の花、並木の随処に相触れては、狩野《かの》川が綟子《もじ》を張って青く流れた。雲雀《ひばり》は石山に高く囀《さえず》って、鼓草《たんぽぽ》の綿がタイヤの煽《あおり》に散った。四日町は、新しい感じがする。両側をきれいな細流が走って、背戸、籬《まがき》の日向《ひなた》に、若木の藤が、結綿《ゆいわた》の切《きれ》をうつむけたように優しく咲き、屋根に蔭つくる樹の下に、山吹が浅くに笑う……家ごとに申合せたようである。

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