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 『外科室』 青空文庫

 ことのここに及べるまで、医学士の挙動脱兎《だっと》のごとく神速にしていささか間《かん》なく、伯爵夫人の胸を割《さ》くや、一同はもとよりかの医博士に到るまで、言《ことば》を挟《さしはさ》むべき寸隙とてもなかりしなるが、ここにおいてか、わななくあり、面を蔽うあり、背向《そがい》になるあり、あるいは首《こうべ》を低《た》るるあり、予のごとき、われを忘れて、ほとんど心臓まで寒くなりぬ。

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