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 『国貞えがく』 青空文庫

 さて、局の石段を下りると、広々とした四辻に立った。
 「さあ、何処へ行こう。」
 何処へでも勝手に行くが可《よし》、また何処へも行かないでも可い。このまま、今度の帰省中転がってる従姉の家へ帰っても可いが、其処は今しがた出て来たばかり。すぐに取って返せば、忘れ物でもしたように思うであろう。……先祖代々の墓詣は昨日済ますし、久しぶりで見たかった公園もその帰りに廻る。約束の会は明日だし、好なものは晩に食べさせる、と従姉が言った。差当り何の用もない。何年にも幾日《いくか》にも、こんな暢気な事は覚えぬ。おんぶするならしてくれ、で、些と他愛がないほど、のびのびとした心地。

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